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Ultimate self working card tricks vol.2

去年の8月にゆうきともさんのレクチャーを受講したのですが、今年も11月の頭にゆうきさんが札幌に来られてレクチャーが行われる予定で、再びレクチャーに行ってきます。

今回はワークショップ形式で、参加者のち希望者の演技を見てご指導いただけるとのこと。プロに演技を見てご指導いただける機会なんて滅多にありませんから、こちらも申し込みました。どんな手順を演じるかは決めていませんが、演じ慣れていて、これから先もずっと演じるであろう手順がやはりいいですよね。なので、ツイスティングジエーセズやヴァーノンのトライアンフなど、クラシックトリックの中から何か、と考えています。

レクチャーの2日前には、東京で時々行われている「読書会&奇術会」も開催される予定で、こちらにも参加します。今から楽しみです。今回も当日のレポートを書きますので、お楽しみに。

では今回のDVD紹介。Big Blind Mediaのセルフワーキングトリックのシリーズ、第2弾。セルフワーキングが好きな私にとって、このメーカーは見逃せないDVDをたくさん出していますが、この第2弾も前作同様、見応えのある内容です。

では行ってみましょう。今回も案内役は、リアム・モンティエ、ライアン・シュルツ、ジェームズ・ウェント、イアン・モラン、それにオーウェン・パッカードです。

Ultimate self working card tricks vol.2

1. Mind mirror (Jack McMillan)
現象/相手にデックのトップから何枚かのカードを配ってもらい、次のカード(その時のトップカード)を覚えてもらう。テーブルに配ったカードをデックに戻し、デックを混ぜる。この状態で選ばれたカードを当てる。

もちろんセットが必要なのですが、かなり巧妙な原理を使ったカード当てです。実演ではロゼッタシャッフルを使っていますが、リフルシャッフルでも同じですし、実は2回シャッフルを繰り返すことすらできます。一種のキーカードロケーションとも言えますが、このような使い方をされると、到底キーカードには見えません。

セットもそこまで複雑ではないですし、覚えておいて損のない手順だと思います。マジシャンでも知らないと引っかかってしまいそうです。冒頭、相手にカードを選ばせるところは、何か上手い理由づけができれば、より自然でしょうね。

ただ、最初にカードを選んでもらうところは、必ず特定枚数目まででストップをかけてもらわなくてはなりません。自由に配らせるのではなく、「1から13までの数字を思い浮かべてください」とやるのも1つの方法ですし、ロベルト・ジョビーの「カードカレッジライト」に書いているように、想像上のサイコロを振ってもらうのも一法でしょう。

なお、ライアン・シュルツの「Miracles without moves」には、この手順の改案があり(1942)、更に巧妙な見せ方となっています。興味がおありの方はチェックしてみてください。

2. Convergence (Cameron Francis)
現象/赤裏デックと青裏デックを使う。赤裏デックの裏面には全部異なる数字が書いてある。相手に自由に好きなカードを言わせ、赤裏デックからそのカードを抜く。そしてそのカードを使って、もう1枚のカードを決める。決まったカードの裏に書いてある数字の分の枚数だけ、青デックからカードを配ると、最初に自由に決めてもらったのと同じカードが現れる。

ちょっと現象説明が込み入っていますから、文章で読むと複雑に感じますが、実際にはそこまで複雑な現象ではありません。非常にインパクトのあるカードアットエニーナンバー系の一致現象です。原理自体はシンプルでお馴染みのものを活用してのいるですが、見せ方の工夫でこれほどの現象になるんだなと感心しました。

その分、デックの準備やセットは大変です(1組全部の裏に数字を書かないといけませんからね)。当然これ専用に準備したデックが2つ必要です。最初のカードを選ぶ時は、より自然に見えるように、いくつかのやり方を解説してくれています。

なお、2つのデックの準備方法は別トラックで解説してくれています。準備の手間がかかりますから、カジュアルな場で演じるのには向きませんが、セルフワーキングにしてちょっとしたショーのトリも務まる、インパクトがあるトリックだと思います。

3. Stock exchange (John Guastaferro)
現象/演者と2人の観客でデックをよく混ぜる。演者はデックを2つに分け、2枚のカードを裏向きに置く。そして2人の客にそれぞれのパケットを好きなように表裏混ぜさせる。そして伏せておいた2枚のカードと混ぜたパケットのトップカードがメイトカードになっており、混ぜたはずの2つのパケットは全部裏向きに戻っている。さらに、両方のパケットを表向きにすると、一方は全部赤、一方は全部黒である。

これも現象説明が複雑ですが、錯覚を上手く利用しており、三段構えの現象が鮮やかです。ガスタフェローのトライアンフでも使われているアイディアを上手く使っており、一般の観客にはとても効果的だと思います。最初に3人でよくカードをシャッフルするので、ラストもかなり強烈です。

そのシャッフルでちょっとした技法を使います。まあ、これくらいならセルフワーキングの範囲内ということでしょうか。実際には演者が大事なところでカードを操作しているのですが、タイムミスディレクションも活用しており、上手く演じれば全部観客が操作した上で現象が起こるように見えます。その上で、畳み掛けるように起こる現象は非常に強力です。当然セットが必要ですが、他のトリックとの関係でこのセットができた時は、演じてみたくなります。

4. Sense-sational (Ryan Schlutz)
現象/演者と3人の観客でデックをよく混ぜる。1人の相手に数枚のカードを取らせ、その中の1枚を覚えてもらう。さらに2人目、3人目にも1枚ずつカードを覚えさせる。それをありえない方法で次々と当ててみせる。

これはかなり不可能度が高いカード当てです。複数の原理を組み合わせるだけで、ここまでの不可能現象ができるのかと感心しました。3枚のカードを当てるのに、全部違う原理を使っているのです。ようやるわ、という感じです。

この手順も、少しだけ技法を使います。ま、冒頭相手に混ぜさせるのを省略すればその部分の技法は要りません。その後ロゼッタシャッフル(リフルシャッフルでも可)しますから、さほど効果は落ちないとは思います。ただ後半でもちょっとした技法があります(別に難しくはないですが)。これをセルフワーキングと言っていいのか、若干の疑問を感じます(笑)。

解説では、2種類の裏模様のカードを使ってくれますので、カードの状態がとても分かりやすくなっています。準備が大変で手順も複雑ですから、気軽に演じられるようなものではありませんが、マジシャン相手でも上手くやればかなり不思議に感じられるはずです。

5. Poker pairadox (John Bannon)
現象/16枚の絵札とAを2枚ずつ見せていくが、どれもマーク、数字はばらばらな組み合わせである。相手に好きなカードを選ばせ、そのカードでおまじないをかけさせると、パケットのトップカードが選ばれたカードとメイトになり、更に残りのパケットを2枚ずつ開けていくと、全部メイトになっている。

「奇術入門シリーズ カードマジック」にも載っている、ニック・トロストの「絵札のパーティ」の改案と言える作品ですが、あちらはデックを使わねばならないのに対し、こっちはパケットだけでいいので、非常に演じやすいと思います。セットはもちろん必要ですが、デックから抜き出す時に堂々とやってしまえる範囲ですので、実用性も高いでしょう。ジョン・バノンらしい合理的なハンドリングです。

これもとある技法を使いますが、セルフワーキングの範囲内だと思います。実は相手に選んでもらったカード次第でマルディプルアウトになるのですが、どちらでも印象はほぼ変わりません。私も愛用している、優れたセルフワーキングパケットトリックです。

6. Four most (Peter Duffie)
現象/カードを3つの山に配っていき、自由なところでストップをかけてもらい、その場所にお札を挟む。それを3度繰り返し、デックを1つにまとめる。最後にもう一度カードを配り、ストップがかかったところにお札を挟んで、再びデックを1つにまとめる。お札の隣のカードを出して開くと、4枚のAである。

お馴染みディールドロップの原理を使っていますが、「数が大きい人が勝ち」というゲーム仕立てにしていることで、お札を使う理由づけになっているのがいいですね。最後は「引き分けでしたね」という見せ方です。セットも簡単で、実用的です。ジョン・バノンの「Move zero vol.1」に収録されている「Four sided Gemini」も同様の原理を用いた4枚のAの出現トリックですが、こちらの方がすっきりしていて好みです。

7. Password fallacy (Jim Steinmayer)
現象/9枚のカードの中から1枚を覚えさせ、相手の名前の文字数だけトップからカードを配って全体を重ねる。更に「my」「password」「is」に合わせて同じ操作をし、最後に再び相手の名前の文字数だけ同じ操作をする。最後にパケットのトップカードを開くと、選んだカードが現れる。

スタインメイヤーと言えば「ナインカードプロブレム」ですが、そのバリエーションです。9枚のカードにはセットが要らず、デックから出してそのままできますから、その意味では実用性が高いと思います。

ただ、英語だと「My password is」に合わせて配るので、自然なのですが、日本語では少しやりにくいですね。「my」と「is」のところは、どうやら同じ数字であれば大丈夫のようですので、合う言葉を考えれば日本語でもできそうです。あとは手順通りやれば出来てしまうので、手順を覚えるより、日本語でぴったりくる言葉を考える方が大変かも知れません(笑)。

8. Amara rises again (Ryan Matney)
現象/デックから1枚のカードを抜き出しておく。相手にデックを配らせ、好きなところでストップさせる。残りのデックを3つに配り分けさせ、出来たパイルを、花占いの要領で1枚ずつ減らしていくと、選ばれたカードの情報が分かる。そして、テーブルに残った3つのパイルのボトムカードは最初のカードと同じ数値であり、フォアオブアカインドが揃う。

説明でもお分かりのようにダウンアンダーを使います。この操作は好きではないという人も多いですし、濫用するものでもないと思いますが、「相手のカードを占い仕立てで当てる」という手続きに紛れさせていることで、不自然では無くなっています。この方法は、「マツヤマフォース」でしたっけ? 錯覚も上手く利用した優れた方法です。

ただし、いきなりカードの数字を使うのは、ちょっと不自然な気もします。あえて3回の操作では、カードがはっきり分からない方が、サスペンス的な盛り上がりがあるのではないでしょうか。あるいは演者のスタイルによっては、全く関係のない質問で笑いを取るのもありかも知れません。

セットも最小限ですし、相手にほぼ全部操作させますから、かなり効果的でしょう。とても「セルフワーキングらしい」セルフワーキングトリックで、使い勝手もいいと思います。

9. Blind choice (Roy Walton)
現象/よく混ぜたデックから、5人に4枚ずつのカードを渡し、よく混ぜさせ、裏向きのまま1枚をテーブルに出させる。残りのカードの表を見て、赤と黒のうち1枚しかない色のカードをテーブルの上のカードに重ねさせる。余ったカードは演者が集める。観客のテーブル上のカードを表にすると、全員2枚とも同じ色である。更に演者は残ったカードを裏向きのまま赤と黒に分けてしまう。

ウォルトンらしい「考えオチ」系の作品。ギルブレスの原理を使っていますのでフルスタックが必要ですが、そこまでややこしいスタックではありません。演者が裏向きのまま赤黒を分けるところも、この原理を非常に上手く活用しており、解説を見て感心しました。こういう、派手ではないものの、理性に訴える不思議さを持った作品は、かなり好みです。

このトリックも、原理を巧妙に利用した、大変セルフワーキングらしい手順。ある意味、観客よりも演者が不思議に感じるタイプの作品かも知れません(笑)。


以上9作品です。セルフワーキングというと、似たような現象が多くなることもありますが、1巻目同様バラエティに富んだ現象、原理を使っており、非常に勉強になります。軽く見せられるものから、ルーティーンのトリが務まるようなものまで色々あり、大変充実しています。

1作目が気に入った方なら、きっと気に入るのではないでしょうか。セルフワーキングがお好きな方はもちろん、セルフワーキングトリックにイマイチ魅力を感じない方にも、お薦めできる1枚です。何ら技法を使わずに起こる様々な奇跡。是非味わって実践してみてください。 

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iCandy (Lee Smith & Gary Jones)

久々のDVDレビューです。最後のレビューは去年の11月上旬ですから、5ヶ月近く間が空いたことになります。DVDのレビューってなかなか手間がかかるので、と思っていたらこんなに経ってしまいました。

久々のレビューは、先日のコメントでリクエストをいただいた「iCandy」です。このDVDは私が持っているDVDの中でも、一二を争うお薦めです。プロが現場で使っているトリックばかりですので、どれもこれも実用的。そんなトリックが多数(14+3)収められています。実演シーンも臨場感たっぷりです。

ただし、メニューの「play all」がなぜか使えませんので、1つずつ見ていかないといけないのがちょっと難点です。それと、照明のせいかカードの表面が見にくいところがあります。もう一つ、リー・スミスもギャリー・ジョーンズも左利きなのか、カードの取り扱いが左右逆ですのでご注意を。それでは行ってみましょう。

iCandy (Lee Smith & Gary Jones)

1. Scoop
現象/1枚カードを選ばせ、表にサインさせる。 そのカードを使って何度かアンビシャス現象を演じたあと、半分のパケットに相手のカードを入れて相手に持たせ、残りのパケットのうち1枚の裏面にマジシャンがサインをする。そうするとマジシャンのパケットに相手のカードが移動してきて、マジシャンのカードはポケットから現れる。更に、マジシャンのサインが相手のカードに移動して、両面にサインのあるカードになる。

アニバーサリーワルツ風ですが、カードの融合ではなくサインの移動現象です。文章で書くと結構ごてごてした現象に見えますが、実演を見ると鮮やかなものです。技法は、クラシックパスを使ったりパームを使ったり、なかなかハードです。特にアンビシャス現象でパスを使うのは、場合によっては全く不適ということも多いですから、他の技法に置き換えてもいいでしょう。テーブルが使えるなら、ダローが解説していたリフルシャッフルを使う方法でもいいでしょうね。

あるいは、前半のアンビシャス部分はカットしてしまうのも手でしょう。その場合は、ボトムにブレイクを作ってドロップスイッチでも使えば、後半の状態に持っていけると思います。個人的には、アンビシャスにあまりごてごて現象を付け加えるのは好きではないので、その方がすっきりしている気もします。

サインの移動時はかなりビジュアルで鮮やか。これはインパクトがあります。初めて見たときは驚きました。シンプルな方法なのですが、直後にマジシャンのサインが移動したカードの表面を示せますので、説得力も高いと思います。少し難易度は高いですが、レギュラーだけでできる強力なトリックです。

2. Coins/ring/purse
現象/左手に握った指輪と、右手の財布の中の3枚の硬貨が入れ替わる。

タイトルが少々味気ないですが、シンプルながら強力な効果を持つ入れ替わりのトリックです。音によるイリュージョンが大変効果的。ただ、独特な形状の財布が必要ですから(両側から押してぱかっと開く形状のもの)、アマチュアが実際に演じるとなると意外に大変かも知れません。指輪のバニッシュは、これは確かギャレット・トーマスの方法でしたかね?

また、セッティングの際の仕掛けも非常に考えられており、現場で活躍するプロのタッチを感じさせてくれました。技術的にはそこまで難しいという訳ではありませんので、ぴったりくる財布がもし手に入れば、演じてみたいトリックです。

3. TN'T
現象/ポケットに角の欠けたカードを出し、これはミステリーカードだと言う。1枚カードを選ばせ、サインさせる。そのカードをデックの中に入れるが、おまじないをかけるとトップに上がってくる。更にそのカードの角を破る。破ったカードの破片は観客に持たせる。そのカードの角を復活させ、ポケットの中のカードと観客の持っていた破片を合わせると、一致している。

これも文章で書くと、なんともややこしく不条理なトリックですが、実演を見ると意外にすっきりした効果を持っています。トーンドアンドレストアードカードにミステリーカードを合わせたような手順ですね。アードネスチェンジ(フーディーニチェンジ)を応用して、カードを復活させるところは面白いやり方です。

正確には、カードが復活した上で観客の破片が変化したという、ちょっとした矛盾があるのですが、そこは気にしなくても大丈夫でしょう。パームが必要ですが、自然にミスディレクションがかかるような手順になっていますから、心配はないと思います。

4. No sleep
現象/観客の手に1枚のAを置き、マジシャンは4枚のQを持っているが、それが一瞬で入れ替わる。

瞬き禁止の、鮮やかでかつシンプルなトリック。技法としてはそれほど難しいことはやらないのですが、最後はちょっと度胸が必要です。割と直接的な解決法ですし、あまりじっくりやるような動作ではありません。スピードが勝負です。ある意味「だまし討ち」のようなことをしますので、こういうトリックはオープニングで、相手の心の準備ができていない時に演じれば効果的かも知れませんね。

5. Eyephone 10
現象/1枚のカードを選ばせ、サインさせてからデックに戻す。演者はポケットから、電話のボタンが描かれたカードを取り出し、電話をかけて選ばれたカードをきき、選ばれたカードを当ててみせる。その後、デックから好きな枚数を数えてもらうが、その枚数目から選ばれたカードは出てこない。そこで演者が電話のカードを相手に渡して確認させると、裏面がサイン付きの選ばれたカードである。

これは面白いトリックです。当然専用の特殊カードが必要ですが、DVDに印刷用のデータが入っています(docデータなので、Wordがないと使えませんが)。プロット自体はミステリーカードですが、このように演出すると全く印象の異なるトリックになりますね。特殊カードは最後相手にあげてしまうこともできますから、記憶にも残るでしょう。プロが営業で使っているトリックだけあって、優秀です。ただ、特殊カードを作るには、ブランクバック、ダブルブランクが必要な上、演じると1枚は消費してしまうので、アマチュアがカジュアルな場で気軽に演じるようなものではありませんが。

途中、相手のカードを電話できいて言い当てる部分や、何枚目にあるかを当てる(と見せて当たらない)部分は、演者の個性によっていろいろと楽しめるでしょう。あっさりと落ちに導くのも一つでしょうし、観客とのやり取りを楽しむのも面白いと思います。

ボトムパームが必要ですが、それ以外には難しい箇所はありません。どうしてもボトムパームが難しいという方は、ギャリー・ジョーンズがパーム要らずの簡単ハンドリングを2種類紹介してくれていますので、そちらを使うのもいいでしょう。またDVD内のフォルダーには、キャメロン・フランシス、イアン・モラン、ジョン・キャリーのハンドリングも紹介されています。

6. 3C
現象/フラッシュペーパーを燃やすとコインが突然出現。更に観客の耳元から2枚目、3枚目のコインを取り出す。その3枚のコインを1枚、2枚と消してはポケットから取り出し、テーブルの札入れに並べる。3枚目のコインを消すが、そのコインは既にテーブルの上の札入れに乗っている。

見事な現象のコイントリック。フラッシュペーパーとライターという小道具にも、ちゃんと手順上意味があります。道具が使えない時には、適当な取り出し方法を使う手もあるでしょう。1枚目を鮮やかに出現させる準備をしながら、後の準備をしてしまう手順は、非常によく考えられています。

また、ギミックを使いますが、そのおかげでとても楽にできるようになっている上、とてもクリーンです。そしてラストはミスディレクションとギミックを活用した、見事なクライマックス。素晴らしい手順です。実は私はこの手順で使うギミックは持っていないのですが(コインはあまりやらないので)、ギミックが欲しくなりました。お薦めのトリックです。

7. Kick back kings
現象/相手に1枚のカードを選ばせ、デックに戻す。4枚のKのうち、赤か黒どちらを使うかをきく。使わない方はポケットにしまう。残った2枚のKの間にカードが出現するが、相手にそれを抜かせるとポケットにしまったはずの2枚のKである。ポケットの中からは選ばれたカードが現れる。

キックバック風エフェクトです。効果は大きいと思いますし、技術的にさほど難しいところはないのですが、個人的に「1枚だと思っていたカードが2枚だった」(=相手にダブルカードを渡す)というのは、あまりやりたくないのですよね。あまりやってると、「それ2枚重なってるんだろ」なんて言われそうで(小心者なのです(笑))。

現象が相手を混乱させるようなものである上、前半のハンドリングは、流れるように演じないとそれこそ見た方が訳がわからなくなる恐れもあると思います。私が演じるなら、あまりスピーディにやるのではなく、台詞で色々と伏線を張って、観客が理解しやすいように演出したいなと思います。

8. Kick back kicker
現象/相手に1枚のカードを選ばせ、ポケットにしまう。4枚のKを示すが、いつの間にか5枚になり、選ばれたカードが戻ってきている。と思ったらまた4枚に戻り、選ばれたカードは消えている。ポケットからカードを取り出すと、なんとそれが4枚のKであり、4枚のKのはずの手元のカードは選ばれたカードになっている。

かなり強烈な現象のトリックです。現象としてはジョン・キャリーの「24 seven vol.1」に収録されている「Kick - 4 queens」と同じです。細かいところは違いますが、流れもほとんど変わりません。

キャリーのトリックと一番異なるのは、ラストです。キャリーの手順では、手元のパケットから選ばれたカードが消えた後、ポケットから出したカードを相手に確認させます。それがQなので、「あれ、こっちですか? それともこれ?」とポケットから次々Qを出しますが、スミスの手順ではそのようなことはせず、手元のパケットから選ばれたカードが消えた後は、ポケットからカードを出し、それが4枚のQであることを示し、もともとのパケットが1枚の選ばれたカードであることを見せます。

パームのやり方も違います。こちらでは、ラストに一度に入れ替わりを示すために、瞬間的なインパクトが大きいですが、パームする際に特にミスディレクションがある訳ではなく、その分少し難しくなっています。キャリーの手順は、パームする箇所では相手にカードを確認させるというミスディレクションがあるため(確認したカードは、本来のカードと違いますからね)、難しくありません。「あれ、違いましたか? じゃあこれですかね?」と、1枚ずつポケットからカードを出してみせる、ちょっととぼけた演出もキャリーの手順の特徴です。

どちらを取るかは好き好きでしょう。一瞬の切れ味を重視したいならばこちら、人を食ったようなとぼけた不条理さがお好きならキャリー。私はキャリーの手順の方が好きですが、どちらも一長一短ある手順だと思います。お好きな方をどうぞ。

9. No moves coins thru
現象/4枚のコインが1枚ずつテーブルを通り抜ける。

お馴染み、コインズスルーザテーブルですが、なんとパームを使いません。なので大変説得力と不可能性が高く、マニアが見ても騙されてしまうでしょう。私も、解説を見て唸ってしまいました。リー・スミスは、解説の時思わず笑ってしまっています。通常の方法しか知らないと、確かにこれは笑ってしまうような手法です。

その分準備は必要ですから、演じる場面はかなり選びそうではあります。複数の演目を演じる場合、演技の途中で準備するのはかなり大変ですから、冒頭に演じて、ポケットの中などで密かに処理するしかなさそうです。おまけで、テーブルではなく相手の手を使って演じる方法も解説してくれています。ストリートなど、テーブルが使えない状況ではいいでしょう。

10. Vanishing point
現象/2枚のKをケースの上に載せておく。1枚のケードを選ばせ、デックに戻す。2枚のKが選ばれたカードを見つけると言ってケースの上に目をやると、Kは消えている。デックをスプレッドすると、2枚のKはデックの中に表向きで1枚の裏向きのカードを挟んでおり、それが選ばれたカードを挟んでいる。

これも大変強力なトリックです。大胆と言えば大胆な手順ですが、自然にミスディレクションが効く手順構成ですから、演じるに当たっては心配ありません。ただし、人によっては「あの瞬間に何かやったな」というのが明確に推測されやすいと思いますので(私の妻とか(笑))、意外と演じる相手は選ぶかも知れません。

ジョン・キャリーによる応用で、デックのトップに表向きに置いた2枚のKの間に、いつの間にか選ばれたカードが挟まれているというやり方も解説してくれています。レギュラーで行うモンキーインザミドルのような現象ですね。こちらは「いつの間に!?」というような面白さはないものの、怪しさが全くない優れた方法です。お好きな方をどうぞ。

11. 1 short of a full deck
現象/赤裏のデックから相手に表向きで1枚のカードを選ばせる。デックを裏向きに広げていくと、1枚だけ青裏のカードがあり、それが選ばれたカードである。そのカードはポケットにしまう。では、赤裏の選ばれたカードはどこにあるのかと、財布のジッパーを開くと赤裏の選ばれたカードが現れる。

ゆうきともさんの「シカゴクローザー」風の現象。カードにサインをさせることもできるでしょうが、そうするとトリックの味わいが変わります(予言というより不条理な物理トリックになる)。まあそれは好き好きでしょう。通常この手の予言現象ではフォースが必要ですが、この手順ではフォースが要りません。その分1枚ギャフカードを使いますが、ギャフのおかげで非常にクリーンな手順となっています。ただ、説明通りの現象を実現するには、財布にも仕掛けが必要です。

財布がない場合に、ポケットを使う手順も解説してくれています(私も、この手の財布は持っていません)。そちらでも効果は十分です。もちろん、財布が使える場合にはそちらの方がはるかに印象の強いトリックとなりますので、是非使ってみてください。

12. 3 some
現象/3人の観客に3枚のカードを覚えさせる。3枚のカードを抜きだし、3人に見せると、3人とも自分のカードがあると答える。次に3人にそのパケットのカードを1枚ずつ見せると、3人ともそのカードだと答える。そこで、財布を1人の客に持たせてから、3人に覚えたカードを尋ねると、3人とも同じカードを答える。手元にあった3枚のカードから選ばれたカードは消えており、財布の中から選ばれたカードが出てくる。

どことなくコロンビーニ風のトリックです。「どこにもあってどこにもないカード」風でもあります。手法としては目新しいものではないのですが、演出が面白いですね。このトリックでもパームを使います。パームを使わなくてもできなくはないですが、説得力が下がるでしょうね。パケットでのトップパームは結構難しいですが、ギャンブラーズパームでもできるんではないでしょうか。こういう演出命の作品は好みです。

13. 6 card dunbury
現象/お金を賭けるトリックをするといい、客の1人に紙幣を持たせる。6枚のカードを抜き出し、そのうちの1枚を覚えさせる。演者はパケットのトップから1枚ずつめくっていきながら、「これですか?」ときく。演者は次々カードをポケットに入れていき、残り1枚になった時、相手にカードを尋ねるが、それは既にポケットにしまったカードである。が、残り1枚のカードは確かに選ばれたカードである。

紙幣を使う演出が楽しい、ダンバリーデリュージョンのバリエーションです。ライディテクタータイプのトリックとも言えます。パケットで行うダンバリーデリュージョンと言いますか。技法としては難しいことは何もやりません。技法を使うのは1ヶ所だけです。すぐに演じられるでしょう。この手のトリックは演出が全てですから、嫌味にならないような、自然な演技を心がけたいものです。

最後、残った1枚を紙幣に挟むのは、いい見せ方ですね。トリックの構造としては単純ですから、台詞を自分なりに色々と工夫してみても面白いでしょう。

14. Pocket to pocket to pocket
現象/アンビシャスカードの現象が何度も繰り返される。サインカードがトップから現れるだけでなく、口にくわえていたり、右のポケットに入れたサインカードが左のポケットから出てきたり、それをデックに戻してもまたポケットから出てきたり、胸ポケットに入れたサインカードが左ポケットから出てきたり、ポケットからデック全部が出てきて手元がサインカードになったり、財布の中からサインカードが出てきたり大騒ぎ。最後はサインカード以外のデックが木のブロックになる。

なんともヘビーなトリックですが、現象が複雑なわけではないので、意外と観客には優しい気がします。何度もあちこちのポケットから出てくるので、不思議というより、お笑いでいう「天丼」のように、笑いを誘うトリックです。アマチュアがこれを全部演じるとくどいでしょうけどね。

ここで解説されている、ダブルカットからボトムカードをパームする技法は、かなり応用性が高いと思います。手順をステップバイステップで全部説明してくれている訳ではないのですが、パームを使ってポケットから出すところの解説は勉強になることでしょう。アンビシャスカードのルーティーンに取り入れてみるのもいいと思います。


以上、14プラスアルファの大ボリューム。解説で様々なアイディアを紹介してくれていますし、現象も多岐に渡っていて見ていても楽しめます。

何より、技法に偏るでもなく、仕掛けに偏るでもなく、原理に偏るでもなく、演出に偏るでもなく、それぞれがいいバランスでブレンドされたトリックが多く、どれも間違いなく実用的です。ただし、パームを使う作品が多いので、パームが苦手という方にはちょっと辛いかも知れません。パーム要らずの作品もあるのですが、せっかくですからこの機会にパームを練習して、このDVDに収められている、魅力的なトリックを身につけてみてはいかがでしょうか。

文句なくお薦めの1枚です。カード好きもコイン好きも楽しめるでしょう。是非ご覧になってみてください。 

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Coins through the table (World's greatest magic)

今回は、L&LのWorld's greatest magicのシリーズから、「Coins through the table」をご紹介です。コインズスルーザテーブルは、要するにコインズアクロスをテーブルの上下でやったものとも言えますが、ラッピングなどの独自のテクニックも使えますし、また現象を「移動」ではなく「貫通」にした事で、かなり印象の違うマジックとなっています。

最近では、3 flyに代表される、極限までビジュアルに見せるコインズアクロスが流行っていますが、私は何度も書いたように、そういうある意味で観客の理解力に負担をかけるマジックは、好きではありません。

コインズスルーザテーブルは、最近では流行りではないトリックかも知れませんが、あえてテーブルを使う事で、観客に想像の余地を残すところが気に入っています。

このDVDは、デビッド・ロス、ラリー・ジェニングス、ジョニー・トンプソンなど名手ばかりの演技で、大変豪華。こういう名人の演技を見ているだけでも、学べる事が多いでしょう。では始めます。

Coins through the table (World's greatest magic)

1. Coins through the table / one at a time (David Roth)
現象/四枚のコインが、一枚ずつテーブルを貫通する。

ラッピングとハンピンチェンムーブを使う、アル・ベイカーの古典的な手順です。私のお気に入りの手順でもあります。立って見せるタイプのコインマジック全盛の現代では流行らないトリックかも知れませんが、流石にデビッド・ロスは上手いです。ラッピングも実に自然。

技法としてもさほど難しいものは使いません。ロス自身の言葉通り「手順が巧妙なら難しい技法は要らない」という、お手本のような方法です。

そう言えば、荒木一郎さんは著書の中で、ロスの演技を「二次元的なコインマジック」と書いて、ちょっと見下している感じがしたのが気になります(しかも、技法を山ほど紹介しているのに、ロスのシャトルパスについてはクレジットなしという。どれだけロス嫌いなのか(笑))。私はその後に出て来たコインの名手より、ロスの演技が一番美しくて好きなのですが。

ともあれ、難易度も適度で現象も理解しやすく、この手の現象に取り組むならまず最初に覚えておきたい手順と言ってもいいものです。

2. Kangaroo coins (Gary Ouellet)
現象/四枚のコインが一枚ずつテーブルを貫通し、テーブルの下のグラスの中に落ちる。

ダイ・ヴァーノンの名手順、カンガルーコインズを、ゲリー・ウーレーが演じます。しかも、傍でなんとヴァーノン本人が見ており、最後にちょっとコメントしています。ウーレーも緊張したのではないでしょうか(笑)。ヴァーノンの隣にいるのが、若き日のマイケル・アマーのようにも見えます。

グラスを使う事で、音で貫通をアピールできるのが面白い手順。なぜカンガルーコインズという名前なのかはよく分かりませんが……。もちろんラッピングを使いますが、流石ヴァーノンの手順だけあって、よく考えられたトリックです。

手順の解説より、後半のヴァーノンの話の方が長いような気もしますが(笑)、動いてしゃべっているヴァーノンを見られるだけでも、貴重です(?)。

3. Coins thru table (Steve Dacri)
現象/四枚のコインが一枚ずつテーブルを貫通する。

スライディーニの手順だそうです。一発目からラッピングを使うのですが、その際の演者とテーブルとの距離や、手の位置などについても詳しく解説しています。四枚目の貫通の際に使うハンピンチェンムーブは、ちょっと普通と違うやり方です。演技のチャプターでは、そこがよく写っていないので、若干反則気味な気がしなくも(笑)。

4. Coins thru the table (John Mendoza)
現象/三枚の銀貨をそれぞれの手に握り、一枚の銀貨を片手に握ると、三枚のコインが一気にテーブルを貫通する。続けて、四枚の銀貨をテーブルに置いたままで、一枚ずつ貫通させていく。更に三枚同時の貫通を見せ、最後には財布から巨大なネジが出現する。

一段目は、ハンピンチェンを使ったスタンダードな手法です。二段目の、テーブルに置いたままで貫通させるというのは、どこか澤浩さんのサブマリンコインを思わせます。そのパートは非常に不思議ですが、当然?ギミックを使います。

三度も貫通を見せるため、演技としてはちょっとくどいような気もしますので、気に入った部分だけを使ってもいいでしょう。ラストの出現も、意外ではありますが、ここも好み次第でしょうか。

5. Coins through the table / Han Pin Chien method (David Roth)
現象/三枚の銀貨をそれぞれの手に握り、一枚の銅貨を片手に握ると、三枚のコインが一気にテーブルを貫通する。

メンドーザの手順の一段目と同じ手順です。が、ロスの方が説明が上手で演技も綺麗ですので、この方法を学ぶなら、ロスの解説の方がいいかも知れません。解説では何故か銅貨ではなく指輪を使っており、二回繰り返す方法を説明しています。二回繰り返すようなトリックではない気もしますが、覚えておいていいでしょう。

6. Coins through the table (Larry Jennings)
現象/四枚のコインが一枚ずつテーブルを貫通する。

ラッピングを使わない方法です。ボールトリックに使われる、ポップアップムーブというジェニングスの技法を使った、ちょっと変わった方法です。四枚目の貫通の時、音を上手く使っているのが巧妙です。ただ、ジェニングスは説明が大雑把であまり上手くなく、少々わかりにくいです。

7. Coins through the table (Johnny Thompson)
現象/四枚のコインが一枚ずつテーブルを貫通し、テーブルの下のグラスの中に落ちる。

アル・ベイカーの手順を基にしていますが、カンガルーコインズと同様グラスを使っています。ジョニー・トンプソンの演技は、流石の風格です。特に四枚目の貫通は大胆な手法ながら見事で、目を見張りました。スライディーニの手法だそうですが、こういう方法をさらりと使いこなすのが凄い。マジックが上手い人なら現代でもいくらでもいますが、こういう風格のある名人は、今の世にはなかなかいませんね。

後半は、ハンピンチェンを使ったコインズアクロス(メンドーザやロスの演技とほぼ同じ)を演じていますが、個人的にはちょっと蛇足のような気がします。

8. Coins through the table (David Regal)
現象/四枚のコインが一枚ずつテーブルを貫通する。

重厚なトンプソンの後は、妙に軽く騒がしいリーガル。なかなか演技が始まりません(笑)。リーガルの演技スタイルは賛否あるでしょうが、これは凄い方法です。この現象にはほとんど必須と言ってもいい、ハンピンチェンムーブもラッピングも使わないため、普通のコインズスルーザテーブルを見慣れた人も驚くでしょうし、解説を見ても手法の斬新さに驚く事請け合いです。

結構大変な加工が必要なギミックを使いますし、準備もかなり面倒ですから、アマチュアが気軽に演じられるものではありませんが、こういう方法があるのかと感心し、非常に勉強になりました。


以上八作品というか、八種類の方法の解説。現象はどれもほとんど同じですから、観賞用として楽しいDVDではありませんが、様々な方法が学べるため、これを元に自分なりの方法を構築してみても、面白いでしょう。

必ずテーブルを必要とする現象ですし、ラッピングを使う場合は座って演じなければいけないため、なかなかこういうトリックを演じる機会はないでしょうが、やはりこういう本格的なトリックも、ある程度は身につけておきたいものです。

コインズスルーザテーブルは、現象の鮮やかさの割りに、技術的に超高度という訳ではないので、本格的なコインマジックの入り口としてもいいのではないでしょうか(と、コインが苦手な私が言っても説得力なし(笑))。 

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Ultimate self working card tricks

最近更新頻度が落ちてしまって、すみません。一月から、午前だけ異動になった(部署兼務になった)上、三月上旬には引っ越すので、今色々と忙しいのです。

引っ越し先は北海道札幌市です。札幌市にはマジックショップがあるようなので、行ってみる予定です。手品サークルがあれば、参加してみたいですね。

では、今回のDVD紹介。ビッグブラインドメディアというメーカーは、セルフワーキング系のDVDに力を入れている印象です。このDVDは三巻組の第一巻。古今のセルフワーキングの名作を集めています。いい作品が多く、お勧めできます。演技、解説は数名のマジシャンが行なっています。実演の前に、考案者の紹介をしているのが好印象です。

では行ってみましょう。

Ultimate lf working card tricks

1. Contact colors (Aldo Colombini)
現象/デックの中から一枚のカードを取り出し、デックの中に表向きに入れておく。相手に一枚のカードを選ばせデックに戻す。デックを二つに分け、二つのパイルから一枚ずつカードを裏向きに配り、表向きのカードが現れたところに選んだカードがある。更に、テーブル上の四つのパイルのトップからAが現れ、更にその下のパイルを開くと、赤黒が綺麗に分かれている。

説明がちょっとややこしいですが、三段構えの鮮やかな現象です。前半の手続きは少し面倒ですが、後半は畳み掛けるように現象が起こるので、退屈にもならないと思います。

最初のカード当ての部分は、「Xマークの探偵」と同様の原理。いわゆるリモートキーカードですね。デックを丸ごとセットする必要がありますが、そこまで厳密なセットではないので、フォールスシャッフルも楽だと思いますし、インパクトがあるトリックなので、セットしておく価値があると思います。

2. Impossible (Mike Austin)
現象/相手にシャッフルしてもらったデックから十枚くらいのカードを取らせ、その中から一枚のカードを選んでもらう。選ばれなかったパケットをシャッフルしデックに戻してから、選ばれたカードをトップに戻す。ボトムの十枚くらいもシャッフルしてもらってトップに戻す。更にデックを好きなだけカットさせる。この状態で相手のカードを当てる。

手続きが面倒ですが、これは要するに、トップの部分もボトムの部分もキーカードにしていませんよ、という証明ですね。恐らく、高木重朗さんの「トランプの不思議」に収録されていた、「スコークのシックなトリック」と同じだと思います。

どちらかと言えば、キーカードの存在を知っているマニア向けのトリックのように思えますが、技法を使わない分、マニアでも引っかかってしまうかも知れません。愛好家の集まりで披露するのにいいでしょう。

3. Shuffling lesson (Chad Long)
現象/デックを二つに分けてもらい、分けたパケットをお互いシャッフルしたり配ったりカットしたりしてよく混ぜる。そのパケットをお互い四つのパイルに配り分けると、演者のパイルのトップからは四枚のK、相手のパイルのトップからは四枚のAが現れる。

古典的な原理を組み合わせていますが、「相手にカードの扱い方を教える」という演出が上手くマッチしており、驚くほど効果があるセルフワーキングトリックです。変にテクニカルなAの取り出しをやるくらいなら、こちらの方がよっぽど受けます。相手がカードを操作した上で奇跡的な一致が起こるというのは、やはり印象も強いですし、相手に花も持たせられます。

考えたのが、技巧派チャド・ロングですが、本当の技巧派は、こういう初歩的な原理も上手く使うものだなあと、感心させられました。

4. Henry sugar (Liam Montier)
現象/相手にデックをシャッフルしてもらい、演者は後ろ向きになる。トップから配って行き、絵札が出る度に演者はそのカードを言い当てる。再びシャッフルしてもらいそれを繰り返す。最後には一枚相手が選んだカードを当ててみせる。

リフルシャッフルの性質を上手く使ったカード当てです。が、一般の方でリフルシャッフルができる方はそう多くないはずなので(プラスチック製トランプならまだしも、紙製デックは難しいでしょう)、そこは演者が自分でやるか、あるいはロゼッタシャッフルを使ってもいいでしょうね。演出次第では、強力な効果があるトリックだと思います。

5. Pre-prefiguration (Larry Jennings / Mark Elsdon)
現象/シャッフルしてもらったデックから、予言のカードを一枚抜き出しておく。表向きにカードを配っていき、好きなどころでストップをかけさせる。二つのパイルの好きな方を選ばせ、そのトップカードを表にする。クラブの6が現れたとすれば、もう一方のパイルから「six of clubs」の綴りに従ってカードを配る。そうして出来た二つのパイルのトップからも6が現れる。予言のカードも6で、フォアオブアカインドが揃う。

ジェニングスの「プレフィギュレーション」の改案です。ただ、綴りで配るより、数字で配る原案の方が、日本では演じやすいような気がします。手順としては原案とほぼ同じです。相手の目の前で堂々とセットアップし、ケースバイケースを上手く使った、一致現象の傑作です。

6. Your ace are marked (Terry Lagerould)
現象/デックをリボンスプレッドし、「裏に印が付けてあれば、簡単にAを探せる」と言い、裏向きのまま四枚をアウトジョグする。そのままデックを表裏ばらばらに混ぜるが、おまじないをかけるとばらばらのはずが全て裏向きに戻り、四枚のAだけが表向きに現れる。

要するにスロップシャッフルを用いたトライアンフ現象なのですが、四枚をアウトジョグするのが素晴らしい工夫です。これにより、表裏を混ぜたという錯覚が非常に強まっています。テーブルが使える状況でないと演じられませんが、これは是非覚えておきたいトリックです。ただ、四枚をアウトジョグする所には、ちゃんと適切な理由付けをしておかないといけません。

スロップシャッフルは、変なフォールスシャッフルより、よっぽど「表裏ばらばらに混ぜた」という説得力がある方法ですから、もっと使われてもいいと思いますね。

7. Shufflebored (Simon Aronson)
現象/表裏をばらばらに混ぜたデックの状態が、数段階に分けて予言されている。

ふじいあきらさんがテレビでも演じた、「ごちゃ混ぜ予言」として有名なトリックです。予言の紙を開く度に新しい予言が出てくるというのは、アリ・ボンゴの方法です。

このシャッフルの方法は、ジョン・バノンの「プレイイットストレート」でも使われていますが、確実に表裏をばらばらに混ぜたという錯覚が非常に強く、絶大なインパクトを与えられます。相手にもよりますが「気持ち悪い!」と絶叫されるほどのパワーのあるトリックです。

三番目の予言「黒いカードは全部スペード」で、一枚だけクラブが混じっていて、四番目の予言で「ただしクラブの2は除く」というオチですが、私自身は最後に特定のフォアオブアカインドが残るような展開にします。その直前に、相手がフォアオブアカインドを見つけるようなトリックをやっておいて、「あなたの予言の方が一枚上でしたね」というような演出です。

何にせよ、結構複雑なセットが必要ですから、気軽には演じられませんが、本格的なショーのトリも務まりますから、覚えておきたいですね。

8. The 7/16 club (Alex Elmsley)
現象/あらかじめ予言を置いておく。相手に7から16の数を選んでもらい、その数に従って二つのパイルを作る。演者と相手がそのパケットを手に取り、一枚ずつ減らしていく。最後に残ったカードを開けると、演者の方がスペードのAで最強のカードである。予言を開くと、「演者がスペードのAで勝利する」と書いてある。

エルムズレイらしい数理トリックです。トリックとしては小品で、ダウンアンダーが好きではない人もいるでしょうが、カードゲームの話でもしながら演じれば、楽しいでしょう。なおこのDVDはイギリスのものですが、発音を聞くとやはり「エルムズレイ」ではなく「エルムズリー」ですね。

9. Impossible (Larry Jennings)
現象/相手に好きな数を決めさせ、その枚数のパイルを三つ作らせる。一つのパイルの上に残りのデックを重ねさせ、残り二つのパイルのうち好きな方のトップカードを覚えさせる。そのパケットをデックに重ね、残りのパイルはよくシャッフルしてデックに重ねる。ここまで演者は後ろを向いている。演者は前に向き直り、今までやった事をおさらいする。デックのトップから「Impossible」の綴りに合わせてカードを配ると、最後に相手のカードが現れる。

手続きが面倒ですが、ラリー・ジェニングスらしくない(?)頭脳派の手順です。別にImpossibleの綴りにこだわらずとも、何枚目にでも配置できるので、色々考えられると思います。

ただ、このやり方を使うなら、わざわざ最初に難しい手続きを踏まなくても、当てられるような気がするんですが……。そこは「当てるのが不可能に見える」という演出にこだわった、という事なんでしょうね。勉強になりますから、やり方は知っておいて損はしないと思います。

10. 4,5,6 (Al Thatcher)
現象/好きなカードを覚えてもらい、そのままデックに戻す。デックを5つのパイルに配り、選んだカードがどのパイルにあるかだけを聞く。そのパケットから相手に一枚ずつ配ってもらうが、マジシャンは突然ストップをかける。そこから相手のカードが現れる。

これは巧妙で不思議です。完全に引っかかりました。システムとかマークトカードでも使うのかと思いきや、何の準備も要りません。解説を見て唸ってしまいました。準備が要らないため、即興トリックとして極めて実用的です。少し慣れは必要ですが、すぐにコツは掴めると思います。

しかも、演者は最初から最後までほとんど後ろを向いて、相手に全部操作させて当てる事すら可能です。知らなければ、かなりのマニアでも上手く引っかかってしまう事でしょう。このDVDの中で、私が一押しのトリック。

それにしても、「4,5,6」とは何とも味気ない名前のトリックです。タイトルの意味は、解説を見て初めて分かったんですが、もうちょっと色気のあるタイトルにした方が、このトリックの魅力が伝わりやすい気がします。

11. Unbelievable (F.Michael Shields / Bascom Jones Jr.)
現象/デックを観客によく混ぜてもらう。ダイヤとクラブ、スペードとハートの二つのパイルに分け、それを演者と観客が一つずつ持つ。演者が表向きに、観客がその上に裏向きにカードを置いていき、テーブルに26のパイルを作ると、全てのパイルがメイトカードのペアになっている。

デック全部を使って、26組のメイトが現れるという凄い現象ですが、当然ながらデックを丸ごとセットしなければなりません。セットの方法も面倒ですから、ちょっと演じにくいかも知れません。

トリック自体は非常にシンプルです。何せ一組を全部セットしているのですから、ある意味当たり前の事が起こっているだけではあるのですが、これもリフルシャッフルの性質を上手に利用しています。リフルシャッフルって、凄く「完全にばらばらになった」と思わせられる混ぜ方ですからね。


以上十一作品です。有名な作品もありますが、現象も多岐に渡っていて、セルフワーキングにありがちな退屈さはありません。ただ、セルフワーキングトリックはやはり、DVDではなく本で読んだ方が分かりやすいかなと思いました。

面白い原理を使っている作品もありますので、マジックの技巧的な部分ではなく、原理の面白さが好きな方には、とても面白いDVDだと思います。私は三巻まで全部持っていますが、私にとっては、マジックは知的遊戯なので、このシリーズはとても面白く鑑賞できました。実用的なレパートリーになる作品も多い、お勧めのシリーズです。 

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