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A private session No.1 (Edward Marlo)

今週のDVD紹介は、エドワード・マーロー。ダイ・ヴァーノンと並び称される、近代カードマジックの父と言ってもいいような存在です。

が、ヴァーノンと比べると、いまいち評価が低いような気がするのは、私だけでしょうか。まあ、ヴァーノンは駄作はほとんど残していないのに比べ、マーローは本当に玉石混淆ですし、その創作の方向性はあまり好きではなかったりしますが(他人が発表したトリックの後で、バリエーションを発表し、「実は俺はこれをもっと前から考えていた」と言ってみたり)、よくできた作品は素晴らしいですし、やはり敬意を表すべきマジシャンの一人です。

マーローは、本名エドワード・マルコスキー。本業は機械エンジニアだったそうです。エルムズレイと言い、ジェニングスと言い、あの時代を支えたマジシャンって、エンジニアが多いですね。マジックって、理系の人の好奇心を刺激する娯楽なのかも知れません。

マーローが考えた技法としては、ティルト、それにオルラムサトルティが有名でよく使われますね。また、コインの技法ではスパイダーバニッシュがマーローの考案です。マニアほど驚くこの技法に、マーローらしさが現れていると思いますが、オルラムサトルティのような、錯覚を上手く利用した方法も考える辺り、やはり彼がマジックというものの特質を、深く捉えていた事を現していると思います。

今回紹介は、「プライベートセッション」と題された彼の作品集。演技も解説も、マーロー本人という貴重なものです。DVD-Rですし画像は古いですが、作りはしっかりしていて、鑑賞に支障はありません。では行ってみましょう。

A private session No.1 (Edward Marlo)

1. Rub dub dub
現象/選んだカードが、変化したり消えたりポケットの中から現れたりする。

タイトル通り、ラブアダブダブバニッシュを使う方法ですが、最初のカードコントロールのフェアさには唸ります。ブレイクも何も作らず、カードを好きな場所に重ねてシャッフルしただけで、いつの間にかトップにコントロールされています。これはマニアでも追えないでしょう。さすがマーロー、ただものではありません。

ラブアダブダブバニッシュも、この動作を2回続け、最初では変化させ、次で消してしまうという構成は見事です。とにかく、コントロールの方法だけでも勉強になるでしょう。丸ごと使わなくても、キーカードロケーションに使う事もできるはずです。

2. Card to card case
現象/2枚のカードを選んでもらう。デックを落とすと1枚目のカードが表向きに出現し、2枚目のカードはカードケースの中から現れる。

なかなか大変なハンドリングを使いますが、現象は鮮やかです。カードの出現の部分は、手が小さい人だとちょっと辛いものがありますね。アードネスチェンジからパームなんてどうでしょうか。解説でマーローがちょっと失敗してしまっているのが微笑ましいです(笑)。

3. Bluff call to colors
現象/赤黒交互に並べられているデックが、配る度に赤2枚黒2枚ずつになったり、3枚ずつになったり、4枚ずつになったりして、最後残りのデックは赤と黒が綺麗に分かれる。

裏模様に白縁のないデックを使っているので、あの技法だろうなと思っていたら、やはりそうでした。それを連続的にやるので、かなり難しいでしょう。マーローでさえも、ちょっとミスしてしまってますから、常人には真似できそうにありません。

それでも、マーローの手さばきは実に見事で、白縁がないデックという事を除いても、技法をやると分かっていても、なかなか分からないほどのレベルです。通常この技法をやる時は、デックをビベルさせますが、マーローは全くそれをしませんし。

とは言え、現象もイマイチ地味ですし(カードの並び順が変わるだけですからね)、使う技法も非常に難しいですから実演はなかなか難しいかも知れません。まさに「研究家肌」の、マーローらしいトリックです。

4. Of course I can deal a good poker hand
現象/ポーカーデモンストレーション。最初はフォールスディールを使うが、片手で配ってもディーラーに強い手が来る。最後は適当に分けた4つのパイルのトップからAが出てくる。

なんとこれだけで20分以上も解説があります。当然フォールスディールを使います。なので難しいです。これならヴァーノンの、デック丸ごとセットする手順の方が楽で物語も面白いじゃないか、と思ってしまったのですが、それがヴァーノンタッチならぬ、マーロータッチというものでしょう(笑)。マーローが解説してくれている、フォールスシャッフルのやり方は、とても勉強になります。

これも、難しさの割に現象は地味なんですが、マーローの場合は、ジェニングスのように「現象のためには手段を択ばない」のではなく、「現象がどうかなどには関係なく、合理的に手順を組む」のがポリシー、という感じがしますね。なお、後半ではマーロー流のボトムディールを解説してくれていますが、これは分かりやすいです。私にはできそうにもありませんが。

5. Future classic double cross
現象/選ばれたカードを4回取り出して見せる。その4枚は2のカードに変わってしまい、選んだカードはポケットの中から出てくる。

マジシャン対ギャンブラーみたいな現象ですが、何せ同じカードが4枚出てきますから、印象は大分違います。マーローは淡々と演じていますが、面白い現象ですから、もうちょっと上手に演出をつけて、コミカルに演じれば楽しいマジックになるでしょう。

ゆうきともさんのワイルドワイフに似たところもある現象ですから、ただ4枚のカードが出るのではなく、「1枚目はあなたのカードの色、2枚目はマーク、3枚目は数字を現します」なんて見せ方も、ありかもしれません(とにかくマーローは現象を見せているだけなので、見てると眠くなります)。

6. Ace of spades
現象/デックのトップから1枚ずつ配り、好きなところでストップをかけさせると、そこからスペードのAが現れる。それを何度も繰り返す。

マーローを代表するトリックの一つ。カードアットエニーナンバーの解の一つです。不思議ですが、これもなかなか難しい。頭のいい方法というよりは、直接的な解法で、結構ハードな事を、次々やらないといけないため、これをそのままやってみたいとは思わないのですが。

7. Repeat card to pocket
現象/選んだカードが何度もポケットの中に移動する。

ホーミングカードの、マーロー流のやり方です。もちろんパームを使いますが、ミスコールを組み合わせたり、なかなか巧妙な手順です。パームのやり方がまた普通ではなく、見たら「うーむ」と言ってしまう事必至。このパームのやり方は価値があると思いますが(でも真似するのは難しそう……)、個人的にはフランシス・カーライルのシンプルな方法の方を取りたいです。

8. The invisible card
現象/5枚のカードを裏向きにテーブルに置き、そのうちの1枚を覚えてもらうが、カードを数えると4枚しかない。その状態で演者は選ばれたカードを言い当て、更に突然テーブルの上に選ばれたカードが現れる。

最初カードを選ぶところでは、見る側の思い込みを上手に利用しています。マイケル・アマーの「Card miracles」にも、同じ原理を採用していたトリックがあった記憶。そちらは予言もので、それも効果的ですが、こちらは見えないカードを言い当てて最後見えるようになるという演出が面白く、これは良い手順です。

最後のパームはなかなかハードルが高いですが、手順の途中で、そのパームをやり易くするための下準備をしている辺りが賢いです。やってみたくなる手順だと思います。


と、全8手順。映像はもちろん古いですが、何せマーロー自身の演技と解説が見られるのですから、大変貴重です。あまり知られていないトリックもあるため、新鮮に鑑賞できると思います。

ただ、マーロー自身の演技は正直面白いと言えるものではなく、解説も、トリックによっては非常に長いため(研究家のマーローらしいですが)、少々退屈を感じるのは否めないところです。

それでも、細かなところまで考えられたハンドリングや、技法に対するアドバイスなど、マーローのエッセンスをいくらか吸収するだけでも、自分の演技に生かせるところはあるはずです。

これは第1巻ですが、第2巻では、マーローがスポンジボールをやっているという、とても珍しいところも見られます。そのうちご紹介します。 

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