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Impromptu packet tricks (Aldo Colombini)

本州はまだまだ暑いようですが、北海道は昨日今日と非常に涼しく、日中の気温は20℃そこそこ。今週はまだ30℃近くまで上がるようですが、もう秋の足音が近づいています。

そして今回は、コロンビーニのDVDをまたもご紹介。ただし、お馴染みの(?)廉価版DVDではなく、ちゃんとした構成の商品です。チャプター分けもきちんとしています(笑)。

パケットトリックを集めているのですが、ギャフカードを必要とせず、基本的には即興で演じられるものばかりです。考案者も、コロンビーニ本人の作品を始め、デヴィッド・リーガル、マックス・メイヴェン、J.K.ハートマン、カール・ファルヴスなど有名どころばかり。日本のヒロ・サカイさんの作品も入っていて、これもなかなか面白いです。

個人的にお気に入りの1枚でもあります。では早速行きましょう。

Impromptu packet tricks (Aldo Colombini)

1. For Marlo (David Regal)
現象/4枚のQと4枚の2を使い、それ以外に1枚のカードを選ばせる。4枚の2の間に、表向きに選ばれたカードを入れる。その状態でおまじないをかけると、パケットが入れ替わっており、更に4枚の2の間からは選ばれたカードは消え、4枚のQの間から選ばれたカードが現れる。

パケットが入れ替わり、その中に入れていたカードがもう一方のパケットに移動するという現象。実は単にパケット自体が入れ替わっただけで、選ばれたカードは移動していないのですが、パケットが入れ替わったことで一見移動したように見えます。省エネ二重現象と言えましょう。

手順は細かいところまでよく考えられています。「何故4枚の2?」と思われるかも知れません。「2」であることを利用した見せ方に、感心しました。ただ、私が使っているコパッグ310では、フォントデザインの関係でちょっと無理があるかも……。USPCCのデックなら問題ないと思います。

そして「トランプの友 知の五」でも登場した、ヴィーザーコンセプトという特殊なカウント技法を使います。エルムズレイカウントも別枠で詳しく説明してくれていますが、コロンビーニのエルムズレイは通常とは逆に左手に持って始めますので、そこはご注意(元々は左手に持って始めるものだったんですけどね)。

2. Oil and queens (Roy Walton)
現象/4枚の赤いカードと黒いカードが交互になっている。4枚をテーブルに置くと、元の4枚は黒いカードになる。テーブルのカードを開くと、4枚のQになっている。

有名な作品。ウォルトンの原案では8枚のはずが9枚数えますが、8枚しか数えません。ベンディックスの改案ですね。コロンビーニの演じ方は、ちょっとあっさりしすぎている嫌いがありますが(観客を前にしていたら、彼ならもっと面白い見せ方をしてくれるのでは)、オイルアンドクイーンズでは、原案ではなくこちらを覚えた方が絶対にいいと思いますので、その意味では価値ある改案だと思います。

もちろん、ハーマンカウントについても非常に詳しく説明してくれています。細かいアドバイスもありますので、ハーマンカウントがいまいち苦手という人にも、大変勉強になるでしょう。

3. Shiftless royalty (Robin Robertson)
現象/あらかじめ8枚のカードを抜き出しておく。1枚のカードを選ばせ、デックに戻させる。抜き出しておいた8枚のカードは、4枚のKと4枚のQであり、裏向きのQの間に表向きのKを交互に挟む。そしてパケットを一度カットすると、パケットの中程に表向きで絵rばれたカードが挟まれており、その両側に4枚のKとQが綺麗に分かれている。

プランジャーの原理を応用したトリック。技法としては難しくはないのですが、カットしたように見せるにはそれなりの練習が必要だと思います。かく言う私も初見で、「あれ、抜き取って重ねたのでは」と思ってしまったので、かなり上手くやらないと説得力を持たせられないかも、と思ってしまいました。現象は面白いのですが、何か現象に合うストーリーでも付けないと、ちょっと味気ないかも知れません。

4. Masque backward (J.K.Hartman)
現象/ハートのAから3とジョーカーを抜き出す。ジョーカーがハートのAから3に次々に変化しては戻る。最後は4枚ともジョーカーになったと思ったら、また全部元に戻る。

ユニバーサルカードと呼ばれる現象ですが、マックス・メイヴェンの「Masque」という作品のバリエーションなのでしょうか。メイヴェンの手順では、3枚は観客の選んだカードですが、こちらはハートのAから3を使うというのと、最後に全部のカードがジョーカーになり、また元に戻るというのが異なる点です。

選んだカードを使うかどうかにしても、ラストの現象にしても、これは好き好きかも知れません。ラストは「ジョーカーが変化する」ではなく「普通のカードが実はジョーカーだった」ということになってしまい、上手く演出しないと「結局どういうことだったの?」になりかねません。

なので見せ方はそれなりに研究する必要があるかも知れません。流れるように上手く演じられれば、面白くて効果的なトリックだと思います。

5. Curtain call (Max Maven)
現象/4枚のJとハートのAから3を使う。ハートのAを、Jのパケットのボトムに入れると、トップに上がってくる。ハートの二はデックの中に混ぜ込むがパケットの中に表向きで戻ってくる。ハートの3は裏向きでJのパケットに差し込むが消えてしまい、テーブルに置いておいたハートのAと2の間から現れる。

なかなか豪華な複合現象です。最初のDLが少し難しいかも知れません。トップに上がったのを復習しつつ次の現象のための仕事をするところは、非常に巧妙。それ以外にも手順は全体的に非常によく考えられており、ラストのハートの3の消失のパドルムーブ風の動作も錯覚が効いていて、大変効果的。さすがマックス・メイヴェンと唸らされる構成の上手さ。

ただ、現象は少し複雑でマニアックなところがあるので、ある程度マジックを見慣れた人の方が楽しめるかも知れません(私の妻に見せたら「なんかごちゃごちゃしてるね」と言われました。私の演じ方の問題かも知れませんが)。

6. Ultimate truth (Peter Duffie)
現象/10枚程度のパケットから1枚のカードを選んでもらう。パケットを2つに分け、4つの質問をしていくが、2つにしたパケットを押し込む度に、嘘か本当かをカードが教えてくれる。最後には選んだカードがずばり現れる。

ちょっと現象説明が難しいのですが、ライディテクター(嘘発見器)タイプのカード当て。これもプランジャーの原理を上手く使った、パケットカード当てトリックの傑作です。プランジャーの原理を利用した動きがある演出と、嘘発見器風の見せ方で、面白い見せ方になっています。

もちろんパケットの並び方はセットが必要ですが、画面上でも表示してくれるので分かりやすいと思います。ほんの一部だけ簡単な技法を使うほかは、ほとんどセルフワーキング。こういう、相手とのやりとりを楽しめるトリックは、意外なほどに使い勝手がいいものです。

7. That's not possible (Paul Gordon)
現象/4枚のAのパケットから2枚のAをテーブルに置く。4枚のKのパケットから2枚のKを先ほどの2枚のAの上に置く。手元のパケットにおまじないをかけると、4枚のKに変化する。テーブルに置いたパケットを開くと、ロイヤルストレートフラッシュの5枚になっている。

クイックで少し不条理な印象があるものの、インパクトのある現象のトリックです。その分セットアップは少し面倒ですが、最初からこの順にセットしておいてパケットケースなどに用意しておいてもいいでしょう。技法もエルムズレイカウントくらいで難しくありません。比較的簡単にできて非常に効果の高いトリック。お薦めです。

8. Oil and water (Karl Fulves)
現象/5枚の赤い数札と黒い数札を使う。1枚ずつは目印として置き、残りから2枚ずつの赤黒を交互に重ねるが、全部同じ色になってしまう。それを数回繰り返した後、赤いパケットにはガイドカードのの黒を、黒いパケットには同じく1枚の赤を入れ、両方のパケットを重ね合わせると、10枚が赤黒交互に混ざる。

オイルアンドウォーターというよりも、フォローザリーダー風の現象ですが、知的な味わいがある現象で、個人的には結構気に入っています。「Oil and water vol.2」に収録されている「Oil foil」とよく似ています(後半はほぼ同じ)。4回も繰り返すのがちょっとしつこい気がしていますので、私がこれを演じる時は2回しか繰り返しません。

そしてラストも、私はちょっと変えています。加藤英夫さんのオルラムサトルティの変形技法(ご本人は「オタックカウント」と呼んでいます)を使って、1枚の色違いを混ぜても、赤5枚黒5枚になったところを示し、直後に混ざっているのを見せます。何にせよ、程よい不思議を味わえるトリックだと思います。

9. Stingray (Aldo Colombini)
現象/3枚の選ばれたカードが、4枚のJと一瞬で入れ替わる。

シンプルな入れ替わりのトリック。ミラージュカウントという変わった技法を使います。ミラージュカウントは、動きとしてはオルラムサトルティとエルムズレイカウントを合わせたような感じですが、4枚のうち2枚しか見せないという、リズムカウントやジェミニカウントと同様の機能を持ちます。この技法を解説されているのはあまり見たことありませんので、ここで是非覚えてしまいましょう。ミラージュカウントさえできれば他に難しいところもありません。

10. Royal rumba (Jean Pierre Vallarino)
現象/1枚のカードを選ばせ、6枚のジョーカーのうち1枚をデックの上に乗せると、手元のカードがロイヤルストレートフラッシュになっている。

ここではルンバカウントが登場します(J.P.バラリノはルンバカウントの考案者です)。ルンバカウントは、フラシュトレーションカウントの変形とも言える技法ですが、少しフラリッシュめいた動きの中で行うことで、強い錯覚を生みます。これも知らない方は是非覚えましょう。本来はフラシュトレーションカウント同様、1枚を何度も見せる技法のはずですが、この手順ではジョーカー2枚を使うことで、更に錯覚を強めています。

手順自体は、ルンバカウントができれば簡単です。さすがにジョーカーが6枚もあるというのは普通の状態ではありませんから、演じるのであればパケットケースにでも入れておくのが良さそうです。

11. Wallaby (Hiro Sakai)
現象/4枚のAと4枚の黒い字ふだを使う。4枚のAをテーブルに並べ、手元のカードを1枚目のAの上に乗せるが、Aがトップに上がってくる。上がってきたAを2枚目のテーブルのカードの上に乗せ、更に手元の4枚のカードを乗せると、2枚のAが上がってくる。同様に、3枚、4枚のAがその度にトップに上がってくる。

パケットで行う、プログレッシブアンビシャスと言える内容のトリック。ヒロ・サカイさんの考案だそうで、DVDだと「旅人のすみか」に入っているようです。同様の動作を繰り返すことで現象が起きますので、覚えやすいでしょう。ただ、同じような現象が繰り返されますので、見せ方には工夫が必要かも知れません。エンドクリーンですから、その意味では演じやすいトリックだと思います。

12. French twists (Richard Vollmer)
現象/4枚の裏向きのAを数えるたびに、異なるAが表向きになる。続いては数える度に表向きのAが増えていき、4枚とも表向きになる。この4枚をデックの中に裏向きに入れるが、デックをスプレッドすると4枚とも表向きになって現れる。

豪華なリバース現象です。前半はヴァーノンのツイスティングジエーセズ風です。毎回カードのカウント方法が変わるので、意外と覚えるのが大変かも知れませんが、手法自体は難しいものではありません。ここではアスカニオスプレッドが登場します。

後半は、数える度に表向きのカードが増えたり、2枚の表向きのカードの組み合わせが変わったり、結構賑やか。パケットでのリバース現象って、地味な現象のことが多いような気がします。ですがこのトリックは、リバースだけの現象なのですが、段階を追って少しずつ印象が変わるように構成されています。ですから比較的長い現象ですが、工夫がされていて面白いと思います。

13. Modena aces (Aldo Colombini)
現象/4枚のKと4枚の黒い字札を使う。字札のパケットにKを入れるが、消えてしまう。字札を1枚テーブルに置いて、それをあと3回繰り返すが、最後に字札だったはずの4枚のカードは4枚のAに変化している。

ジャズエーセズというかアセンション現象ですね。ここで登場するのはリズムカウント。ただ、リズムカウントという、見た目明らかに普通ではない動作を何度も行うので、ちょっとそこが気にならなくもありません。とは言え、リズムカウントの動作で見せ方が統一されているので、その意味では不自然さはないような気もします。また、最後はかなりインパクトがある上に、クリーンに見せられますので、案外使い勝手がいいトリックかも知れませんよ。

14. Devil's elevator (Cervon / Vernon)
現象/4枚の数札とハートの2から5を使う。字札のパケットの2枚目にハートの2を入れるが、トップに上がってくる。ハートの3は3枚目に入れるが、やはりトップに上がってくる。これを繰り返す。

非常に論理的な手順。流石はブルース・サーヴォン&ダイ・ヴァーノンです。しかもエンドクリーン。技法はエルムズレイカウントくらいのものです。これもくり返し現象ですから好みは分かれるかも知れませんが、私はお気に入りです。

なお、ゆうきともさんがこのトリックを面白い見せ方で演じています。トップに上がる現象ではなく、「ギャンブラーは、トップカードを配ると見せかけて、2枚目や3枚目、一番下のカードを配るのです」と、ギャンブラーデモンストレーション風の見せ方をしているのです。これが非常に見事な見せ方で感心しました。最後は「一番下から配るのは簡単なので、片手でやります」とやっており、繰り返し現象にちゃんとクライマックスを作っているのが見事です。

ゆうきさんの演技は、Monthly magic lessonの動画で見られますので、興味がおありの方は調べてみて見てください。

15. Exit (Aldo Colombini
現象/4枚の赤と黒のカードを使う。4枚の赤いカードをテーブルに置く。4枚の黒いカードを数えていくと、数える度に裏向きになっていき、最後は全部裏向きになる。ところがそれを表向きにすると赤いカードになっており、テーブルに置いた赤いカードは黒いカードになっている。

リバースと入れ替わりの現象。マックス・メイヴェンの「Counter-revolution」(パケットトリックp155「赤と黒」)のバリエーションと思われます。前半のハンドリングが少々重たいのですが、後半は一気に現象が起き、鮮やかです。私自身は、前半をもっとシンプルに手順をいじって演じています。

リバースの箇所は、エルムズレイカウントを繰り返すだけというお手軽さ。しかもそこで、黒いカードが何度も見せられますので、その後の入れ替わりの鮮やかさが際立っています。なお原案では、リバース現象の前に「赤と黒どちらを使いますか?」と質問を入れています。好き好きと思いますが、質問を入れてみても面白いかも知れません。


以上盛りだくさんの15トリック。パケットトリックなのですが、当て物あり変化ありアンビシャスありリバースありトランスポジションありと、現象も変化に富んでおり見ていても楽しいです(ただし、観客に対して演じている訳ではないので、いまいちコロンビーニの良さが出ていない気がしますが)。準備もほとんど要らず、タイトル通り即興で演じられますので、使い勝手もいいでしょう。

そして、使う技法も多数解説されています。解説されているのは、アスカスオスプレッド、ブラウエアドオン、チャーリエシャッフル、クロスカットフォース、エルムズレイカウント、ハーマンカウント、ルンバカウント、ミラージュカウント、リズムカウント、ヴィーザーコンセプト。各技法の解説にもすぐにアクセスできるので便利です。

パケットトリックがお好きな方は、見てみる価値のある1枚だと思いますよ。 

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Oil and water part 2 (Aldo Colombini)

予告通り、コロンビーニの廉価版DVDシリーズ、オイルアンドウォーターの第2回です。今回も、小ネタあり、変ネタあり、大ネタありと、オイルアンドウォーター大博覧会のような様相。このプロットが好きであれば楽しめると思います。

尤も、似たような現象ばかりなので、ずっと見ていると疲れてくるのは相変わらずなのですが……(笑)。手法も様々ですので、オイルアンドウォーターがお好きであれば、きっとレパートリーに入れたくなるトリックもあるのではないでしょうか。ではご紹介です。

Oil and water part 2 (Aldo Colombini)


1. Diminishing oil & water (Aldo Colombini)
現象/デックを軽く混ぜて、4枚の赤いカードと黒いカードを取り出し、交互に混ぜるが分離する。カードを減らし、3枚、2枚と減らしても分離し、赤黒1枚ずつにしても分離(?)する。最後にデックをスプレッドすると、赤黒綺麗に分かれている。

1枚ずつ枚数を減らしてオイルアンドウォーターの現象を見せるというアイディアは、ハーブ・ザロウが元らしいです(とコロンビーニが言っています)。最初のシャッフルのアイディアは、「Killer card tricks」でも登場したもので、他の作品でも応用できるでしょう。こんな操作をされて、まさか赤黒綺麗に分かれているとは思いませんから、ラストのインパクトは強烈です。

パケット同士を混ぜ合わせる操作は大胆ながら、錯覚を上手く利用したもので、よく見ると変な動作なのですが、スムーズに行えば問題ないでしょう。その後の混ぜ合わせはクリーンです。また、1枚ずつの時の方法は、エドワード・マーローのやり方です(とコロンビーニが言っています)。もちろん事前のセットが必要なのですが、ちょっと変わり種のオイルアンドウォーターとして、覚えておくと重宝しそうです。

2. Try it (Karl Fulves)
現象/3枚の赤いカードを黒いカードを交互に混ぜ合わせるが、分離する。

エキストラなしの、3枚バージョンの極端にシンプルなトリック。一度分離が起こるだけです。表向きでカウントし、裏向きでまたカウントし、裏向きのまま配るというのは少し(現象のシンプルさに比べると)冗長な気もしますので、そこはもっとすっきりできる方法を考えてみた方がいいかも知れません。そこを除けば、混ぜ合わせも最後のディスプレイもクリーンです。他の手順に繋げる導入としていいでしょう。

ちなみに、カウント技法を行うところは、エルムズレイ式のピンチグリップではなく、ビドルグリップでやる手もあると思います。個人的には、そちらの方が自然でやりやすいように思いました。ビドルグリップでのエルムズレイカウントのやり方を応用するだけですので、よろしければお試しください。

3. Tossed salad (Doug Edwards)
現象/3枚の赤いカードを黒いカードを重ねると、交互に混ざる。3枚ずつのパケットに分けると、それぞれのパケットが赤、黒のカードに分かれる。そのパケットを重ね合わせると、再び交互に混ざる。

3段から構成される現象で、1段目の見せ方が独特で巧妙です。ただ、ハンドリングが自然かと言われると、ちょっと自然とは言い難い気がしますので、このハンドリングの原理を生かして、もう一工夫してみたい気がしました。

エキストラを使いませんし、難易度も低いですから、覚えて損のない手順ですし、使い勝手はいいのではないでしょうか。最初が「混ぜても分かれる」ではなく、「分かれていたのが混ざる」ですから、この手順から始めるよりは、I-Magicでも書いていますが、上の「Try it」に続けてみてもいいでしょうね。バランスのとれた良い手順だと思います。

4. Oil and aces (Richard Vollmer)
現象/4枚の赤いカードと黒いカードを交互に重ね、4枚はテーブルに置く。手元のカードは全部赤くなり、テーブルのカードは4枚のAになっている。

オイルアンドクイーンズ風ですが、手順はもちろん異なります。最初、スイッチにデックを使うのがちょっと個人的には趣味に合いませんが、オイルアンドクイーンズが「既に赤黒交互に混ざっている」ため、オイルアンドウォーターとは言えない感じのトリックになっているのに対し、こちらは最初きちんと赤黒4枚を示して混ぜ合わせますので、かなり印象が違います。これはこれでありな手順だと思います。

5. Oil foil (Peter Duffie)
現象/5枚の赤いカードと黒いカードを交互に重ね、2つのパケットに分ける。1枚は目印として前に置くと、どちらのパケットのカードも、目印のカードと同じ色になっている。目印のカードを、反対の色のパケットに入れ、2つのパケットを重ね合わせると、全部が赤黒交互になる。

オイルアンドウォーターというには、少々違うイメージの現象です。カール・ファルブスの手順に似たようなトリックがありましたね。特に後半はファルブスの手順そのままです。ダフィかファルブスのどちらかが、影響を受けたのかも知れません。特にラストの、インディケーターカードを反対の色のパケットに入れる箇所は、動作の理由づけが欲しいですね。

そこも含めて、全体的に何か演出でもつけて演じれば面白いかも知れません。パケットを2つに分けている時点で、「水と油を混ぜると、軽い油が浮いてくる」という現象ではありませんし。

6. Fixit mixer (J.K. Hartman)
現象/4枚の赤いカードと黒いカードを交互に混ぜるが分離する。これをもう一度繰り返し、最後には一瞬で混ざり合う。

標準的な手順なのですが、一度目と二度目で上がってくるカードの色が違うので、演出に若干苦慮しそうなトリックです。まあ、カードの色なんて見る側は案外気にしていないかも知れませんので、気にする必要はない気もしますが。

冒頭のパケット同士のカードのスイッチは、他にも応用できそうです。エキストラを使わない分、混ぜ合わせは非常にクリーンで、怪しいところはありません。二度目の混ぜ合わせも、解説されて初めて気付く巧妙さ。最後のアンチオイルアンドウォーターのところは、少し不自然な気もしますので、スムーズに演じた上で適切な台詞はつけた方がいいと思います。

7. Prelude & simple oil & water (Nick Trost & Aldo Colombini)
現象/3枚の赤いカードと黒いカードを交互に混ぜるが、トップ2枚は赤、真ん中2枚は黒、下の2枚は赤黒になっている。その状態でカードを検め、再び広げると赤黒が分離している。それを繰り返し、最後には一瞬で混ぜ合わせる。

ニック・トロストらしい手順です(コロンビーニがアレンジしているらしいのですが)。その分、ちょっと手順が複雑で、パズルのようになってしまっている嫌いはあります。特に冒頭のカードの示し方と、変な分離方法は独特です(どう意味付けすればいいんだろう(笑))。好みが分かれるでしょう。

エキストラも使わないといけませんし、ちょっと込み入った手順ですから、それだけの手間をかけるなら、もっとシンプルで分かりやすくて演じやすい、別の手順の方がいいと思うのですが、トロストらしい手順に触れられるという意味では、興味深いトリックです。

8. Emulsion cards redux (Paul Gordon)
現象/4枚の赤いカードと黒いカードを交互に混ぜるが、1枚をトップからボトムに回すと分離する。もう一度1枚トップからボトムに回すと、交互に混ざり合う。その状態で2つのパケットに分けると、またも分離する。トップ4枚をボトムに回すと、再び交互に混ざる。

これまた複雑な現象。ポール・ゴードンらしい(?)凝った手順です。最初の分離はトップからボトムに1枚回すところには、何か理由が欲しいですね。色々考えられるでしょう。他に、一見不要と思われる動作も入るので(パケットの上下入れ替えたりなど)、考えて演じないと観客が混乱しそうです。現象自体はクリーンで鮮やかです。

9. Mock oil & water (John McClure)
現象/3枚の赤い赤裏のカードと、黒い青裏のカードを使う。交互に混ぜるが裏が青赤綺麗に分かれる。表ももちろん分離している。そのパケットを重ね合わせるだけで面も裏も赤黒(赤青)交互に混ざる。

これはシンプルで面白いトリック。裏色が違う2種類のカードを使うトリックはPart 1にもありましたが、こちらの方がより分かりやすく、シンプルで魅力的です。裏色の異なる2種類のカードを使うことで、現象が複雑にならず、かえって分かりやすくなっているところが素晴らしい。錯覚を上手に利用している上に手順構成が上手く、現象と手順のバランスが非常に優れています。いわゆる「コストパフォーマンスの良い手順」です。

また、最後の確認は非常にサトルティが効いていて頭のいいやり方です。少しハンドリングに煩雑なところもありますが(トリック上仕方ないのですが)、現象も込み入りすぎておらず、これは演じてみたくなるトリックです。パケットケースに6枚のカードを入れておきたくなりますね。

10. Oil and kings (Stephen Tucker)
現象/青裏の赤いカードと黒いカードを4枚ずつ使う。赤黒が交互になっているが、テーブルに4枚を置くと、手元の4枚はAになっており、テーブルの4枚はKになっている。さらに手元のAは赤裏に変化している。

オイルアンドクイーンズのバリエーションと言えますが、かなり強烈な現象です。ぼーっと見ていたら驚いてしまいました(笑)。これだけの現象を実現しているので、ハンドリングは少々無理があるところもありますが、現象は魅力的です。

冒頭はハーマンカウントを使う手もあるでしょうが、手順中で自然に青裏を印象付けるようになっていますから、それは必要ないとコロンビーニが言っていますし、私もそう思います(追われる前に逃げるな、です)。 最後のスイッチもよく考えられており、説得力もあります。手順構成の妙に感心しました。当然のようにエンドクリーンではないのですが、演じてみたくなりますね。


Part 1と合わせて、オイルアンドウォーターばかり20作品。流石に、レビューを書きながら若干飽き飽きしました(笑)。オイルアンドウォーターは、ビジュアルよりはロジックに訴えかけてくるトリックですので、好き嫌いは分かれるでしょうが、「Mock oil & water」や「Oil and kings」は十分なインパクトがあるトリックです。

コロンビーニの廉価版シリーズは、全部が全部傑作ではないのですが、色々な作品の中からきらりと光るトリックを探すのが楽しく、時々手に入れたくなってしまいます。一般的に知られていないトリックも多いのですが、中には渋い傑作も入っていて侮れません。値段も安いですから、時々チェックしてみると、思わぬ宝物が見つかるかも知れませんよ。 

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Oil and water part 1 (Aldo Colombini)

珍しく二日連続の更新です。更新できるうちにしておかないと、また二月くらい更新が止まらないとも限りませんから(笑)。

そして今回もDVDレビュー。コロンビーニの廉価版シリーズの1つ。テーマはオイルアンドウォーターです。このシリーズは2本出ています。オイルアンドウォーターは好みが分かれるテーマで、「このプロットが嫌い」という人も結構見ますが、私は好きなテーマです。

WGMのシリーズでもオイルアンドウォーターは出ていますが、コロンビーニのこのDVDは、ほとんど知られていないトリックを紹介してくれていて、大変興味深いです。技術レベルもさほど高くなく、すぐにレパートリーに取り入れられる作品も多いと思います。レギュラーでできる手順ばかりで、使い勝手もいいでしょう。もちろん、コロンビーニですから、トリックごとのチャプター頭出しなどはできませんので、念のため(笑)。それでは行ってみましょう。

Oil and water part 1 (Aldo Colombini)

1. Fourteen card oil & water (Nick Trost)
現象/7枚の赤いカードと7枚の黒いカードを交互に混ぜ合わせるが、分離する。

最も基本的な手順。「奇術入門シリーズ カードマジック」に載っている、5枚ずつでやる手順と同じやり方で、枚数が違うだけです。使う技法は1つのみで実にお手軽ですが、基本として押さえておかねばならないでしょう。余計なことをやらない分、かえってクリーンに見えます。

なお、この基本手順に、氣賀康夫さんが一工夫して、とても効果的な手順を構成しておられました。)。どこかに動画があったはずだと思っていたのですが、氣賀さん自身の演技と解説の動画を見つけました。テクニックだけに目が行っていると絶対に思いつかない、大胆かつ効果的な見せ方の工夫に感心しました。大変魅力的な手順ですので、ぜひご覧ください。

2. Italian dressing (Aldo Colombini)
現象/4枚の赤いカードと黒いカードを交互に混ぜるが分離する。二度目は表を見せながら混ぜるが、やはり分離する。三度目は表向きで混ぜるが、それでも分離する。最後にパケットを一振りすると、赤黒交互に戻る。

私が知っているオイルアンドウォーターの手順の中で、一番気に入っているのが、このコロンビーニのトリックです。使う技法もそこまで難しくないため(エルムズレイカウントくらいです)、ハンドリングにも無理がありません。「裏向きで混ぜる→表を見せつつ裏向きで混ぜる→表向きで混ぜる」と、だんだん不可能性が高くなる構成や、流れの中で自然と検めを省略しているところが、非常に巧妙です。素晴らしい手順ですので、あまり他の人に知られて欲しくありません(笑)。この手順のためだけにこのDVDを入手する価値があります。

なお、私は少しハンドリングを変えています。コロンビーニは、テーブル上のパケットを示す時、リバースカウントして最後の1枚でテーブル上のパケットをすくい上げ、フェイスから4枚を広げて見せていますが、私はテーブル上のパケットをそのままエルムズレイカウントで見せています。

そして、2回分離を繰り返した後で、表向きに混ぜて見せ、それでも分かれるところへの繋ぎが見事です。易しくできてクリーンに見せられる点、だんだん盛り上がる上手い構成など、数あるオイルアンドウォーターの中で、私一押しの手順です。

3. Oil & queens (Roy Walton)
現象/4枚の赤いカードと黒いカードが交互になっている。4枚をテーブルに置くと、元の4枚は黒いカードになる。テーブルのカードを開くと、4枚のQになっている。

ここだけ、きちんとチャプターが設定されています(多分たまたま?)。多分これはウォルトンの原案ではなく、ベンディックスの改案と思われます。オイルアンドクイーンズについては、以前記事にも書きました。現象は凄いのですが、コロンビーニの見せ方はちょっと淡白です。まあ、観客に見せている訳ではないですから、こんなものかも知れませんが。

このトリックは、最初から混ざったところを見せる上、分離が一度もない点において、オイルアンドウォーターとは言えないような気もします(個人的には結構好きなトリックなんですけどね)。このトリックにおいては、ゆうきともさんの見せ方が卓越していますので、是非そちらをご覧ください。コロンビーニ同様の手順なのですが、演出が違うのと、途中にほんの一手間を入れるだけで、エンターテインメントという意味での面白さがまるで違いますから。

4. New wave oil & water (Val Le-Val)
現象/ESPカードを用いる。4枚の丸と波のカード使う。波のカードの間に丸を入れると、丸のカードが消えて丸のカードの元に移動する。それを繰り返す。

何故ESPカードを使うのかが謎ですが、よくよく見てみるとこの手順はほとんどジャズエーセズです。が、丸を油、波を水に見立てることで、ちょっと印象が違うトリックです。たまにはこんな毛色の違ったトリックもいいかも知れません。オイルアンドウォーターとは呼べないような気もしますが。

5. Separatic (Peter Duffie)
現象/3枚の赤いカードと黒いカードを、表向きで混ぜ合わせるが分かれる。もう一度混ぜるが、再び分離する。最後は一振りで赤黒交互になる。

表向きで混ぜ合わせるので、非常にフェアに見えます。ただ、全く同じ手順、同じ現象を二度繰り返すので、そこは好みが分かれるかも知れません。と言って、一度で終わったのでは少し味気がないような気もします。しかし、3枚で行う手順としては優れた手順の1つで、覚えておきたいトリックです。技法も、難しいものは全く使いません。

6. L'Huile & L'O (Didier Dupré)
現象/4枚の黒いカードと赤いカードを使い、混ぜ合わせるが分離する。その状態で一振りするだけで赤黒交互になる。

エキストラを使いません。そのため前半のハンドリングは独特で、少々苦しい箇所もあります。1段目の分離は無理がないのですが、そこからテーブル上のカードを示す箇所は、ちょっと無理がある感じもしました。 反面、最後の混ぜ合わせ(アンチオイルアンドウォーター)の部分は大変鮮やかで目を見張りました。エキストラがないので、当然最後はクリーンです。

7. Very nice oil & water (Richard Vollmer)
現象/4枚の黒いカードと4回カードを使い、混ぜ合わせるが分離する。再び混ぜ合わせるが、やはり分離する。もう一度同じようにやると、今度は全部赤いカードになる。

ゆうきともさんの「オールウォーター」風の手順です。途中、意味もなくカードをカウントするところが、ちょっと冗長さを感じさせるのですが、混ぜ合わせ方には怪しいところもなく、現象も鮮やかなものです。上手く台詞でカードのカウントを感じさせないように演じれば、十分実践でも使えるでしょう。

そして最後全部赤いカードになる部分はかなりのインパクトですが、当然どちらのパケットもフォールスディスプレイで見せざるを得ませんから、演じる場面や相手は、意外と選びそうな気もします。

8. Simple oil & water effect (Carroll Mounier)
現象/4枚の黒いカードと赤いカードを使い、混ぜ合わせるが分離する。おまじないをかけると赤黒交互に混ざる。

分離と混合が一度ずつ起こる、シンプルなオイルアンドウォーターですが、錯覚を上手く利用しており、このDVDの中ではかなり気に入っている手順です。さらっと1つ見せる時には、これくらいシンプルで、すぐにクライマックスに導かれる手順の方が、使い勝手がいいかも知れません。

途中の検めが、非常に巧妙です。エキストラも使いませんから、エンドクリーンでもあります。技法もエルムズレイカウントだけで難しくありません。私が、オイルアンドウォーターを何か1つという時、好んで見せる手順です。

9. Supreme oil & water (Mike Bornstein)
現象/4枚の青裏の黒いカードと4枚の赤裏の赤いカードを使い、混ぜ合わせるが表が分離する。再び混ぜるが、裏も分離する。もう一度混ぜるがやはり表が分離する。最後は相手に1枚のカードを選ばせるが、残りの裏色が全部同じになっており、選ばれたカードだけ裏色が異なる。もう一度裏色を確認すると、青赤が交互になっている。

裏色を使ったオイルアンドウォーター。裏色が異なることを上手く利用し、一本調子になることを防いでいます。裏色を対応させることで、表を見せなくても、裏の色が混ざっていることの証明になる(逆も同じ)というのが、よく考えられています。オイルアンドウォーターの中では、裏色も使うというのは変り種の部類ですが、1つはこういう手順を覚えておいてもいいかも知れません。

最後は、裏色を利用して、「エイトカードブレインウェーブ」をやってしまっていますが、これはちょっと蛇足のように思います。エイトカードブレインウェーブのような、単体でも効果のあるトリックを、オイルアンドウォーターに繋いでしまうのは勿体無いでしょう。

何より現象の方向性が違いますから、どちらの現象の印象もぼやけてしまう恐れがあるのではないでしょうか。お互いの現象がお互いを引き立てあるなら、違うトリックを繋げるのもありだと思いますが。そういう訳ですので、この手順を演じるなら、ラスト前で終わっておいた方が無難だと思います。

10. Oil and water (Stewart Judah)
現象/3枚の赤いカードと黒いカードを使う。混ぜるが分離する。それを三度繰り返す。

3枚バージョンの基本的な手順です。ハンドリングに無理がありません。その上、3度目の現象で、証拠が隠滅されており、非常に実践的です。と、賢い手順ではありますが、単に分離が3度繰り返されるだけですので、ちょっと単調な感は否めません。演じる場合は、他のトリックに繋げるなどした方がいいかも知れません。


以上10トリック。現象がどれもほとんど同じですので、続けて見ると結構疲れるのですが、同じ現象をこれだけ色々な手法で実現しているのを見ると、刺激になると思います。自分なりの手順を作ってみたい方には、かなり勉強になる1枚だと思います。

この1枚でも結構お腹いっぱいなのですが、「Part 1」という名前からお分かりのように「Part 2」もあるのです(笑)。次回はPart 2のレビューを書きますので、もう飽きたかも知れませんがよろしくお付き合いください(笑)。 

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Roped in (Aldo Colombini)

ブログタイトルはカードなのに、カード以外のDVDが3連続。今回はコロンビーニの「Roped in」をご紹介します。コロンビーニお馴染みの廉価版手作り風DVDですが、非常に素晴らしい内容。パッケージは安っぽいですが、映像は綺麗で見やすいです。

ロープマジックをやってみたい方は、いきなりダローの3巻組とかタバリとかサンダースを買うより、これを買いましょう。易しいものから本格的な3本ロープの手順(これがまた面白い!)まで揃っていて、経験者にも入門者にも最適です。ロープを消費しない(切らない)手順ばかりなので、極めて実用的でもあります。

コロンビーニの激安DVDは、ほとんどまともにチャプター設定がされていないんですが、これは珍しくチャプター分けもきちんとしてます(本来当然の事ではあるんですが(笑))。

では行ってみましょう。

Roped in (Aldo Colombini)

1. Rope puzzle
現象/2本の長さの違うロープが同じ長さになり、1本のロープになってしまう。

ビジュアルで、それほど難しくなく、しかもロープを消費しない理想的な手順。あっという間に現象が連続して起こりますから、掴みにもぴったりです。ただ、ロープを引っ張っていく必要があるために、端に結び目を作るという加工(加工という程のものでもないけど)をしなくてはなりませんが、それでもやってみたくなるトリックです。

手順は、簡単なものと少し難しいものを説明してくれていますが、簡単な方は本当に簡単。ロープ初心者でも安心。本格的な3本ロープは初めてだと大変ですが、これならどなたにも挑戦できると思います。良手順。

2. Missing link
現象/1本のロープを結んで輪にし、もう1本のロープをその輪に通して、端を結んでこちらも輪にする。鎖状になった真ん中の部分を握り、両側から引っ張ると、ロープは外れてしまう。

The essential Aldo Colombini vol.1」でも紹介されているトリック。これも非常にクリーンで素晴らしい手順。怪しい動作なく、相手の手の中でロープが外れてしまうので、非常に効果的。

やり方も決して難しくはないのですが、スムーズに怪しさなく見せるためには、少々練習は必要だと思います。ですが少し練習すれば大丈夫だと思います。コロンビーニは、解説がとても分かりやすいので、特にロープのトリックだと有り難さが実感できますね。

3. Silk sensation
現象/ロープの中央にハンカチを結ぶ。結び目はそのままで、ハンカチがロープから外れてしまう。

「Nothing here」(何もありません)で、自分の頭を指差すコロンビーニお得意のギャグで幕開けです(笑)。これまた、簡単にできてとても効果的。シルクのハンカチがベストでしょうが、普通のちょっと大きめのハンカチでもできそうです(私はステージマジックをやらないため、シルクハンカチを持っていません……)。

ハンカチとコインを使ったトリックや、カードスルーハンカチーフなどに混ぜても、面白い手順ができそうです。準備も仕掛けも要らずロープとハンカチだけでできる優れた即興トリックです。

4. Knotty knot
現象/ロープの結び目が移動し、結び目の色が変化する。そのまま結び目が移動し、最後にロープを解くと、結び目の部分だけ赤く染まっている。

スライディングノットです。スライディングノットって、現象としてはちょっと地味なんですが、色変わりや意外なラストがあるため、インパクトが大きいトリックでしょう。ダローのアクロバティックノットっぽいですね。なのでダローの道具がないとできません。

この手順では、ワンハンドスリップノットを作らなければならないため、初めての方だと、ちょっと慣れが必要かも知れません。逆に、この手法を知らない方だと大変勉強になりますし、他にも応用が利く技法だと思いますから、価値が高いものだと思います。その他、ロープの端のスイッチなど、結構凝った事をやる意外と難しい手順ですが、解説では細かい動作のコツまで説明してくれるので安心です。

5. Rope in
現象/3本ロープの手順。3本の異なる長さのロープが同じ長さになり、更に1本の長いロープになる。と思ったら、1本のロープのはずなのに端が4つになる。更にロープが2本になり、そのロープを結び合わせると結び目が取れてしまい、またもや1本のロープに戻る。

3本ロープ(プロフェッサーズナイトメア)のバリエーション。そもそも原案からして不条理なトリックなのですが、原案より格段に不条理です(笑)。そのため好みは分かれるかも知れませんが、面白いことは間違いありません。基本的な3本ロープの手順を覚えていれば、意外とスムーズにこなせるかも知れません。

解説では、色違いのロープを使ってくれているので、とても分かりやすいですよ。なお、元々の3本ロープの手順と比べると、ロープの構成が違います。そのため、原案を知っている人も「あれれ?」と幻惑されるかも知れません。誰が見ても面白いトリックですが、存外マニア向けかも知れません。

6. Professor’s math
現象/3本ロープの手順。1本の長いロープを切って3本の違う長さにするが、3本とも同じ長さになる。3本を結び合わせるが、結び目が消えて1本に戻ってしまう。その状態で結び目をロープに投げると、ロープに結び目がくっつく。その結び目を指鉄砲で打つと、結び目が取れてしまい、1本のロープに戻る。

これもプロフェッサーズナイトメアのバリエーションです。1本で始まり1本で終わる、まとまりのある手順。現象説明がややこしいですが、実演を見ると鮮やかなものです。コロンビーニはFISMで入賞したほどの実力者ですから、上手いのは当たり前なのですが、ロープとかリングの扱いは本当に綺麗ですね。

ロープを切る必要がある手順ですが、ロープを切るのには抵抗のある方もいらっしゃるでしょう(私もそうです)。その場合は最初から3種類の長さのロープから始める(つまり通常の3本ロープの手順)のも手だと思います。個人的には、この「1本で始まり1本で終わる」感じが好きなのですが。

最後の指鉄砲は面白いですしよく考えられています。普通の3本ロープしか見たことのない人も、これには意表を突かれるでしょう。私は初見で、「え!」と驚きました。

7. Sliding knot
現象/2色のロープに作った結び目が移動する。

スライディングノットの手順。適したロープを探すのがちょっと大変そうではありますが、面白いトリックです。演じるなら、前半のギャグもやってみたいです(笑)。ちょっとした仕掛けを使いますが、その分とても易しくできます。色違いのロープでなくても現象自体は起こせますが、色違いでないと効果は半減だと思いますので、やはりちょうどいいロープが欲しくなりますね。

8. Rope thru neck
現象/ロープの輪を四重にして首に巻きつけるが、一瞬で外れる。

ロープの首抜けです。天海ネックスルーとはやり方が違います。易しくできますし、途中までは本当に四重にするので、かなり説得力もあります。この手のシンプルなトリックは、いくつかやり方を覚えておいた方がいいと思いますし、即興でできますので、覚えておく価値があると思いますよ。

9. Penetrating Ropes
現象/2本のロープを3ヶ所で結び合わせるが、一瞬で外れて2つの輪っかになる。

一発芸のようなトリック。1カ所でちょっとしたムーブを入れるだけなのですが、それだけで見事に現象が起こります。小品ロープトリックの傑作だと思います。仕掛けのない同じ長さのロープが2本あるだけで即興でできますので、これも是非覚えておきたいですね。即興ロープトリックというのは、思いのほか重宝するものです。

ただし、スムーズに流れるように演じないと、よくよく見れば当たり前の事が起こっているだけですので、しっかり練習し、見せ方には研究が必要だと思います。

10. Tighter rope
現象/1本のロープを手バサミで2本にしたと思ったら1本に戻る。その状態でロープを結んで輪を作るが、またも手バサミで切れてしまう。そしてロープに2ヶ所ハンカチを結ぶが、引っ張るだけでハンカチが取れてしまう。その後も、結び目が取れたり結び目がロープに戻ったりし、最後には1本のロープに戻る。

ロープとシルクを使った、かなり本格的な手順。ゆっくり演じれば、数分のショーも可能でしょう。冒頭、手バサミで相手がストップと言ったところを切る部分は、非常に錯覚がよく効いていて、私も引っかかりました。

長い手順なだけに解説もちょっと複雑ですが、いつものようにコロンビーニは丁寧に色違いのロープも使って説明してくれていますので、恐れる事はありません。このような長くて本格的な手順も、1つくらいは身につけられればいいなと思っています(が、なかなか難しい(笑))。


以上10手順。簡単にできるものもあり、本格的な手順もあり、現象もバラエティに富んでいて、非常に素晴らしいDVDです。ロープマジックをちょっとやってみたいと思った方にも、最適です。

ロープは、カードのように系統立てて覚えるより、とにかくいくつかトリックを手に馴染ませる方が私はいいと思いますので、ロープマジックに興味のある方はぜひこのDVDを入手してみてください。値段も安いですし(と言っても以前よりは高くなってます。私が買った時は千円でした)、是非買いましょう。絶対後悔しませんから。 

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The essential Aldo Colombini vol.3

暑い日が続きます。私が住む札幌も、昨日は最高気温が33℃を超えました。職場には空調がないので、死ぬかと思いましたよ。皆様の地方はいかがでしょうか。

札幌は今週末には平年並みに戻るようなので、あと少しの辛抱です。こういう時は、部屋でのんびりマジックのDVDでも見るに限りますね。という訳で、久々のDVDレビュー。コロンビーニのシリーズです。私は、コロンビーニが大好きなのですよ。演者としてもクリエイターとしても、私の好みにぴったり来るというか。もっと長生きして欲しかった方です。

では行ってみましょう。このシリーズは全3巻、どれを見ても楽しめますが、この第3巻も期待を裏切りません。

The essential Aldo Colombini vol.3

1. Have a nice day
現象/1枚のカードを選ばせ、表にサインさせる。それをデックに戻してから4枚のカードを抜き出す。その中には選ばれたカードはない。うち1枚の裏面にスマイルマークのシールを貼るが、カードを数えるたびにスマイルマークのカードが増えていき、最後には全部スマイルマークのカードになる。再び数えるとスマイルマークのカードが減っていき、1枚になる。その1枚が、選ばれたカードである。

説明はちょっとややこしいですが、ちょっと不条理で非常に楽しいマジックです。シールを使わない方法が、「Baroque compositions」で、「Capriccio」として解説されています。技術的にもさほど難しくないですし、これは絶対一般受けするでしょうから、覚えておきたい手順だと思います。スマイルマークが増えていくところは、何か合ったストーリーでも考えて演じれば楽しいでしょうね。

2. Four red card trick
現象/4枚のジャンボカードを使う。表はどれもダイヤのQである。「とても有名な、4枚の赤いカードのマジックをやります」というが、なぜか1枚が黒い数字のカードになっている。そのカードを取り除き、「3枚でもできます」というが、またも1枚が黒い数字のカードになっている。そのカードを取り除き「2枚でも大丈夫」と言うが、また1枚が黒くなる。その1枚を取り除くが、最後の1枚も黒いカードになってしまい、全部黒いカードになる。「仕方ないので、4枚の黒いカードでマジックをやります」と言うと、1枚だけ赤い絵札になっている。

いわゆるホーミングカード。フレッド・カップスの演技で有名ですね。ジャンボカードで演じられるだけあって、技術的にそう難しくはありませんが、当然ながらそれなりの演技力は必須です。こういう手順はサロンでも重宝するでしょうし、やたらにテクニカルなものばかりを演じるより、こういうトリックを上手に演じられるようになりたいものです。

もちろん、レギュラーデックでも演じられる手順ですが、こういう作品は是非ジャンボカードで演じてみたいですね。ただ、ジャンボカードのダイヤのQを3枚揃えるのは、レギュラー以上に大変そうですが……。このトリックは、オチが面白く、やってみたくなる魅力があります。

3. Barefoot in the park
現象/デックから適当なパケットを取り出し、それをポーカーハンドを配るように5枚ずつの2つのパイルに配り、1つのパイルのトップカードを相手に覚えさせる。それを3人に対して行った後、無関係な観客にパケットを渡し、その中から3枚のカードを抜き出してもらう。それが3枚の選ばれたカードである。

風変わりな「カード当てさせマジック」。選ばせる時の手順がちょっと数理トリック風味ですが、第三者が3枚もカードを当てるというのは、かなりインパクトがあります。原理は単純で、要は当てる役の観客を即席のサクラにしてしまうというものですが、こういうやり方があるんだなと勉強になります。

4. Mini-Maxi
現象/ジャンボカードとミニカードの箱を取り出し、これは予言だと言う。レギュラーデックから2枚のカードを選んでもらう。ジャンボカードとミニカードの箱の予言と選ばれた2枚のカードが一致している。

現象説明は味気ないですが、演技はとても面白いです。これも、原理は他愛のないものですが、こういうトリックは、やはり見せ方ですね。ジャンボカードの予言の見せ方は、思わず笑ってしまいました。何より、大きさの違う3つのデックの箱が並んでいるだけで、絵として面白いです(笑)。

5. Get the ball rolling
現象/1つのボールが移動や消失、増加を繰り返し、3つのボールになる。最後には大きなボールになる。

立って演じられる、スタンダードな3ボールトリック。ポップアップムーブを上手く使っています。コロンビーニはリング&ロープのようなトリックも上手いですが、ボールを扱わせても綺麗なものです。ボール自体には仕掛けはないですし、立って演じられるので、こういうのを1つ覚えておけば重宝しそうです。コロンビーニ自身も、音楽をかけながら優雅に演じています。

ポップアップムーブは、「基礎から始めるコインマジック」の中で、二川滋夫さんがコイン技法としても解説されています。見た目独特な技法なので乱発するものでもないとは思うのですが、ジェニングスもコイン技法として使っていました。覚えていて損はありません。

6. Rubber illusion
現象/2枚の赤いカードの間にQを挟む。その状態でQを引っ張ると、Qが伸びてしまう。元に戻ったかと思った途端、今度はQが小さくなる。

売りネタの「伸びるクイーン」ではないのですが、仕掛けを必要とします。Qが伸びたところで、押せば伸びたまま動くので、説得力もあります。何より最後の小さくなるところは目を疑います。伸びるQの仕掛けと小さくなるカードの仕掛けが上手く融合していて、細かな部分のハンドリングもとてもよく考えられており、ミニデックが手に入るなら是非演じてみたいですね。

7. Packed bags
現象/相手によくカードをシャッフルさせ、1枚のカードを選ばせ、それを1組のデックの中にひっくり返しておく。もう一組のデックを取り出し、リボンスプレッドすると、1枚のカードが表向きになっているが、それは選ばれたカードではない。それを裏返すと「あなたはこのカードを選ばない」と書いてある。残りのカードを表向きにスプレッドすると、全てが選ばれたカードである。

二段構えのギャグが面白い予言トリックです。これくらい笑いを取れる予言トリックも、レパートリーに入れておきたいものです。要はフォースしているだけなのですが、やはりマジックは演出だなあと思わされました。コロンビーニのプロならではのタッチを感じられるトリックです。

最初のフォースは、少し手続きが複雑な気がしなくもありませんが、なかなか巧妙で、覚えておく価値のある技法だと思います。気になる人は、もっとシンプルなフォースに置き換えても十分トリックは成立するでしょう。

8. Throw in the sponge
現象/コロンビーニ流のスポンジボールルーティーン。

なぜかスポンジが半分になったり、これも演出が面白いスポンジボールルーティーンです。こちらでもポップアップムーブを使っています。その他の手順はスタンダードなものです。ただし、半分のスポンジボールがハーフダラーになるところは、日本では通じにくいとは思いますが……。

9. That's amore
現象/4枚のKを抜き出し、相手に1枚を指ささせる。演者が選んだQと選ばれたマークが一致する。それを4回繰り返し、全部のKとQが一致し、4つのKとQのパイルができる。4つのパケットを裏返すと、「LOVE」の文字が書いてある。

これも、取り立てて新しいトリックではなく、見せ方がすべてのようなマジック。これだけの現象を実現するために、意外と面倒な準備とギミックが必要です。その上凄く不思議かと言われると、そうでもない気がします。

しかしマジックって不思議さも大事ですが、ちゃんと起承転結がついた「展開のバランス」というものも大事なんだなと、プロの演技をみていると思わされます。マジシャンは「演出家」でもありますから、こういうストーリーテリングの能力というと大げさですが、そういう感覚は重要ですね。

ギミックのお陰で、見せ方は非常にクリーンです。こういうトリックは、演者のキャラクターを選びそうではありますが、裏に書いてあるメッセージを変えれば、トリネタにもなりそうです。「おしまい」とか(笑)。

10. Another's bet
現象/テーブルを使わない、ワンダラーとチャイニーズコインを使ったコインズアクロス。最後はチャイニーズコインが大きくなる。

シンプルなコインズアクロス。「ミリケンズトランスポジション」のように、2枚のコインの性質を上手く生かした手順で、テーブルを使わないので移動の様子もビジュアルです(ちょっと「3 fly」風?)。

コインの種類は選ぶでしょうが、日本円ならば500円玉と10円玉ではどうでしょうか。そうすると最後にジャンボコインにできなくなりますが……。ジャンボ500円玉ならありますから、500円の方を大きくする手順を考えてみるのも面白そうです。手軽に演じられる手順ですから、一部の手順だけでも取り入れてみてもいいでしょう。

11. Perpetual calender
現象/手帳のカレンダーに、日付毎に違うカードの名前が書かれている。相手に日付を決めてもらった後、その日付に書かれているカードの名前が予言してある。

カレンダーを使ったトリックって、時々見ますよね(エルムズレイの作品にもこういうのがあった記憶)。道具立ては面白いのですが、最初の日付の選ばせ方がかなり手間がかかるので、よっぽど上手く演じないと難しい気がします。逆に、演出次第ではかなりパワフルなトリックにもなり得るかも知れません。

12. Ulti-mate-M
現象/1人の観客に予言の封筒を渡しておく。デックを取り出すが、それはジャンボカードを4分割したカードである。3人の観客に1枚ずつカードを選ばせて、デックをリボンスプレッドすると、1枚のカードが表向きになっている。その4枚を開くと、3枚目までは同じカードだが、4枚めだけが違うカードである。失敗したかと思いきや……。

これも予言トリックですが、予想外のオチが笑いを誘います。もちろん特殊なカードを使うため、簡単には実演できませんが、自作するという手もあります(が、こういう特殊カードに加工の跡があると、ちょっと興ざめのような)。

フォースの方法は、言ってみれば「エメラルドアイルエーセズ」そのものなのですが、見せ方を工夫する事で、手垢のついたトリックが、ここまで印象の違う現象のマジックになるのかと驚かされました。コロンビーニタッチを存分に味わえる作品です。

13. Heart to heart
現象/ハートの2のカードにおまじないをかけると、ハートの形のスポンジが2つ出てくる。それを使ったスポンジボールルーティーン。

カードマジックかと思いきやスポンジボールという意表をついた構成。スポンジのパートも普通なのですが、形が変わっただけで新鮮に感じます。ハート型スポンジを使う事で、演出も一味違います。ごくごく当たり前の手順のトリックでも、これまた見せ方で印象が変わるのですね。


以上13作品。どれも、道具の面白さ、演出の一工夫で、とても楽しいマジックになっています。ともすればアマチュアのマニアは、「とにかく新しいトリックを」「ビジュアルでインパクトのあるものを」と考えがちですが、人に見せる時は、そんな事より大事な事がたくさんあることを、コロンビーニは教えてくれます。

特に、予言トリックでの工夫や見せ方は面白く、こういうのがプロの工夫なんだなあと思わされました。何よりこのシリーズは、見ていても面白いです(鑑賞して楽しいマジックレクチャーDVDって、あまりないですから)。特別な道具が必要な作品が多いので、レパートリーを増やしたい人には向きませんが、見て楽しい珠玉のトリックばかり。是非見てみてください。 

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