FC2ブログ

Coin magic (David Stone)

北海道はそろそろ冬の足音が近づいてきました。冬になる前に、何とか一度札幌に何箇所かあるマジックバーへ行ってみたいと思っているのですが、札幌での初めての冬で、何かと物入りなので(下関では、冬用のコートなんてなくても過ごせますからね)、しばらくは我慢です。

では今回のDVD紹介。デビッド・ストーンのコインマジック2本組の2巻目。デビッド・ストーンの演技はファンも多いですが、私は以前にも書いた通り、彼のコインの扱いがあまり好きではありません。が、手順はどれも一級品で、学ぶ価値のあるものばかりです。

それでは行ってみましょう。

Coin magic (David Stone)
1. Thank you for the tip
現象/相手の袖口など、何もないところから次々と4枚のコインを取り出す。

最初、パームした状態で相手の手を握るというのが、非常に効果を高めているコインプロダクションです。手法はシンプルでストレートですが、案外変に捻ったトリックよりも、こういうものの方が受けが良かったりするものです。角度にも強く、かなり実用的なトリックだと思います。


2. One way
現象/4枚のコインを使い、自分の手と相手の手の上で行うコインズアクロス。

シンプルな現象ですが、いくつかの技法を複合的に使う、なかなか大変な手順。4枚のコインだけでエキストラを使わないため、先ほどのトリックに続けて演じるのに適しているでしょう。

主にバッククリップを使います。何せ普通のコインズアクロスと違い、相手の手を使いますので、インパクトは非常に大きいでしょう。変に複雑なコイントリックより、実はスポンジボールの方が受けがよかったりするのですが、このトリックはスポンジボールに近い効果を持っていると思います。

また、ストーンらしいミスディレクションも上手く使っており、さすがと唸らされました。ただ、マニアックな目で見れば凄い事はすごいんですが、一般の人に当たり前のトリックしか見せない私は、1段目の移動は「フリクションパスでやれば簡単なんじゃない?」、2段目は「クラシックパームしてるんだから、そのまま指先にコインを取って、カップスサトルティでそれとなく手が空である事を示す方が楽なんじゃ?」と思ってしまいましたが(笑)。でも、練習してレパートリーに入れたくなる作品です。

3. Glove
現象/ティッシュペーパーを破って握りこむと、銀貨が出現し、更にティッシュペーパーは白手袋に変化する。その後右手と左手に握った銀貨と銅貨がなんども入れ替わる。最後は相手に2枚握らせ、1枚を抜き取るが、それでも銅貨と銀貨が入れ替わる。

カッパーアンドシルバーです。ダブルフェイスを使うのですが、両面を検めたように見える技法が面白い。これは覚えておく価値があると思います。

ダブルフェイスを使うため、非常にクリーンでインパクトのある入れ替わりを実現できています。白手袋が出現する前半のパートは、別にカットしても大丈夫なのですが(上着が必要になってしまいますし)、白手袋をはめる事で、交換の色の変化が際立っているという利点もありますね。本格的にマジックを演じる場面ならば、通して演じると面白そうです。

ダブルフェイスのロード方法もよく考えられているのですが、これは場所や条件も選びますから、テーブルやマットが使えない場合は、お好みの方法を使ってもいいと思います。後半のカッパーアンドシルバーの部分だけでも、大いに参考になる手順です。

4. I want you
現象/1枚のコインが空中から出現する。これを握るだけで2枚に増え、最終的には4枚に増える。

バックサムパームが登場します。「4枚をクラシックパームした状態で、1枚だけをフィンガーチップレストポジションに落とす」「バックサムパームのコインを瞬時に手の中に移動させる」など、これもなかなかハード。普通のコインプロダクションではなく、「1枚のコインが2枚に増える(分裂する?)」という見せ方は、音を効果的に使えていいですね。スムーズに見せるのは大変そうですが……。

5. Cash money
現象/4枚のコインが、次々とグラスの中に移動する。最後はジャンボコインが出現する。

エキストラを使わない上に、グラスを使ったコイントリックにありがちな「クラシックパームのコインを上からグラスに落とす」ということをせず、本当にコインが空中からグラスに入ったように見え、大変不思議です。ヴァーノンの「カンガルーコインズ」もそうですが、グラスを使ったコイントリックは、音が非常に効果的だなと改めて感じました。

4枚目の飛行は大胆ですが、初見では見事に引っかかってしまいました。技法の合間にこういう錯覚を上手く利用されると、本当に効果的ですね。

ジャンボコインの出現は好き好きでしょう。個人的には、このトリックのプロットからすれば、4枚が移動した時点でこのトリックは完結しており、わざわざジャンボコインを出すのは、ちょっと蛇足のようにも思えます。

6. Fire
現象/小さな紙片を燃やすと、コインが1枚現れる。そのコインが出たり消えたりを繰り返し、最後は紙幣に変化する。

最初のパートは当然フラッシュペーパーを使います。即興でやる場合は、お好きな方法で1枚目を現してもいいでしょう。そしてここで登場する技法は、フロントクリップとエッジグリップ、トーレスムーブ、それにワイプトクリーンです。ワイプトクリーンは、マイケル・アマーの方法ですね。

最後、ジャンボコインに変化するのはよくありますが、紙幣に変化するのは珍しいです。ちょっと意表を突かれました。ワイプトクリーンという技法は、やり過ぎると「妙に手をすりすりしている」になってしまうため、乱発は禁物だと思います。

トーレスムーブという技法は、私はこのDVDで初めて知りましたが、これは巧妙です。自然に見せるにはかなり練習が必要でしょうが、このDVDで紹介されている技法や手順は、どれも動画でしか見せられないようなものではなく、ちゃんと練習すれば実演で十分使えるものばかりですね。

7. Dr. Card & miss Money surprise
現象/2枚のカードの間から次々コインが現れ、合計4枚のコインが出現する。

ターンノーバードロップという技法を使っています。解説では透明フィルムを使ってくれており、とても分かりやすいですが、これもなかなか難しい……。4枚の出現が少しずつ印象が変わるように組み立てられており、上手くできれば、マトリックスへの繋ぎとしても最適なトリックになるでしょう。

8. Cocktail matrix
現象/4枚の銀貨と1枚の銅貨を使う。銅貨はポケットに入れておく。銀貨を使ってコインズアクロス風のコインアセンブリーを見せた後、最後は相手に3枚のコインを握らせ、1枚は演者が握ると、ポケットにしまったはずの銅貨に変化し、相手の手の中から4枚の銀貨が現れる。

ちょっと複雑なコインアセンブリー(チンカチンク)。銅貨を1枚入れた事で、少々現象が分かりにくくなっている嫌いがありますが、コインズアクロスのようなチンカチンクという変わったトリックです。ダブルフェイスを使いますが、上の「Glove」で解説されたのとは違う、ダブルフェイスの両面検めの方法が解説されており、これもなかなか面白い手法です。

そして、カードの技法であるオルラムサトルティをコインでやってしまうという(笑)。オルラムサトルティというよりフラシュトレーションカウントのような気もしますが、ダブルフェイスを使う時には、活用できそうな方法です。

チンカチンクのパートも、堂々とエキストラを使うと宣言し、そのエキストラを上手に現象に利用しているのが、賢い手法だと思います。そういうところは少し、マーローのカードマジック「ブラフエースアセンブリー」に似た思想を感じました。

9. Smile land
現象/コインが1枚出現する。コインの出現や消失を繰り返し、ジャンボコインに変化したり、ペンが出現したり、2枚目のジャンボコインが出現したりして、最後には現れた道具がスマイルマークになる。

ゴッシュマンピンチ(天海ピンチ)が出てきます。そしてストーンらしいミスディレクションも上手く織り交ぜられた大作手順。そしてスリービングも登場。簡単に演じられるようなものではありませんが、見ているだけでも壮観なトリックです。

ジャンボコインの技法各種も解説してくれており、これは結構貴重なのではないでしょうか。ジャンボコインのシャトルパスやジャンボコインのバニッシュ、ジャンボコインのワイプトクリーンなんて、なかなか見られるものではありません。全部の手順は演じなくても、一部を取り入れて自分の手順を作るのも面白いかも知れません。


以上9トリック。前作に比べると難しく、そう簡単には演じられないものが多いのですが、技法も多数解説してくれていますので、ストーンの2巻だけでもかなり勉強になると思います。

残念ながら、観賞用としてはあまり面白いDVDではありませんが、本格的にコインをやりたい方なら、ぜひお手元に置いておくべき1本だと思います。 

応援クリックしていただければ、励みになります

Basic coin magic (David Stone)

私の職場は病院のリハビリテーション室です。大抵のリハビリ室には、リハビリの道具としてジャンボトランプが置いてあり、時々それを使ってマジックを演じる事があるのですが(仕事の一環として)、演じるのはほとんどいつも、「Gemini twins」と「Untouched」です。

この2つは、技法を使いませんから、ジャンボトランプでも問題なく演じられる上、必ず受けます。偶然の一致と、カード当て(カード当てられ?)ですから、2つ続けても退屈しません。何より、私がほとんどトランプを操作しなくてもいいので、楽です(笑)。絶対に受けるトリックですので、演じた事のない方は、騙されたと思って一度演じてみてください。適切に演じれば、演じた方が驚くほどの反響があるでしょう(高木重朗さん風表現)。

さて、今日のDVD紹介です。デビッド・ストーンのコインマジックDVD。かなり売れたらしいですね。実を言いますと、私はデビッド・ストーンのコインの扱い方が、あまり好きではありません。直線的というか、硬いというか、突然動きが早くなったりするのが何か不自然で、見ていると段々疲れてくるのです。こういう、直線的で緩急がはっきりした動きを、「かっこいい」と感じる人も多いでしょうが、私はやはり、ロスとかアマーのような、柔らかくて自然なタッチの方が好みです。

とは言え、ストーンのディレクションコントロールは見事で、基礎的なマジックからそれが存分に取り入れられているのは素晴らしいと思います。技法だけでなく、このDVDを真剣に学べば、マジック全般において大事な技術が身に着くはずです。

なおこのDVDは、言語がフランス語と英語が選べます。デビッド・ストーンがフランス人ですから英語が吹き替えですが、聞きやすく、理解しやすいと思います。

では、行ってみましょう。

Basic coin magic (David Stone)

1. The wallet pen
現象/コインが消え、ペンのキャップの中から現れる。それが何度か繰り返された後、消えたコインがいつの間にかテーブルの上に置いてある。

最初からミスディレクションの使い方が強烈です。使っている技法はほとんど一つだけなのですが、ミスディレクションはもちろんの事、パームしているコインを密かに移動させるなど、初心者にはなかなかハードな手順だと思います。

上着がないと手順全部を演じる事はできないのですが、袖を使えない場合は、その箇所はカットしてもいいかも知れません。ラストの意外な出現も含めとても面白く、演じてみたくなる手順ですね。

2. A little trick
現象/1枚のコインがどこからともなく現れる。コインが出たり消えたりペンに変化したりして、コインはそのペンのキャップの中から出てくる。最後にはコインもペンも消えてしまう。

これも上着が必要です。一般向けのマジック書籍にも載っているような方法を使っていますが、ミスディレクションをきちんと操れば、こういう一般向けの本に載っているような方法も、一級品のマジックを作れる事が分かります。コインがペンに変化してしまう不条理感が面白いですね。

また、ストーンはラムゼイサトルティやカップスサトルティの使い方がとても上手いです。こういう検めは、過剰にやってしまうとかえって逆効果になりがちですが(「追われずして逃げるなかれ」と、アル・ベイカーも言っています)、彼の検め方はわざとらしくなく、実に自然です。大いに勉強になるでしょう。

3. Bridal journey
現象/1枚のコインが手から手へと移動する。次は2枚いっぺんに移動し、鼻の穴から落ちてくる。

非常にシンプルなコインズアクロスです。ストーンは最初に2枚のコインを取り出していますが、これはこのDVDの他の手順で説明されているやり方を使えばいいでしょう。

手順も基本的なものですが、サトルティの利かせ方が見事で、一級品の手順になっていると思います。動画でしか見せられないような手順ではなく、こういう細部まで考えられた実用的な手順を、さらりと自然に演じられる人こそが、本当の上級者、名人なのかも知れません。

4. Guarded hunt
現象/空の手からコインを取り出す。それをポケットにしまうが、また新しいコインが出てくる。それを繰り返した後、最後にはジャンボコインが出てくる。

ここで解説されている技法も基本的なものですが、覚えておくととても役に立つと思います。こういう縁の下の力持ち的な技法を、自然にできるようになりたいですね。ジャンボコインを取り出すタイミングもよく考えられており(何せ、それまで手順の中で、自然に手をポケットの中に入れますからね)、一般的なワンコインルーティーンでのジャンボコインの扱いより、やりやすいと思いますよ。

5. The H.P.C. travel
現象/片手に2枚の銀貨、片手に2枚の銀貨と1枚の銅貨を握るが、一瞬で全部のコインが反対側に移動する。

ハンピンチェンムーブを使ったコインズアクロスです。ハンピンチェンムーブは、そもそもあまり自然とは言い難い技法ではありますが、この技法を自然に見せるストーンの一工夫が、よく効いていると思います。ハンピンチェンがあまり好きでない方も、ストーンの方法ならやってみたくなるかも知れませんよ。

6. Copper silvered
現象/銀貨と銅貨を取り出して見せる。片手に銀貨、片手に銅貨を握るが、それが入れ替わる。次は観客の手に1枚握ってもらうが、やはり入れ替わる。

カッパーアンドシルバーです。意外と凝った技法も使っています。特にストーンのコインスイッチ技法は、初めてやると結構難しいでしょう。手が小さい人だと一苦労かも知れません。クラシックパームでやるのが大変なら、サムパームにするのも一法でしょう。その場合は、その後の交換を、ロン・マスケーロードではなく、ヴァーノンロードにすればいいですね。

あるいは、ハーフダラーとイングリッシュペニーではなく、百円玉と十円玉で演じるというのも、一つの手でしょう。硬貨の大きさが小さいですから、このチェンジ技法もやり易くなるはずです(それでも難しいですが)。それなら即興でできますし、ありなのではないでしょうか。

この手順では、最初にコインの出現や消失も絡めていますが、コインの場合、あまり現象を盛り込みすぎると、見ている人が混乱を起こしかねないので、こういう交換現象はシンプルな方がいいような気もします。マジシャンの手の中で2枚のコインが入れ替わる現象だけでも、十分に効果的だと思います。その後の、観客の手の中のコインとの入れ替わりは、クラシックな手法です。

7. Star travel
現象/4枚のコインが、左手から右手に、1枚ずつ移動する。

エキストラコインを使わない、気軽に演じられるコインズアクロスです。ストーンは、ネクタイをスイッチ代わりに使ったり、空中からコインを取る真似をしたりして、演技に上手くアクセントをつけています。ただ、「音」を効果的に使うためだけに、片手にコインを持つというのが、少し不自然にも見えます。グラスを使ってみるというのも、手かも知れません。

8. The end of the world
現象/4枚のコインを示す。相手の手に3枚を握ってもらう。マジシャンは1枚を消してしまい、相手の手の中から4枚のコインが現れる。今度は1枚だけを使い、消失と出現を見せ、最後はジャンボコインに変化する。

これもシンプルな手順ですが、ストーンのスパイダーバニッシュはとても自然でいいですね。ストーンは、ちょっと固くて不自然な動作と、自然な動作がはっきり分かれている気がしますが、彼のスパイダーバニッシュは見習いたい動作です。

こういう、観客にコインを握ってもらい、それが増えたり減ったりする現象は、大変効果的ですから、ぜひ覚えておきたい小品です。ただ個人的には、観客の手にコインが移動して驚かせた後、コインの消失や出現、ましてやジャンボコインへの変化を見せるというのは、ちょっと蛇足のような気がします。

9. Never 2 without...4
現象/空中から次々にコインを取り出す。3枚目を取り出した時、「これは4枚目です」と言う。テーブルを見ると、既に3枚のコインが置いてある。今度はコインを1枚ずつ消していき、再び1枚ずつ出していく。3枚コインを出し、4枚目は出てこない。と思ったら、テーブルに既に4枚のコインが置いてある。

ミスディレクションの粋を味わえる、面白いトリックです。結構難しい事もやっていますが、原理自体はシンプルです。カードアンダーザグラスを始めとする、「いつの間に!?」系トリックが好きな方なら、気に入るでしょう。

なお、リテンションバニッシュとシャトルパスも解説してくれていますが、特にシャトルパスはやはりデビッド・ロスの解説で覚えた方がいいと思います。もちろんストーンも上手いのですが、より自然なのはロスの方です。


以上9作品です。ほとんどが一人で淡々と演じているだけなので、鑑賞用としてはあまり面白くはないのですが、それでもミスディレクションの使い方が非常に上手く、久々に見ると、同じところでまた引っ掛かったりします(笑)。

技法の「教材」としてなら、やはり私はデビッド・ロスをお勧めしたいのですが、サトルティやミスディレクションを上手く織り込んだ手順構成の上手さは見事で、それを味わうために買って決して損はしないでしょう(まあ、コインマジックファンは、ほとんどがこのDVDは持っていると思うのですが)。是非お楽しみあれ。 

応援クリックしていただければ、励みになります