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Encyclopedia of card sleights vol.1 (Daryl)

間も無く秋分。どんどん日が短くなってきて、朝晩はかなり冷え込んできました。そして今、11月の頭に参加する予定の、ゆうきともさんのレクチャーでのワークショップで、どんな手順をやるか考えているところです。今のところは、何らかの方法で4枚のAを取り出してからの、ツイスティングジエーセズが候補です。

せっかくワークショップでプロのマジシャンに演技を見てもらうのに、手に馴染んでない手順をしても、演技のアドバイスに即対応できませんし(楽器のレッスンで、それは何度も痛感しています)、今後10年も20年も演じ続けるであろうクラシックがやはり望ましいと思いますから。

さて、今回紹介のDVDは、ダローのカード技法大事典。これもスクリプトマヌーヴァでは1巻と2巻が日本語化されたっきりでした。みんな、技法は難しいものにしか興味がないのかも知れません。しかし、このDVDに収められているような基礎の基礎を蔑ろにしていると、どれほど難しい技法ができても、「なんか危なっかしい」演技になってしまいます。

この第1巻には、ブレイクやジョグなど「そんなの知ってるよ」と言いたくなるような基礎が入っています。が、本当に知っているでしょうか? 「そんなの知ってる」という人も、見れば必ず発見があることを、私が保証します。では行ってみましょう。

Encyclopedia of card sleights vol.1 (Daryl)

1. Introduction
ここでは、カードを扱う上での基本的な用語などを説明しています。カードマジックの入門書で、一番最初に出てくるようなパートですね。

マークその他の説明、裏模様に白枠があるカードとないカードの違い、表と裏について、トップとボトムについて、ポーカーサイズとブリッジサイズについて、インデックスやサイド、エンドなどの用語説明を、多少急ぎ足ではありますが、1つ1つ説明してくれます。

続いて、ワンウェイについて。タリホーサークルバックやアリストクラットが、実はワンウェイバックだということを説明してくれます。そしてバイシクルライダーバックは「縁の幅が違ってワンウェイに使える」と。バイシクルの印刷ずれがこんなところで役に立つとは(笑)。更に、Beeまでもワンウェイとして使えるという説明。こんなところまで把握している辺りが、さすがダローです。

その後は表についてのワンウェイの説明。そして、一般的なワンウェイに加えて、一見上下対象のカードも、やはり印刷ずれを利用してワンウェイに使えるという。こういうのを利用すれば、マニア殺しのトリックができそうです。

更に、ギミックカードの説明。ダブルバック、ダブルフェイス、ブランクフェイスに始まり、ダブルエンダー、その他変わったカードを色々紹介してくれています。そしてミニカード、ジャンボインデックス、ジャンボカード、アルファベットカード、ESPカード、スロットマシーンカード、タロットカード、クラックトカード、その他色々の変わり種カードも紹介しています。

また、小野坂東さんのアイディアによる特殊カードを見せてくれます。ギャフカードセットでもなかなか見ないような、面白いカードばかりです。スペードの78なんて、見ただけでインパクトがあります(笑)。最後はジャンボサイズのギミックカード。見ているとギミックカードが欲しくなるかも知れません?

2. Technical terms
ここでは、基本的なカードのハンドリングについて、一通り説明しています。最初はカットから始まり、シャッフルやカードの配り方、揃え方、その他基本技法についても、簡単に解説があります。もっとも、本当にざっと説明するだけですので、詳細には各技法のセクションを見なくてはなりません。

3. The glide
最初の技法がグライドです。グライドは、軽視する人も多い基本技法ですし、「グライドなんて使えない」という人もいますが、ダローは色々な使い方を解説してくれており、ダローの解説を見ると、立派に使える技法であることが分かります。軽いタッチでするようにという、ダローのアドバイスが実用的ですね。

基本のグライドとサイドグライド。そして、コントロールやフォース、グリンプスにグライドを活用する方法を教えてくれています。グライドを使ったコントロールは、ある意味非常にクリーンです。アップジョグしたボトムカードをグライドでスイッチする方法は、錯覚も効いていて面白い使い方です。

グライドを使ったグリンプスは、グライドによるコントロールの応用技ですが、使い方が非常に巧妙です。グライドにこんな使い方があるとはと、驚かされました。これを見ると、今まで大した技法と思っていなかったグライドを練習してみたくなるかも知れません。

4. The break
出ました。最重要技法、ブレイク。パスを一生懸命練習するくらいなら、ブレイクを自然にとる練習をした方がいいと言えるほどの、超重要技法です。そしてダローの解説を見ると、自分がブレイクという基礎技法を侮っていたことがよく分かります(私もそうです)。

トップカードやボトムカードにブレイクを作る方法(バックル、ジェニングスのピンキープルダウン)から始まり、マルティプルバックルなどの使用頻度が高くない方法も解説してくれています(マルティプルバックルはなかなか大変そう)。

そして、スプレッドから選ばれたカードの上や下にブレイクをとる方法。その後、リフルやドリブル、スプリングを続けて、ブレイクの存在を感じさせない方法も解説してくれています。スプリングは難易度高そうで数が、ダローの所作はさすがに自然です。

続いてサムブレイクとアードネスブレイク。ブレイクの移し替えについても、カードをある程度本格的にやるならば、必ず習得しておかねばならない技法です。ブレイクを自然にとれれば、基本のダブルカットで十分に効果があるということが、ダローの動作を見ていると、よく分かります。

5. What to do with a break
ここからは、ブレイクで何ができるかの解説です。まずはダブルアンダーカットによるトップとボトムへのコントロール。コントロールの定番ですね。私はコントロールには、ほとんどこれしか使いません(笑)。複数カードのダブルカットでのコントロールも解説しています。フェアに見えますし、簡単で効果的ですので、覚えておいて損はないでしょう。

また応用で、4枚のカードの間に別のカードが挟まれた状態にコントロールする方法(この説明で分かるでしょうか。コレクター状態とでも言えば伝わりやすいかも知れません)。間に挟まれるカードは、1枚でなくても2枚でも3枚でもできるので、応用手順を考えてみると面白いかも知れません。間に4枚のカードが挟まれるようにすれば、ポーカーデモンストレーションにも使えるでしょう。

ダブルカットに続いては、これもシンプルなコントロール技法の基礎、トリプルカットコントロール。これも、トップとボトムコントロールを学べます。テーブルが使える時は、ダブルカットより自然に見えるメリットがあります。そしてトリプルカットで、トップやボトムから特定枚数目にコントロールする方法も。

超基本技法ではありますが、それだけに軽く扱われがちなブレイク、ダブルカット、トリプルカットを、ダローのお手本で一度しっかり見返してみてはいかがでしょうか。

6. The step
続いてはステップ。技法というか、原理の一つに属するものですが、それだけに適切に使えば、技法の気配を感じさせませんので、大変効果的です(技法ではないので当たり前ですが)。

ブレイクをステップに移す方法、その逆。それを用いたコントロールが、実にさらりと軽く流されます。自在に活用できるようになれば、強力な武器になるでしょう。

7. Jog
そしてジョグ。これを技法だと思っている人も少ないのではないでしょうか。アウトジョグ、インジョグ、サイドジョグの基本に始まり、ステランコのデュプレックスカル、ジョグカードの上や下にブレイクを作る方法、ジョグを用いたグリンプス、インジョグリフルシャッフルコントロール、ステランコのダイアゴナルプッシュスルー。ダイアゴナルプッシュスルーは、アウトジョグカードを揃えたと見せて、密かにインジョグに移してしまう技法。マーローの技法にも応用されている方法ですね。

そしてジェリー・アンドラスのインジョグメソッドは、ステランコのダイアゴナルプッシュスルーと効果は同様ですが、少しやり方が違います。気配を感じさせずに、密かにブレイクを作れますから、どちらか1つだけでも覚えておけば重宝しそう。次はステランコのプッシュスルー。これも同様ですが、原理が巧妙です。難しくもありませんので、活用しやすそう。それに続いてはステランコのサムジョグ。これも、コントロール技法の応用技として、知っておくと便利でしょう。

最後はオートマティックジョグ#1。これはプランジャーの原理を利用した2枚のカードのコントロール技法です。万能という訳ではありませんが、特定の状況では使える方法だと思います。

8. Trick break / Think stop
現象/相手に1枚カードを選ばせ、デックに戻してしっかり混ぜる。カードを表向きに配っていき、選んだカードが出たら、心の中で「ストップ」と言ってもらう。演者はその心の声を聞き取って、選ばれたカードを当てる。

トリックブレイクとして、1つだけトリックが解説されています。非常にシンプルな原理を使っていますが、技法がありませんので、その分大変クリーンです。技法をどこかで使うはずだと思ってみていると、全く追えないでしょう。

こういうトリックも、1つくらいは身につけておけば、一般の人どころか、マニアでさえ煙にまけるかも知れません。少なくとも、私は綺麗に騙されました(笑)。


以上、トリックは1つだけですが、技法の解説がなかなか濃いです(ただ数が多いので、1つ1つはかなり軽く流されていますが)。特に、改めて見てみても、ジョグにこんな使い方ができるのかと、感心することしきりでした。

パスを一生懸命練習して、動画を作るのもいいですが、これに収められているような、超基本技法を、改めて見直してみると、他人と差を付けられるかも知れませんよ。 

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Daryl does the full monte!

前回、「Ultimate three card monte」を記事にしましたので、このDVDは取り上げないといけないでしょう。ダローの「フルモンテ」です。何度も書いている通り、私はモンテ系のトリックはそれほど好きではないのですが、このDVDは、スリーカードモンテで使う、あらゆるテクニックが網羅されています。

それは、カードの曲げ方、混ぜ方、投げ方、すり替え方など、実に多岐に渡ります。まさにモンテ事典。同じダローの「アンビシャスカード」のDVDをお持ちの方は、それのスリーカードモンテ版と思っていただければ。

モンテ系のトリックは、ギミックがもちろん楽で説得力もあるのですが、このDVDを見れば、レギュラーでも十分不思議な現象が可能であることが分かるはずです。教えてくれるのは我らがダロー先生ですから、間違いのあろうはずがありません。ではダロー先生に始めていただきましょう。技法については省略し、解説されているトリックのみご紹介します。

Daryl does the full monte!

1. The Dai Vernon routine
現象/3枚のカードのうち1枚の絵札が当たりだと言うが、当てることができない。外れの数札を取り除いて2枚でやるが、取り除いたカードが絵札になっている。最後は絵札に折り目をつけるが、いつの間にか折り目のついたカードは数札になっており、最後まで当てることができない。

レギュラーを使い、技法だけで行うスリーカードモンテ。素晴らしい手順です。レギュラーしか使っていないのに、ギミックを使う手順以上のインパクトがあります。特に、間違いなく絵札を折り曲げたのに、いつの間にかそれが数札に変化してしまうクライマックスは、あまりにも強烈です。

いわゆる基本のモンテトスを使いますが、コーナーを折る箇所は、他の手順にも応用できるかも知れません。解説を見たとき、「なるほどそんな方法で!」と、目から鱗が落ちました。そのシークレットムーブの後に、モンテトスをされますから、これは誰でも引っかかってしまいますね。とにかく、演じないまでもこの手法は絶対に覚えておくべきだと思います。

それにしても、ダローの演技には全く嫌味がなく、楽しさが前面に押し出されています。さすが、Magician's magicianですね。

2. Seven card monte
現象/7枚のカードのうち、1枚が絵札である。うち3枚を裏返し、パケット全体をひっくり返す。裏向きのカードのうち1枚が絵札であるはずだが、どれも数札になっている。絵札は、デックのトップから現れる。

これもヴァーノンの手順です。演じ方によっては、モンテではなく単なる消失と移動トリックにすることもできるでしょう。ギャフカードを1枚使いますが、ギャフの扱いも非常に細かいところまで考えられており、さすがはプロフェッサーの手順と感心させられました。ギャフカードは、比較的一般的に入手しやすいものですから、この種のトリックがお好きであれば、覚えておきたい手順です。

3. The sucker card trick
現象/2枚の数札と1枚の絵札の中から絵札を当てさせるが、いつの間にか全部が数札になっている。

これもギミックを使いますが、ギャフカードではなく、自作のギミックです。簡単に作れて効果は絶大ですが、トリックとしては一発芸的ですから、これだけを単体で演じると、ちょっと収まりが悪いような気もします。ギミックは意外とかさばりませんし、何かの手順のオチに使う手もあるでしょうね。

4. The lady vanishes
現象/2枚の数札と1枚の絵札の中から絵札を当てさせるが、いつの間にか全部が数札になっている。

上の「The sucker card trick」と同じ現象ですが、ギミックが違います。「The sucker card trick」ではギミックが残りますが、こちらではギミックを隠滅できますから、最後はカードを手渡しできます。ギミック自体は、同じく簡単に作れます。

ではこちらの方が優れているかというと、これがそう簡単にはいきません。ギミックを忍ばせたままデックを使うというのは、おそらく困難ですし、ギミックの性格上、カードの表を改める方法が若干不自然な感じもします(個人的には、スリーカードモンテはレギュラーデックから抜き出して演じるようなものでもない気がしますが)。この辺りは、好みや演技スタイルの問題もありますから、好きな方を採用すればいいと思います。

5. A detachable corner
現象/2枚の赤裏の字札と1枚の青裏の絵札を使い、絵札の行方を当てさせるが、全部字札になってしまう。

現象としては上2つと同じです。裏色の異なるカードを使っていますが、これは上2つの手順でもできるでしょう。やはりギミックを使います。自然な広げ方ができるものの、最後にギミックが残ってしまう「The sucker card trick」と、ギミックが最後に残らないものの、カードの広げ方が少々不自然な「The lady vanishes」のいいところ取りと言える手順です。

「The lady vanishes」に比べるとギミックもコンパクトですから、扱いやすいと思います。レギュラーで行うトリックに、1つこういう手順を混ぜると、非常に効果的だと思います。3から5の一連のギミックモンテの中では、これが一番使い勝手がいいのではないでしょうか。

6. The dutch looper
現象/2枚の字札と1枚の絵札を使うが、絵札の場所は当てられない。何故か絵札が消えて、また現れる。そして3枚のパケットのうち、絵札が裏返ったり元に戻ったりする。最後は絵札がポケットの中に移動する。

ちょっとハンドリングが不自然ですが、現象は鮮やかなものです。ちゃんとルーティーンとして盛り上がりどころや落ちもありますから、これを単体で演じることもできるでしょう。ひっくり返ったりするのは、もはやモンテが関係なくなっているような気もしますが(笑)、そこには何かいい理由付けでもしたいですね。

やはりギミックを使うのですが、これも簡単に自作できます。そして手順の中でギミックカードは上手く処理され、ラストは手渡しできます。上手く考えられた手順だと思います。

7. Amaso
現象/2枚のジョーカーと1枚の絵札を使う。パケットの真ん中に入れた絵札の位置が、パケットを振ると移動する。そしてジョーカーを1枚脇にどけるが、手元の2枚が2枚ともジョーカーになってしまい、傍にどけていたカードが絵札になっている。

これはカードに加工が必要です。この加工はすぐできるという訳にはいきません(道具さえあればすぐできますが、誰でも持っている道具ではないでしょう。私も持っていません。マジックショップには大抵売っています)。特殊な加工をするため、かなりクリーンに、しかもインパクトのある現象を実現できています。

その加工の仕方もよく考えられていますが、そのせいかちょっとセットアップや手順がややこしい嫌いがあります。しかし、この加工の使い方は、解説を見て「そういう使い方があるのか」と驚かされました。演じるかどうかはともかく、知る価値のある手順です。

8. Jumping jack
現象/2枚のジョーカーと1枚の絵札を使う。ジョーカーを1枚脇にどけるが、手元の2枚が2枚ともジョーカーになってしまい、傍にどけていたカードが絵札になっている。

「Amaso」のラストと同じ現象で、同じような加工をするのですが、加工がシンプルになっていますので、「Amaso」よりは演じやすいでしょう。クライマックスの部分しか演じられませんが、これだけでも十分効果のある現象ですから、単体で演じるのもアリだと思います。

9. Find the ace
現象/2枚の黒い数札と1枚の赤いAを使い、Aの行方を当てさせるが、観客は当てることができない。それを二度くり返した後、1枚の黒い数札を取り除いて2枚でやるが、よけておいた黒い数札がAになっている。

マイケル・スキナーの「Ultimate three card monte」とほぼ同じで、使うギャフカードも同じです。エディ・タイトルバウムの手順です。細かいところには少し違いがありまして、目立った違いは、最後に外れカードを取り除くところ。スキナーの手順では、完全に脇に避けますが、こちらの手順では真ん中に置いたままです。私はスキナーの手順の方がいいと思うのですが、でもこちらの方がいいと感じる人もあるかも知れません。両方見比べて判断してみてください。

10. Three card monkey business
現象/テーブルではなく、手の中で行う。2枚の赤い数札と1枚の絵札を使い、絵札の行方を当てさせるが、当たらない。最後は、絵札と字札と、何故か表が緑色のカードになっている。

ラストがなかなか強烈。ギミックを使わないので、DLやフォールスディスプレイを多用します。そのためモンテトリックというよりは普通のパケットトリックみたいになっていますが、こういう演じ方もありだと思います。仕掛けのあるカードを使いませんので、案外使い勝手のいい手順かも知れません。

ラストで使う緑一色のカードは、ブランクフェイスに色を塗ってもいいでしょうし(ダローが作り方を簡単に解説してくれています)、ブランクフェイスをそのまま使うのもいいかも知れません。即興でやる場合はジョーカーでもいいでしょう。しかしジョーカーではやはりラストの驚きが弱くなるような気がします。せっかくこの手順を演じるなら、緑一色(緑じゃなくてもいいんですが)という、絶対ありえないカードを作って演じる方が面白いでしょうね。

11. Stewart Judah's routine
現象/2枚の数札と1枚の絵札を使って、絵札を当てさせる。途中で何故か絵札がどこにもなくなったり、全部が絵札になったりした後、最後は絵札の隅に折り目をつけるが、いつの間にか折り目がついたカードは字札になっている。

スチュワード・ジュダの手順。レギュラーを使い、モンテトスを用います。ヴァーノンの手順と同じところもあるのですが、途中で全部外れのカードになったり、逆に全部当たりカードになるのがいいアクセントになっていて、面白いルーティーン。

12. Paperclip routiner
現象/当たりのカードにクリップをつけるが、それでも当てることができない。

上の説明だと、誰でもDLでスイッチすると思うでしょうが、なんと表向きにクリップを付けて見せます。それでも当たりません。これは引っかかります。マニアは軽視しがちなとある技法を組み合わせた、大変賢い方法です。カードを破る方法だと、その度にカードを消耗してしまいますが、この方法だとカードを消耗しません。この方法は是非覚えておきたいですね。

この方法も、ジョン・スカーニの方法を始めとした数種類のバリエーションを解説してくれています(合計5種類)。どれか1つでも会得できれば、モンテトリックでなくても、強力な武器になると思います。紙マッチを使った方法も解説してくれていますが、紙マッチ自体があまり見なくなりましたので、こちらは少し使い辛いかも知れませんね。

13. The stamp
現象/当たりのカードにシールを貼るが、それでも当てることができない。

シールの条件が必要で、どんなシールでもできるという訳ではないのです、これもかなり強烈。DLなど使わず、確かに当たりカードにシールを貼って、それでも当たらないのです。アマチュアが気軽に実演するのは難しいかも知れませんが、こういう方法があるという事は、覚えておいてもいいでしょう。


14. Torn card / Torn corner
現象/当たりのカードを破って目印にするが、それでも当てることができない。

ラスト用の演出ですね。手順としては、カード技法の心得がある者であれば誰でも思いつく方法です。シンプルな方法ですから、マニアはあまり顧みないような手法かも知れませんが、こういうストレートに不思議が伝わる手順は、やはりインパクトが強いものです。

コーナーを破る方法は、バリエーションも紹介してくれています。こちらはより巧妙で非常に効果的。確かに絵札のコーナーを見せたのに、破れたカードだけでなく、コーナーも字札に変わってしまっており、もちろん破片は破れたカードにぴったり合います。ここまで来ると、何だか別の現象になってしまっているような気がしなくもないのですが(笑)。


という訳で、モンテばかりの内容。連続して見ると若干疲れます。トリック以外にも、手法の解説が大変勉強になります。これを自分でやるかと言われると、やらないような気もしますが(笑)、普通のカードマジックしか知らないと、見たこともないような方法ばかりで、綺麗に騙されてしまうかも知れません。

とにかく、スリーカードモンテは、長い歴史を生き抜いてきたクラシックです。演じるかどうかはともかく、様々な手法は知っておくと、カーディシャンとしての視野がきっと広がると思います。興味がある方は、是非入手してみてください。 

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Fooler doolers vol.3 (Daryl)

今日は建国記念の日の代休で、連休です。せっかくの連休なので、二日連続の更新。ダローのシリーズ三巻目です。

稀代の名人ダローの演技は、どれを見ても楽しいものばかりです。自分の演技をより良くするためには、やはりこういう名手の楽しい演技を見なくてはなりません。Youtubeだけでマジックを覚えると、とんでもないものが出来上がります(汗)。

三巻目も楽しいマジックが目白押しです。では行ってみましょう。

Foler doolers vol.3 (Daryl)

1. Peter rabbit hits the big time
現象/うさぎ型と鳥型のスポンジを使ったルーティーン。何もない手からスポンジうさぎとスポンジ鳥を取り出し、うさぎと鳥が入れ替わるというギャグから始めて、移動したり増えたりする。

これは単売されていました。とても楽しいスポンジうさぎの手順です。冒頭のギャグも、わざとらしくやれば感じが悪くなるものですが、ダローは実に自然に、しかも楽しそうに演技をしているので、見ている側も楽しくなります。現象は一般的なスポンジボールのものと同じですが、ダローの見せ方は大いに勉強になる事でしょう。

2. Four dice chink-a-chink
現象/四つのサイコロを使ったチンカチンク。

カップを使う事によりエキストラを使わない、サイコロによるチンカチンクです。コインと違い、サイコロの目が使えますので、移動の際に分かりやすさが増していると思います。テーブルに置いたサイコロをクラシックパームする必要があるので、ちょうどいいサイコロを選ぶ事が必要でしょうが、いい手順だと思います。

3. Follow the leader
現象/十枚の赤いカードと黒いカードを二箇所に分け、それぞれ一枚をリーダーとして前に出しておく。リーダーのカードを入れ替える度に、残りのカードも入れ替わる。最後は赤黒交互に混ぜるが、それでもリーダーの色に従って整列する。

有名なカードトリック、フォローザリーダーです。オチはフォローザリーダーというより、オイルアンドウォーターですが、元々このトリックは、現象が違うだけで原理は同じですからね。

解説でダローは、なんとパスを使った方法もやってくれているのですが、もっとやり易い方法(ホフジンサー式のコントロールを使った方法)も解説してくれていて、そちらの方が疑いなく優れています。また、少ない枚数のパケットだと、チャーリエシャッフルは非常に説得力のあるフォールスシャッフルですね。

4. Three to one ropes
現象/三本の同じ長さのロープを結んで一本にする。息を吹きかけると、なぜか吹きかけていない方の結び目が取れてしまう。反対側に息を吹きかけると、もう一つの結び目も取れてしまう。

仕掛けのないロープでできる、優れたロープトリック。解説では、色違いのロープを使ってくれており、とても分かりやすいです。最初のロープのセットの仕方もちゃんと解説してくれています。息を吹きかけた側ではなく、反対側の結び目が取れてしまうギャグも、手順上ちゃんと考えられているのに感心しました。

ロープ自体には仕掛けはありませんから、ちょうどいい長さのロープを準備して、ぜひやってみたいロープトリックです。

5. The Tenkai pennies
現象/二枚のペニー硬貨(1セント銅貨)を両手に一枚ずつ握るが、それがもう一方の手に移動する。

石田天海によるコイントリック。テンカイピンチ、またはゴッシュマンピンチと呼ばれる技法を使う、かなりクリーンな二枚のコインだけを使うコインズアクロスです。これは結構練習が必要です。テンカイピンチはもちろんですが、タイミングが重要ですね。

日本の硬貨ですと、ペニーと似た大きさなのは一円玉ですが、使うとしたら十円玉か百円玉でしょうか。シンプルですが、インパクトの強いトリックだと思います。

6. Sliding knot
現象/ロープに作った結び目が移動し、最後には取れてしまう。

古典的なロープトリックです。結び目が取れるため、その部分はもちろん準備が必要ですが、面白い現象です。やはり、クラシックトリックが生き残っているのには理由があるんだなあと思わされます。ここで解説されているフォールスノットは、きちんと結んだという錯覚が非常に強く、覚えておきたいですね。

7. Back flip
現象/四枚の青裏のKを使う。おまじないをかける度に、違うマークのKが表になる。最後には全部のKが一度に表向きになり、全部のカードが赤裏に変化し、更に銀裏?に変化する。

前半はツイスティングジエーセズですが、後半は目を見張るような変化現象が二度も起こるため、大変強力なトリックです。前半部で青裏である事が何度も示されるため、後半の驚きは非常に大きいでしょう。ただそのためにもちろんギャフカードが必要です。技法はエルムズレイカウントくらいですが、流れるように演じるには、だいぶ練習がいるでしょうね。

最後には、鏡のような特殊な裏模様のカードに変化しますが、そこは違う裏模様でもいいでしょう。ただし、二回の変化に何らかの理由づけはしないと、単に訳の分からない事が立て続けに起こるだけになってしまう恐れがあるので、そこは注意しましょう。

ギャフを使っているから当然ですが、最後は手渡しできません。こういう、ビジュアル的な効果が大きいマジックは、必ずと言っていいほど「見せろ」と言われたり、予告なく手が伸びて来たりするので、気をつけて演じないといけません。

8. Sack's dice routine
現象/二個のサイコロを使う。二つのサイコロの表裏の合計は14のはずだが、見せる度に両面が同じ数になったり、元に戻ったりする。最後には二つのサイコロの目が一瞬で入れ替わる。

パドルムーブを使ったダイストリック。サイコロの目の配置を上手く利用した、良く考えられた手順です。数が変化するだけなので地味ですが、少し地味で複雑な現象で、上手く観客を楽しませるダローの見せ方はさすがです。手順がちょっと長くて複雑なので、これをそのまま演じるのは大変かも知れません。

9. Bracelet and rope routine
現象/リングにロープを通すが、リングがロープを通り抜けたり、再び入ったりする。

仕掛けのないロープとリングで行えるトリック。コロンビーニが得意そうなトリックだなと思っていたら、解説で「コロンビーニはこのサイズのリングを使っています」なんて言っていました。カード以外のこのような素材を使った、物理的な貫通現象というのは、意外とインパクトがあるものですから、こういうトリックも身につけておきたいところです。

もちろん、ロープとリングより、リング同士の貫通(リンキングリング)の方が見た目に効果が大きいですが、ロープとリングですと、道具に仕掛けが要りません。ロープの研究家としても名高かったダローだけあって、美しく無駄のない手順です。

10. Penetrating matches
現象/両手の親指と人差し指で挟んだ二本のマッチが、貫通したり再び外れたりする。

一般向けのマジック書籍にも載っているようなトリックですが、適切に演じれば非常に効果的である事が、ダローの演技が教えてくれます。ダイスルーティーンの時もそうでしたが、「very expensive」を強調するダローが面白いです。くだらないトリックなどと思わず、ダローの演技に学びましょう。マッチは最近あまり見なくなりましたが、爪楊枝などでも演じられるため、使用頻度は高いと思います。

11. Pyro-maniact
現象/観客から借りたハンカチの真ん中を燃やすが、御呪いをかけて広げると、どこも燃えてはいない。

カール・フォックス考案のトリック。ちょっとした準備は必要ですが、簡単にできて効果の大きい復活トリックです。紙マッチを使いますが、ハンドリングが大変巧妙です。仕掛けの隠し方や処理法も上手く考えられており、さすがカール・フォックスだと思わされます。紙マッチを今ではあまり見ませんが、紙マッチを使える状況であれば、大変実用的なマジックです。

12. Crossed thought
現象/十枚のカードを五枚ずつに分ける。一方のパケットを広げ、相手に心の中だけで一枚を覚えてもらう。そのパケットを相手の手で挟んでもらうが、パケットを確認すると、相手が覚えたカードが消えている。テーブルの上のパケットを広げると、相手が覚えたカードが移動してきている。

カードアクロスですが、心の中で決めたカードが非常にクリーンに移動するので、大変驚きが大きいでしょう。プリンセスカードトリックにカードアクロスを合わせたようなトリックです。

ただ、クリーンにこの現象を実現するため、かなり特殊な印刷のギャフカードを五枚も使わなければならない上、このギャフは簡単に入手できるようなものではありません。確かこれは商品として単売されていたはずで、これを演じようと思ったら、商品を買うしかなさそうです。ギャフのおかげで、技術的には非常に楽です。


以上十二作品。相変わらずダローの演技は楽しく、見ているだけでも面白いです。このシリーズは、カードトリックよりもロープなどの道具を使ったトリックの方が面白いものが多いですから、カードマジックに食傷気味の方は、このシリーズを学んでみると、マジックの幅が広がると思いますよ。 

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Fooler doolers vol.2 (Daryl)

しばらく更新ができなかった分、DVD紹介が2連続です。ダローのシリーズ。このシリーズは、本当に見ているだけでも楽しめるので、お勧めです。

もちろん、観客なしで演じて手順を淡々と解説するようなDVDも、それはそれで存在価値はあると思うのですが、やはり楽しめるマジックを見ずして、人をマジックで楽しませる事など、できるはずがありません。Youtubeで手元だけのつまらない動画ばかり見ていたら、つまらない演技になるのは当然の事です。

その意味で、ダローのような超一流のエンターテイナーの演技には、是非触れておくべきです。誰でも知っているようなトリックでも、ダローの手にかかると、見違えるようなマジックに早変わりします。

では、行ってみましょう。

Fooler doolers vol.2 (Daryl)

1. Chinese matches
現象/片方の手に一本ずつ握ったマッチが、いつの間にか一方の手に二本になる。

いわゆる、「テンカウントアクロス」と呼ばれる、シンプルなトリックです。マッチだとコインやスポンジボールより楽でしょう。こんな単純なトリックですが、ダローの演技は面白いです。私は最初、ダローが喉でも傷めているのかと思いました(笑)。テンカウントアクロス自体、人間の視覚的な特性を上手く利用した、実によくできたトリックだと再認識させられます。

2. Vanishing and reappearing knots
現象/一本のロープに三つの結び目を作るが、軽くしごくと結び目は全部消えてしまう。が、ロープを一振りすると、三つの結び目が再びできている。

これもシンプルですが、スピーディで、仕掛けのない一本のロープだけで演じられるため、覚えておきたいロープトリックです。L&Lらしく、解説は手元からの映像もあり、とても親切。ロープの研究家として有名なダローだけあって、説明も分かりやすいです。最初の結び目の消失のところで、後の伏線を張っているというのが、とても巧妙ですね。

3. Pretzel knot
現象/赤いロープと白いロープを使う。赤いロープに結び目を作るが、ロープを一振りすると、赤いロープの結び目が消え、白いロープに結び目が移る。

何故かDVDのメニューとかパッケージ裏にはこれのタイトルが入っていません。プレッツェルノットと呼ばれているフォールスノットは、覚えておく価値があるものです。易しくできますが、結び目が移るというのはビジュアルな効果もあり、インパクトがあると思います。優れたロープトリックです。

4. Spectral silk
現象/1枚のカードを覚えてもらい、デックに戻してよくシャッフルしてから、ハンカチの上に裏向きに全部のカードを広げ、ハンカチを包む。おまじないをかけると、ハンカチが動き、1枚のカードが出てくる。それが選ばれたカードである。

これは大変視覚的な印象の強いマジックです。もちろんハンカチには仕掛けが必要ですが、これはいわゆる「お化けハンカチーフ」が使えるのではないでしょうか。このお化けハンカチ、マジックをやり始めて間もない頃に初めて知った時には、つまらない道具だと思ったのですが、実はこういうシンプルな仕掛けこそが、応用性がある優れたものなんだなというのが、ある程度経験を積んだ今ならば分かります。

そのハンカチに、更に少し加工を加えるのですが、そうする事で実にインパクトのある動きで、カードを現す事ができます。こんなカード当ても、一つくらいはレパートリーに入れておきたいものです。

5. Milliken's transposition
現象/二枚の大きなコインを右手に、二枚の小さなコインを左手に握る。それが一枚ずつ入れ替わり、二度目には左右のコインが完全に入れ替わる。

有名なコイントリックです。日本の硬貨であれば、五百円玉と十円玉だと、色の対比もあって分かりやすいでしょう。最初のセットアップで、ダローは「こんな風にやったら駄目だよ」と、悪い見本を見せてくれていますが、悪いやり方を使ってしまう人も、結構いるような(汗)。

ダローは、手を振った時にコインが発する音を演出に使っていますが、違う種類の硬貨ならではの演出で、面白いと思います。手順自体は、標準的なコインの技法ができれば問題ないですが、細かなダロー流のクリーンな見せ方のアドバイスが、とても勉強になると思います。

6. The hindu thread trick
現象/糸をたくさんの破片にちぎっていく。手に何も持っていない事を確かに検めるのだが、ちぎった糸は見事に復活する。

これも有名なクラシックトリックです。原作者はアル・ベイカー。意外と準備が大変ですが、手順は非常によく考えられており、さすがクラシックだなと思わされます。糸を使ったトリックって、見やすいとは言えなくて、私は演じないと思うのですが、考え抜かれた方法を知るだけでも、価値があると思います。

7. Matched spellout
現象/一枚のカードを選んでもらう。演者は、選ばれたカードの色、マーク、数字を順に言い当てる。更に、選ばれたカードの名前の綴りに合わせてカードを配り、テーブルに四つのパイルを作ると、最後のパイルのトップから選ばれたカードが現れ、残り三つのパイルのトップからは、選ばれたカードと同じ数字のカードが現れる。

現象説明を読むと、セットアップかフォースが絶対必要だろうと思ってしまうかも知れませんが、セットもフォースも必要ありません。それを可能にしているのが、巧みに構成された手順構成。カードを言い当てる時に、後半の準備をしてしまうのです。もちろんここは演技力が必要ですが、さすがはヴァーノン、上手く作ったものだなと感心しました。

スペリングカウントを使うのですが、この作品であれば「スペルとは呪文という意味があって、カードのスペルで配っていくと不思議な事が起こります」とでも説明すれば、十分演じられると思います。

8. Rope decapitation
現象/首に巻いたロープが、一瞬で首を抜ける。二回目はロープを二重にするが、それでも抜ける。

いわゆる「天海ネックスルー」です。これも仕掛けのない一本のロープで易しくできますし、この手のトリックは受けがいいものですから、是非レパートリーに入れておきたいところ。ただし、見せる相手や状況は選ばないといけないでしょう。子供が真似をしたりしたら大変ですからね。

9. Ropes through body
現象/二重にしたロープを胴体に巻き、引っ張ると一瞬で抜ける。

天海ネックスルーが首抜けなのに対し、こちらは胴体抜けです。天海ネックスルーとは方法が違います。「グランマのネックレス」の原理を使ったものですね。この原理は物凄い古典ですが、巻いて結んだのに抜けてしまうという点で、不思議さは今でも一級品だと思います。この原理を知らない方は、是非知っておくべきです。

10. Dicey dots
現象/サイコロを相手に握ってもらい、白いスティックを取り出す。表も裏も白いそのスティックで相手の手を軽く叩くと、スティックにドットが現れる。握っていた手を開いてもらうと、サイコロの目が消えている。

道具は必要ですが、シンプルな原理を使った面白いトリックです。サイコロのスイッチの動作は、コインでいうボボスイッチですが、サイコロならではの「振る」という動作を利用しているため、怪しさもありません。

使うサイコロは、白い油性ペンで点を塗りつぶせば作れそう。ただ日本のサイコロですと、一の目は赤い事が多いですから、そこは配慮が必要かも知れません。こういうちょっと変わった道具を使うマジックも、アクセントとして合間に入れると、演技の雰囲気が変わっていいですね。

11. Moveless miracle
現象/一枚のカードを覚えてもらう。相手にデックを二つのパイルにカットさせ、好きな方のパイルを選ばせる。演者は残ったパイルを見ずにカットし、一枚のカードを表向きにする。そのカードの数字だけ、相手が選んだパイルのカードを配ると、選ばれたカードが現れる。

これはマニアが見ても不思議でしょう。解説を見て、「なるほどそう来たか!」と感心しました。要するにキーカードロケーションなのですが、こうやって仕掛けも上手く混ぜられると、とてもキーカードロケーションには見えません。誰でも知っている原理でも、組み合わせ方次第でこうも不思議なトリックができるものなのですね。

なお、ダローは仕掛けを使わない方法も解説してくれています。こちらだと即興で演じる事ができます。キーカードのような基本的な原理を甘く見ている人には、絶対に思い浮かばない手順です。さすがダローと言うほかありません。

12. Ring, rope, wand
現象/ロープに指輪を通す。ロープの中央に通った指輪をしっかり握りこみ、更にマジックウォンドの両側を二人の観客に握らせる。その状態でマジックウォンドとロープを近づけおまじないをかけると、指輪はロープからマジックウォンドに移動している。

よく考えられた素晴らしい手順です。仕掛けがある道具も必要ありません。指輪を密かに抜き取る動作も巧妙ですし、マジックウォンドを脇に挟む動作も、ちゃんと計算されています。技術的にもさほど難しくはないのですが、インパクトは強烈です。ちょうどいいマジックウォンドを手に入れて、是非演じてみたいトリックです。

13. A knotty preblem
現象/グラスにコインを入れておく。ハンカチを結んで観客に持っておいてもらう。グラスのコインを取り出して紙で包む。その紙に火をつけて燃やしてしまう。消えたと思われたコインは、ハンカチの結び目の中から現れる。

これもインパクトがあるトリックです。コインにはサインさせられるので、すり替えを行っていない事は明白ですし、最後はマジシャンではなく観客がハンカチを開くので、一層効果を高めています。火をつけて燃やしてしまうのが難しければ(フラッシュペーパーを使っているのでしょう)、はさみで切ってしまうとか、破いてしまうとか、色々できると思います。

デュプリケートのコインを使いますが、そのセットの仕方が非常に考えられています。また、グラスは何の役にも立っていないようにも見えるんですが、ちゃんと意味があります。その他細かいところまで実によく考えられた見事な手順で、解説を見て唸ってしまいました。


以上13作品です。カードマジックはわずか三つしかありません。特別な道具を必要とする手順もありますが、基本的にはどれも演じやすく、難易度もそれほど高くはありません。

何より、ダローの演じ方、細部まで考えられた手順に、感動すること間違いなしです。いつも書いている事ですが、ダローのこのシリーズは、「最新」の変なDVDを見るより、何倍もためになる事は保証します。やはり「面白い演技、楽しい演技」を見ずして、面白い演技、楽しい演技ができるようになる訳はありませんからね。

と言って、これを見たからダローのような演技ができるようになる訳ではないんですけどね(笑)。でも、お勧めできるDVDですので、是非見てみてください。 

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Fooler doolers vol.1 (Daryl)

北朝鮮からミサイルが飛んできたり、大型の台風が接近していたり、ここのところの日本列島は大騒ぎですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今回は、今年2月に急逝した、ダローのDVD「Fooler doolers」をご紹介。タイトルは、ダローのマジックショップの名前でもあります。私が大好きなマジシャンなので、亡くなった時は本当にショックでした。このDVDは、ダローのお店に直接申し込んで買ったのですが(送料が高かった)、ダローの直筆メッセージが書いてあったのが、感動しました。こんな名人は、なかなか出てこないでしょうね。

では、行ってみましょう。

Fooler doolers vol.1


1. Bennete's boner
現象/ティッシュペーパーを破り、紙コップを使って元に戻すと言うが、紙コップの中から種の紙コップが出てしまう。が、それでも破ったペーパーを元に戻す。

トリックはシンプルなのですが、演出として嘘の失敗を入れる事で、種に気付きにくくしています。それがミスディレクションになっている辺りが、とても賢い手順です。ダローが演じると、嫌みもなくとても面白いトリックです。

それにしても、ティッシュペーパーのはずなのに、何だか紙が硬そうで、これで鼻をかんだら痛いのではないかと、そういうどうでもいい事が気になってしまいました(笑)。

2. Instantaneous knot
現象/ロープを両手の人差し指と親指で端を持ち、一振りするだけで結び目を作る。

ロープの研究家でもあったダロー。何をやらせても上手いです。複数の観客にもやらせて、当然観客はできないんですが、全然嫌みがない辺りが、さすがダロー。こういう「マジシャンはできるが、観客はできない」トリックって、下手をすると凄く感じが悪いですからね。我々のような凡人は、迂闊にダローの真似をしない方が身のためです。

3. Pretzel knot
現象/ロープに結び目を作るが、手の中で結び目が消えてしまう。

これもシンプルなトリックなのですが、前のトリックと続けて演じる事で効果を倍増させています。それにしても、こんな単純なマジックで、ダロー以外のマジシャンがこれだけ観客を沸かせる事ができるでしょうか? ダロー恐るべしです。

4. Dai Vernon's climax to a dice routine
現象/サイコロを2つ使って、1つポケットにしまうが、また2つになる。繰り返すとそれが3つに増え、更に色々な事が起こる。

現象説明が手抜きですみません(笑)。コインやボールでやるようなトリックです。ワイプトクリーンに似た動作を取り入れたり、ポケットからエクストラのサイコロを取ってくるタイミングもよく考えられており、さすがはダイ・ヴァーノンの手順。

もちろん、コインやボールでやってもいいんですが、サイコロならではの「振る」という動作が取り入れられているので、やはりサイコロを使いたいですね。あるいは、コインでやって「裏が出るか表が出るか」という演出を使うのも、手かも知れません。

5. Daryl's color changing knives
現象/ナイフの色が赤くなったり黄色くなったりする。

パドルマジックの傑作です。ダローは「マジシャンは、こちらの手に注目を集めて、反対の手で密かに仕事をします」と言って演じています。道具を準備するのが結構面倒な気もしますが、ナイフでなくてもできるので、手順は取り入れられるでしょう。それにしても、日本人より手が大きいせいもあるのでしょうが、パドルムーブのような、動き自体は単純な動作でも、ダローの上手さは神業ですね。

6. Four of a kind
現象/よくシャッフルしたデックから、演者と観客がそれぞれ2枚のカードを自由に出し、それを交換してお互いのパケットの中に入れる。パケットを広げてそれを確認すると、4枚のエースである。

考案はダイ・ヴァーノン。Do as I doタイプのトリックなのですが、手続きがとてもクリーンな上、合計4枚使うので、かなり不思議に見えます。非常に考えられた手順なので、既存のDo as I doを知っている人でも、これを知らなかったら不思議に感じるでしょう。多少のセットが必要ですが、セットしておく価値があると思います。

もちろん技法も使うのですが、何より手順の頭の良さには、「さすがプロフェッサー!」と感動します。このDVDに入っている作品の中では、多分一番難しいですが、是非覚えたいトリックです。

なお、これとほとんど同じ現象のトリックが、カードマジック入門事典に載っています。ハリー・ロレインの「エースワイルド」(p253)です。事前のセットも同じです。興味がおありの方は、ご参照ください。

7. The trick question
現象/4枚のエースを使う。スペードとクラブをテーブルに置き、「スペードは上ですか、下ですか」と聞くが、黒いカードはいつの間にか手元に移ってきており、テーブルのカードは2枚とも赤いカードになっている。

いわゆる、ジェイコブ・デイリーのラストトリックです。冒頭で、グライドを使った古典的な方法や、デイリーの原案も説明してくれています。ジョン・ハーマンのジェミニカウントを使った演じ方ですが、観客からの見た目は普通のやり方と大差はないですし、妙に難しいので、手になじんだやり方がある方は、それでやった方がいいでしょう。

なおラストトリックは、テーブルに置いた2枚の黒いカードを入れ替え、「どちらがスペードですか」と聞いて、実はどちらも赤いカードになっている、という演じ方のはずですが、ダローは「スペードは上ですか、下ですか」と聞いて、先に手元のカードを開くという見せ方です。この見せ方は、賛否あるでしょう。「Trick question」という演出ですから、これはこれでありなのかも知れませんね。

8. Chinese laundryman
現象/ロープの真ん中にハンカチを結ぶが、それが取れてしまう。

現象を書くと単純ですが、ダローの話の方が面白いです(笑)。手順は簡単で、その通りやればできてしまいますが、怪しいところがなくとてもクリーンです。いわゆる3本ロープの一番長いロープが、長さとしてちょうどいいので、ロープのルーティーンのつかみに取り入れるのもいいでしょう。

9. Mystery of the traveling marbles
現象/テーブルの上に置いた4つの角砂糖の上に、紙ナプキンをかぶせるが、もう一か所の紙ナプキンの下に、次々移動する。

チンカチンク風ですが、二か所だけでやります。元々は石と帽子を使って演じるものらしいですよ。手法はクラシカルなものですが、ミスディレクションを上手く使っている良い手順です。説明は透明シートを使ってくれるので、とても分かりやすいです。解説では、角砂糖、丸めた紙、指輪、サイコロを使ったやり方も見せてくれます。優れた即興マジックだと思います。

10. As many and as much as you
現象/観客が持っている小銭の額や数を当てたりする。

上手い原理を使ったメンタルトリックです。セルフワーキングですが、「心理的セルフワーキングトリック」とでも言いましょうか。大量の小銭を用意するのが大変ですが、日本円でも可能です。冷静に考えたら、当たり前の事が起こっているだけなのですが、メンタルトリックというのは、そういうものかも知れません。演出の妙ですね。

11. Sponge ball routine
現象/スポンジボールが現れたり、増えたり、観客の手に移動したりする。

スタンダードなスポンジボールルーティーンです。使うのは2つのボールだけで、使う技法も標準的なものだけですが、こういうトリックは、下手に難しい技法を使った、マニアックなコインマジックよりもはるかに受けるものです。「ボールが入れ替わりました!」という古典的なギャグが、ちゃんと後の伏線になっているところが面白いです。

12. Cup & ball
現象/カップ1つと、紙幣を丸めたボールだけを使ったカップアンドボール。最後はカップの中からトマトが現れ、更にジャガイモが現れる。

カップアンドボールって、私はやろうとは思わないのですが(3つのカップを使う時点で)、1つのカップだけを使うこの手順なら、ちょっとやってみたくなります。ちなみに、ウォンド代わりに使っているのはポケットナイフです。この即興感が素敵です。ナイフも手順上ちゃんと意味があるのですが、日本ではナイフを持ち歩く人もいないでしょうから、ボールペンでもいいでしょう。

最後は二段階で予想外のものが現れるのですが、ファイナルロードの仕方も上手く考えられており、手順に無理、無駄がありません。カップアンドボールって、何段もの現象をやるより、これくらいあっさりの方が私は好みです。ただし、観客の紙幣を丸めてボールにしてしまうのは、日本人の感覚としてはちょっとやりたくないですね(笑)。


以上12作品。中には単純で、マニアが目もくれないようなトリックもありますが、ダローが演じると、見違えるほど楽しいマジックに早変わりします。こういうのが本当の名人芸というのでしょう。「トリック」と「マジック」は別のものであり、「トリック」を「マジック」に変える事こそが、マジシャンの腕前なのだと感じさせられます。

何より、見ているだけでも楽しいです。とは言え、ダローの演技はダローにしかできない訳で、これを単純に真似しても、滑るだけだと思います(笑)。

演じているダローも、そして観客も、本当に楽しそうです。マジックってこんなに楽しいものなんだと、改めて感じさせられます。全3巻、どこから見ても楽しめると思いますよ。 

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