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Carey on! (John Carey)

カード以外のDVDのご紹介が3回続きましたが、私はやはりカードマジックが好きなので、カードの記事を書いているときが一番楽しいのです。今回は、かなり久々にジョン・キャリーのDVDのご紹介です。その名も「Carey on!」。

彼のDVDは、ジャケットデザインがなかなか洒落が利いていて面白いです。今回も相変わらず、キャリーは冴えています。しかも前作「24 seven」から比べて、収録作品は25%増の15作品。使う技法は標準的なものばかり。必ずや、レパートリーに入れたくなるトリックがあるはずです。

では、早速始めましょう。

Carey on! (John Carey)

1. Ambitious all the way
現象/4段からなるアンビシャスカードの手順。最後はトップからフォアオブアカインドが現れる。

無理のない技法で構成されたアンビシャスカード。解説の聞き手はリー・スミスのようです。最後に4枚現れるところは、何らかの理由づけをしたいところ。デックの上でサインさせるのが気になりますが、それ以外は標準的な手順。アードネスチェンジの要領で移動を見せるのが面白いです。

また、トミー・タッカーのパスは大胆ながら、錯覚をも利用した実用的な手法です。多分、パス系の技法の中で、最も簡単で実用的だと思います。何せ、私が動画に撮ってみて「あ、こりゃ使えるわ」と思ったくらいですから(笑)。

パス系の技法はアンビシャスカードには合わないと思っている私ですが、この技法ならばアンビシャスカードにも無理なく導入できるでしょう。最後でデックをねじり、螺旋階段に見立てるのも洒落た演出ですね。トミー・タッカーのパスについては、Tool boxで詳しく説明してくれています。派手さはないものの、実用的でいぶし銀の渋さを持つアンビシャスカードです。

2. Packet stroller
現象/4枚のカードだけでアンビシャス現象を繰り返し見せる。スペードの10が何度もパケットのトップに上がってくるのだが、4枚を見せると全部同じカードである。が、いつの間にかカードはロイヤルフラッシュの5枚になっている。

前半は「ジャンピングジェミニ」風ですが、後半はあっさりとクライマックスに導かれます。最後はクリーンに見せられますし、あちらより格段に簡単。私は「ジャンビングジェミニ」よりもこちらの方が好みです。最後、袖を引っ張るとカードが増えるところが面白い。シンプルでいいパケットトリックだと思います。

3. Illogical invisible countdown
現象/1枚のカードを選ばせデックに戻す。「見えないカード」を1枚抜き出し、それが相手のカードだと宣言する。その見えないカードを見て、相手のカードを言い当てた後、見えないカードを相手の選んだ枚数目に反対向きに戻すと、見えるようになって現れる。

何とも現象説明がややこしいですが、実際はややこしくありません。「24 seven vol.2」に収められている「An impossible conclusion」同様、「見えない相手のカードを抜き出す」というタイプの、カードアットエニーナンバー。一般の人には強力な効果のあるトリックで、私も愛用しています。

ブラウエリバースを使うのですが、この技法を「これが貴方のカードではないですか?」という確認として使っているのは、なかなか巧妙です。ブラウエリバースって、そのままだと明らかに普通ではない動作ですから、ちょっと使いにくいのですが、こうして理由付けをして手順に上手く埋め込まれると、立派に使える技法である事が分かります。

なお、演技ではコントロールに「Ambitions all the way」で使われた、トミー・タッカーのパスが使われており、グリンプスはその後の動作で行っていますが、解説ではオーバーハンドシャッフルピークコントロールを使っています。どちらでもやりやすい方を使って良いと思います。

ともあれ、「見えないカードが見えるようになる」というプロットが、インビジブルデックにも似たユーモラスを感じさせてくれます。面白くて効果的。

4. Kollosal sillier!
現象/相手にカードを選ばせそれを当てようとするが、マークは当たるものの、数字を外してしまう。財布の中に入れておいた裏色の違うカードを見せると、裏に選ばれたカードの数字と、演者が言った数字との差が書いてある。更にそのカードをデックのトップに載せるが消えてしまい、デックの中ほどから現れる。そのカードの両側のカードは選ばれたカードの数字とマークを示しており、そのカード自体が選ばれたカードになっている。

当然ある程度の準備は必要ですし、現象はかなり複雑なトリックですが、上手に演じれば相当パワフルだと思います。レッドホットママ風というか。現象が込み入っているので、見せ方は難しそうですが……。

ただ、裏色が違う予言のカードの両脇が、選ばれたカードの数字とマークというのは、少々やり過ぎにも感じられます。トップに置いた予言のカードが消えて、デックの中ほどから出てくるだけで十分インパクトがありますし、更にその後、その予言のカードが相手のカードになってしまうのですから、いたずらに現象を加えるのは得策ではないような気もします。

もちろん、効果的である事は間違いないと思いますので、ちょっとかしこまってテーブルマジックを演じるような場面で、分かりやすい演出をつけて演じてみたいトリックです。

5. Opening salvo
現象/4Aのプロダクション。デックをカットするとトップやボトムからAが現れる。更に、もう一度カットした場所から3枚目のAも現れ、4枚目は、最初に置いてあった関係のないカードがAに変化している。

シンプルな4Aの取り出しマジック。私が愛用している4Aプロダクションの1つでもあります。難しくなく、最後には一捻りもあるいいトリックだと思います。リチャード・サンダースのトリックが元になったようです。3枚目の取り出しは、錯覚が利いていていいですね。

キャリーは、4枚目で違うカードが出た時、最初に出たカードが例えばハートの9であれば、「9つ数えます」とやっていますが、私なら4枚目で出た違うカードがダイヤの5だとすると、「これは間違いではなく、5つ数えろという意味です」とやりたい気がします。好みの問題かも知れません。何れにせよ、簡単にできて効果的。覚えておきたいトリックです。

6. You have the power!
現象/4Aのプロダクション。観客の力で4枚のAを見つけ出す。

相手が4Aを見つけると言うトリック。観客が不思議な事を起こすというのは非常に受けがいいですから、覚えておく価値があります。言ってみればフォースを繰り返しているだけとも言えますが、途中で「観客の力で」カードがAに変化するという現象を挟んでいるので、一本調子にもなりません。最後の1枚のフォースも、応用範囲の広いものです。

キャリーは、最初の1枚はフォールストリプルカットを使っていますが、私がこれを演じる時は、最初の1枚はクロスカットフォースを使っています。その方が明確に「相手が1枚選んだ」という事が伝わるように思うのです。何にせよ、少ない労力で大きな効果が上がるトリックです。

7. Classical ambitions
現象/スペードのAから5を使い、トップへの移動やリバース現象の後、最後は5枚ともダイヤのAから5に変化する。

ジェニングスの「アンビシャスクラシック」のバリエーション。以前にも書いたように、私はこの作品は、サーカス一家のストーリーが大事だと思いますので、こういう現象だけの脈絡のないトリックは、ちょっと演じたい気がしません。5枚の変化のために、ちょっと込み入ったセットも必要ですし。

また、最後の変化のためにデックを使わざるを得ないというのも、私の趣味には少々合いません(原案では、最初以外はデックには触れませんし)。ただ、原案より易しくできるようになっているところもあるため、全部変化させずにこちらの手順を取り入れてみるのもありかも知れません(そのため、原案では1枚目の移動が1回で2回目が2回なのに対し、この手順ではそれが逆になっており、ストーリー上での意味付けを考え直さないといけませんが)。キャリーのマルティプルリフトは、パケットでも非常に綺麗ですね。

8. Summer of 76
現象/相手に1枚のカードを選ばせデックの中に戻す。黒い6と7のカードをデックの中に裏向きに入れると、いつの間にか表向きの黒い6と7のカードの間に相手のカードが挟まれている。

タイトルだけで手法が想像できそうなトリックですが、実用的で易しく、十分効果もあると思います。サンドイッチ状態を作る手法は賢く、他のトリックにも応用が利きそうです。こういう、錯覚を使い、簡単な手法で現象を起こすトリック、好きです。

どうしてもリラティブペアによる錯覚を使うのに抵抗があれば、ジョーカーを4枚使う手もありますが、こういう小品トリックにそこまでの手間を割くのもバランスが悪い気がしますので、自信を持ってリラティブペアを使いましょう。

9. A trick with no name
現象/適当に選んだ4枚のカードが4枚のAに変化する。更にその4枚のAをデック内にばらばらに入れ、デックを裏向きにスプレッドすると、なんとデックの裏色が変化しており、4枚のカードだけが元の裏色である。それがもちろん、4枚のAである。

これは予想外の現象で、思わず目を見開いてしまいました。カラーチェンジングデックなのですが、前半で自然にデックの色を印象付ける手順になっている上、まさかああいうオチが付くとは思わない構成になっていますから、ラストのデックの色変化の落差が強烈です。4枚のAを絡めたトリックにする事で、従来のカラーチェンジングデックの弱点を帳消しにしている、とても上手い手順構成です。

しかもこれがさほど難しくなくできるのです。通常のカラーチェンジングデックはあまりやってみたいと思わないのですが、これはやってみたくなるトリックです。

10. The beer glass effect
現象/1人目の客にカードを選ばせ、それをデックに戻す。2人目の客に好きな数を選ばせると、その枚数目から選んだカードが現れる。

カードアットエニーナンバーです。演者はデックを操作してはいるのですが、その操作は手順に紛れ込ませているため、相手の印象に残らず、かなりクリーンに見えます。最初の数字の選ばせ方が独特ですね。単に「10から20の間で好きな数を言ってください」とやるより、演じやすいかも知れません。

11. Bullet snatcher
現象/相手にカードを1枚選ばせ、デックに戻す。3枚のジョーカーを抜き出し、ジョーカーに相手のカードの情報を聞きながら、1枚のジョーカーを相手の手の上に乗せる。演者はジョーカーの情報で見事に相手のカードを言い当てるが、相手の手の上のカードがいつの間にか選ばれたカードになっている。

ちょっと「サインドカード」「ミステリーカード」風ですが、それらのトリックにありがちなすり替えを行わないので、ある意味楽に演じられます。そしてこの手順でもコントロールには、トミー・タッカーのパスが使われています。パスの関連技法なのに、コントロールに実用的に使えるというのが凄い。

ジョーカーが3枚というのがちょっと一般的ではない状況ではありますが、どの道一般の方は、デックの中に2枚ジョーカーがあろうが3枚あろうが、あまり気にしないものですから、そこは気にしなくても大丈夫でしょう(バイスクルだとジョーカーは2枚ですが、ナビゲーターだとジョーカーが3枚ありますし)。3枚のカードを抜き出す箇所のハンドリングは、「Opening salvo」同様です。楽に行えて、何となくばらばらの位置からカードを出したように見える、優れた方法です。

12. Whisper it softly
現象/4枚のQを抜き出して置いておく。相手に3枚のカードを裏向きのまま選ばせる。マジシャンはQに聞きながら、3枚のカードを裏向きのまま言い当てる。最後にはテーブルに置いてあるカードと、手元の4枚のQが入れ替わる。

ウィスパリングクイーン風のトリックに、入れ替わりを合わせた現象です。脈絡なく入れ替わるのも不自然ですから、トランスポジションの部分には、何かそれっぽいストーリーでもつけたいところ。入れ替わりは、定番のジョン・バノンの手法を使っており、難しくありません。

冒頭で4枚のQを取り出す時は、シンプルなプロダクションを行なっていますが、4枚のカードの出現って、ビジュアルに凝り過ぎたものよりも、これくらい軽いやり方の方が、案外使い勝手が良さそうだなと感じました(メインのトリックの前に、ビジュアル過ぎる現象を見せるのも考えものですよね)。

カードを選ばせる時は、一種のサイコロジカルフォースを使います。この種のフォースの中では難しくない部類に入ると思いますので、複数のカードをフォースする時は、試してみてもいいのではないでしょうか。

13. Going for a subway
現象/1枚のカードを選ばせる。デックの上からいきなり2枚のジョーカーが現れる。2枚のジョーカーをデックの中ほどに押し込むと、間に1枚のカードが挟まれており、それが選ばれたカードである。

シンプルでスピーディ、かつビジュアルなサンドイッチトリックです。このトリックでも、コントロールにはトミー・タッカーのパスを使っています。もちろん、ダブルカットでも問題ありません。

その後の、ジョーカーが現れる箇所では、アードネスチェンジを使うのですが、アードネスチェンジでジョーカーが現れた時には、既にサンドイッチの準備も終わっているという効率的な構成。ドリブルで2枚めのジョーカーを現すのは少しコツがいるかも知れませんが、ナチュラルブレイクができているはずですから、思ったよりは難しくありませんよ。

14. A little game of true or false
現象/テーブルに3枚のカードを裏向きで置いた後、1枚のカードを選ばせる。選ばれたカードについて、赤か黒か、数札か絵札かなどと質問し、嘘を答えても本当を答えてもいいと言うが、テーブルの上のアードが嘘発見器の働きをし、正確に選ばれたカードの情報を示している。最後は、3枚のカードを表向きにデックに入れると、デックのトップから選ばれたカードのフォアオブアカインドが現れる。

ライディテクタータイプのトリックです。このDVDで使われている複数の手法を組み合わせたようなトリック。最後、フォアオブアカインドが現れるのは、ちょっと蛇足っぽい感じがしなくもありませんので、そこはもっとシンプルなやり方とか、メンタルトリック的なやり方が好きなら、そう言う方法を考えてみても良いかも知れません。

15. 3 and easy
現象/デックを4つのパケットに分け、それを3人の観客と演者で1枚ずつ持つ。パケットをよく混ぜさせた上で、観客にボトムカードを覚えさせる。それを再びよく混ぜさせた後、1つにまとめる。その状態で、演者は選ばれたカードを言い当てる。

原理は誠に原始的で、フォースしているだけなのですが、パケットを混ぜさせたように見えるサトルティが、効果を高めています。この手法も、他のトリックに応用が利きそうです。

当てる際は、既に相手のカードは分かっている訳ですから、いろいろな演出が使えるでしょう。メンタル風にもできそうです。実際キャリーは、3枚目を当てる時には、相手に想像上のパケットから1枚抜いてもらう、と言う演出を使っています。個性に合わせて考えてみたいですね。

ところで、ジャケットでは「3 and easy」ですが、メニュー画面では「Free and easy」になっています。どちらでも意味は分かるのですが、どちらが正しいのでしょうか……(笑)。


以上、たっぷり15手順。その他、Tool boxとしていくつかの技法の解説があります。現象もバラエティに富んでいますし、難しい技法が必要なものはほとんどありません。ジョン・キャリー流炸裂とも言える15作品です。

知識がある人に演じて通じるようなタイプのトリックではないのですが、そう言う人はもっと別のマニアックなDVDを買いましょう(そういうマニアックなトリックは、今度は一般の人にウケにくいという欠点もあるのですが(笑))。とにかく「一般の人向けに演じるレパートリーが欲しい」という方には、大変お勧めの1枚です。 

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24 seven vol.2 (John Carey)

今年も大晦日を迎えました。我が家は昨日掃除も済ませ、今日はのんびり過ごしています。今年はマジックのDVDは三本しか買っていませんが、まともに消化しようとすると、このくらいの本数でもちょうど良いのではないかと思えます。

以前は、年に二十本も三十本もDVDを買っていた頃もありますが、そんなに買っても身につかないですからね。本当に優れたDVDを、選んで買う方が絶対に良いと、今なら思います。そのDVDも、クラシックが一番良いです。

では、今年最後のDVD紹介。前回の記事で書いた、ジョン・キャリーの三本目です。このDVD、私が買った時は二巻で5,000円くらいだった記憶があるのですが、今は一巻だけで4,000円くらいするようです。

24 seven vol.2 (John Carey)

1. Color opener
現象/デックを表裏ばらばらに混ぜたのち、相手に一枚のカードを選ばせる。おまじないをかけるとデックの表裏が揃い、更に選んだカード以外の裏の色が変わってしまう。

トライアンフとカラーチェンジングデックを合わせたような作品。天海ターンノーバー(天海リヴォルブ)と呼ばれる技法を使っており、難しくありません。また、表裏混ざっているように見せる方法や、裏色をさり気なく確認する方法が巧妙で、大変説得力があります。カードを選ばせる時、一回目は間違って裏を見せるのですが、それが絶妙な検めになっています。

その分もちろんセットは必要ですが、オープナーに使う事と現象のインパクトを考えれば、十分ありな範囲のセットアップです。最後の証拠隠滅の方法もよく考えられていますね。使う技法の関係上、テーブルを必要としないので、使い勝手も良いのではないでしょうか。

2. S.W.I. interchange
現象/四枚のAと四枚のQを使う。演者の四カ所のポケットに四枚のQを入れ、相手の手の上に四枚のAを置く。そのうちの一枚を入れ替えると、全てが入れ替わり、ポケットの中からAが出て来て、相手の手の上のカードはQになっている。

ポケットインターチェンジです。パームも何も使わず、非常に楽な方法で実現しています。「Handle with Carey」の「WTF interchange」と同様の、ジョン・バノンの手法を使っています。あちらは三枚の選ばれたカードでしたが、こちらはA四枚とQ四枚が入れ替わるので、あちらより演じやすいかも知れません。

前半、四枚のAを混ぜて、一枚を指差させ、Aのマークを当てさせるのが、手順として伏線になっています。これも、広いスペースを必要としませんし、準備要らずで角度にも強く、非常に実践的なトリックですね。

3. It's all a mystery
現象/テーブルに一枚の赤裏のカードを出しておき、相手に一枚のカードを選ばせデックに戻す。赤裏のカードをデックに差し込み、その両側のカードを確認するが、相手のカードではない。差し込んだ赤裏のカードを確認すると、それが相手のカードである。

ミステリーカード、サインドカードの現象です。ラストは、エスティメイテッドトス風でもあります。個人的にこの手のトリックが、デックを演者が持ったままカードの表にサインさせるというのが、どうもしっくり来ないのですが、手順としてはとても良くできています。赤裏の一枚を使う事で、分かりやすさも増しています。

カードのスイッチのために、原案では独特の方法を使いますが、こちらでは赤裏のカードを二回デックに入れてもらう作業が必要です。その箇所には何らかの説得力のある理由づけをしたいところです。

4. Gemini production
現象/デックを二つに分け、演者と観客がそれぞれを持ち、よく混ぜる。よく混ぜたパケットの好きな場所に目印のカットカードを差し込む。カットカードを差し込んだ場所のカードを確認するとAであり、残りのパケットのボトムカードもAで、四枚のAが揃う。

タイトルからもお分かりの通り、ジェミニツインズの原理を使っていますが、前半はチャド・ロングの「シャッフリングレッスン」ですね。相手がよく混ぜたパケットで現象が起こりますから、とても強い印象を持つトリックです。セットアップがとても巧妙で、感心します。

「シャッフリングレッスン」だと、四枚のAと四枚のKが現れますが、こちらは四枚のAだけですから、その後に繋ぐトリック次第で使い分けても良いでしょうね。

5. Homing in
現象/よく混ぜたデックから、13枚のカードを渡してもらう。その中から一枚を覚えてもらう。演者は一枚のカードをポケットに入れるが、それが間違いなく相手のカードである。それをパケットに戻し、おまじないをかけると、選んだカードが再びポケットに移動する。

ウェイン・ドブソンの手順に影響されて作ったトリックのようです。ホーミングカードをパームなしで実現してしまっています。ライブでは、13枚のカードが数えるたびに枚数が変わる、というネタを入れていますが、これは好き好きでしょう。このカウント技法も、別トラックで解説してくれています。

ただ、原案と違い、カード当ての要素を入れているんですが、これはいかがなものでしょうか。この要素を入れたお陰でパームが要らないので、その意味では意義があるのですが、観客からみると、ちょっと現象が分かりにくくなっている気がするのですが。相手のカードをわざわざポケットに入れる必要性も希薄ですし。

個人的には、やはりパームを使ったカーライルの原案の方が魅力的な手順に見えますので、私が演じるなら原案なのですが、パームがどうしても苦手という人には良い手順だと思います。

6. Impulsive revelation
現象/観客に選んでももらったカードを、別の観客が当てる。

古典的原理のセルフワーキングトリックですが、観客がカードを当てるという演出のため、非常に一般受けするでしょう。フォースの箇所は多少相手の呼吸を読む必要はあるでしょうが、その後のマジシャンズチョイスを含め、巧妙です。このような「相手が現象を起こしてしまう」トリックは、何かと重宝しますから、覚えておいて損はありません。

7. 3 thoughts 3 located
現象/三人の相手に覚えてもらったカードを、次々に当ててみせる。

解説を見るまで、特殊な(込み入った)セットでも使うのかと思ったのですが、実は凄く簡単なセットで、しかも非常にありふれた原理を使っており、「え、そんな単純な原理だったの!?」と驚いてしまいました。その原理を利用するための下準備も巧妙で、解説で「してやられた感」を感じさせられました。

演技では簡単な質問をしているのですが、質問をしなくても当てる事ができます。しかし、あえて質問を入れる事で、私は却って効果が高まっているように思えます。

選ぶカードが三枚ですから、一人目のカードを見つける時に、次の相手のカードを知る事ができる訳で、演技ではそれを利用して相手にシャッフルさせた後で当てています。この事で原理の存在を見えなくしている辺りが、凄くうまいやり方です。演じ方次第では、一級のメンタルトリックになるでしょう。

もちろん、手順自体もよく出来ているので、カードを当てるなら誰にでも出来ますが、このトリックは、やはり演出をきちんと練り上げたいところです。色々考えられると思います。

8. When Nyquist met Lorayne
現象/デックを半分に分け、その中から一枚のカードを選ばせる。もう片方のパケットを表向きにスプレッドするが、相手のカードはもちろんない。ところが相手が指定した場所に、選んだカードが移動してくる。

これはかなり強烈です。表向きにスプレッドして、確かにカードが存在しない事を示しており、その上で相手が指定した場所にカードが裏向きに現れますから、観客に与える衝撃は大変大きいでしょう。技術的にも難しくありません。この方法は是非知っておくべきです。

フォースのやり方自体は「Impulsive revelation」と同じで、心理的なものです。ここは少し慣れが必要かも知れません。自信がなければ、フォースは省略して、相手のカードを現しても、十分効果があると思います。

9. Interlocking sandwich
現象/選んだカードを含むパケットを相手に持っておいてもらう。残り半分のパケットのうち二枚のカードを表向きにする。再びパケットをスプレッドすると、表向きにした二枚のカードの間に裏向きのカードが挟まれており、それが選んだカードである。

選んだカードによるカードアクロスです。vol.1の「Interlocking flyer」と同様の手法を使いますが、現象としてはこちらの方がパワフルで分かりやすいと思います。その分技法は増えていますが、さほど負担は大きくありません。単に移動させるより、二枚の表向きのカードの間に移動してくるという表現は、分かりやすいですし、相手の指定した場所という印象も与えられるので、良いアイディアですね、

10. An impossible conclusion
現象/パケットから一枚のカードを選んでもらう。演者は一枚の見えないカードをパケットから抜き出す。パケットを確認すると、相手のカードがない。演者は先ほどテーブルにおいた見えないカードの表を確認し、選ばれたカードの名前を言い当てる。さらに、その見えないカードを反対向きにしてパケットに戻すと、裏向きのカードが一枚ある。そのカードが確かに選ばれたカードである。

現象説明が少し複雑ですが、実際には全然複雑なトリックではありません。見えないカードが現れるという辺り、少しマーローの「デビリッシュミラクル」っぽいところもありますね。見えないカードというテーマなので、演者によって色々と面白い演出が考えられそうです。難しい技法を何も使わず、これほどインパクトのある現象を作ってしまうのが、キャリーの凄いところです。

選んだカードのロケーションは、「Impulsive revelation」と同じです。演技では最後は「Impossible」の綴りでカードを配って現していますが、ここは単にスプレッドして現しても十分でしょう。綴りで現す事にこだわらなければ、枚数も5枚である必要もありません。私自身は、各パケットを九枚ずつにしています。私が大変気に入っているトリックです。

11. Triple triumphant
現象/三人の相手にカードを覚えてもらい、デックを表裏ばらばらに混ぜる。一人目、二人目のカードを当て、二人目のカードでデックにおまじないをかけてもらうと、デックは全て裏向きになり、二人目のカードが三人目のカードに変化する。

トライアンフのバリエーションであり、これもやはり天海リヴォルブを使います。ただ、現象をちょっと盛り込み過ぎのような気がしなくもありません。表裏混ぜる必然性も、あまり感じられないんですよね。三人の相手にカードを選ばせる時点で、演じる機会が限られそうな気もしますが、ある程度マジックを見慣れた人には、効果的なトリックかも知れません。

12. On the count of
現象/ボトムに選ばれたカードを置くが、それが消えてしまい、相手の指定した枚数目から表向きに現れる。

現象はシンプルですが、非常に上手い手順です。キャリーにしては珍しく、ターンノーバーパスという少々「重い」技法を使いますが、デックをひっくり返す理由付けがはっきりしているので、恐れることはありません。

最初の消失のプロセスで、次の出現の準備が自動的に終わってしまっているのが、実に賢いです。キャリーは、こういう「相手の指定した枚数目から選んだカードが現れる」というトリックが気に入っているようですね。


以上たっぷり12手順です。相手にカードを操作させる手順も多いので、技巧派の人は物足りないかも知れませんが、どれも実践で磨かれた手順ばかりで、動画用ではなく、人前で演じるためのレパートリーが欲しい人には、間違いなく即戦力になるDVDである事は保証します。

と言う訳で、今年最後の更新でした。三が日の間に、レビューをまた書きたいなと思っています。皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。 

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24 seven vol.1 (John Carey)

明日と明後日、またも北海道の札幌に行ってきます。結構寒そうですから、気を付けて行ってきます。

往復の飛行機はピーチ航空なのですが、ピーチの機内って、機内放送もなければ機内誌もなく、退屈この上ないんですよね。なので、妻からポータブルオーディオプレイヤーを借り、私が大好きな太田裕美の曲を40曲入れました。これで退屈せずに済みます。

私はクラシック音楽が大好きなので、クラシックを入れても良かったんですが(実家には、クラシックのCDが1200枚くらいあります)、飛行機の中で退屈しのぎに聴くなら、クラシックじゃない方がいいかなと思ったのです。

なお、帰る前に少し時間があるので、札幌にあるマジックショップ「メビウス」に行ってみたいなと思っています。帰りの飛行機の時間の関係で、それほど時間に余裕がある訳ではないのですが、行けた場合は簡単なレポートを書きますので、期待せずにお待ちください。

では、今回のDVD紹介。私が好きなジョン・キャリーの2枚目のDVD「24 seven」です。これは2本組ですが、最初の「Handle with Carey」とこの2本組は、彼のDVDの中でも大傑作だと思います。この3本だけでも入手をお勧めします。巧妙な策略と、無理のない手法でストレートな現象を実現したトリックが山盛りです。

では、行きましょう。

24 seven vol.1 (John Carey)

1. Simplex transpo
現象/薬の容器に入れた紙幣と、演者が持っていた紙幣が入れ替わる。

サインをした紙幣の入れ替わりです。「Handle with Carey」の「BTB」と似たところもあります。薬の容器を使うのも同じですし、最後の紙幣を取り出す際の錯覚の利用の仕方も同様です。紙幣にサインをするというのは、日本人の感覚ではちょっと難しいですが、シンプルで上手い方法です。手法は覚えておいてもいいと思います。

2. Gemini reflections
現象/マジシャンと観客が1枚ずつカードを覚える。マジシャンが観客のカードを当て、観客はマジシャンのカードを当てる。

タイトルから分かるように、「ジェミニツインズ」の原理(ディールドロップの原理)を使っていますが、こういう観客参加型のトリックは、下手に技法を駆使したトリックよりも、反応が良いものです。

演技ではカットカード(カジノなどで使われる、カードの位置を示すためのカード)を使っていますが、ジョーカーを表向きにして使う事で、十分対応できます。こういう「相手にもマジシャン役をやらせる」というトリックは、いくつか持っておきたいものです。必ず重宝しますから。

3. Coinkidinky
現象/相手がストップをかけたところや、相手が自由にカードを差し込んだ場所から、次々と4枚のAが現れる。

お手軽な4Aのプロダクションです。プロフェシームーブの使い方はアッカーマンの「クイックコインシデンス」そのものですが、最初のカードのフォースがあまりにも大胆で、驚いてしまいました。大胆にも関わらず、初見では見事に引っ掛かった私(笑)。

マジックをある程度演じ慣れると、こういうフォースではなく、もっとテクニカルなフォースを使いたくなるものですが、こういう技法をまるで使わないトリックにおいて、フォースだけ技法を使うと、そこが浮き上がってしまいます。そういう意味で、この大胆なフォースは、手順に見事にマッチしていると思います。

こういう、思い込みや錯覚を上手に利用するトリックは、大の好みです。セットも簡単ですし、これは好んで演じています。

4. 6 card O and W
現象/6枚のカードを使ったオイルアンドウォーター。

6枚のカードが、混ざったり分かれたりするオイルアンドウォーター現象ですが、混ぜ合わせても分かれるのではなく、おまじないをかける度に混ざったり分かれたりするので、少し印象が異なります。テーブルを必要としないので、その点では便利でしょう。

少し技術的に難しいところもありますが、エキストラも使いませんし、オイルアンドウォーター現象がお好みなら、レパートリーに入れたくなるトリックです。ただ、特に現象にクライマックスがある訳ではありませんから、演者の技量は問われるかも知れません。見せ方には研究が必要だと思います。

5. Split and spread control
現象/選ばれたカードを、スプレッドしたカードに示す動作で、密かにトップにコントロールする技法。

バーナード・ビリスの技法を参考にしたトップコントロール技法です。ある程度の広さのテーブルがないと難しいですが、錯覚を上手く利用した技法です。元になったビリスの技法も、覚えておきたいですね。

6. Interlocking flyer
現象/選ばれたカードが、一方のパケットからもう一方のパケットに飛び移る。

カードアクロスですが、パームも何も使わず、非常に楽な方法で実現しています。その分動作をよく見ると実は怪しいのですが、その部分には注目が集まらないため、観客の印象には残りにくくなっています。純粋なカードアクロスって、意外と演じる人が少ない気がしますが、これは手軽でインパクトのある、とてもいい手順ですよ。

7. Kick - 4 queens
現象/選んでもらったカードをポケットに入れる。4枚のQを示すが、一瞬でQの中に選ばれたカードが現れる。と思ったら選ばれたカードはまた消えてしまう。ポケットの中のカードを取り出すと、それが4枚のQであり、手元のカードが選ばれたカードになっている。

私が大好きなトリックで、ポケットが使える状況の時は、非常に好んで演じます。ホーミングカードにキックバック式のオチをつけたもので、文章で現象を書くと複雑ですが、実演は実に鮮やかで、強烈な衝撃を与えます。

もちろんパームが必要で、しかもちょっと変わった方法でパームしないといけないのですが、パームをする際のタイミングも上手く計算されているので、気付かれる事はありません。パームの仕方が特殊なので、キャリーの演技でもカードが手からはみ出てしまっていますが、それでも気付かれません。私自身は、キャリーの案通りではなく、コインのサムパーム風の方法を使っています。これだと、角度にさえ気を付ければ、カードがはみ出る事はありません(でも、キャリーの演じ方でも十分だと思います)。

なおキャリーは、カードの示し方が、最初はハーマンディスプレイ、続いてハーマンカウント、エルムズレイカウントの順でやっています。その度に示し方が違うのが気になる方は、ジョーダンカウント、オメガカウント、エルムズレイカウントでやれば、全て右手ピンチグリップで示せます。この作品の場合は、無理して動作の統一性にこだわる必要もない気もしますが。

解説では、4枚のQのプロダクションから解説してくれていますが、これは好きな方法でしてもいいでしょう。私はこのトリックが非常に気に入っているので、パケットケースに4枚のQと4枚のAを入れておき、4枚のAから好きなマークのものを選ばせて演じています。

8. Imaginary reality
現象/相手にデックを渡し、好きなカードを選ばせる。演者は想像上のデックから1枚のカードを選ぶ。デックを入れ替え、演者はデックから選んだカードを抜き出し、相手は想像上のデックから選んだカードを抜き出す。2人のカードは一致する。

現象としてはDo as I doなのですが、実在のデックと想像上のデックを使うという演出が面白いですね。やっている事は実は単なるカード当てであり、手順としては、「イモーショナルリアクション」そのものなのですが、演出を変える事で、全く違う印象のトリックになっています。演出の大事さを感じさせられる秀作です。

9. Conscious/subconscious
現象/デックを2つに分け、それぞれのパケットの中から演者と観客で1枚ずつカードを覚える。パケットを入れ替え、演者と観客がお互いに相手のカードを当ててしまう。

これも演者と観客がお互いに相手のカードを当て合うタイプのDo as I doですが、非常に不思議に見えます。解説を見て、「なるほどねー」と感心してしまいました。結構知識があるマニア相手でも、上手く演じればひっかかってしまうでしょう。スプレッドカルの威力を思い知る事ができる作品です。

10.Two to tango
現象/デックから好きな枚数のカードを取ってもらい、その枚数を数えてもらう。その後1枚のカードを覚えてもらい、全部のカードを1つにまとめる。デックを混ぜた後、トップから1枚ずつ配っていき、「覚えた枚数になったら心の中でストップをかけてください」と言うが、演者は心の声を聞き取り、その枚数を当てる。更に、その枚数目から相手の覚えたカードも現れる、

少し複雑なトリックですが、上手く演出が付けられていて効果的な現象となっています。原理は要するにキーカードロケーションなのですが、キーカードを使って枚数と選ばれたカードを両方当ててしまう利用の仕方も賢いですし、それにこういう見せ方をするとキーカードとは思わないでしょう。私も最初に見た時は、まさかキーカードロケーションとは思いませんでした。心の声を聞き取るというアイディアも面白いです。

11. Crystal transposition
現象/1枚のカードを演者のラッキーカードとして出しておく。相手に1枚のカードを選んでもらい、演者のラッキーカードに尋ねて相手のカードを当て、デックから相手のカードを取り出そうとするが、取り出したカードは演者のラッキーカードであり、置いてあったカードが相手のカードになっている。

カード当てと入れ替わりの複合現象です。トップチェンジを行うのですが、動作がよく考えられているので、やり易いと思います。グラスを使った演出がいいですね。グラスを遣えない場合は、カードケースでもいいと思います。彼の手順は、少し難しい技法を使う時は、技法を使うタイミングや動作が非常に計算されている場合が多く、実戦で磨いた感覚を感じさせられます。

12. Shh it's a mystery...
現象/あらかじめカードケースに1枚のカードを置いておく。相手に1枚のカードを選んでもらってデックに戻した後、2枚のジョーカーを取り出す。相手のカードを言い当てた後、最初からケースに置いておいたカードを開くと、それが選ばれたカードである。

いわゆる、サインドカード、ミステリーカードの現象です。手順の都合上、ジョーカーは同じデザインでないといけません。原案は、相手のカードが4枚のAの中で消失するという現象ですから、最初から出しておいたカードが相手のカードになっているというのが、起承転結のオチをつける意味があるのですが、こちらはジョーカー2枚を取り出して相手のカードを言い当てる演出で、ミステリーカードが相手のカードになっているという現象が、少し唐突感がある気がしなくもありません。

反面、原案より演じやすい面もありますから、好みの問題かも知れません。実戦的という面ではこちらが上のようにも思えますし。ただ、私はマジックの現象に、流れと意味を重視したい方ですから、原案の方が好きですね。


以上11作品+1技法です。ボリュームはもちろんですが、実践的で現象も多岐に渡っており、原理も巧妙で、、難易度もそれほど高くないと、いいところばかりのDVDです。

何より、技法感がないキャリーの自然な演技は、アマチュアが見ても大いに参考になる事が多いでしょう。まだ持っていない人には、是非とも入手をお勧めします。アマーの「カードミラクルズ」にも匹敵するほどの、お勧めDVDですから。 

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Handle with Carey (John Carey)

暑い日が続きますが、皆様(皆様というほどここを見ている方おられませんが(笑))、いかがお過ごしでしょうか。

DVDレビューの5回目は、私一押しのジョン・キャリーのデビュー作です。タイトルの「Handle with Carey」は、「Handle with care」(取扱注意)に引っ掛けた洒落でしょうね。この人は、難しい技法を極力使わず、手順構成の賢さでトリックを組む名人です。また、ハンドリングも非常に自然で、いかにもな「技法感」がありません。派手さはないですが、玄人好みの上手さを見せてくれます。私はこの人の事を勝手に、「イギリスのゆうきとも」と呼んでいます(笑)。

どこだか忘れましたが、マジックのブログで「マジック始めて1か月、みたいな人はこのDVDでいいのでは」みたいなことを書いていらっしゃる方がいました。が、マジック始めて1か月というと、「とにかく強力な現象!」「難しい技法を覚えたい!」という感じのはずで、このDVDの価値は分からないと思います。

ある程度「人に見せて楽しませる」事の難しさを知った、中級以上の方は、このDVDには、きっと唸らされる事が多いはずです。それでは参りましょう。

Handle with Carey (John Carey)

1. Counting on you
現象/観客に、10から20の間の数を好きに決めてもらい、その枚数のカードをデックから数えてもらう。更に、数えた最後の枚数目のカードを覚えてもらい、取ったカードは全部デックに戻す。マジシャンはデックをシャッフルした後、デックからカードをまとめて取るが、それが相手の取った枚数と同じであり、更に枚数を確認したパケットの一番上から、相手の覚えたカードが出てくる。

文章で書くとちょっとややこしいですね。賢い解決法ですが、カードの名前と取った枚数を2つ覚えさせないといけないので、意外と状況を選ぶかも知れません。手法自体は幅広い応用が利きそうなので、色々考えてみると面白いでしょう。

2. Simple fusion
現象/相手に1枚カードを選ばせ、マジシャンがその表にサインする。もう1枚カードを選ばせ、今度は裏面に相手にサインさせる。そのカードを相手の掌中に挟ませるが、デックの中ほどに1枚だけ表向きに戻ってくる。そのカードにおまじないをかけると、裏に書いてあったはずの相手のサインが消えている。掌中のカードを開かせると、表と裏にサインがしてある。

一見「アニバーサリーワルツ」風ですが、あちらは「表にサインがしてある2枚のカードが融合して1枚になる」という現象なのに対し、こちらはサインが移動するという現象ですから、少し印象が違います。

最後は、サインが移動しただけでなく、掌中のカード自体が変化しているという、ちょっとした矛盾があるのですが、そこは気にしなくて大丈夫だと思います。こういう軽い矛盾を上手く利用しているのが、彼の優れたバランス感覚ですね。

3. Gemini detector
現象/相手に1枚のカードを選ばせデックに戻す。マジシャンは名刺を取り出し、相手に選んだカードの特徴を聞きながら何かを書く。デックから1枚ずつカードを配っていき、相手がストップをかけたところに名刺を置く。名刺を確認すると相手のカードの名前が書いてあり、名刺の隣のカードは選んだカードである。

タイトルからお分かりのように、「ジェミニツインズ」の原理を使っていますが、ライディテクター(嘘発見器)タイプの演出が卓越しています。これがなかったら、何とも淡泊なマジックになってしまうでしょう。観客とのやり取りを楽しんで演じたいですね。

4. 3 Chances
現象/観客に1枚のカードを選んでもらい、デックに戻す。マジシャンはデックを広げていき、相手に好きなところでストップをかけさせるが、2回やっても相手のカードは出ない。その2枚を表向きにしてアウトジョグしてスプレッドを閉じ、飛び出た2枚のカードを相手に押し込ませると、選んだカードが現れる。

プランジャーの原理を使った、即席ライジングカードです。相手に押し込んでもらうので、大変効果的で、これは私も愛用しています。キャリーのスプレッドカルが大変自然で、参考になると思います。I-Magicの小林洋介さんも書かれていましたが、パスを一生懸命練習するくらいなら、これくらい自然で綺麗なカルを身につけた方が、はるかに実践的だと思いますよ。

5. Balducci as I Balducci
現象/相手が選んだカードをマジシャンが、マジシャンが選んだカードを相手が、それぞれ当てる。

タイトルが技法名そのまま(人名か)という、大胆な作品です(笑)。タイトルの通り、バルドゥッチフォース(カットディーパーフォース)を使うんですが、この作品を知った加藤英夫さんが、「このフォースは不自然で使いたいと思わなかったが、この作品を見て、カードを選ばせる手段でなく、選ばれたカードを探す不思議な方法としてなら、使い道がある事に気づいた」を書かれていました。加藤さんの解説に付け加える事は、何もありません。

技術的には実に簡単ですが、絶大に受ける事は私が保証します。手順の簡単さで馬鹿にせずに、是非演じてみてください。

6. Sticking up for Larry
現象/1枚のカードをデックの中ほどに入れるが、そのカードが相手の指定した枚数目から表向きに現れる。

ラリー・ジェニングスのリバース、人呼んで「ラリバース」と呼ばれる技法を使った、トリックとしては小品とも呼べる手順ですが、観客に与えるインパクトは絶大です。アンビシャスカードとカードアットエニーナンバーの組み合わせとでも言いましょうか。私自身は、「何かマジックやってよ」と言われて、1つだけ見せる時にこのトリックを演じる事が多いですし、アンビシャスカードではラストにこの手順を持ってくる事もあります(アンビシャスカード自体滅多にやらないけど)。

ラリバースは、錯覚を利用した非常に賢い技法ですので、知らなかった方は是非覚えておいてください。こういう心理的盲点をついた技法を多用するのも、キャリーの特徴です。

7. Searching for a sandwich
現象/1枚のカードを選ばせ、デックに戻し、デックのトップとボトムにジョーカーを置くが、2枚のジョーカーが少しずつ距離を縮め、1枚のカードを挟む。もちろんそのカードが選ばれたカードである。

「サーチアンドデストロイ」「サーチャーズ」風ですが、これも錯覚を上手く利用して、かなり楽にできるようになっています。解説で、いわゆるアードネスチェンジ(フーディーニチェンジ)を、しつこいくらい何度もやってくれるので、「そこはもういいから、次を解説してくれ!」と思うかも知れません(笑)。

途中にやはり矛盾があるのですが、観客の意識に残りにくいような手順になっているあたりはさすがです。ちょっと腕に覚えのある人なら、ターンノーバーパスを使ってしまうところでしょうが、それをあのような負担が軽く、錯覚を利用した方法でやる辺り、キャリーの優れた現場感覚だと思います。ただそれをカムフラージュするため、2枚のジョーカーは同じデザインで演じるべきでしょう。レパートリーにしたいんですが、そこがネックだったりします。

8. Speccy magician
現象/デックから10枚程度のカードを抜きだし、相手に渡して、マジシャンに1枚のカードを覚えさせる。相手がおまじないをかけると、1枚のカードが消えている。デックをスプレッドすると、マジシャンが覚えたカードが表向きに現れる。

「マジシャンが覚えたカードを相手が当てる」という演出の作品は時々ありますが、なんと相手がカードアクロスを演じるという演出の作品。演出も非常に優れていますし、マジシャンがやるべき仕事は、手順の序盤で終了するので、後半は演技に集中できます。こういうのをこそ、真に実践的なマジックというのでしょうね。技術的にも実に平易です。

手元だけ映った動画を撮って自己満足する人には、この作品の価値は分からないでしょうが、人前で演じて「楽しませたい」と思う人ならば、きっとこの作品を気に入るはずです。これもお気に入りレパートリーになっています。

9. BTB
現象/観客がサインしたお札がマジシャンの手から消え、テーブルに置いてあった薬の容器の中から現れる。

お札の移動現象です。外国の人って実に気軽にお札にサインしますが(しかもマジックペンで)、日本人の感覚だと難しいですね。お札のナンバーを控えておくのも一つの手でしょう。最後のお札を取り出す時の錯覚の利用の仕方が、これまた賢い。唸ります。

問題はぴったりくる容器ですが、キシリトールガムの容器なんてどうでしょうか。薬の代わりにガムを使えば、上手く行きそうな気もするので、一度試してみたいところです。

10. WTF interchange
現象/デックをドリブルすると、4枚のAが表向きに現れる。相手に3枚のカードを選んでもらい、ポケットに3枚をしまう。1枚のAは胸ポケットに見えるように差し込んでおくが、ポケットの中からはAが現れ、手元に相手のカードが来ている。

いわゆるポケットインターチェンジ。現象説明だけ見ると難しい技法を使ってそうですが、難しい事は何もしません。パームも使わないというエクセレントな手順。確か、ゆうきともさんの「イロジカルチェンジ」で、同じ手法を使っていたと思いますが、元々はジョン・バノンの方法だったと思います。とにかく「労少なくして功多し」の見本みたいな手順です。

ただ、3枚のカードを選ばせるのが、現実的には演じる環境を選ぶかも知れませんが、立ったまま演じられる優れた手順ですから、立ったまま複数の人に演じる機会が多い人は、覚えておいて損のない手順だと思います。

11. Triple inpurseination
現象/財布を取り出し3枚のコインを使うというが、財布の中には1枚の銅貨しかない。その銅貨が、銀貨、チャイニーズコインと次々変化し、チャイニーズコインをポケットにしまってもまた手に戻ってくる。最後はチャイニーズコインも消えてしまう。テーブルに置いてあった財布を開くと、銅貨、銀貨、チャイニーズコインの3枚が中から出てくる。

トリプルスペルバウンドですが、ギミックを使ってとても楽にできるようになっている上、ラストはレギュラーしか残らないという、実践的かつ素晴らしい構成の妙。ブラボーです。最近は、やたら難しいテクニックを使うコインマジックが幅を利かせていますが、コインマジックの効果って、技法の難しさと比例しないというのが、こういう作品を見るとよく分かります。

ギミックは、コインマジックをやる人なら大抵持っているものですので(コインをあまりやらない私も、なぜか持っていた(笑))、これは是非覚えたい手順です。

12. GYS coin
現象/コインが現れたり消えたりするワンコインルーティーン。最後はジャンボコインに変化。

これも難しい技法は使わない、実用的なワンコインルーティーン。鼻の穴から落ちてくるのは、マイケル・アマーもやっていましたね。難しい技法は使わないのですが、すべての所作が自然で、何かやっているように見えないところがさすがです(これはカードについても同じです)。初心のうちは、こういうマジシャンの演技を参考にすべきという点では、冒頭に書いた「マジックを始めて1か月くらいの人におすすめ」というのは、ある意味当たっているかも知れません。


以上12作品。どれも実戦の場で磨き上げられている事が感じられるトリックばかりです。通常、1本のDVDでは1つ当たり作品があれば儲けものなのですが、このDVDはどれをとってもレパートリー候補が目白押し(私自身は、4作がいつも演じるレパートリーに入っています)。改めて今回見直しましたが、特にコインの作品は、以前見た時には気づかなかった優れた点に気づき、練習してレパートリーに入れたいなと思わされました。

なお、「Tool box」と称して、作品内で使用するいくつかの技法を解説してくれていますが、一番痺れたのは「Overhand false shuffle」です。何という大胆さ! それでいて、解説を見た後でも引っ掛かってしまう、強烈な錯覚。世に溢れるやたら難しい(それでいて角度に弱い)フォールスシャッフルを使っている方々は、これを見たら椅子から転げ落ちるかも知れません。そしてこれがきちんと身に着けられたら、他のほとんど全てのフォールスシャッフルは不要になる、かも知れません(ちと大げさ(笑))。

とにかく、トリックはもちろんですが、演出が巧みで、演技も自然体。「人前で演じて楽しませたい」という方は、是非このDVDを見てみてください。きっと参考になるはずです。 

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