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Double take (Gregory Wilson)

札幌は、もうだいぶ気温が下がってきました。朝は20℃に満たない事もあります。数日暑い日もありましたが、もしかしてもう夏が通り過ぎてしまったのではないかとすら思わせます。

そう言えば9月の頭に、札幌のマジックバー「トリック」にて、山口県出身のマジシャン、まんぼうさんとジョニオさんのレクチャー&ショーがあるそうです。ジョニオさんとはお会いした事がないですが、まんぼうさんとは、所属していた山口マジシャンズチーム「レア」でお会いした事があります。ちょっと行ってみたい気がしています。

では、DVDレビュー。新作DVDがどんどん出る中、お構いなしに古いDVDを紹介するのが私流です。

Double take (Gregory Wilson)

このDVDは、カード技法の中でも最重要なものの一つ、ダブルリフトに焦点を当てています。解説はグレゴリー・ウィルソン。技法解説も多いですが、トリックも結構たくさん入っていますので、それをご紹介します。ウィルソンの英語は早口で聞き取りにくいですが、まあ要所が聞き取れれば分かる範囲でしょう。

1. A simple location
現象/1枚のカードを選ばせてデックに戻す。トップカードは選ばれたカードではない。そのトップカードを好きなところに差し込んでもらう。差し込んだ上のカードも下のカードも選ばれたカードではない。が、差し込んだカードがいつの間にか選ばれたカードになっている。

シンプルですが、いつの間にかカードが変化するという、かなりパワフルなトリックです。ジェニングスの「エスティメイテッドトス」風ですが、ジェニングスがかなり力技の技法を使ったのに対し、実に楽に解決しています。

ダブルリフトで表を見せ、そのカードが変化するというのは、様々なやり方があり、もちろんビジュアルに変化させる方法(ヒットメソッドとかツイストチェンジとか)もありますが、こういう不条理さを感じさせる方法の方が、ビジュアルな方法よりも時にインパクトがあったりします。私もお気に入りのトリックです。

2. A simple reverse
現象/1枚のカードを選ばせてデックに戻す。トップカードは選ばれたカードではない。ボトムカードも選ばれたカードではない。ところがデックを広げると1枚だけ裏向きのカードがあり、それが選ばれたカードである。

これまたシンプルなリバーストリック。技法はコントロールとダブルリフトだけです。マニアならば、別に解説を見なくても容易に追えるでしょう。でも、「何か見せて」と言われた時、さらっと演じられて重宝するのは、実はこういうシンプルなトリックだったりします。

ウィルソンも非常にさらっと演じていますが、シンプルなトリックだけに、マジカルジェスチャーのタイミングなど、演じかたには工夫をした方がいいと思います。これもお気に入りのトリックです。

3. A simple switch
現象/2枚のカードが入れ替わる。

シンプル極まりない入れ替わり(トランスポジション)のトリックですが、このシンプルな入れ替わりを無理なく構成しようとすると、意外と難しいものです。デュプリケートを使えば簡単なのですが。

デュプリケートを使わないこのトリックの源流は、おそらくジーン・ヒューガードの「インビジブルトランシット」ではないかと思われます。これも単純ですが馬鹿にできない効果があります。なおウィルソンは、冒頭3つのシンプルなトリックでは、あえて一番初歩的なダブルリフトを使っていますが、堂々とやるとこれでも立派に通用するんだなというのが分かります。

4. Phoenix aces
現象/空中から次々と4枚のAを取り出す。

ステージのカードマニピュレーションを思わせる華麗なプロダクショントリック。これは難しいです。パーム自体は手の大きさはあまり関係ないですが、これはある程度の手の大きさが必要な気がします。なんかあまりダブルリフトが関係ないような気もしますが(笑)。

5. Weighted aces
現象/スペードのAを上に、クラブのAを下にして、観客の手の上に乗せるが、いつの間にか2枚の場所が入れ替わる。もう一度同じようにするが、今度は2枚の黒いAが2枚の赤いAになっている。

デイリーのラストトリックのバリエーションです。前半で2枚の入れ替わりを入れています。重さの演出は、ダローも取り入れていたような気がしますね。ラストトリックは、原案通りの一段で終わらせてももちろん効果的で、変にいじると蛇足になる事が多いのですが(そういう改案も多い)、この改案は原案の良さを生かしつつ現象を広げた、悪くない改案だと思います。

「重いカードが下に下がる」という演出を入れる事で、原案の「相手の裏をかく」という見せ方が強調されているような気がします。私も愛用している手順です。

6. Two wrongs makes a right
現象/1枚のカードを選ばせる。デックのトップカードは選ばれたカードではない。それをテーブルに置き、今度はボトムカードを見せるが、それも選ばれたカードではない。2枚のカードをデックのトップに表向きに乗せると、一瞬で選ばれたカードに変化する。

タイトルを日本語にすれば「三度目の正直」と言うところでしょうか。説明で「カバーパス」と言っているように聞こえますが、あれはターンノーバーパスのように見えます。しかし別にパスなんて使わなくても、最初にダブルカットで2枚目にコントロールするか、3枚目にコントロールしておいて、2枚連続トップのカードを見せるのでも十分な気がしなくもありません。というか、そもそもこのトリックにおいてはパスは不適切でしょう。

だって、もしパスでコントロールしたのならば、観客からの見た目としては「選ばれたカードは真ん中にある」のですから、トップやボトムにあるはずがないではありませんか。これでは手順自体がナンセンスですし、「二度の間違いが正解を生む」というプロットが生きません。このトリックにおいては、パスよりも普通のコントロール技法の方が適切な気がします。

最後のチェンジ技法はなかなか大変ですが、上手に決まれば効果が高いでしょう。コロンビーニがやっていたように、デックを口元へ持って行って息を吹きかける、という動作の中でやるのもいいかも知れません。

7. Jumping gemini
現象/四枚のカードを使う。ハートの4を下に回しても、トップに上がって来る。ハートの4をテーブルにおいても、トップに戻って来る。四枚の同じカードを使っているかと思いきや、カードは四枚のスペードの10になってしまう。と思ったら、四枚のKになっている。四枚のKをデックに入れてカットするが、最後は四枚のKがポケットから現れる。

アマーの「Easy to master card miracles vol.6」にも収録されている、ダーウィン・オーティズのトリック。違いは、ラストにもう一段現象が追加されている事です(ちょっと「マジシャンvs.ギャンブラー」っぽい?)。

このトリックはそもそもかなり強力な現象が続けざまに起こるので、最後にポケットから出すなんてヘビーな現象を追加するのは蛇足にも思えるのですが、何せ原案では最後をフォールスカウントで見せねばならず、クリーンに終われません。この改案ですと、最後はクリーンに終われます。これは大きな違いです。

とは言え、クリーンに終われるようになった反面、原案より更にこってりしたトリックになってしまっているので、観客を疲れさせる恐れもある気がします。私がこういうのを演じる事はないと思いますが、原案だとどうにもラストが気になるという方は、試してみる価値のあるトリックだと思います。

9. Ambitious card
現象/デックの中程に入れたサインカードが、何度もトップに上がってくる。最後はカードケースの中からサインカードが現れる。

これは演技だけです。ダローの手順に近いところもあります。私はアンビシャスカードが好きではないので、ノーコメントで。

10. Bizzare double twist
現象/裏向きの2枚のカードの間に、もう1枚の裏向きカードを入れるが、振るだけで入れたカードが表になる。それを繰り返し、最後には真ん中のカードの裏色が変わる。

ここからはボーナストリックセクション。ポール・ハリスの「ビザーレツイスト」です。ウィルソンはテクニックはとても上手いのですが、テンポが早すぎてちょっとついて行きにくいところがあります。トリック自体は、さすがポール・ハリス。トリックとしては小品ながら、強烈なインパクトがあります。

11. Stop trick
現象/あらかじめ予言のカードを出しておく。カードを裏向きに配っていき、好きなところでストップをかけさせるが、ストップがかかったところから予言のカードのメイトカードが現れる。

説明だけだと、ヘンリー・クライストのトリックかとも思えますが、錯覚を利用したかなり大胆な方法を使っています。ですが、私は初見でも「あれ?」と思ってしまったので、ちょっと怖くてそのまま使いたいとは思いませんが、アイディア自体は取り入れてみたい気がします。

12. Double monte
現象/2枚の赤いAと黒いQを使う。テーブルにQを置き、手元に2枚のAを持つが、それがいつの間にか入れ替わる。

シンプルですが、意外と巧妙。ただ、スピーディにやらないと説得力がなさそうです(スピーディにやったらやったで、相手に現象が伝わりにくくて説得力がない気も)。解説でオルラムサトルティと言っていますが、あれはフラシュトレーションカウントなのでは……。


以上12作品(1つは解説のみ)。エンディングクレジットではNG集も見られます。ウィルソンほどの名人でもミスするんだと、ちょっと安心します(笑)。

ウィルソンの演技スタイルは、私の好みとは言い難いのですが、数多く解説されたダブルリフトは(その通り真似できるかどうかはともかく)、知識として知っておいた方がいいものばかりです。ダブルリフトは、基本技法ではありますが、全然簡単な技法ではありません(私は、安心して人前で見せられるまで、1年以上かかりました)。一度じっくり、ダブルリフトを振り返ってみるのもいいのではないでしょうか。 

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