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On the pass (Richard Kaufman)

今週は週初めからしばらく寒い日が続くようですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私の街下関は、雪がほとんど降らないのですが、今年は例年になく雪が多く降っています。積もりませんけどね。

さて今回のDVD紹介は、前回に続いて技法系です。特に若いカードマジックファンが大好きな、パス(またはシフト)という技法に焦点を当てたもの。さてどんなものでしょうか。

On the pass (Richard Kaufman)

このDVD、前半はひたすら技法の解説です。解説されているのは、クラシックパス、リフルパス、ジグルパス、ハーフジグルパス、クラシックパスフォールスカット、カバーパス、ハーマンパス、ターンノーバーパス、ダブルリフトシフト、ミッドナイトシフト、ハーフパス。

リチャード・カウフマン氏は名手ですが、カウフマン氏をもってしても、「今なんかやったよね?」という感は拭えません。もちろん、パスはミスディレクションが必須ですから、固定カメラで手元だけ撮ったのでは、そうなって当然なのですが。

まあ、YoutubeやTwitterでも、腕自慢と思われるマジックマニアの方々が、パスの動画を色々上げていますが、「上手く隠してるけど、何かもぞもぞしている」気配満点ですからね……。

とにかく、前回ご紹介したアッシャーツイストのように、角度に気をつけて上手にやれば、動作を完全に隠せるというものではなく、どう頑張っても何かやった気配を消せない技法であるという事を、このDVDでは再確認できます。

解説自体はそこまで丁寧という訳ではないのですが、クラシックパスやリフルパスは、カバー法も解説してくれていますから、参考になるかもしれません。パスという技法自体に興味がない私は、「うーん」という感じですが。

いくつか手順も解説されていますので、そちらの紹介も書いていきましょう。

1. False cut ace cutting
現象/デックをカットしたところから次々に4枚のAが現れる。

方法は極めてシンプルで、クラシックパスフォールスカットという技法を使ったエースプロダクションです。このフォールスカットが、難しい分とても自然に見えるなら大変結構なのですが、残念ながら、この技法がそもそもあまり自然に見えないような気がします(汗)。これなら、よくあるフォールスカットでいいような……。

2. A biddling vanish
現象/相手に一枚のカードを選ばせ、選んだカードを含む五枚を渡してもらう。その五枚をデックの中に入れ込むが、一瞬で選んだカード以外が消失する。

ビドルスルー、ビドルアクロス、ビドルトリックなどと呼ばれる作品のバリエーションです。観客役の女性が、しれっと空中リフルシャッフルをしているのに、ちょっと笑ってしまいます。

しかしこれも、パスの箇所がどうにも……。普通のビドルトリックの手順より、特にインパクトが強いと思えませんし、しかも終わった後「残り四枚はどうなったの?」という気持ち悪さがあります。スタンダードなビドルトリックで十分だと思います。

3. Every every where
現象/一枚のカードが、トップから現れたり、ボトムから現れたり、中程から現れたり、ポケットの中から現れたりする。

これもパスの箇所が……。現象はそれなりにインパクトがありますが、そもそもこのような、デックに注目が集まりやすい手順において、パスを使うというのが、ミスマッチとしか思えません。よく、アンビシャスカードにパスを使う人もいますが、同じ理由で正気の沙汰とは思えません(ふじいあきらさんレベルでパスができるなら別ですが)。

4. New cavorting aces
現象/二枚の赤いAをトップに、黒いAをボトムに置くが、それが入れ替わったり、赤いAがトップとボトムに、黒いAが中程に移動したり、それが更に入れ替わったりする。最後には四枚のAが揃ってデックの中程から表向きに現れる。

これも、デックをじっと見られる手順の中でパスを行っています。現象としてはそれなりのインパクトはありますが、あんな怪しい手つきの後に「カードの位置が入れ替わりました」と言われても、「いや、今なんかしたから、そりゃ入れ替わるよね?」となってしまいます。

つまり技法=現象であり、その技法がどうしても怪しさを消す事ができないものですから、とてもやってみたいと思えません。デックではなくパケットを使うとすれば、もっと楽にできそうです。

5. Passing along the vanishing aces
現象/Aが一枚ずつ消失した後、デックの中程から四枚揃って表向きに現れる。

消失にパスを使っているため、これも怪しさが拭いきれません。固定カメラによる映像ではなく、実演を目の前にすれば、もう少し違うのかも知れませんが、これなら、もっと楽に似たような現象を実現できる、エイペックスエーセズの方が遥かに実用的だと思います。


以上五手順ですが、残念ながら「これはパスを使えるようになってでも、是非覚えたい」というものはありません。やはり、パスは他の技法に取って代わられるべくして取って代わられた、古典技法だということがよくわかった気がします。

あるいは、どうしてもパスを使うのであれば、パスという技法は使い所とミスディレクションが本当に大事であるという事も、よく分かりました。このDVDのような、現象に直接的に利用するのは、賢い使い方とは言えません。

私自身はパスを使いませんが(ターンノーバーパス、ハーフパスなら時々使いますけど)、やはりパスは(私のような凡人には)要らない技法である、ということがよく分かったDVDでした。 

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