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At the card table vol.3 (Darwin Ortiz)

先日、プロマジシャンはやふみさんのオンラインライブショーを、妻と2人で鑑賞しました。オンラインライブと言っても、ただショーをオンラインで流しているのではなく、はやふみさんが私と妻だけのためにZoomで演じてくれたのです。

オンラインならではのトリックもあり、また参加型の手順もあり、プロマジシャンの演技を見たことがない妻は、かなり楽しんでいた様子です。特に最後にはやふみさんが演じたトリックが気に入った様子でした。不思議だからというよりも、そのマジックから伝わってきた「メッセージ性」が心に残ったようです。

不思議な現象のインパクトというのは、どれほど不可能性が高くても、よほどのことがない限りは時間が経てば薄れてしまいます。ですが、マジックを通じて伝えられたメッセージや、マジックを通じて伝わってきたその人の人格は、いつまでも残ります。それを強く実感したひと時でした。はやふみさん、本当にありがとうございました。

さてDVDのご紹介です。ダーウィン・オーティズの「At the card table」の第3巻。今回はギャンブリングデモンストレーションが6手順中4手順を占めています。解決法もいろいろですので、この手の現象が好きであれば楽しめるかも知れません。では行きましょう。

Darwin Ortiz collection

1. Mindbender
現象/相手にデックを好きなところで好きなだけカットさせ、更にデックを2つにカットしてもらい、2人の相手にパケットを押さえさせる。うち1人の相手にパケットのボトムカードを覚えてもらい、そのパケットはよく混ぜさせる。この不可能な状態で演者はパケットを受け取り、選ばれたカードを抜き出す。さらにもう1人にも同じことをしてもらい、今度はデックを1つに纏めさせ、ケースに入れてもらう。演者は相手が覚えたカードを言い当てる。

非常に不可能性の高いカード当てです。が、当然のように(?)デックを丸ごとセットしなくてはなりませんし、そのセットも表を見せられるようなものではありませんので、デックを表向きにスプレッドすることが一切できません。一応演技前にシャッフルはするのですが、それにしても少し不自然に見えます。まあ、サイ・ステビンスであっても、堂々と表向きにスプレッドして見せるものでもありませんから、気にするほどではないかも知れませんが。

相手に混ぜさせた後に相手のカードを特定する方法は、よく考えられています。この手順をそのままやってみようとはあまり思えないのですが、その手法は何かに応用できるかも知れません。私はずぼらなので、マークトデックをサイ・ステビンスに組めばいいのでは、と思ってしまいましたけど(笑)。

2. Jackpot
現象/4枚のJを使い、1枚はデックのボトムに、3枚はトップに置く。その状態で5人に4枚のカードを配るが、演者に4枚のJが来る。

ギャンブリングデモンストレーション系ですが、私はどうもこの手の現象が好きになれません。私は確率的な不思議が好きなのですが、このような「演者の凄いテクニックを示す」という見せ方のトリックは、ある意味私の好みの対極だからかも知れません。

技法としても結構ハードなことをしなくてはなりません(幸い私はこの手順で使われている技法は割と得意ではありますが)。しかも結局フォールスディールをしなくてはならないのです。ボトムに置いたことを示してボトムディールをやるというのは、手順としていまいち美しくない気がします。何せ、冒頭でギャンブラーはこうやってインチキするんだと、(ちょっと変な)セカンドディールをやって見せるのですから。

まあ、オーティズのセカンドディールやボトムディールは綺麗ではありますが、私はちょっと演じてみようとは思いません。この手のギャンブリングデモンストレーションは、もっと楽にできて面白い手順がありますし。

3. Fast shuffle
現象/4枚のAをデックのトップに乗せ、デックを何度かリフルシャッフルする。そして5人に4枚ずつのカードを配ると、演者に4枚のAが来る。再び同じことをするが、今度はリフルシャッフルは2回である。5人に4枚ずつのカードを配ると、やはり演者に4枚のAが配られる。三度同じことをし、リフルシャッフルを一度だけする。やはり演者に4枚のAが配られる。

引き続きギャンブリングデモンストレーションです。上の「Jackpot」とは現象を起こすためのやり方は全然異なります。なんと、リフルシャッフルを使って、実際に必要な場所に4枚のカードを配置してしまうのです。そのためフォールスディールはほとんど使いません。ただ配るだけです。

その意味ではクリーンなのですが、逆に、かなり大変なリフルシャッフルによるコントロールを要求されます。オーティズはこの手の技法が非常に上手いのですが、それでも少し不自然に見えます。そしてだんだんシャッフルの回数が減っていくというのは、見ていて「シャッフルで目的の場所にカードをコントロールするデモンストレーションとしてならともかく、マジックとしては不思議さがだんだん減っていくのでは……?」と感じてしまいました。

そもそもこの手の現象で一番注目される動作であるシャッフルで怪しいことをやるというのは、非常に気が引けます。やはりこういう現象は私の好みには全く合いません。

4. The card warp deck 
現象/裏模様が全て異なるデックから、2枚を指差してもらう。うち1枚は表を内側にして縦に折り、もう1枚は同様に横に折る。縦に折ったカードをカバーにして、その中に横に折ったカードを通すと、反対側から表向きになって出てくる。何度か繰り返した後、最後はカバーのカードごと真ん中から破ると、中のカードは半分が表、半分が裏になっている。

ウォルトンの大傑作、カードワープです。裏模様が全て異なるデックから自由に2枚選ばせるので、カードに仕掛けがないと思わせられるメリットはありますが、もちろん仕掛けなしにこの現象ができるはずはなく、当然半分のカードには加工が必要です。

個人的には、準備した2枚のカードで十分不思議に見えると思いますし、わざわざ裏模様が全部違うデックをそんな使い方はしたくありません。カードの示し方はよく考えられてはいるのですが、オーティズは妙なところで凝り症だなあと思いました(笑)。

そして、準備の箇所は念入りに説明するのに、肝心のカードワープ本編の解説は「わざわざ詳しく説明しなくても、みんなもう知ってるだろ?」とばかりに、結構あっさりしています。しかしオーティズのやり方は、検めが過剰過ぎず、そこはとてもいいバランスだと思いました。検め過ぎるよりこれくらいが好みです。ともあれ元が傑作ですので、間違いありません。

5. Mexican poker 
現象/10枚のカードだけを使って演者と客でポーカーの勝負をする。お互いパケットをシャッフルして1枚ずつ配るが、演者が勝つ。相手が自由にカードを選んでも演者が勝つ。相手にカードを交換させても演者が勝つ。最後は相手に表を見せて相手に好きなカードを取らせるが、それでも演者が勝ってしまう。

テンカードポーカーディールです。ヨナカードを使った有名な手順のバリエーションですね。セルフワーキングによるポーカーデモンストレーションの傑作です。原理を知っていればいくらでも演出は考えられるでしょう。

そしてヨナカードにいかに上手く印をつけるかがポイントでもありますが、オーティズはそこを上手く手順の中でやってしまいます。これは実用的な方法なのではないでしょうか。非常に自然であり、他のトリックにも広く応用が効く方法だと思います。

ただ、個人的にはこの手のトリックで、何度も相手を負かすような演出は好みではありません。そこさえ上手くできれば、ポーカーが分かる相手であれば大変効果的だと思います。全く技法を使いませんので、ジャンボカードを使ってサロンでも演じても面白そうですね。

6. The ultimate cardshark
現象/Aを一度カットするとスペードのAが出てくる。何度デックをカット、シャッフルしてもスペードのAはトップから出てくる。続いてデックをカットする度に残りのAが出てきて、4枚のAが揃う。そして4枚のAをトップに置いて何度かシャッフルし、5人に4枚ずつのカードを配ると、演者のところに4枚のAが来る。それだけでなく、残り4人には4枚の10、4枚のJ、4枚のQ、4枚のKが来ている。再びデックをシャッフルして4人に13枚のカードを配ると、それぞれがブリッジのグランドスラム(同じマークのAからK)になっている。

これは演技だけです。非常に豪華な現象のギャンブリングデモンストレーションです。こういう現象は上にも書いたとおり全く好みではありませんが、オーティズの演技は見事で、特にフォールスリフルシャッフルが上手いですね。

とは言え、どうしてもぱっと見で「なんか普通のシャッフルじゃない」というのは伝わってしまいますし(私だけかも知れませんが)、やはり手品的な面白さは私には感じられませんから、楽しいとは思わないのですが。しかしこういうのが好きな方には、ラストの鮮やかさに驚かされるかも知れません。


以上6作品、解説は5作品です。私はギャンブリングデモンストレーションを好まないため、その意味では楽しめたとは言い難いのですが、「Mindbender」や「The card warp deck」、そして「Mexican poker」の工夫は、ちょっと感心しました。

これが単体のDVDだったら頭を抱えるところですが(笑)、10枚組で1枚辺りはかなり安いものにつきますから、そう思ってみればそれなりに楽しめます。ギャンブリングデモンストレーションをあまり見たことがない人は、本格的な手順が色々見られますから、刺激を受けるのではないでしょうか? 

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E.S.P. Jumbo testing cards (Vernet magic)

私は、ESPカードを使ったマジックが好きです。ESPのトリックは、一致現象が非常に多く、派手な現象を好む方からはいまいち評判が良くないような気もするのですが、しかし普通のトランプと比べてESPの方が明らかに優っていることが、1つあります。

それは「圧倒的な見た目の判別し易さ」です。特に私はいつもサロン規模の場所で演じるので、これは非常に大きいなと感じます。

サロン規模で例えばカラーチェンジをやっても、目の前で見た相手以外には現象が伝わりにくいんですよね。私は勝手に「変化や移動など、物理現象の伝わり易さは、相手との距離の二乗に反比例する」という仮説を立てており(笑)、だからこそ一致やカード当てを好んでいるのですが、この点ESPカードは非常に視認性が高く、サロンには持ってこいなのです。

なので、いい品質のESPのジャンボカードがあればいいなと思っていたのですが、今回レストランマジック研究所でバーネットの「E.S.P. Jumbo Testing Cards」を購入しましたので、ご紹介します。

E.S.P. Jumbo testing cards (Vernet magic)

大きさはレギュラートランプの4倍くらいですが、縦横比はブリッジサイズの模様です。紙質にはあまり期待していなかったのですが、マット加工がされておりカードとしての質はかなりいいと思います。マット加工なので、使い込むと傷が少し心配なところではありますが、滑りも良好で思った以上に高品質です。

難点としては箱が少し開け辛いです。写真で見ても、既に開口部が曲がってしまっているのが分かると思います(笑)。別に曲がってしまっても困りませんが、開け閉めはもう少しストレスなくできると、もっと良かったですね。

裏面にはマーキングがしてあります。マーキングの方法はダイレクトで非常に分かりやすいので、読み損なうことはないでしょう。反面、相手にも露呈しやすいとも言えますが、マーキングにおいて「読み易さ」と「露呈し易さ」はトレードオフの関係にありますし、それにこのカードはサロンで使うことがほとんどでしょうから、そういう心配はしなくてもいいかも知れません。

なお購入するとおまけでいくつか手順がついて来ます。印刷された手順が4つ(レストランマジック研究所による和訳版です)。それに箱に記載されたURLで動画が見られまして、そこで解説されている手順が5つです。

印刷された手順は、改めて解説するほどでもないものもありますが、動画手順にはなかなか面白いものもあり、やってみたくなりました。特に「An expected sign」と「Triple divination routine」は簡単でありながら巧妙で効果的。「An expected sign」の封筒の工夫には特に唸らされました。これはレギュラーデックのトリックにも応用したくなります。カードだけでなく手順が9種類もついてくるのですから、かなりお得と言えるのではないでしょうか。

レギュラーデックのように技法を使う訳ではないですし、これでリフルシャッフルをする人もいないでしょうから、大事に使えばかなり長持ちしそうです。値段は3000円ですが、サロンで演じることが多いならば、この値段であればお買い得なのではないでしょうか。

私はコロンビーニの廉価版シリーズでESPのトリックは大量にあるので、早速どんどん活用するつもりです。やはり、同じ一致現象でもトランプでやるのとESPカードでやるのでは、まるで雰囲気が違いますからね。ESPカードを使ったトリックがお好きな方は、是非このカードをチェックしてみてください。 

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ESP card magic vol.4 (Aldo Colombini)

DVD紹介。今回はコロンビーニによるESPカードマジック集の第4巻。今回も第3巻に続き、セルフワーキングの大家ハワード・アダムスの作品集です。

ESPカードのトリックは、トランプと比べても圧倒的にマークの視認性が良いため、サロン規模で演じるにも非常に合っているように思います。難しい技法を使ったカードマジックばかりをやっていると、このDVDで紹介されているような手順は軽視しがちですが、侮り難いパワーを持っていると思います。

それでは始めます。

ESP card magic vol.4 (Aldo Colombini)

1. Pakatria
現象/1枚のESPカードを選んでもらい、封筒にしまっておく。残りのデックを3つのパイルに配り分け、真ん中のパイルは表向きにする。裏向きのパイルのどちらかを選んで取り除き、残り2つのパイルを裏表の状態でリフルシャッフルで混ぜ、表向きのカードだけを7枚並べる。封筒を適当な場所に置くが、置いた場所のカードと封筒の中のカードが一致している。

一致現象ですが、7枚のカードを選ぶまでが複雑で、操作に必然性が薄い気がします。ESPカードをリフルシャッフルというのは、個人的にはあまりやりたくない操作です。1組のカードが一致するだけの割に操作が面倒で、ちょっと割に合わない感じがしますね。

しかし原理はなかなか巧妙です。自分で試してみても結構不思議に感じます。むしろ、ESPカードよりもレギュラーデックで演じた方がぴったり来るかも知れません。

2. Recycler ★★
現象/5枚のカードをテーブルに置く。残りのカードを2枚ずつ確認するが、どの2枚も違うマークである。そのカードのトップから2枚ずつを取り、上か下か好きなカードを選ばせ、それを5回繰り返す。そうしてできた5枚のパケットは、最初からテーブルに置いてあった5枚と完全に一致する。

これは手順が煩雑過ぎることもなく、コロンビーニ自身が「Stunning routine」と言っている通り、インパクトもあるいい手順です。自由選択で5枚を選ばせるので、説得力もあります。もちろんセットは必要ですが、ESPのセットはレギュラーのトランプに比べればかなり簡単ですから、さほど問題にもならないでしょう。

また、終わった後は他のESPトリックが演じられるような状態になるというのも、嬉しいポイントです。ESPカードを使った手順に組み入れるのに、最適な手順ではないでしょうか。お薦めです。

3. Napkan 
現象/ESPデックをカットし、片方のパイルを表向きにする。好きなパイルから合計2枚のカードを選んでもらい、片方のパイルにハンカチをかける。演者は手探りで2枚のカードを取り出す。その2枚が、相手の選んだ2枚と一致する。

比較的ストレートな原理ですが、簡単な上にはっきりした現象のいいトリックです。ハンカチを使うというのも神秘的でいい演出です。もちろんテーブルの下とか背後に持って行ってもいいのですが、これはハンカチを使ってみたいですね。ちょっとしたサロンで映えるトリックなのではないでしょうか。演じてみたくなります。

4. Quartest
現象/1枚のESPカードを選んでもらい、封筒に入れておく。残ったカードを2つのパイルに分け、それぞれのパケットから2枚ずつ、合計4枚を裏向きに抜き出して置いておく。更に残った2つのパイルから、トップまたはボトムから2枚ずつを選んでもらう。そのようにしてできた4枚は、先に出して置いた4枚と一致しており、4枚は全て異なるマークである。更に封筒の中のカードが残りの1種類のマークである。

ちょっと込み入った手順ですが、現象自体は分かりにくくもなく、まずまず実用的だと思います。封筒の中のカードを示す前は、「1つだけ足りないマークがありますね?」と確認するといいでしょう。が、ESPカードが5種類のマークであるということが前提ですから、そこはしっかり説明しておかないと、ラストがオチになりませんので注意が必要ですね。

5. Symbolike
現象/5種類のマークが1枚ずつのパケット2組を使う。演者と客でそれぞれのパケットをよく混ぜ、更に2つのパケットを重ね合わせ、表裏もばらばらの状態にする。最後に表裏を分けると、表裏が5枚ずつになっており、マークがそれぞれ全部含まれている。

CATOを使った標準的な現象です。ただ、これは最後に4枚のAなりロイヤルストレートフラッシュなりが出るからインパクトがあるのであって、最後で「5種類のマークが1つずつある」というのは、あまり見た目にインパクトがないような気がします。この手のトリックは、ESPカードよりもトランプ向けのような気がしました。

6. Multi ESP 21 
現象/ESPデックを5枚配り、更に残りのカードを3つのパイルに配り分ける。5枚のカードから3枚のカードを覚えてもらい、3つのパイルの中に混ぜ込む。その状態で、演者は3つのパイルから3枚のカードを抜き出す。それが選ばれたカードである。

良く考えられた原理による、3枚のカード当てです。たった5種類から当てるから効果がないと思われるかも知れませんが、選ばれたカードをパイルに混ぜる時は、本当にばらばらに混ぜるため、手がかりが全くないように見えます。しっかりメンタル風の演出をすれば、効果的なのではないでしょうか。

また、ESPカードの当て物の場合、レギュラーのトランプと比べると覚える側の負担が少ないため、実はかなり実用的なのではないかという気がします。これも一度実演で試してみたいトリックです。

7. Pairsee
現象/2人の客に7枚ずつのカードを配り、一方は表向きにする。2人にカードを1枚ずつ減らしてもらい3枚にしてもらうが、残った3枚は完全に一致する。

アンダーダウンを使う小品トリックです。やり方通りやれば上手くいくようになっています。なお解説では、7枚ではなく8枚でやる方法も説明しており、その場合はアンダーダウンがダウンアンダーに変わるだけです。

カードはトップから配るだけですし、カードも特定の法則で減らしていきますので、さほど自由度がないように見えますが(私の妻はこういうのを見ると、「そりゃ決まったやり方でやるなら、同じ結果になるよね」と言ってしまうタイプ)、箸休めにはいいトリックかも知れません。

8. Quiche ESP
現象/5枚のESPカードを裏向きに配り、どれか1枚選んでもらう。そして残り5枚の好きなカードに表向きに乗せる。その2枚が一致する。

非常にシンプルな一致現象ですが、シンプルなだけに疑いの余地がありません。解説を見れば笑ってしまうほど物凄く原始的な原理なのですが、途中カードがばらばらであるように見せるサトルティが巧妙で、初見では見事に引っかかってしまいました。

ただ最初にESPデックをリフルシャッフルするのは、私はやはりやりたくないのですが、それならそれで適当なやり方に置き換えればいいだけです。こういう原始的なトリックの方が、実は実演すると効果的だったりするものです。個人的にはとても気に入りました。

9. Counthink 
現象/ ESPカードをよく混ぜ、2枚を予言としてテーブル上のグラスの下に置いておく。カードを配っていき、好きなところでストップをかけさせる。そうしてできたパケットを2つのパイルに配り分ける。そのパケットを更に配っていき、好きなところでストップをかけさせ、残りのカードは配ったカードの上に乗せてグラスに入れる。それをもう一度繰り返す。グラスを回転させて現れるカードは予言と一致している。

説明はちょっとややこしいですが、よく知られた原理(ダブルディールの原理)を使っており、実際には別にややこしい現象ではありません。グラスを使う演出がいいですね。グラスなしでももちろんできるのですが、グラスを使うのとそうでないのとでは、最後の鮮やかさがまるで違いますから、演じるなら是非使ってみたいところ。

もちろんこれはレギュラーデックでもできますが、ESPカードを使った方が雰囲気が出ていいような気もします。私好みの手順です。

10. Cidentaquin plus three 
現象/1枚のカードを選んでもらい、残りのカードは2つのパイルに分ける。2つのパイルのトップから1枚ずつ表向きに置いていき、2枚のカードが一致した時だけ避けると、選ばれたカードと同じ4枚の同じマークが出てくる。残ったカードを混ぜ、トップから4枚ずつを揃った表向きの5枚の上にそれぞれ置くと、5組全てが5枚の異なるマークになっている。

前半は「パワーオブソート」風の一致現象です。カードは自由に選んでいいので、かなり不思議に感じます。そして第2段もよく考えられています。リフルシャッフルをするのですが(ギルブレスの原理?)、リフルシャッフルでなくロゼッタシャッフルや、あるいは2つのパイルのトップから合計5枚を選んでもらうという方法でもいいでしょう(その方がメンタルらしくて、私は好きかも)。

現象が豪華ですし、最後5種類のマークが5組揃うのは見た目にも壮観です。ESPカードを使った一連の現象の締め括りにいいのではないでしょうか。


以上10作品。これまでの中では、このvol.4が一番好きかも知れません。それにしても今回も語呂合わせ風のタイトルが多いですね。ハワード・アダムスはよほど言葉遊びが好きなのでしょう(笑)。

このシリーズ、まだあと7本もありますので、先は長いです……(笑)。 

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愛好家が陥りがちな手品の誤解

手品にどっぷり浸かると、どんどん一般の方とは感覚がかけ離れていくものですが(私も例外ではない。なのでいつもかけ離れないように気をつけないとと思っています)、中でもこれが一番大きな「一般の人」との感覚の乖離だなと私が感じることがあります。

それは、「不思議な現象を見せれば、相手は喜んでくれる」です。もう馬鹿も休み休み言え、という感じです(笑)。特にこれは、アマチュアマジシャンが陥る一番大きな勘違いなのではないかと、私は思っています。不思議現象を見て喜んでくれるのは、手品愛好家だけです(「だけ」と断言するのは若干極端ですが)。普通の人は、ただ不思議なだけでは喜んでくれたりはしません。(喜んでいる「ふり」をしてくれる大人な人が多いとは思いますが。

普通の感性を持った人間であれば、どうやって起こしたか分からない不可能現象を見れば、やり方を知りたいと思うものです。しかしそのやり方を説明してもらえないと、強いストレスが生まれます。

時々手品を見て「腹が立つ」という感想を言う人がありますが(プロの演技に対してであっても!)、そう考えればこれは当たり前の反応です。理不尽現象を目の当たりにした時の、知性を持つ人間であれば当然の「やり方を知りたい」という欲求が、決して達成されないのですから、それは腹も立つでしょう。

それを深く考えることもなく、「タネを詮索する客ばかりで鬱陶しい」なんて言っているようであれば、もうそれは手品なんかやめた方が身のためです。そんな人から手品を見せられて、強いストレスを溜め込む相手の方こそいい迷惑です。

この論理から当然導かれる帰結として、「不思議であればあるほど相手のストレスは大きくなる」訳です。まさか「難しい技法を使った方が受ける」と思う愛好家もいないでしょうが、ある程度手品の知識が増えると、不思議であればあるほど相手が楽しめるだろうと思いがちです。しかし、事実は逆です。一般の人に、そもそもどうやったか分からない不思議現象はストレスであるのに、単に不思議の強さだけを増やしたら、余計にストレスが増大するのは当たり前のことです。

なので、「手品を見た相手がタネを詮索する」「手品を見た相手が怒る」のは、別に相手の性格が悪い訳でも、相手が手品の楽しみ方を知らない訳でもなんでもなく、極めて人間として自然な反応なのです。

不思議だけで楽しんでくれるのはマニアだけです。もしかしたら一般の方の中にも、不思議だけで楽しんでくれる人がいるかも知れませんが、そんな人はごく少数でしょう(もちろん、そういう人には存分に不思議現象を見せてあげればいいのですが)。だからこそ、大多数の相手に対しては、何か工夫をしないと演技を楽しんでもらうことは難しいと思います。

そういう訳で不思議な現象単体では、エンターテインメントにはなりません。不思議だけでエンターテインメントにしたいのであれば、解説が必ずついており、それを聞いて納得できる実験風の科学マジックの方が、何倍も上等です。

ですから、不思議現象をエンターテインメントに変えるのがマジシャンの役目であり、それこそが実は手品の一番難しいところなのではないかと感じています。私が出来ているかと言われると全く出来ていませんが、せめて「意識して演技する」くらいのことはしないとな、と感じながら演じる日々です。 

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Classic magic (Larry Jennings)

今回もDVDのご紹介です。なんだか最近DVDレビューしか書いていないような気もしますが、元々このブログは、私が持っているDVDの備忘録のような目的ですから、まあいいということにしてください。

そしてここのところ3回連続でセルフワーキングのDVDが続きましたが、今回はラリー・ジェニングスの作品集です。同名の書籍(Classic magic of Larry Jennings)からの抜粋のようで、ジェニングスの代表作ばかりが収められています。当然傑作揃いで、私が大好きな1枚でもあります。これを見れば、ジェニングスの偉大さがよく分かります。

それでは早速始めましょう。

Classic magic (Larry Jennings)

1. The invisible palm ★★
現象/スペードのAの元に、残り3枚のAが1枚ずつ移動する。

「オープントラベラーズ」の名前でもお馴染みの、ジェニングスの代表作です。エースアセンブリーなのですが、見た目は本当にAを4枚しか使わないため、非常にすっきり見えます。初めて見た時は、本当の魔法のように見えたものです。

改案やバリエーションが山ほど作られているプロットですが、私はジェニングスの原案が好きです。もちろん、技術的には少しシビアな箇所もありますし、多少力技に感じるところもあります。私も実演しようとなると、色々と気を使うため、結構演じる場面は選びます。しかし綺麗に決まれば、この原案は色々と「美しい」ように思います。そう感じさせる域に達するのも大変ですが……。

最後の1枚だけ消す方法が違うので、色々変わったやり方が考えられました。エド・マーローやバーナード・ビリスなどが独自の解決法を考えましたし、私も昔は最後の1枚だけやり方が違うというのが気になったものですが、今では気にしなくなりました。デックを手に取ることに一言何か理由を付ければ、それでいいのではないかと。ともあれ、様式美を感じさせる硬派なトリックだと思います。

2. The visitor ★★
現象/表向きの2枚の赤いQの間に挟んだカードが、黒い2枚のQの間に移動する。と思ったらまた戻ってくる。

これも歴史的な名作で、私が大好きなトリックでもあります。このトリックも、以前は色々とバリエーション手順を試したこともあるのですが、今ではジェニングスの原案に戻ってきました。

もちろん、ジェニングスの原案にはちょっとくどく感じられるところや、意味もなくパケットを持ち替えるところもあります。しかし今ではそれを承知の上で、あえて原案を演じています。手順が複雑な分、「どこを強調して、どこは軽く流すか」を問われるトリックだと思います。技術的に決して高度な技法は使わないのですが、その意味でかなり演者の力量が問われるトリックです。

確かに、無言で動画にでもしようものなら、色々と動作がしつこいのですが、例えばマイケル・アマーの演技(Easy to master card miracles vol.9)を見ると、意外に気になりません。そこらが上手いのかなと思います。

ヴィジターというトリックに対し「無理に2回移動させるより、1回だけクリーンに移動する方が現象として優れている」という人もありますし、それも一理なくはないのですが、私はやはり「難しいことをやらず、行って、そして帰ってくる」ところにこのトリックの良さがあると思っています(なので、フランク・ガルシアの「トラヴェリングヴィジター」は、ヴィジターの良さが抜け落ちているように感じ、どうしても私は好きになれません)。とにかく、私がずっと大事にしていきたいトリックの1つです。

3. The homing card 
現象/4枚の赤い数字のカードと、スペードのAを使う。スペードのAをデックに戻すが、裏向きにしてある手元のパケットに、表向きに戻ってくる。カードを1枚ずつ減らしそれを繰り返す。最後は手元に赤いカードが1枚だけ残るが、いつの間にかそれがAに変わっている。

ホーミングカードとは言っても、ポケットに通うカードではなく、フレッド・カップスで有名になった方です。とはいえカップスのようなコミカルな味はなく、どちらかと言えば、天海のフライングクイーンの方が印象は近いでしょうか。そう思えば、これはこれで魅力的な手順です。

少し難しいところもあり、特に最後は難易度が高いですが、決して実行不可能なトリックではありません。アンビシャスクラシックやインビジブルパームエーセズなどでも使われた手法が駆使されており、実にジェニングスらしいトリックだと思います。改めて見てみると、練習してやってみたくなりました。

4. The mystery card
現象/2枚のジョーカーを表向きにテーブルに置き、さらに1枚のミステリーカードをポケットに入れておく。相手に1枚のカードを選んで表を確認させ、2枚の表向きのジョーカーの間に裏向きに挟むと、そのカードは消えてしまう。ポケットの中にある1枚だけのカードが、選ばれたカードである。

ジョン・ハーマンの「サインドカード」と並び称される、不条理系プロットです。名前が有名な割りに、ジェニングスの手順は意外と知られていないような気もします。現象そのものは近い味わいもありますが、見た時の印象はかなり異なります。

ハーマンの「サインドカード」では、謎のカードはテーブルに置いたままですが、こちらはポケットに入れておきます。なので「入れておいたミステリーカードが実は選ばれたカードだった」という不条理感よりは、カードトゥポケットのような印象があります。

実際に、パームを2回も使わねばなりません(難易度は決して高くないとは思うのですが)。途中、表向きのジョーカーに選ばれたカードを裏向きに挟むところのスイッチ動作は、非常によく考えられているのですが、個人的には、大胆なスイッチを使い、強い不条理感を感じさせるハーマンの手順を取りたいですね。

5. Impossible
現象/相手に好きな数を決めさせ、その枚数のパイルを三つ作らせる。一つのパイルの上に残りのデックを重ねさせ、残り二つのパイルのうち好きな方のトップカードを覚えさせる。そのパケットをデックに重ね、残りのパイルはよくシャッフルしてデックに重ねる。ここまで演者は後ろを向いている。演者は前に向き直り、今までやった事をおさらいする。デックのトップから「Impossible」の綴りに合わせてカードを配ると、最後に相手のカードが現れる。

非常に巧妙なロケーショントリックです。知らなければ、かなりのマニアでも引っかかってしまうでしょう。「Ultimate self working card tricks」「Easy to master card miracles vol.6」にも入っています。まあ以前にも書いた通り、カードを1枚当てるのに少し大袈裟過ぎるような気がしなくもありません。

こういうトリックこそ、場当たり的な台詞を喋るのではなく、しっかり吟味して演技を作り込みたいですね。技法だけではない、ジェニングスの発想の面白さを感じられるセルフワーキングトリックです。

6. Ambitious classic ★★
現象/スペードのAから5をサーカス一家に見立てて、中程に入れたカードがトップに上がってきたり、カードがひっくり返ったりの現象を繰り返した後、最後にはスペードの5が絵札に変化する。

これも私が大好きなトリックで、好んで演じるレパートリーです。色々なマジシャンがこの現象の手順は発表していますし、私自身も以前は「Easy to master card miracles vol.4」の手順や、荒木一郎さんの「舶来カード奇術あらカルト」の手順を演じていましたが、今ではジェニングスの原案を演じています。もちろん改案には改案の優れた点がありますが、やはり原案が私には一番しっくり来るようです。

ジェニングスはちゃんと、スペードのサーカス一家のお話をしながら演じています。このトリックはやはり、淡々と現象だけ見せても面白くありません。それでは、色々な現象が脈絡なく起こる、ただの訳のわからないトリックになってしまいます。もちろん、サーカス一家でなくても、現象に合ったストーリーができればなんでもいいのですが、とにかく現象だけを見せるのはいただけないと思います。

なお私自身は、スペードのロイヤルストレートフラッシュの5枚を使い、10が末っ子、Aが父親という設定で演じています。そうするとちょうどQが唯一の娘ということになって、都合がいいですし、何せロイヤルフラッシュですから見栄えもします。とにかく、パケットトリックの大傑作です。

7. The Jennings' revelation 
現象/デックを4つに分ける。4つのパイルに手をかざすと、次々と4枚のAが現れる。

エースの出現トリックは数あれど、その中でもとりわけビジュアルで不思議なトリックです。スムーズに演じれば、まさに魔法でしょう。その分結構難しく、少なくとも私は、これを人前で演じようとはとても思えません。

難易度の高さの原因でもある、ギャンブラーズフラットパームという技法を使いますが、ジェニングスは説明が全般に大雑把ですので、これだけを見てできるようになるのは難しいと思われます。こんなのを実演できれば凄いでしょうね。

8. Ambidextrous travelers
現象/4枚のAをデックに入れる。そのAが別々のポケットから次々と現れる。その度にAはデックに戻す。それをもう一度繰り返す。

ヴァーノンの「トラベラーズ」のバリエーションです。原案で使っているマルティプルシフトを使いません。ある意味、マルティプルシフトよりも巧妙かも知れません。まあ、マルティプルシフトでもいいような気はするのですが。

また、ボトムパームのやり方が凄い(ワンハンドボトムパーム)。それ以外にも、最初から最後までパームのオンパレード。何回パームすんねん、という感じです。またダイアゴナルパームシフトも使用します。こんなのを軽々と演じるジェニングスは凄いですが、簡単に演じられるような手順ではありません。ジェニングズは、ワンハンドボトムパームが難しければ、ホフジンザーのボトムパームでいいと言ってはいますが。

個人的には、この現象を2回繰り返すというのは、ちょっとくどいような気がします。1度だけ移動させれば十分ではないでしょうか。まあ、2段目は最初だけパームを使ったら、あとは余計な動作をせずにできるという工夫は凄いのですが。私が、もし技術的に演じられるならばやはりヴァーノンの手順かなと思います。

9. Always cut the cards 
現象/演者と観客で、4枚のAを公明正大にデックの中に混ぜ込むが、一瞬で4枚のAがトップから現れる。

Easy to master card miracles vol.7」でも紹介されています。アマーのこのシリーズ、ジェニングスのトリックをかなりたくさん取り上げています。いかに彼の作品が優れているかということの証左ですね。

このトリックは、技法とちょっとした仕掛けを実に上手く組み合わせています。そのため、2人でカットする箇所では何ら怪しいことをせずに、ほとんど自動的と言ってもいいほど簡単に最後の現象が起こります。その仕掛けも最小限で、演技中に作ってしまえるレベルのもの。かける手間と起こる現象のバランスが非常にいい、優れたトリックだと思います。

10. Close-up illusion 
現象/二枚の赤いカードの下に、青いカードを置くが、それがいつの間にか真ん中に上がってくる。真ん中に入れると、今度は一番下に移動する。

Easy to master card miracles vol.6」でも解説されています。カードワープも視覚的な印象が強い現象ですが、これも負けていません。本当にぬるりとカードが抜けてくるので、見た目のインパクトは絶大です。もちろんカードに準備が必要なのですが、これだけの現象ならば準備したカードを、財布の中などにいつも用意しておいてもいいくらいです。私も一時期、これに使うカードをいつも作って財布の中に入れていました。

解説を見て、「なんて馬鹿馬鹿しいトリックだ」なんて思わずに、是非やってみてください。技法という意味での難しさは全くありませんが、相手に与える衝撃は絶大です。これ1つやって終わりにしてもいいと言えるくらいのパワーがあることは、私が保証します。


以上、珠玉の10作品。クラシック(第一級、最高水準)の名に恥じない、素晴らしいトリックばかりです。もちろん、有名なトリックが多いですから、知っているよと言われる方も多いでしょう。

しかし、やはり名作は一度は原作者の演技で見ておきたいものです。最近は、「トライアンフ」の原作者名も知らない人がいて驚いてしまうのですが、優れたトリックの原案を知り、原案者を知り、そして原案者の演技に触れることは、マジックという娯楽に対する愛と敬意を深めるのではないかと、私は思っています。

カードマジックを愛する方であれば、お勧めの1枚です。クラシックの威力を思い知ってください。 

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