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マギーの超特選小ネタ手品32(マギー司郎)

今回、久々にマジックの本を買いました。私は、マニアックなレクチャーノートにはあまり興味がないのですが(どうせいつも同じのしかやらないし)、これは久々に面白い本でした。テレビでもおなじみ、マギー司郎さんの本です。

マギーの超特選小ネタ手品32

マギー司郎さんは、私が一番大好きなマジシャンです。それこそ、ダニ・ダオルティスやデビッド・ストーンやレナート・グリーンといった、海外超一流の腕自慢のマジシャンより、マギーさんが好きです。マジックを見て、こんなに楽しく暖かい気持ちになれるマジシャンは、他にいません。

最初に言っておきますが、この本で解説されているマジックは、マジックを趣味にしている者であれば、ほぼ全部知っているトリックばかりです(中には、マジックじゃないものも含まれていますが、そこがマギーさんらしくて面白い)。

しかし、解説やコラムはどれも一見の価値があります。相手を(マジックを見る相手だけでなく、読者をも)楽しませようとする、マギーさんのほのぼのとした人柄がにじみ出てくる解説ばかりです。全32ネタ、どれを見てもマギー流の言い回しに楽しませられること間違いなしです。

また、マジックの解説としても、ちょっと腕に覚えがあるマニアであれば、とっくの昔に忘れ去っているような、はっと目を開かされるような記述がたくさんあり、マニアでもというか、マニアであればこそ一読の価値がある一冊だと思います。いくつか引用しましょう。

「手品ってね、ただ不思議なことをするんじゃ、やっぱり芸がないと思うんです。それとなく、自分の人柄が出るように工夫するといいと思いますよ」(p68)

「手品をするときには、意味のないことに意味があるようにするのが、タネや仕掛けをごまかすコツなんですよね。一見意味がないことって、本当はすごく大事なんですよ」(p73)

「なんでも段取りが大切ですからね。くだらないことを先にやって、期待させないでおいて、実はちゃんとしたものもできるのよ〜ってね」(p85)


などなど、長年の経験があるからこそ書ける金言集だと思います。中でも「手品に自分の人柄が出るように」という一文は響きました。つまり手品で人を面白がらせようと思ったら、自分が面白い人にならなくてはいけないし(手品以外で)、感じのいい演技をしようと思ったら、自分が感じのいい人にならねばならないということですよね(プロでも感じの悪い演技をする人はいますが)。そういう意味で、私はこの本はとても面白く読めました。

それにこの本には、なんとマギーさんの代表的なネタである、「縦縞のハンカチを手の中に入れると、いつの間にか横縞になる」というトリックが解説されているのです(笑)。それだけでなく、「グラスにコカコーラを入れて、時計回りに1回転すると、なんとペプシコーラに変わる」(逆に回すともちろん元に戻る)という大技も解説されています!(笑)

もちろん、こういうネタは演者のキャラクターにも関わりますが、とにかくいつもいつもただ理不尽現象を相手に見せるばかりが能ではないというのは、改めて感じられました(理不尽現象を喜んでくれる人相手になら、もちろんどんどん見せてあげればいいのですが、そういう人は残念ながら手品マニア以外にはそうは多くありません)。

時々は、トリックではなく、こういう「マジックを演じる上での心構え」を学べる本を読んでみるのもいいのではないでしょうか。「心構え」なんて大げさなものではなく、マギーさんの文章を読んでいるうちにあっという間に、楽しく読み終えてしまうんですけどね。お薦めの1冊です。 

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奇術入門シリーズ カードマジック - 2

3ヶ月くらい前に、「奇術入門シリーズカードマジック」の記事を書きました。続きを書かずに放置しているのも何ですので、今回は後半です。後半には、技法を使った各種トリックが収録されています。

この本で解説されている技法は、ブレイク、DL、グライド、コントロール(オーバーハンドシャッフルコントロール)、パーム、ダブルカット、フォールスカウント(バックルカウント及びプッシュオフカウント)です。技法の取捨選択も適切で、収められているトリックも名作揃い。さすがは高木重朗さんの選択眼です。

それでは始めましょう。

本格的なカードマジック


1. 色の一致(ロイ・ウォルトン)
現象/演者と客は、10枚くらいのカードをそれぞれよく混ぜ、テーブルにお互い2枚ずつ置く。表を確認すると、4枚とも黒いカードである。お互いの手元のカードを開くと、全部赤いカードである。

初っ端から、私が大好きなトリックです。こういう、確率的な不思議、知的な不思議さを味わう作品が大好きなのです。「Out of this world」よりも私はこちらが好きです。たった4枚選ぶだけですから、相手にとっても負担は少ないですしね。一見地味な現象に映るのですが、適切に演じれば非常に効果的です。

2. 油と水(1)(スチュアート・スミス)
現象/演者と客は、6枚ずつのカードを持ち、裏向きで赤黒交互の列を2つ作る。端のカードを開き、2枚を入れ替えると、残りのカードも全部同じ色に揃う。

原題は確か「トランスフォーメーション」だったと思います。「表にしたカードを入れ替えると、残りも全部揃う」という辺りは、オイルアンドウォーターというより、むしろフォローザリーダー風のトリックですが、これも簡単で効果的。私のお気に入りでもあります。私は、ちょっとハンドリングを自分流に変えています。

3. 油と水(2)
現象/赤と黒のカード5枚ずつを交互に混ぜるが、分離する。

ブレイクだけでできる、最も基本的なオイルアンドウォーターです。Youtubeで、氣賀康夫さんの一工夫がされた手順が紹介されており、非常に見事な改案ですので、是非そちらもご覧ください(氣賀さんの名前で検索すれば、比較的簡単に見つかるはず)。オイルアンドウォーターは色々な手順が星の数ほど発表されていますが、一般の方に演じるには、案外これくらいシンプルな手順の方がいいのかもしれないと、最近は思っています。

4. キングスロワイヤル(ニック・トロスト)
現象/相手に赤裏デックから4枚のカードを選ばせ、青裏デックに入れる。演者は青裏デックから普通の4枚のカードを赤裏デックに入れる。青裏デックの4枚のカードを確認すると4枚のKであり、赤裏デックの4枚を確認するとこれも4枚のKに変化している。

豪華な二重現象。Do as I doに変化現象を付け加えていますが、無理なくそれが融合しています。デックを2つ使い、しかも前準備が必要ですから、そう気軽に演じられるものではありませんが、適切に演じればサロンでも十分に通じるのではないでしょうか。

準備は必要なのですが、手順の中で上手く証拠を隠滅しているのが巧妙です。ですからラストはクリーン。ニック・トロストらしい手順構成の妙が光る傑作です。

5. 突然の驚き(ジェリー・アンドラス)
現象/カードを1枚掌の上に乗せて叩くと消え、デックの中から表向きに現れる。

シンプルな手順ですがよく考えられており、現象もはっきりしている良いトリック。ただ、ラッピングが必要なため、演じる場所は制限されそう。カードを消すところは、ラブアダブダブバニッシュを使ったり、あるいは単にデックのトップにカードを乗せ、リフルしたらトップから消えた、という表現でもいいでしょう。即興奇術としてよくできていると思います。

6. 逆さになるカード(フランク・ガルシア)
現象/相手に1枚カードを選ばせデックに戻す。トップから2枚目のカードを見せるが、それは選ばれたカードではない。そのカードをデックの中ほどに入れるが、またトップに上がってくる。デックをリボンスプレッドすると、中ほどに選ばれたカードが表向きに現れる。

カード当てとアンビシャスカードを合わせたようなトリック。ちょっと2つの現象に脈絡がないような気がしますし、1枚カードを覚えさせた後、トップカードを他の客に覚えさせるというのは、少々負担も大きい気がします。ただ、アンビシャスカードの手順の中で、相手のカードをひっくり返してしまうのは上手いやり方で、応用が効くと思います。

7. ストップカード
現象/あらかじめテーブルの上に1枚のカードを出しておく。デックのトップから1枚ずつカードを表向きに置いていき、相手に好きなところでストップをかけさせる。ストップがかかったところのカードを確認すると、テーブルの上のカードのメイトカードである。

ヘンリー・クライストのフォースを使ったストップカード。これも私のお気に入りです。私はメイトカードではなく、相手にカードを選ばせて2枚目にコントロールし、相手自身が自分のカードを当ててしまった、というやり方をしています。メイトカード絡みの手順を組むなら、メイトを現すのもありでしょうね。

8. まざるカード(エルマー・ビドル)
現象/4枚ずつの赤と黒のカードを、赤4枚黒4枚の順に並べておくが、いつの間にか交互に混ざってしまっている。

「アンチオイルアンドウォーター」です。単体で見せるのにはちょっと弱い現象ですが(大抵この現象って、オイルアンドウォーターの中で見せる事が多いですし)、ビドルムーブという技法の練習用には最適です。

なおこのビドルムーブという技法。私が一番苦手なカード技法の中でかもしれません(パスのような、そもそも使わない技法は除く)。パームよりも苦手です。なにせ乾燥肌なので、左手親指でカードが上手く取れない事が多いのです(汗)。先日、マジックバー「とまり木」のマスター、勇太郎さんから乾燥肌対策を教えていただいたので、実践してみるつもりです。

9. エースの入れかわり(ジェイコブ・デイリー)
現象/4枚のAのうち、2枚の黒いAをテーブルに置き、どちらがスペードのAか尋ねるが、いつの間にかテーブルの上のAはダイヤとハートになっており、手元のAがスペードとクラブになっている。

「ラストトリック」の原案です。今では、ダブルリフトを使った簡単な方法で演じる人がほとんどでしょうが、原案も捨てがたい味があります。なお「あとがき」で、「2枚のうちどちらがスペードですか」というのが重要だと高木さんが書いています。私もそのように演じていますし、それこそがこのトリックの一番大事な事だと思います。

前田知洋さんの影響か、「愛情とお金」という演出もありますが、私個人としてはあまり好きな演出ではありません。何にせよ、原案を知るというのは大事な事ですから、一度はこのトリックの原案を試してみて損はないでしょう。

10. 変化する3枚のカード(ロン・シャルフ)
現象/3枚のカードが1枚ずつ裏向きになっていき、さらに1枚ずつ表向きに戻ったと思ったら、裏の色が変化している。

ファンカウントという技法が紹介されています。同じ手順を繰り返しているだけで自動的に現象が起こり、しかもラストには意外な落ちまでつきます。準備が少々面倒ですが、使うのは6枚だけですから、パケットケースに入れておけば気軽に演じられるでしょう。グライドは軽視されがちな技法ですが、こういうトリックを見ると、グライドも捨てたものではないなあと思わされます。

11. 風船カード
現象/相手にカードを選ばせ、デックに戻す。風船を膨らませてから割ると、中から選んだカードが出てくる。

どちらかというとサロン向きの、見栄えがするカード当てです。準備も大変ですが、ちょっと改まった場でカードマジックを披露する時は、変に難しい現象の作品より、こういうトリックの方が重宝する事は間違いありません。

12. 跳び出すカード(マーコニック)
現象/カードを選ばせデックに戻す。デックに輪ゴムをかけるが、その状態で相手のカードだけが1枚飛び出してくる。

輪ゴムの選び方が意外と難しい気がしますが、カードマジックにちょっとした道具を使うと、印象が変わりますから、こういうトリックも1つは覚えておきたいですね。ちょっと変わったカード当てって、実はとても使い勝手がいいトリックですし。私も一度は、カードオンシーリングみたいな見た目が派手なカード当てをやってみたいですが、機会がないんですよね(笑)。

13. 変化するカード(ダイ・ヴァーノン)
現象/1枚のカードを選ばせ、デックに戻す。3枚のカードを抜き出すが、いずれも選ばれたカードではない。が、そのうち1枚が選ばれたカードに変化する。

選ばれたカードの変化現象です。DLを使った単純な変化現象は、誰でもやった事があると思いますが、このトリックに於けるチェンジの方法は大変巧妙で説得力があり、さすがはヴァーノンと感心させられました。

ただ、高木さんは丁寧に説明してくださっているものの、文章では細かいところが伝わりにくく、初心者がこの文章だけで間違いなく演じるのは、かなり難しいような気がします。こういう解説を読んで、自分で試行錯誤しながら手順を追うのも、本で手順を覚える楽しみの1つとも言えます。ともあれ、こういうシンプルな変化トリックは、受けもいいですから覚えておきたいものです。

14. エスティメイション(ジョン・ラッカーバウマー)
現象/相手にカードを選ばせ、デックに戻す。更に相手に20枚くらいまでの枚数のカードをとってもらい、ポケットに入れさせる。相手にポケットから1枚ずつカードを出させ、同時に演者も手元のパケットから1枚ずつ置いていく。相手のカードがなくなった時、演者が出した最後のカードを表にすると、「あなたのカードはここで終わる」と書いてある。さらに演者は、相手のカードを自分のポケットから出してみせる。

パームを使う作品ですが、パームをするタイミングがよく考えられていますので、恐れる事はありません。こういうトリックをパーム用に持ってくるところに、高木さんの優しさを感じます。

トリックとしては、カード当てに枚数当てを加えているのですが、枚数当ての必然性がどうも薄いような気がして、私はこの手のトリックを演じようとはあまり思いません。カード当てに枚数当てを付け加えたトリックは他にもありますが、いずれも食指が動きません。そこに何か上手い演出でもつけられればいいのですが。

15. マジシャン対ギャンブラー(ハリー・ロレイン)
現象/演者はデックを3回カットし、同じ数のカードを4枚出してみせると宣言する。3枚目まではKのカードが出てきて上手く行くが、4枚目で4が出てきて失敗する。が、残り3枚を表にすると。全部4になっている。4枚のKは演者のポケットから出てくる。

名作です。プロット自体はそれこそ「妖術の開示」の頃まで遡るようですね。このトリックは、手順はもちろんですが物語が大事です。淡々と現象だけを説明して演じたのでは、何とも味気ないトリックになってしまいます。

高木さんは、このトリックの台詞もきちんと書いていてくれてますので、演じる時にはこの台詞を元に、きちんと自分なりの物語を作ってみたいものです。私が演じるなら、「ある日すすきので飲んでいると」でしょうか(笑)。

16. スローモーションエーストリック(ニック・トロスト)
現象/Aと普通のカード3枚のパイルを4つ作るが、Aが1枚ずつ消えて一箇所のパイルに集まる。

エースアセンブリーのうち、スローモーションフォーエーセズに属するトリック。手順は、エドワード・マーローの「ワンアットアタイムエーセズ」とほぼ同じようですが、最初のAの取り扱いだけが違います。マーローはブラウエアドオンを使っています。

実は私はバックルカウントもあまり得意ではない技法な上、スローモーションエーセズ自体がそれほど好きなプロットではないので(スローモーションエーセズにクライマックスがないと批判したのは、ヒューガードでしたっけ? ライプツィヒだったかな)、演じる事はあまりないのですが、高木さんが「ぜひ練習してください」と書いてますし、改めてこの手順を練習してみるのもいいかも知れません。

17. 指先で探す4A(ビル・サイモン)
現象/演者と観客が裏向きで出した4枚のカードが全部Aである。更にその4枚のカードが、デックの中をトップに登ったりボトムに下がったり移動する。

4Aプロダクションの中でも、演者と観客が1枚ずつ選ぶという、少々珍しいタイプ。セットが多少面倒ですが、ハンドリングは実用性が高いと思います。更に、このままだと4枚のAが出てきても、それを検められないのですが、それを利用してもう1つ現象をくっつけているのが巧妙です。

前半だけだと取り上げにくいトリックですが(普通エースプロダクションをやったら、そのAを使って次のトリックを演じたいですよね?)、後半まで含めると実用的ですし、トリックとしても面白いと思います。改めて手順を検証しても、巧妙に作られているなと思いました。

18. トライアンフ(ダイ・ヴァーノン)
現象/相手に1枚のカードを選ばせ、デックに戻す。デックを半分は表、半分は裏にし、表裏ばらばらにリフルシャッフルする。おまじないをかけると、選ばれたカードだけを除いて、デックは裏向きに揃っている。

言わずと知れた傑作。ヴァーノンの原案です。そしてきちんと原案の台詞を、分かりやすく紹介してくれています。別に、いつもいつも原案の台詞で演じないといけないとも思いませんが、少なくとも原案はどんな意図で作られた作品であるかは、知っておくべきです(「今日は変わった混ぜ方をします」なんて訳の分からない演じ方のトライアンフを見るたび、そう思います)。

もちろんトライアンフシャッフルの説明も詳しくされていますが、私はこの文章の説明だけではよく分からず、アマーのDVDで初めて理解できました。とにかく、原案に対する敬意を感じる解説です。必読。


と、入門者向けの書籍でありながら、最後まできちんと習得できれば、トライアンフにまでたどり着けます。この本をしっかり身につけられれば、もはやその人は初心者ではありません。

カードマジックの本では、この本と、同じ東京堂の氣賀康夫さんの2冊「奇術入門シリーズトランプマジック」「ステップアップカードマジック」(この2冊は、元々1冊でしたからね)があれば十分だとすら私は思っています。実際、今回記事のためにこの本を再読してみて、以前はあまり価値を感じなかったトリックが、実は大変な名作である事がわかり、改めて練習してレパートリーに入れたほどです。

クラシカルな名作は決して色褪せません。この本は、イラストを分かりやすくして是非新版を作って欲しいと思っているくらいです(その場合は、技法にエルムズレイカウントを追加し、マジックには「ツイスティングジエーセズ」「ジャズエーセズ」を加える、なんてのはどうでしょうね)。カードマジックの最初の1冊に、今でも自信を持ってお勧めできる本です。 

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奇術入門シリーズ カードマジック - 1

今回は、カードマジックをやる人なら多分全員持っているであろう名著、高木重朗さんの「奇術入門シリーズ カードマジック」(東京堂出版)をご紹介します。1回では無理なので、数回に分けてのご紹介になりますが。

カードマジックを初めるのに最初に買う本としては、「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」や、「ロベルト・ジョビーのカードカレッジ」を勧める人もあります。それらももちろん名著です。

が、私はこちら(と、氣賀康夫さんの「奇術入門シリーズ トランプマジック」)を強くお勧めします。この本は、技術を全く必要としない傑作セルフワーキングが多数収録されており、初心者がまずは「人前で無理なく演じ、マジックを演じる事の楽しさを感じられる」という点において優れているからです。

最初から技法を使ったマジックばかりだと、結局「鏡の前や動画で演じるだけで、人前でやらない」ようになってしまうという危険性も(笑)。そういう訳で、最初は「無理なく演じられる」作品から学ぶべきです。

どこだか忘れましたが、質問系の掲示板で、「マジック初めて1ヶ月、ようやくターンノーバーパスができるようになった初心者です」みたいな書き込みを見て、誰か彼に適切なアドバイスを与えなかったのかと、頭を抱えた事があります(汗)。とにかく最初はこういう良い本で学ぶ事です(変なDVDを最初に買うと、大変な事になります)。

ところでこの本、なぜかディーリングポジションの解説がありません。もし次回改訂があるなら、ここは東京堂出版には善処をお願いしたいところ。では行きましょう。写真は私が所有するこの本ですが、古いのでページが取れたり、だいぶ傷んでいます。

奇術入門シリーズ カードマジック

やさしいカードマジック


1. 赤と黒
現象/10枚のカードから自由に5枚を選ばせ、残りの5枚とペアにすると、全てが赤と黒のペアである。

単純ですが馬鹿にする事なかれ。大変簡単ですが効果的なトリックです。この本の最初を飾るにふさわしい作品だと思います。チャーリエシャッフルを入れるとより効果的でしょう。カードの集め方を変えれば、赤黒のペアではなく、全部を赤赤、黒黒と同じ色のペアにする事も可能です。なので私は、2回続けて、2回目は同じ色のペアにしたりもしています。

2. 絵札のパーティ(ニック・トロスト)
現象/色も数字も違う絵札のペアにおまじないをかけると、全部の色と数字が揃ったペアになる。

これも傑作です。何より、最初からいきなりキーカードを使ったカード当てを持って来たりしない辺りに、高木さんの非凡なる選択眼がうかがえます。カードを1枚引かせるマジックって、初心者には実は結構難しいですからね。

この作品も、簡単にできまずが馬鹿にできない効果を持っています。もちろん、カードの技法に慣れればボトムディールなりを使えば、同じような現象をわざわざデックの上にパケットを載せずとも実現できますが、この楽ちんな方法が私は気に入っています。

3. 仲の良いカード
現象/3枚の同じ数字のカードをばらばらにするが、いつの間にかまた3枚が集まる。

バーズオブアフェザーでしたか。これも極めてシンプルな原理による現象。これまでの3トリックが、いずれも見た目が異なる現象である事も、特筆できます。初心者だと本の頭から覚えたトリックを順々に人に見せるはずで、その時同じようなトリックばかりだと、初心者はすぐに投げ出すでしょうからね。

このトリックに限りませんが、「あとがき」として高木さんからの一口アドバイスが載っています。どれもが示唆に富んだ暖かい一言で、今読んでも新しい発見がありますね。

4. 4枚のA(1)
現象/相手がカットした4つのパイルを、3という数字に従って操作すると、トップから4枚のAが現れる。

「ポーカープレイヤーズピクニック」「エースボナンザ」と呼ばれるトリック。スティーブ・ベルチューの「Aの出現」というトリックが元になったようですが、元のトリックとは3枚のカードを置かせる時のやり方が違います(原案は確か、「3枚をパケットの後ろに回す」だった記憶)。

セットは必要ですが、初心者向けの4Aプロダクションとしては大変秀逸なトリックです。ゆうきともさんも「はっきり言って奇跡です。下手なAの取り出しをやるくらいなら、この方がよほどいいです」とおっしゃっていました。けだし至言だと思います。私は、占い仕立てで演じたりします。

5. 4枚のA(2)
現象/相手が自由に作った4つの山のトップからAが現れる。

ダブルディールの原理を使った、初心者向けの本には必ず載っているトリックですが、最初にカードを選ばせるところにカットディーパーフォースを使っていたり、意外と凝った手順です。

この手のトリックも、マニアになると軽視しがちですが、上手く演じれば大変パワフルなトリックになり得ます。チャド・ロングの「シャッフリングレッスン」だって、この手順のアレンジとも言える訳ですからね。軽視せずに、大事にしたいトリックです。

6. 一致するカード
現象/1枚のカードをテーブルに伏せておき、相手に1枚のカードを選ばせる。両方のカードを開くと、色と数が一致している(メイトカードである)。

カットディーパーフォースの次は、クロスカットフォースです。流石にこんなストレートなクロスカットフォースの使い方は少々憚られますが、「Card collage light」に収録されている「The lie detector」なんて、クロスカットフォースで選ばせたカードを当てるだけですからね(しかもこれがまたウケるのです。私愛用のトリック)。そう考えれば、きちんと演出を考えれば、これもかなりちゃんとしたマジックになるはずです。

クロスカットフォースは、私はクラシックフォースと並んで最強の効果を持つフォースの1つだと思います。どちらも、「マジシャンの意図が入ったように見えない」という点が、他のフォースと比べても群を抜いて優れていますから。

もちろんクロスカットフォースによるカードの選ばせ方は、一般的とは言えませんので、使い所は選ぶ必要がありますが、メンタル的な性格を持つトリックにおいては、ぴったりだと思います。クロスカットフォースのパワーを侮ってはいけません。

7. 13の不思議
現象/相手に3枚のカードを選ばせ、13という数字に従い、3枚のカードから1枚のカードを導き出すが、そのカードが予言されている。

数理トリックの傑作です。この手の、ちょっと手続きが長い予言トリックは、的確な説明と、ラストに向けて期待を高めるような演出を上手くやれば、思った以上の効果が上がるものです。そもそも予言トリックは印象の強いトリックなのですが、ゆうきともさんの「トランプの友 知の参」には「新・13の不思議」としてこれの改案が入っていますが、そのように一工夫するとインパクトも強まり、堂々とトリも務まるほどの一品だと思います。

8. クエスチョンマーク
現象/相手に数枚のカードを取らせた後、カードでクエスチョンマークを作る。相手のカードの枚数に従った場所のカードを覚えさせるが、そのカードが予言されている。

クロックプリンシプルを用いた予言トリックの傑作。ただ難点は「上から21枚目のカードを覚えておく」というのが、初心者には容易でない事です。これを解決する為に、ゆうきともさんは「温泉レクチャー」の中で、他のトリックと組み合わせるという手段を使いました。これが流石の一語に尽きるようなやり方ですので、興味がおありの方はDVDをご参照ください。「バースデイクエスチョン」というトリックです。

ともかく、原理は単純なのですが、クエスチョンマークの演出もあって、十分なパワーを持ったトリックです。ぜひ一度お試しを。

9. 類は友を呼ぶ(スチュアート・スミス)
現象/相手に1枚のカードを選ばせる。選んだカードは3なので、その後相手に3つのパイルを作らせるが、どの山のトップカードも3で、4枚の3が揃う。

「ひょっこり現れる『3』」「ポップオーバートレイズ」です。これもダブルディールの原理によるトリックですが、最初のフォースの巧妙さ、それに3つのパイルを作らせる必要性が上手く手順に紛れていて、現象も極めてはっきりしており、非常に優れたトリックであると思います。

初心者のうちは、こういうトリックを軽視したりして、技法に走りがちですが、私も実はこういうトリックは軽視していました。今読むと、非常に考えられた優れた作品である事が分かります。こういうトリックを、粋にさらっと演じられるようになりたいものです。

10. 脈拍の変化で当てる
現象/相手が選んだカードを、脈拍の変化を見る事で当てる。

10本目にしてやっと「1枚引かせてそれを当てる」、カード当ての登場です。上にも書いた通り、カード当ては実は初心者には意外と難しいところもありますので、高木さんのこの配慮にはうなずかされます。「ラリー」では、しょっぱなからいきなりカード当てですからね(だからと言って、加藤さんの選択眼が良くないという事には、もちろんならないのですが)。

手順はキーカードの基本ですが、「キーカードは演出が大事である」事を、カード当ての最初でまず説いてくれます。「大事なのはカードを知る事ではなく、当てる演出です。脈拍で当てるように見せかける事が大事なのです」という一文は、全てのマジックの現象に当てはまる金言だと思います。

11. 声の変化で当てる
現象/相手が選んだカードを、相手にカードを読み上げさせた時の声の変化を聞く事で当てる。

手順は「10」と同じですが、演出が異なります。カード当てをようやく持ってきたと思ったら、「演出が違うと違う味付けのマジックになりますよ」という高木さんからのメッセージ。この本は、構成が本当によく出来ているなと、改めて感じさせられました。

12. カードを当てるカード
現象/相手が選んだカードを戻させ、デックをスプレッドすると、1枚のカードが表向きになっている。そのカードの数字に従ってカードを配ると、その枚数目から選ばれたカードが出てくる。

これも原理は同様のキーカードです。が、一般の方に対して演じると大変効果的。非マジシャンに演じるならば、これくらいのトリックの方が、実は使い勝手が良いのかも知れないなどと思う今日この頃です。

準備はなしで良いと書いてありますが、初心者に、ボトムカードをグリンプスし、その枚数だけトップから回すというのを密かにやるのは結構大変ですから、準備しておいた方がスムーズでしょう。もちろん技法が使えれば、適当な方法でボトムカードをリバースし、トップからその枚数だけランすればOKです。

13. 探偵カード(ニック・トロスト)
現象/相手が選んだカードを、Xマークをつけた探偵カードが当てる。

「Xマークの探偵」です。「探偵カード」と言うと、ホフジンサートスで1枚抜き出すトリックを指す事が多いようですが、私にとって「探偵カード」というと、やはりこのトリックです。リモートキーカード(サンクンキーカード)を利用したカード当ての傑作です。

DVDでマジックを覚えた方だと、こういうトリックは案外盲点でしょう(このトリックが解説されたDVDを知りませんので)。その意味で、一般の方にはもちろん、意外と新しいマニアに見せても面白がられるトリックかも知れません。

14. サンドウィッチスプレッド(ピーター・ワーロック)
現象/カードを1枚選ばせた後、デックを表裏ばらばらに混ぜる。この状態でマジシャンは選ばれたカードを当てる。

徐々に複雑なカード当てが出てきました。これは非常に巧妙な原理を用いたものです。ロベルト・ジョビーの「Card collage light」にも、これとほぼ同様な原理のトリックがありました。カードカレッジライトのそのトリックに感心している人が多かったですが、「いや奇術入門シリーズカードマジックに載ってますから」と言いたかった私(笑)。

セットは必要ですし、カードの選ばせ方は少し面倒ですが、何せその後は相手によって本当にばらばらに混ぜられてしまいますから、大変不可能性が高いカード当てです。ただ、当てるところで、選ばれたカードのマークと数字のカードを抜き出すというのは、好き好きかも知れません。

とは言え高木さんが書いているように、相手のカードの名前を淡々と宣言するのでは味気ないですから、ちょっとおどろおどろしい演出でも考えると楽しいでしょうね。水晶玉とかダウジングとか、色々考えられそうです。

15. ワイキキカードロケーション
現象/カードを1枚選ばせた後、デックを表裏ばらばらに混ぜる。この状態でマジシャンは選ばれたカードを当てる。

ビル・ムラタによるロケーショントリックの名作。「サンドウィッチ」と現象説明は同じですが、もちろん全然違うトリックです。これも、映像でマジックを覚えた若いマニアは知らないかも知れませんね。カードカレッジライトで解説されましたが、あの本自体、買う人はごくごく限られているでしょうし(笑)。

なお「あとがき」で、「必ず相手のカードを言わせてから、カードを表にしてください」とあります。ある程度慣れた方なら、こういうのは改めて指摘されるまでもない事だとは思いますが、初心者の方は、こういう一文を見落としてはなりません。

16. FBIカード
現象/相手が選んだカードを、FBIの探偵が当てる。

現象説明が手抜きですが(笑)、マックス・カーツの「マイFBIトリック」です。ロケーションの方法と、演出に上手く紛れ込ませた当て方が巧妙で、これは私のお気に入りです。最初に13枚ずつの4つのパイルの分けるのがちょっと面倒ですが、そこは適当に上手いやり方を考えましょう(?)。

同じカード当てでも、この辺りに来ると、微妙に相手の行動をコントロールする必要も出てきます(10枚以上置いてからストップをかけさせる、とか)。作品配置の妙を感じさせられます。

17. 3枚のカード(ボブ・ハマー)
現象/3枚のカードの中から、相手が選んだカードを当てる。

「マセマティカルスリーカードモンテ」です。動作がスリーカードモンテ風というだけで、モンテでも何でもないのですが(笑)。そして、たった3枚の中から1枚を当てるだけですが、実はこのトリックかなり受けます。ぜひ演じてみてください。

もちろん、数字を言ってカードを入れ替えさせるところなどは、ちょっといじりたい気がしなくもありません。その場合は、グリンプスかフォースで予め3枚のうち1枚のカードの名前を知っておき、演者の目の前で自由に混ぜさせる、なんて方法でもいいでしょう。数理トリックの傑作の1つだと思います。

18. 3つの一致(ニック・トロスト)
現象/演者の選んだ3枚のカードと、観客の選んだ3枚の色と数が一致する。

ジョン・スカーニの奴ではありません。ちょっと手順が長い、Do as I do系の一致トリックです。前半の手順に意味を持たせるために、何か演出は必要だと思いますが、即興でできる優れた一致トリックだと思います。初心者の頃は好んで演じていましたが、今改めてこういう作品を見直してもいいのかも知れません。

19. アウトオブジスワールド(ポール・カリー、U.F.グラント)
現象/相手が表を見ずに2カ所に分けたカードが、全部綺麗に赤と黒に分かれている。

アウトオブディスワールドの、準備が要らずデックの半分ほどしか使わない改案です。今となっては、私は「アウトオブ」はあまり演じないトリックになってしまったのですが、数ある改案の中でも、これはかなり優れた手順の1つだと思います。

解説の「このようにすると赤と黒が入れ替わるのですが、相手には気付かれません」という文章を読んで、「本当かよ? こんな大胆な動作、気付かれるでしょ」と思ってしまった、初心者の頃の私。もちろん、今となっては「相手には気付かれません」と、私も自信を持って断言できます(笑)。

20. 一致する半分のカード(ニック・トロスト)
現象/6枚のジャンボカードを2つに切った12枚のカードから、2人の客に1枚ずつ覚えさせるが、その2枚が一致する。

言ってしまえばただの一致トリックですが、これをレギュラーデックでやって「メイトカードです」とやるのと、ジャンボカードを切ったカードを使うのでは、印象がまるで違います。

カードは最初に観客がよく混ぜますから、フェアに見えます。原理も巧妙で、これはジャンボカードを用意してサロンで演じてみたいトリックですね。

21. トスインリバース(ハリー・ロレイン)
現象/相手の選んだカードが、デックの中で1枚だけひっくり返っている。

このトリックは、ちょっとした技法を使います。ステランコのアクションリバース風と言いますか。初めてこれを読んだ時は、「こんなのできる訳ない」と思ったものですが、実はさほど難しくないというのは、今読んでみると分かります。本格的な技法の解説に入る前に、このトリックを持ってきたというのが、高木さんのセンスだなあと思わされる小品です。

22. 20枚のカード(フレミング)
現象/20人の相手にカードを選ばせ、デックに戻す。それを演者はポケットに入れ、目隠しをする。この状態で、演者はでたらめに番号を言い、その番号の人のカードを間違いなく取り出して見せ、最終的には全員のカードを取り出す。

前半ラストはこの大作トリックです。「20」もサロンで演じられるトリックでしたが、最後の方にはこのようにサロンでも通用する(このトリックは、むしろサロンでしか演じられない? 20人にカード覚えさせますし)トリックを持ってくる辺り、本当に考えて構成されているなと感心させられます。

しかし「覚えられなければ記憶術を使って覚えてください」という一文には、初めて読んだ時は笑ってしまいましたけどね(笑)。そのうち、サロンで大人数に演じる機会があれば、演じてみたいなと密かに思っています。


以上、前半は22トリックです。いずれも傑作揃いで、ある程度の知識や技法を身につけた今読んでも、新鮮な気持ちで見る事ができました。

この本は、そのうちイラストを新しくし、二、三の新しいトリックや技法を追加し、改訂版を出して欲しいと思っています。それほど優れた構成の入門書であり、未だカードマジックの入門書で、これを凌駕するものは出ていないと私は感じています。

後半は技法を使うトリックです。こちらも傑作揃い。また後日解説しますので、お待ちください。 

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Baroque cards (Aldo Colombini) - 3

今週末は、「札幌手品人の会」です。愛好家の集いに出るのはかなり久々なので、ちょっと緊張します(上手くも何ともないし)。

ただ、色々な愛好家の方とマジック談義ができるのは非常に楽しみです。企画されているうちのイベントのうち、「プロット選手権」(今回はトライアンフがテーマ)は見てるだけにしようと思っていましたが(何せ私はトライアンフがあまり好きではない(笑))、気が変わって参加してみる事にしました。トライアンフがテーマなのに、あまりトライアンフではないものを演じそうですけど(笑)。

では、コロンビーニのノート「Baroque cards」の記事最終回、行ってみましょう。

19. Moderato
現象/デックのボトムカードをマジシャンが覚え、カットしたところのカードを相手に覚えてもらい、2枚のカードを表が合わさるように、デックを半分表、半分裏の状態にする(言葉で表現しにくい!)。デックを確認すると、境目のところにあるはずの2人のカードは消えている。再度デックを確認すると、まずマジシャンのカードが表向きに現れる。表向きに1枚ずつ確認するが、相手の選んだカードはどこにもない。相手の選んだカードの綴りに合わせて、裏向きにカードを配っていくと、綴りの枚数目のところから相手のカードが現れる。

Baroque compositions」に入っているトリックです。ちょっとした工夫で大きな成果が得られるお手本の様なトリック。その分、手順には少し冗長なところもあります。DVDの時の解説でも書きましたが、2人のカードが消えて、先にマジシャンのカードが現れ、観客のカードがない事を示す箇所には、何かしら説得力のある説明をつけたい気がします。

選ばれたカードを現すのは、もちろん綴りの枚数目でなくても大丈夫です。

20. Adagio
現象/1枚のカードを覚えてもらい、デックに戻した後、演者は4つのパイルを作る。各パイルのトップカードが選ばれたカードを教えてくれると言うが、それぞれの情報は全然選ばれたカードを示していない。が、各パイルをまとめて上から落とすと、選ばれたカードが現れる。さらにパケットをスプレッドすると、選ばれたカードのフォアオブアカインドが現れる。

Baroque compositions」に収録されています。奇妙な味わいのカード当てですね。4枚のカードが情報を示しているとする箇所は、実際には全然示していないので、ここは面白く演じてみたいところ。技法も全然難しくなく、すぐにレパートリーにできるでしょう。私もこれはちょっと演じてみたいトリックです。

DVD版とは少しハンドリングが違います(DVDではボトムコントロールのやり方を解説してくれており、これがとても有用)。またDVD版ではいきなりフォアオブアカインドを現しています。ここは好みが分かれるかも知れません。

21. Largo
現象/4枚の青裏のジョーカーが次々赤裏に変わっていく。最後には再び青裏に戻る。

現象説明は簡単ですが、手順は結構複雑です。また、ギャフも使いますし、ジョーカーが合計4枚必要ですから、あまり気軽には演じられません。演じるとしたらパケットケースにでも専用のセットを入れておくしかなさそうです。ギャフを使うため、技法にはさほど負担がないのがいいですね。ピーター・ケインの「ブラッシングジョーカー」に影響されて作られたトリックだそうです。

22. Divertimento
現象/2枚のカードを選ばせ、デックに戻し、カードの表裏も混ぜてしまう。全く関係ないカードが1人目のカードに変わり、更にそのカードが2人目のカードにも変化し、最後にはカードの向きまで揃ってしまう。

トライアンフ現象ですが、表裏混ぜるところは、なかなか面白い手順です。ただ説得力という意味ではどうでしょうね? 別の技法に置き換える事も可能かも知れません。

それと、プロットが少々分かりにくい感じです。カードの変化を見せたいのか、それとも表裏が揃うところを見せたいのか、この手のトライアンフ+αのトリックは、現象がぼやける恐れがあると思います。現象は追加すればいいと言うものではありませんからね。このタイプのトリックで私が演じるなら、カーライルの「アップサイドダウンデック」でしょうね。

23. Scherzo
現象/4枚の青裏のQが赤裏のAに変化し、青裏のQはポケットの中から現れる。

非常にシンプルですが、一般の方に見せるならこれくらいシンプルで分かりやすいトリックの方がいいと思います。準備は必要ですが、レギュラーのカードだけで出来ますから、案外演じやすいかも知れません。ポケットから4枚のQが現れるところは大胆ですが、コロンビーニらしい楽な手法ですね。

24. Sinfonia
現象/2枚のカードを選ぶ(例えばスペードの2と5)。1枚をテーブルに置き、1枚をデックのトップに置くが、いつの間にか入れ替わっている。続いて、2枚ともテーブルの上に置くが、ハートの2と5に変わってしまっている。「わかりにくいから表向きでやりましょう」と言って、ハートの2と5の位置を入れ替えるが、裏返すと裏の色が変化してしまっている。

Baroque compositions」に収録。デイリーのラストトリック風ですが、最後には裏色が変わると言うオチ。最後のスイッチ技法は、錯覚も上手く使った巧妙なやり方です。技法的にもさほど難しくないため、これはレパートリーに入れたくなるでしょう。

なおトリックとは関係ないのですが、「Sinfonia」を「交響曲」と訳しています。しかしバロック音楽の時代に交響曲はありませんから、この訳語は不適切だと思います。バロック時代の「Sinfonia」は、声楽曲の中に入っている器楽合奏曲の意味ですから、「合奏曲」くらいが適切だと思われます。

25. Gavotta
現象/6組のメイト計12枚のカードから、観客が1枚を選ぶ。残りのパケットのカードを1枚ずつ減らして行くと、残った1枚は観客が選んだカードのメイトカードで一致している。

カール・ファルヴスの作品の改案で、ファルヴスらしい数理トリックの小品です。リバースファロー、ダウンアンダーという「いかにも数理」な手続きを2回やらなければならないのですが、一致現象としてはなかなか面白いと思います。こってりした変化現象や移動現象ばかりでなく、こういう小品トリックも粋に演じたいものですね。

26. Fantasia
現象/2人の観客が選んだカードを、名刺を使って当てる。

ビル・サイモンのプロフェシームーブ、プロフェシーフォースと呼ばれる技法のバリエーションを使います。J.K.ハートマンの「A-Dインジケーターフォース」というんだそうです。名刺を差し込んだ場所ではなく、差し込んだ場所から3枚離れた場所にあるというのが、意外とリアリティを高めていて面白いトリックです。

27. Spiccato
現象/デックから適当なパケットを取り出し、それをポーカーハンドを配るように5枚ずつの2つのパイルに配り、1つのパイルのトップカードを相手に覚えさせる。それを3人に対して行った後、無関係な観客にパケットを渡し、その中から3枚のカードを抜き出してもらう。それが3枚の選ばれたカードである。

THe essential Aldo Colombini vol.3」で解説されている、「Barefoot in the park」と同じトリックです。カードを当ててもらう観客を即席のサクラに仕立てるのですが、3枚使う事でその可能性に気付かれにくくしてある辺りが巧妙です。サロンでも演じられて効果が大きい、いいトリックだと思います。

ラストの当て方は、少々慣れが必要だと思いますが(DVDで見た方が、タイミング等分かりやすいかも)、訳者の小林洋介さんが、安全な方法を書いてくれているので、そちらでやってもいいと思います。


という訳で、合計27作品。コロンビーニらしく、分かりやすい現象と無理のない手法のトリックが多く、読むのも楽しいと思います。レストランマジック研究所からは、コロンビーニのノートが何冊か出ていて、私は3冊所有していますが、これが一番お勧めです。

さて、次回の更新は多分、今週末の札幌手品人の会のレポートになるでしょう。果たしてどんな会になるのか、そして私は一体何をやらかしてしまうのか(笑)。乞わないご期待。 

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Baroque cards (Aldo Colombini) - 2

地震から1週間ちょっと。まだまだ余震は続きますが、ようやくスーパーにもある程度品物が並び、それなりに生活が安定してきました。

そして今月末は、Izumiさん主催の札幌手品人交流会へ行ってきます。今回、テーマを決めていくつかのイベントがあるそうで、その1つは「プロット選手権」。テーマはトライアンフだそうです。私は、トライアンフはほとんどレパートリーにはしていないので、ここは見るだけで(笑)。

2つ目は「マジシャン選手権」。今回のテーマは、ダイ・ヴァーノンだそうですが、エド・マーローとポール・ハリスもありらしいです。ちょっとマイナーながらも味わいのある小品トリックを、手に馴染ませて参加するつもりです。

3つ目は「道具選手権」。今回は日用品がテーマらしいですが、日用品を用いたマジックは、極めて当たり前のものしかレパートリーにしていないので、ここも見るだけの予定。

とにかく、奇術愛好家の皆さんと交流できるのが楽しみです。いくつかは演じられるといいなと思っているのですが、基本的に下手なので、肩の力を抜いて気楽にやります。

では、コロンビーニのノート「Baroque cards」の2回目です。

10. Concerto
現象/1枚のカードを覚えてデックに戻させる。4枚のJをデックのトップに乗せるが、1枚ずつ消えていく。その後、デックをリボンスプレッドすると、真ん中に4枚のJが3枚のカードを挟んだ状態で現れる。挟まれたカードの1枚目は選ばれたカードのマークを表し、2枚目は選ばれたカードの数を表し、3枚目は選ばれたカードそのものである。

カニバルカード風。「Baroque compositions」に入っています。挟まれた3枚のカードのうち最初の2枚が、選ばれたカードを表すインディケーターカードというのは、面白い様であり、まどろっこしい様でもあり……。このまま演じるなら、ここには何らかの説得力ある演出をつけたいところです。

もちろん、コントロールの方法さえ工夫すれば、3人の選んだカードを当てる様にも出来ますから、そこはお好みでしょう。

11. Presto
現象/2枚のカードを覚えさせるが、それをスペードの4の不思議な力で当てさせる。

数理的原理&スペリングによるカード当て。カードを選ばせるやり方が、ちょっとストレート過ぎて数理的な匂いを消しきれていない様に思えます。しかも、10枚のパケットからカードを選ばせるのに、チャーリエシャッフルすら行う事が出来ません(カットするか、あるいは別のフォールスシャッフルを使えばいいだけの話ですが)。

とは言え相手に混ぜさせないのでは、「好きなカードを選んだ」と思ってもらえないかも知れません。それではと、パケットのトップカードをパームして、相手に混ぜさせる手もあるでしょうが、こういう技法を使わない小品トリックでそんな事をしたのでは、そこだけ浮き上がってしまいバランスが取れません。

しかし、こういうシンプルでストレートなトリックの方が、案外使い勝手はいいものなのかも知れません。コロンビーニは気に入っているトリックらしいので、一度は演じてみないと真価はわかりませんね。

12. Cantabile
現象/三人にカードを一枚ずつ覚えてもらう。演者は一枚のカードを取り出す。それは選ばれたカードではないが、一人目のカードと同じ色であり、二人目のカードと同じマークであり、三人目のカードと同じ数である。その後デックをスプレッドすると、三人のカードが表向きに現れる。

Baroque compositions」にも収録されていますし、「The essential Aldo Colombini vol.2」で「One for all」としても解説されています。何度も取り上げるという事は、コロンビーニとしてもお気に入りのトリックだったのでしょう。シンプルな方法で面白い現象を起こす、コロンビーニらしいトリックだと思います。こういうトリックは、実演してみないとその価値はなかなか分からないのかも知れません。

13. Grave
現象/4枚のJを使う。1枚のJだけ表向きにするが、なぜか全部裏向きに戻る。何度かこれを繰り返すが、いつの間にか4枚のJは4枚のAに変化しており、3枚のJはデックの中程から表向きに現れる。4枚目のAはデックケースから現れる。

現象は面白いパケットトリックですが、ちょっとハンドリングが混み入っていますから、演じるとなると結構難しいかも知れません。動きに合わせた適切な演出は必須でしょう。主な技法はエルムズレイカウントだけですが、それ以外にも、綺麗に演じるには結構工夫が必要だと思います。ハンドリングは巧妙で面白く(特にラスト)、何かに応用したくなります。

14. Staccato
現象/1枚のカードを選ばせ、そのカードの名前分のカードを配り、もう1枚のカードを決める。デックを表向きにスプレッドすると、2枚目に選んだカードと同じ数字のカードが表向きに現れる。

ビル・サイモンの「インスタントリヴァース」風。ただスペリングを、選ばれたカードを現すのに使うならともかく、1枚のカードを決めるために使うのは、ちょっと日本人の感覚として難しいかも知れません。

15. Affettuoso
現象/1枚のカードを選ばせ、デックに戻してもらう。トップカードを示し、デックの中ほどに差し込む。そのカードのすぐ下のカードを見ると、トップカードになっている。差し込んだカードを確認すろと、それが選んだカードである。

Baroque compositions」に収録されています。キックバックとエスティメイテッドトスを合わせた様なトリック。ギャフカードを1枚使いますが、その分かなり奇妙なインパクトがあります。ギャフは一般的に入手しやすいものですから、これはレパートリーに入れたいトリックの1つです。なお手順の中で、マーローのカバーラップカットを解説してくれています。

16. Maestoso
現象/1枚のカードを選ばせ、2枚の絵札の間に挟む。その状態で3枚をカードケースに入れてしまうが、一瞬で選ばれたカードだけが抜け出てくる。ケースの中には、もちろん2枚の絵札しかない。

これも「Baroque compositions」に入っています。小品ですが、インパクトのある良いトリックです。コスキースイッチという技法を使っています。難しくなく、かつ錯覚の効いた有用な方法ですので是非覚えたいところ。ともあれ、カードケースを使い、手軽な技法でパワフルな移動現象を実現している、素敵なトリックです。脱出イリュージョンの話でもしながら演じれば楽しいでしょう。

17. Capriccio
現象/1枚のカードを選んでもらい、表にサインをしてからデックに戻す。4枚のカードを取り出すが、選ばれたカードは含まれていない。1枚の裏にスマイルマークを書いてから、カードを数えていくと、スマイルマークの数がどんどん増えていき、4枚とも裏にスマイルが現れる。もう一度数えていくと、今度はスマイルマークが減っていき、1枚の裏だけにスマイルが残る。それが選ばれたカードである。

このトリックも「Baroque compositions」に収められています。説明ではスマイルマークのシールを使うとありますが、DVDではスマイルマークをペンで描いています。どちらでもいいでしょう。また、スマイルシールではなく、別の面白いシールを使ってみるのも手です。その場合は、何かぴったり来るストーリーでもつけたいですね。

何にせよ、ちょっとした不条理感と、最後のどんでん返しで、インパクトがありつつすっきりとした不思議を与えてくれる、傑作トリックだと思います。技法もそれほど難しくないので、少しの練習でレパートリーに入れられるでしょう。

18. Spiritosoo
現象/1枚のカードを選んでもらい、3枚のダブルバックカードに選ばれたカードを重ねると、ダブルバックに一瞬で表が現れ、しかもそれは選ばれたカードのフォアオブアカインドである。

またもや「Baroque compositions」に入っているトリックです。それだけこのノートの中盤は優れたトリックが多いという事です(「Baroque compositions」は、このノートの傑作選という事だと思いますから)。

このトリックは、オールバック風ですが、原案に比べて極端にあっさりしています。私はそもそもオールバックというトリックをあまり好まず、しかもオールバックってやたらとくどくどとした見せ方が多い印象なので、これくらいあっさりした改案の方が、見る側には優しいのではないでしょうか。


という訳で、2回目は「Baroque compositions」に入っているトリックだらけという結果になりました。あのDVDをお持ちの方は、このノートは覚え書きとしてもなかなか重宝しますから、入手しておいて損はないと思います。何せコロンビーニのDVDは頭出しができず、目的の解説を探すのには、ちょっとした苦労が必要ですからね。

コロンビーニが各トリックに施しているちょっとした工夫を、見逃さずにぜひ味わってください。派手な現象のトリックは少ないですが(時々派手なのもありますが)、味わい深いトリックが揃っています。

次回でこのノートの解説は完結です。 

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