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トライアンフ考察[4]

トライアンフ考察の最終回。今回は気楽に書きますよ。最終回のテーマは、「最後現象を示す時、デックを裏向きに広げるべきか、それとも表向きに広げるべきか」です。

ヴァーノンの意図したプロットを考えれば、結論はすぐに出ます。当然裏向きにスプレッドし、表向きの選ばれたカードを示すべきです。

と言って、これで終わってしまっては味気ないので、もう少し続けます(笑)。

まず、現象を示す時に、複数の現象を同時に示すというのはあまり得策ではない、というのは事実です。私も、3 flyの記事で、「片手では消え、片手では現れるというのを同時に見せるというのは、見る側にとってはかなりのストレス」と書きました。

例えば、コインスルーザテーブルにしても、テーブル上のコインが消えた事を示すと同時に、テーブルの下の手を出して、コインがテーブルを抜けた事を示す人はおりません。いたとしたら、手順を根本的に見直すべきです。

では、トライアンフの場合はどうかと考えますと、決して「裏表が全部揃った」事と、「相手のカードだけが一枚向きが違う」事を同時には示していません。スプレッドしていく最初の段階で、裏表が揃った事は明らかに分かりますからね。

また、これは私の個人的な意見ですが、デックを表向きにスプレッドするのと、裏向きにスプレッドするのと、どちらがより「揃った」印象を与えられるかというと、裏向きにスプレッドする方だと思います。当然、裏向きならば全部のカードが同じデザインですからね。

なので、裏向きにスプレッドした時は、「観客の意地悪で酷い事になったが、それをマジシャンが見事解決してみせた」という見せ方に適している、と言えます。あえて言えば、「カードを当てる事はさほど重視していない」とも言えるかも知れません。

表向きにスプレッドするとどうかと言いますと、逆に「たった1枚の裏向きカード」に焦点が合うように、私は思います。つまり、よりカードを当てる事を重視した見せ方ですね。

つまり、ヴァーノンの意図を重視するなら、やはり裏向きにスプレッドすべきです。対して、「今日は難しい当て方をします」だとか、「今日は変わった混ぜ方をします」なんて、最近流行りの(?)見せ方をしたければ、表向きにスプレッドするのもありかも知れません(私は、そういうトライアンフの見せ方自体、いかがなものかと思いますが)。

要は、どちらでもありだとは思うのですが、どちらにしても、「演者が何を表現したいのか」というのは、常に頭に置いておくべきでしょう。カードを当てる事に焦点を当てたいのか、あるいは揃った事に焦点を当てるのかでも、見せ方は変わるはずです。そして、見せ方には「プロット」が重要に絡みますから、そこもじっくり考慮しなければなりません。

そしてこれも個人的意見ですが、原案者のプロットを無視して、それが「改良」になった例を、私は見た事がありません。

という訳で、トライアンフ四部作でした。二週間くらいDVDのレビューもご無沙汰ですから、近々また書くつもりです。(閲覧者自体がほぼいないので、ないとは思いますが)レビューのリクエストがありましたら、是非お寄せください。 

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トライアンフ考察[3]

トライアンフについての記事、三回目です。今回は予告通り、ダローディスプレイについて書きます。

ダローディスプレイは、「検め」の作業の一つです。そして、私が考える、良い「検め」には、二つの大原則があります。一つ、「なるべく信憑性が高くなくてはならない。二つ、「なるべく簡単でなくてはならない」。

トライアンフにおけるダローディスプレイが、観客から見てどう見えるかというと、「リフルシャッフルで混ぜた後、表裏混ざっている事を確認する」です。では、この検めが、「なるべく信憑性が高く」、かつ「なるべく簡単に」行うには、どうしたらいいでしょうか。

答えは簡単です。「デックをリボンスプレッドして広げて見せる」です。これ以上信憑性が高く、簡単な検めはありません。

が、言うまでもなく、トライアンフでそのような検めは不可能です(トリックデックを使うなら別ですが)。なので、マジシャンとしては「なるべく表裏混ぜたように見える検めをしたい」と考えるのは、自然な思考かも知れません。

しかし当然の帰結として、「信憑性が高い」検めをしようと思うと、「簡単さ」が失われます。ダローディスプレイは、正に「信憑性が高い検めをしようとして、複雑さが増してしまった」例ではないでしょうか。

なので、ダローディスプレイを使った見せ方をしてしまうと、往々にしてこんな反応をされます。「よく分からないけど、トランプをいくつもに分けて見せて戻した時に、何かやったんだよね?」。マジシャンであれば、ダローディスプレイをして戻したくらいで、本当に裏表が混じったデックが戻せるはずがないと知っていますから、こんな反応をされればがっかりするでしょうが、知識がない人からすれば、これは実に当然な反応です。

私は、ダローディスプレイは、そもそもそれを行わなければならない状況に問題があると考えています。考えてもみてください。本当に完璧に裏表混ぜたように見せられたら、わざわざ検める必要など、あるでしょうか?(アル・ベイカーも「追われる前に逃げるな」と言っているではありませんか)

つまり、ザロウシャッフルという、トライアンフというトリックに用いるには、いまいち(裏表混ぜたという)信憑性が薄い技法を使ってしまったため、後でああいう方法で検めたくなるのではないか、などと考えてしまうのです(私は初めてザロウ+ダローディスプレイのトライアンフを見た時、そう感じました)。

ヴァーノンの原案を考えてみましょう。トライアンフシャッフルの後、台詞に合わせてところどころデックを開いています。これは何のためかと言うと、最後の現象のため、デックを半分ひっくり返さないといけないからです。そのための理由作りとして、あのような動作が必要なのです。

単にそれだけであれば、デック全体をひっくり返して、ハーフパスなりメカニカルリバースなりをやれば済む事ですが、そういう「重い」技法を上手く省略した上、「ところどころ開いて、混ざった事を確認する」という動作に埋め込んでいる辺りに、ヴァーノンの巧妙さがあるのです。つまりヴァーノンの原案においては、あれは「検め」が主な目的ではないと思います。「検めに見せかけた、最後の現象の準備」なのです。それをシンプルの極みでやったところに、ヴァーノンの凄さがあります。

例えば、カラーチェンジングデックというトリックがあります。冒頭に、表向きでヒンズーシャッフルをしながら、時々バックを見せるというやり方ですが、これがもし、「デックの裏面を検める」というのが第一の理由だとしたら、あれほど奇怪なやり方はありません。そうでなく、「シャッフルしつつ、表がばらばらな事を示しながら、何気なく裏を見せる」からこそ、あのやり方は通用しますし、そこに「裏の色が全部同じだ」と思い込ませるイリュージョンが働くのです(だから、「裏の色は全部赤です」などと言うのは、もう愚の骨頂の極みである)。

ダローディスプレイについても、わざわざカラーチェンジングデックで、表向きにシャッフルしながら「裏の色は全部同じですね」と言うような奇怪さを、私は感じます。普通の人が、デックの裏表を確認するのに、あんな珍妙なやり方をするでしょうか。しません。にも拘わらず、あのやり方で、「ヴァーノンのやり方より、確実に検められたから、不思議さが増したはずだ」と考えるとすれば、その思考回路こそが、大いに問題です。ダローディスプレイにような検めをするなら、その動作の理由付けが必要なはずですが、それがないのです。

「信憑性を高く」、そして「なるべく簡単に」、更に「その動作の理由付け」というのを両立した検めは難しいものです。大事なのはバランスなのですが、ザロウシャッフルやダローディスプレイについて考えると、そのバランス両立の難しさを感じさせられます。

リクエストをいただきましたので、トライアンフ考察の最終回は、「最後に表向きでスプレッドすべきか、それとも裏向きでスプレッドすべきか」について書いてみるつもりです。期待せずにお待ちを。 

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トライアンフ考察[2]

さて、トライアンフ考察の2回目です。

どこで見たのか忘れましたが、動画でヴァーノンのトライアンフ(トライアンフシャッフルを使う、原案)を見た人が、「これは自分が知っているトライアンフと違います。どうやるんですか?」と書いていた、という、笑い話みたいな記事を見た事があります。

なんでもかんでも動画で覚えると、こういう笑えない事が起こってきます。「トライアンフなんて知ってるよ」と思っていたら、原案を見て「これはいったい何?」となってしまうという……。

トライアンフは、本来ヴァーノンの考案したトライアンフシャッフルを用いるものです。これは、高等技法の「プッシュスルーシャッフル」をやりやすくしたものですが、ことトライアンフという作品に関しては、このトライアンフシャッフルという技法は、完璧と言ってもいいほどの親和性を持ちます。ヴァーノンが、「トライアンフ」という作品のために作った技法ですから、当たり前ですが。

ですが最近は、ザロウシャッフルを使う人が非常に多いように見受けられます。しかし、ザロウシャッフルは、原案通りの演出のトライアンフに用いるには、著しく不適当な技法であると思います。

なぜか。前回も書きました通り、原案では、ある時マジックを見せていて、客に裏表めちゃくちゃに混ぜられた、という話をしながら演じます。

と言う事は、この作品においては、裏表ばらばらに混ぜるところというのは、「相手によく見せなくてはならない」のです。マイケル・アマーなどは、裏表噛み合わさったところで、一度広げて見せる事までしています(それはさすがに少しやりすぎの感がありますが)。

ところが、ザロウシャッフルという技法は、やるところをじっくり見せるものではありません。じっくり見られたら、インチキをしているのが一目瞭然ですから。

そもそも、ザロウシャッフルというのは、例えばデックをサイステビンス(別にエイトキングでも極道親父でもブレイクスルーでもKシステムでも何でも良い)にスタックしておいて、それをマジックが始まる前の、何気ない雑談をしつつ、混ぜたように見せる、なんて場合に使う技法です。トライアンフのように、明らかに「今から混ぜますよ、ほら混ざりましたね」という場合に使うのは、ミスマッチも甚だしいと言わざるを得ません。

これに対して、トライアンフシャッフルは、混ぜるところをじっくり見せる技法です。フォールスシャッフルとしては、動作が自然であるとは必ずしも言い難いですが(とは言え、ダローあたりの達人がやると実に自然)、「ほら混ざりましたね。押し込みますよ」と念入りにやって見せるのは、そのためでしょう。

また、ザロウシャッフルでは、「全体として何となくリフルシャッフルの動作に似せている」に過ぎない上、最後の秘密の動作は相手に見られる訳に行きませんから、全体に急いで技法をやらざるを得ません。これに対しトライアンフシャッフルは、噛み合わせる動作にはインチキはありませんから、じっくり見せられます。代わりに、その後に秘密の動作があるのですが、そこでは客の注意はある程度弱まっていますから、何気なくやってしまえば済むことです。

こう考えると、トライアンフにザロウシャッフルが適していないのは明らかです。なのに何故みんなザロウシャッフルをトライアンフに使うのか。それは、原案に当たる事をせず、動画で何となく覚え、自分で分析、フィードバックする事をしないからです(今回、凄くキツイ書き方になってすみません(汗))。

と、シャッフルについて書いただけでえらく長くなってしまいましたので、もう1つ感じている問題点、「ダローディスプレイ」に関しては、また次回。別にダローディスプレイが絶対駄目というつもりもないんですが、これも動画で見て何となく覚えて、考えなく使っていると、トライアンフという作品の効果を台無しにする危険性があると思っているのです。

ちなみに私自身は、原案通りのトライアンフシャッフルを使う方法か、スロップシャッフルを使う方法でしかやりません。ファローシャッフルを使う方法もありますが(ラリー・ジェニングスの「Outstanding triumph」など)、「相手にめちゃくちゃに混ぜられた」というプロットからすると、ファローシャッフルは不適当ですから。

ではまた次回お会いしましょう。 

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トライアンフ考察[1]

西日本は、お盆を過ぎても暑さは変わらず、日干しになりそうな日々が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

東日本は、何やら梅雨のような雨の毎日が続いているそうで、今日の午後6時の東京の気温は、24.6℃だそうです。こちらの暑さを半分くらい分けてあげたい気分です(笑)。

さて、今回は「トライアンフ」を取り上げます。「好きなトリックベスト3」を入れたら、多分ほとんどの人がこれを入れるであろう、大人気トリックです。

ところが、アンビシャスカードもそうであったように、私はこれがそれほど好きではありません(またかよ(笑))。とは言え、アンビシャスカードよりは演じるかな、という感じではありますが。

トライアンフという作品の現象を一言で言い表せば、こうです。

マジシャンは、相手に1枚のカードを選ばせ、デックに戻す。そして、デックを表裏ごちゃごちゃに混ぜてしまう。その状態でおまじないをかけると、デックの表裏は全て揃い、相手のカードだけが1枚表向きに現れる。


この作品は、色々なところで色々な人が演じるのを見ました。そしてまず気になるのは、「なぜそんな混ぜ方をしなければならないのか」という理由です。ここが適当な人が、あまりにも多い気がします。

例えば「今日は変わった混ぜ方をします」だとか、「今日は難しい当て方をします」などと言う人がいます。しかし、だったらなぜ表裏ごちゃごちゃに混ぜる必要があるのでしょうか。ここの最初の動作に、まず説得力のある理由が欲しいのです。

例えばツイスティングジエーセズですと、最初は(手順上の都合で)スペードのエースを表向きで示し、パケットをひっくり返しつつ今度はスペードではないエースを示し、スペードのエースは元の位置に戻されます。

これは現象を起こすための準備として必要な動作なのですが、ヴァーノンは「スペードのエースはとても扱いづらいカードである事はあまり知られていません。それをお見せしましょう」という台詞で、動作に対する理由付けをしています。私は更に「こっちはスペード、マークが大きくて、こっちはダイヤ、小さいマークですから、スペードは扱いづらいのです」と言っています。

仮にこの台詞がなく、単にスペードをひっくり返したり戻したりしていたとしたらどうでしょう。完全に意味不明です。

あるいは「マジシャン対ギャンブラー」でもいいでしょう。あれも、「ある時私がラスベガスを旅行していると、一人のギャンブラーに勝負を挑まれました」というストーリーがあるから、あの動作に意味が出てくるのであって、ストーリーが何もないとしたら、大変意味不明な動作の連発になってしまいます。

ですから、トライアンフにおいても、表裏ごちゃごちゃに混ぜるという動作に、何らかの理由がなくてはならないと思うのです。ですから、原案者ヴァーノンは、完璧な台詞を用意しています。これは東京堂の「奇術入門シリーズカードマジック」に載っています。抜粋してご紹介します。

ある日私がマジックを見せていた時の事。カードを選んで戻してもらったところで、相手が「俺にも切らせろ」と言って、カードをこう表裏ばらばらにに混ぜてしまいました。そして私にカードを渡し、「ほら、これで何とかしてみろ」と意地悪く言うのです。

カードはめちゃめちゃになってしまいました。ここは表、ここは裏ですし、ある場所では裏と裏が合わさっていました。大変な危機ですが、親切なご友人はただあざ笑うばかりで、私のピンチを楽しんでいました。

そこで私は、「あなたは大変なことをしてくれましたね。いいでしょう、あなたの挑戦を受けましょう。あなたは奇蹟を見たいようですから、それをお目にかけます」と言って、デックを強く叩いたのです。そして彼にデックを広げるように言いました。

カードは全部同じ裏向きになっており、ただ1枚のカードだけが表向きになっていましたが、そのたった1枚の表向きカードが、正に彼の選んだカードだった時の彼の表情を、皆さんにもご覧に入れたかったものですよ。


この台詞あればこそ、トライアンフは、手順と現象と台詞が見事に結びついた、完璧なマジックなのです。私は初めて「奇術入門シリーズカードマジック」でトライアンフの手順を見た時、手順よりも現象よりも、この台詞に感動したものです。

何より、「やたら強力で理不尽な現象を、ただ相手に見せつける」という弊害が、この台詞で非常に軽減されています。ヴァーノンの意図を無視して、「今日は難しい当て方をします」とか、「今日は変わった混ぜ方をします」なんて言い方は、「今から俺のすげえ特殊能力を見せます」と宣言しているのにも等しい、思慮のない台詞です。

ですから、とにかく裏表を混ぜる事に対する何らかの意味付けがない限り、トライアンフという作品は「ただの理不尽現象」の域を出ないのです。アンビシャスカードの記事の時にも書きましたが、私はただの理不尽現象には、どれほどそれが不思議であっても興味はありません。それは単なる曲芸、指の器用さを見せつけているだけに過ぎません。

前田友洋さんは、「カードゲームをやっている時、こうやって表裏ばらばらに混ぜてしまった事ってないですか?」と言っていましたが、とにかく何らかの理由付けは絶対必要だと思います。

今回はこの辺りで。次回は、このトリックに最近よく使用されている気がする、「ザロウシャッフル」「ダローディスプレイ」について書いてみます。私の論調から薄々お気づきかも知れませんが、私はトライアンフにザロウシャッフルやダローディスプレイを使うのは、いかがなものかと思っているのです。

そこらを踏まえて、次回はトライアンフの技法的な事について(具体的なやり方はもちろん書きませんが)、書いてみるつもりです。期待せずにお待ちを。 

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A cut above the rest (Aldo Colombini) - 2

今日は連休の最終日。昨日は妻と実家へ行って、母&弟一家と焼き肉を食べました。普段あんまりお肉食べないですからね。みんなでわいわい食べると楽しいものです。

私は三人兄弟の長男なんですが、すぐ下の弟も、実はマジックが趣味です。どっちかというと、一発芸的なお笑いネタが好きなんですけどね。その弟に貸していたDVD「Utopia」(ダニ・ダオルティズ)が、やっと戻ってきました。どこに行ったかと思っていたら、弟のところにあったとは(笑)。

では、レストランマジック研究所から出た、コロンビーニのノート「A cut above the rest」のレビュー、第2回目。全部の手順を実際に試してみるのは、なかなか大変ですが、興味深い手順が多くて、カードが好きな人なら、きっと刺激を受ける事でしょう。

13. Love letters (Aldo Colombini)
現象/4枚のQとKをシャッフルして、2枚一組のパイルを4つ作るが、それぞれのパイルは同じマークのQとKのペアになっている。

現象説明は大変シンプルで、この通りならば演じてみたいんですが、実際は手続きがかなりややこしいので、このままの形で演じて楽しませるのは、かなりの技量が必要になるかも知れません。何らかの演出は必須でしょう。あまり「自由に4つのパイルを作っている」という感じじゃないんですよね。

手順自体よりも、この手順に使われている「ステイスタックの原理」というのが、興味深いです。これを応用して、何か使えないだろうかと考えてしまいました。

14. Bubble sort (Werner Miller)
現象/同じマークの絵札を3枚抜き出し、JとQの間、QとKの間にそれぞれ1枚ずつの裏向きのカードを挟む。観客に2枚のカードを覚えてもらい、その2枚を含む十枚程度のパケットと最初の絵札のサンドイッチのパケットを重ね、枚数を減らしていくと、再び絵札に2枚の裏向きのカードが挟まれた状態になり、挟まれたカードは相手が選んだ2枚である。

かなり現象を簡略化して書いていますが、それでも複雑ですね(汗)。最初に挟んでおいたカードが、選ばれたカードに変化するという現象でもないですし(だとしたら、最後にダウンアンダーをするのは、説得力がまるでありません)。これも、このままの形ではちょっと演じられません。ロケーションの方法は使えるかも知れませんので、覚えておいて損はないでしょう。

15. Strathjack (Roy Walton)
現象/ブラックジャックの話をしながら、足して11になる2枚の数札のパイルを4つ作る。デックから12枚のカードを取り出し、観客に4つのパイルの上に12枚のうち好きなカードを乗せてもらう。4つのパイルを開くと、観客が自由に選んで乗せたカードは全部絵札で、全てのパイルが合計21になっている。12枚のうち、使われなかったカードを確認すると、残りは全部数札である、

ロイ・ウォルトンらしいトリックです。以前ご紹介した「Coincidence in color」っぽいところもありますが、ブラックジャックをテーマにした事で、また違う味を出しています。流れも複雑すぎず、技術的にも難しくありません。ギャンブル系トリックの1つとして、なかなか面白いと思います。

演じる時には、ブラックジャックの説明はもちろんですが、「今合計11ですから、絵札が選ばれると合計21ですよね」みたいに、観客の思考を言葉で補ってあげないといけません。数札に10を入れない方がいいのも、言うまでもない事です。

16. A bunch of blarney (Aldo Colombini)
現象/相手にカードを1枚選んでもらってデックに戻した後、デックから9枚のカードを抜き出す。相手に4つの質問をし、質問の答えの文字に応じてカードを数え、テーブルにパケットから2枚のカードを置いていく。質問には、本当の事を言っても嘘を言っても構わない。4つの質問が終わって手元に1枚残ったカードが選ばれたカードであり、テーブル上のパイルをひっくり返すと、4枚のAが現れる。

ライディテクターと、ナインカードミラクルの要素を足したような作品です。簡単にできて大変効果的だと思います。ただ、質問の答えは英語ですから、日本語で演じる場合は質問自体を考え直さないといけないかも知れません。「Face」「Number」とか、「Red」「Black」なら文字数が違いますが、「絵札」「数字」とか、「赤」「黒」では、意味がないですからね(笑)。

いっそ、カードとは全く無関係の質問をして、笑いをとっても面白いかも知れませんね。

17. Five card reader (Karl Fulves)
現象/ハートのAから5と、スペードのAから5の合計10枚のパケットから、好きなカードを1枚覚えて、パケットをよく混ぜてもらう。マジシャンはパケットを操作し、5枚のカードを手に取って、この中に選んだカードがあるかどうか尋ねるが、そのただ1回の質問だけで、選ばれたカードを当ててしまう。

小品トリックですが、ファルヴスらしい頭のいい解決法です。最後で一度質問をするのですが、観客がカードを選んだあと、パケットを自由に混ぜる事ができるので、十分不思議に感じると思います。途中のカードの混ぜ方が独特ですので、そこはしっかりスムーズにできるようにしたいですね。

18. Descre-panza (Aldo Colombini)
現象/演者は予め予言のカードを3枚抜き出しておく。観客に自由に1枚のカードを選ばせるが、予言の3枚のカードと選ばれたカードは、同じ数値である。

ジョン・バノンの「ディスクレパンシーシティプレディクション」の、コロンビーニ流の方法。原案では最後が少しクリーンではなく、それを解消するための改案も作られていますが、コロンビーニの方法は、よりシンプルでありながら、原案のちょっとした矛盾を解消している、いい改案だと思います。これだと「ディスクレパンシー」(矛盾)がなくなってしまっている気がするので、原案の、バノンらしい、矛盾を上手く利用する狡猾さも捨てがたいのですが。

何にせよ、単純でありながら強い効果を持つトリックです。

19. Lateral leap (Karl Fulves)
現象/12枚の赤いカードと、12枚の黒いカードを、表裏も交互に混ぜる。そして、1から12までで好きな数を言ってもらい、裏向きのカードからその枚数目を覚えてもらう。パケットを一度ひっくり返し、選んだ枚数目を見ると、選ばれたカードは消えている。裏向きのカードを確認すると、選ばれた枚数目に選ばれたカードがある。

現象説明が意味不明ですが、正直言って、説明を読んで実際に試しても「何のこっちゃ?」という感じです(汗)。手順は、錯覚を上手く利用していて賢いと言えば賢いのですが、ちょっと「マジシャン、サトルティに溺れる」という感が無きにしも非ず。

要は、赤黒分けたパケットのどちらかから1枚選んだカードが、反対の色のパケットに移動するというものですから、それならもっと効果的なやり方が、いくらでもあるように思います。

20. Red baron (Aldo Colombini)
現象/赤と黒に分けたパケットのどちらかから、1枚を取ってテーブルに裏向きに置くが、反対型の色のパケットの中に、反対向きに現れる。

説明では「Out of this world風のトリック」と書いていますが、全然違うような(汗)。まあ、シンプルなカードの移動トリックですね。コロンビーニらしく、無理のない手順で現象を起こしており、実用的です。

ただ、単なる移動現象ですから、パケットを赤と黒に分ける必要性があまりないような気がします。単にデックを2つに分けた方が楽ですし、起こる現象のシンプルさから考えても、その方がバランスがいいのではないでしょうか(わざわざ赤と黒に分けるにしては、起こる現象が単純、という意味です)。

21. Slow Approach (Aldo Colombini)
現象/2枚の黒いJ(これは別に何でもいい)を抜き出し、その間に観客が選んだ2枚のカードを表向きに挟むが、選ばれたカードは一瞬で消える。デックを確認しても選ばれたカードはどこにもないが、おまじないをかけると、デックの真ん中から選ばれたカードが裏向きで現れる。

スピード感のある移動現象のトリック。選ばれたカードが消えるところは、ちょっと「ヴィジター」風です。また、最後消えたカードがどこにもない事を確認するところで、その後の現象を準備してしまうところも、上手く考えられています。傑作だと思います。

相手に2枚のカードを覚えさせるのは結構な負担ですから、別にカード当てのトリックでもないですし(手順の途中で、選ばれたカードを表向きにしてしまいますし)、2枚の赤いAなどを使ってもいいでしょう。あるいは、別に1枚だけでも問題なく現象は起こります。そこら辺りは上手く使い分けたいですね。

22. That's neat (Paul Gordon)
現象/デックを2つに分け、観客と演者が1枚ずつカードを選び、相手のパケットに差し込むが、いつの間にか2枚のカードは入れ替わっている。

途中まで、Do as I doタイプのトリックかと思いきや、カードが入れ替わってしまうというオチです。Do as I doの後に演じてみると効果的かも知れません。手順に無理もなく、すぐレパートリーに入れられると思います。最後に使う技法も、相手に作業をさせながらやるものですから、ミスディレクションが利いてやりやすいでしょう。

23. Criminal (Mike Gancia)
現象/デックから8枚のカードを抜き出し、その中から1枚を覚えてもらう。選ばれたのは犯罪者だと言い、この8枚は容疑者だと言う。容疑者の面通しをすると言い、8枚のうち4枚を見せ、その中に犯人がいるかどうかを尋ねる。それを3回行い、最後に「Criminal」の綴りに合わせてパケットのカードを1枚ずつボトムに回していくと、犯人のカードが現れる。

3回リバースファローを行うので、その時点で演じる気がなくなってしまうそうですが(汗)、この作品は演出が優れています。単に3回リバースファローをやるのではなく、「8人の容疑者を、目撃者に見せます」という演出は、単純な数理トリックに対する味付けとして、覚えておく価値があります。そのまま演じなくても、数理トリックの演出の一つとして、頭に入れておいていいでしょう。

24. Triumph with math (Karl Fulves)
現象/3×4に並べた12枚の裏向きカードのうち、3枚を覚えてもらう。覚えたカード以外は表にして、裏表ごちゃごちゃになるように、1つにまとめる。おまじないをかけると、選ばれたカード以外は向きが揃っている。

パケットで行うトライアンフですが、最初のカードの選ばせ方が非常にややこしく、何故このようなやり方なのか、謎です。カードの集め方自体は、要するにスロップシャッフルと同じ原理ですから、実は3枚も選ばなくても(また書いてあるようなややこしい方法でなくても)、同じ現象が起きます。最後、広げて裏表が混ざっているのを確認させる時の都合なんでしょうか? ちなみに説明では「最終的に右下のカードに重ねて」(23ページ6行目)とありますが、「右上」の間違いです。

個人的に、3枚もカードを覚えるような手順は演じたくないのですが、スロップシャッフルの別法として、このカードの集め方は覚えておいてもいいでしょう。

とまあ、今回も12作品。まだ11作品残っているので、あと1回このノートの記事を書きます。手順をそのまま使わなくても、原理や演出は勉強になるものが多いので、細かいところを是非見落とさないようにしてください。 

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Touch (Hanson Chien)

12日の土曜と13日の日曜は、大阪と愛知県春日井市に行っていました。私が住む山口県下関市からですと、往復1,400kmです。関東の方は、東京から青森くらいの距離と思っていただければ、参考になるでしょう。

昨日の夜10時過ぎに帰宅しましたが、お陰で、昨日はさすがに疲れて、すぐ寝てしまいました。連休前半は結構忙しかったのですが、連休残り三日はのんびり過ごす予定です。今日は妻と、「名探偵コナン」を鑑賞したのです。

さて、DVDレビューの7回目。ハンソン・チェンの「Touch」です。発売された時には大きな話題になりましたね。タイトルにもなっている「Touch」が目玉作品ですが、他の作品はどうでしょうか。それでは行ってみましょう。なかなかシックなパッケージです。

Touch (Hanson Chien)

1. Touch
現象/演者の掌に巻いた輪ゴムが、観客の掌に一瞬で飛び移る。

DVDタイトルにもなっている作品であり、このDVDの看板作品です。本当に観客の掌に一瞬で移るので、大変強力なトリックです。DVDに思わず変な声を出してしまっている男性客の様子が入っていますが、人によっては本当にこんな反応があるでしょう。セットアップもさほど難しくありません(と言いますか、セットアップはほとんどジョー・リンドフライシュの「Extreme rubber band magic」に収められている「Ultimate Jump」と同じです)。

ただ、輪ゴムの選定は意外と難しいと思います。小さいとセットアップが難しいですし、大きいと観客の手に移動した時いまいちインパクトを与えられません(観客の手が小さい場合もしかり)。その意味で、少し扱いづらいトリックであると言えますが、強力な事は間違いないですから、ここ一番で使いたいネタですね。

2. Escape
現象/演者の手に巻いた輪ゴムが、一瞬で外れる。

ハンドリングは「Touch」と同じですが、こちらは演者の掌から輪ゴムが抜けるだけですので、輪ゴムの大きさに神経質になる必要はありません。むしろ大きい方が絶対にやりやすいでしょう。

ただ、単に演者の手を抜けるだけなら、もっと楽なハンドリングがありますから、あえてこれを選択する意義はそれほどないかも知れません。私自身は、手首にかけて抜ける、もっと楽な手順のトリックを演じています。

3. Ghost slink
現象/両手の親指と人差し指にかけた2本の輪ゴムが、繋がったり外れたりする。

現象は確かに鮮やかです。繋がったり外れたりする時は、本人が言うように無駄な動きはほとんどなく、映像で見ると魔法に見えます。

が。セットアップの動作がちょっと怪しすぎるような気がします。それを自覚しているのか、演技の動画では、一般客に対する演技ではなく、カメラの前で一人で演技していますし、何よりいただけないのは、セットアップ部は画面の外でやってしまっています。これはちょっとフェアではないんじゃないでしょうか。正直私には、動画以外でこれを演じられる場面が、ちょっと思い浮かびません。

4. Ghost palm
現象/観客と演者の手に巻いた輪ゴムが、観客の手を一瞬で抜ける。

シンプルな原理ですが、ただ演者の手から輪ゴムが外れるより強い印象があるトリックだと思います。観客の手の中で増えるスポンジボールもそうですが、こういう「観客の感覚に訴える」トリックは、やはり強力ですね。セットアップもさほど難しくなく、「こうなったらダメだよ」という注意点も映像で見せてくれるので、習得は容易でしょう。それにしても輪ゴムトリックは、カードマジックと比べても現象説明が本当に簡単でいいですね(笑)。

5. Ghost finger
現象/演者の親指と人差し指にかけた輪ゴムが、演者の指を貫通したり、観客の指を貫通したりする。

字幕が「ゴースト指」になっていますが、ご愛敬か(笑)。これはセットアップも難しくなく、その意味では大変実用的なトリックだと思います。ちなみに全部で三段の現象となっています。第一段は輪ゴムの外にあった演者の指が中に入り、第二段は輪ゴムの中にあった演者の指が外に出て、第三段は輪ゴムの外にあった観客の指が輪ゴムの中に入ります。なお、第二段と同じ動作で「輪ゴムの中に通した観客の指が、輪ゴムの中に出てしまう」ようにする事も可能ですので、ご研究あれ。

ビジュアルでセットアップも易しいのですが、ただ貫通の際、音がぱちんと鳴ってしまうのがいかんともしがたいです。輪ゴムトリックは、「音」が錯覚を強めたりして、効果を増す場合もあるんですが、このトリックの場合は、ちょっとマイナスに働く気がするんですね。

なので、演じる環境を選ぶかも知れませんが、それさえ除けば実用的ないいトリックだと思いますよ。やはり、観客参加型トリックは、私も好きですから。

6. Crazy Hanson's handcuffs
現象/演者の両手の親指と人差し指にかけた2本の輪ゴムが、繋がったり外れたりする。

タイトルからわかるように、クレイジーマンズハンドカフスのバージョンですが、貫通する時に輪ゴムがぷるんと振るえるので、その意味での視覚的な説得力もあります。

……が、これもハンドリングと言いますかセッティングが怪しすぎて、なかなかこれを実演するのは難しいかも知れません。ハンソン・チェンが、セッティング時にやたら輪ゴムを長く引っ張っているのが気になりますが、そうせざるを得ないのでしょう。個人的には、ノーマルなクレイジーマンズハンドカフスの方が、ずっとクリーンで実用的だと思うのです。この作品は、やはり観客に輪ゴムを持ってもらって、それでも相手の目の前で綺麗に抜けるのが、一番強い衝撃を与えるポイントですからね。

セッティングの難しさに加えて、どんなに視覚的インパクトが強くても、単に演者の指の中で起こるだけでは、実用面ではいまいちと言わざるを得ません。

7. Crazy magician's handcuffs
現象/演者の親指と人差し指にかけた輪ゴムが、演者の指を貫通したり、観客の指を貫通したりする。

これもクレイジーマンズハンドカフスのバリエーションですが、本人も言っている通り、原案を知っているマジシャン向けです。一般の人に見せる場合には、原案で十分です。原案はあのクリーンさがいいのであって、どうにも動作がクリーンではない(なんだか不自然)なんですよね。まあ「Hanson's Handcuffs」に比べれば自然ですが……。

輪ゴムトリックは、クリーンさとビジュアルさを両立させるのは、なかなか難しいものなのかも知れません。

8. Infinity linking
現象/2本の輪ゴムが、繋がったり外れたりする。指輪など、リング状のものとも繋げる事ができる。

前からあるリンキングラバーバンドと、ハンドリングとしてはほぼ変わらない気がします(両側いっぺんにやるのではなく、片側でやっているだけのような……)。ハンドリングは過度に難しくなく、そこまで不自然でもなく、実践的な部類なので、十分使えるトリックでしょう。ただ、指輪などと繋げるのは、あまり実用的じゃないかも知れません。

個人的には、従来からの手順で十分なように感じます。古典手順って、やはり伊達に演じられ続けてないんですよね。

9. Missing linkage
現象/観客の手に2本の輪ゴムを握らせるが、いつの間にか演者の手の中に1本戻ってくる。観客の手を開かせてみると、輪ゴムは一本しかない。

コインやスポンジボールでやるような手順ですが、実際は、前段で2本の輪ゴムのリンク・アンリンク現象をやっています。それが伏線になっているという、輪ゴムである事を生かしたなかなか凝った手順です。

セットアップはやはりちょっと難しいというか、怪しいです。ただ、前段のトリックを伏線にして、後段のトリックの説得力を増すという考えは面白いですし、後段のトリックの動きはかなりフェアで怪しいところがないですから、上手く決まれば大きな驚きを与えられると思います。これやるなら、スポンジボールの方がいいような気がしなくもないのですが(汗)。

10. Flash band
現象/演者の指に巻いた輪ゴムを反対の手に抜き取るが、一瞬で戻ってくる。

これは初見では見事に引っ掛かってしまい、解説を見てあまりに単純なトリックだったので、(いい意味で)大笑いしてしまいました。こういうのに引っ掛かるとは、私もまだ捨てたものではないですね(笑)。原案はギャレット・トーマスらしいですが、ギャレット・トーマスらしいな、と。即席でできるいいトリックだと思います。

Routine 1 - Teleport
おまけとして、輪ゴムトリックだけをいくつか繋げてルーティーンにしたものを、演じて(ストリートパフォーマンス)解説しています。リンドフライシュその他のトリックも解説してくれているのでお得です。このTeleportは、名前の通り移動をテーマにした輪ゴムトリックを並べています。

Spaghetti up the nose、Flash band、Jumping band、Ultimate Jump、Touchの5作品です。Jumping bandは、初心者向けの本にも乗っている、人差し指と中指にかけた輪ゴムが、薬指と小指に移動する商品ですが、ハンソン・チェンは上手に演じて一級のトリックにしています。

Routine 2 - Liquid
もう1つは貫通現象がテーマです。Crazy man's handcuffs、Crazy Hanson's handcuffs、Infinity linkage、Snapped and restored rubber band、Remote Linkの5作品。本編で解説された10作品以外のトリックも、ちゃんと解説されていますから、合計15作の輪ゴムトリックが解説されている事になります。ボリュームもたっぷりです。


内容は以上です。字幕付きなんですが、日本語訳が少し変なので、それだけでも楽しめます(笑)。解説は言葉は一切使用していませんが、何度も繰り返し見せてくれますし、大事なところは非常にゆっくりやってくれるので、分かりやすいと思います。最初の方では、輪ゴムの選び方(国による輪ゴムの特徴まで)を話してくれています。参考になるかと言われると、そうでもない気もしますが。

収められているトリックの全てが実用的かと言われれば、実はあまり実用的ではないものもあるんですが、輪ゴムトリックって、クラシック以外はそんなものかも知れません。しかし、看板作品のTouchを知る事ができるだけでも、価値があると思います。また、最後の2つのルーティーン集は、一通りの現象が入っているので、お得感があります。

輪ゴムメインでマジックをできるかと言われると、それは難しいのですが、「なんか見せてよ」と言われた時、最も重宝する素材でもあります。輪ゴムトリックの幅を広げたい人は、持っておいてもいい1本だと思いますよ。 

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A cut above the rest (Aldo Colombini) - 1

今日から私は六連休です。本当は土曜は仕事なのですが、有給休暇を取ってしまいました。

しかし、連休前半は意外と忙しく、今日は午後から妻を美容室に連れていきます。車で20分ほどのところまで行くので、その間私は実家でフルートの練習をする予定です。

さて、先日購入したレストランマジック研究所の小冊子「A cut above the rest」。せっかくですので、収録作をご紹介してみようと思います。何せ35作品もありますから、備忘録という意味もあるのですが。

それにしてもこの冊子はでかいです(A4サイズ)。鞄の中に気軽に入れて、というのは難しいですが、その分デックを片手に確認するにはちょうどいいかも知れません。作品数が多いですから、3回に分けて記事を書く予定です。では行ってみましょう。

A cut above the rest


1. Door stop aces (Paul Gordon)
現象/13枚のカードの中から、3枚のカードを覚えてもらう。それをパケットに戻し、4枚のエースを表向きにしてパケットに混ぜ、数回リバースファローを行うと、4枚のエースの間に3枚の裏向きのカードが挟まっている。それが選んだカードである。

コレクター現象をセルフワーキングでやってしまっています。面白いのですが、リバースファローって、マジックを知らない人からも「よくわからないけど、何か数学的な原理を使っている」と思うらしいです(私の妻談)。原理は面白いのですが、それを3回繰り返すので、このまま人に演じるのは少し難しいかも知れません。

2. Full speed ace (Aldo Colombini)
現象/相手に1枚のカードを選んでもらい、デックに戻す。デックから4枚のエースを取り出す、1枚のエースを示すが、それは選んだカードと異なるマークである。パケットのボトムに入れるが、トップに上がってくる。それを3回繰り返す。残ったエースがあなたの選んだカードと同じマークだと言って、デックをリボンスプレッドすると、3枚のエースの間に裏向きのカードが挟まっているが、それは残りのエースである。手元のカードを確認すると、それが選ばれたカードである。

現象説明がややこしいですね(汗)。要するに、ホフジンサープロブレムの解の一つです。ホフジンサーアンビシャスと言いましょうか。私はホフジンサープロブレム自体、プロットとして面白いとは思わないのですが、これは意外と実用的な気がします。手順は実に賢く、その辺り、コロンビーニのバランス感覚の良さでしょう。実演してみたいトリックの1つです。

3. Trinity affinity (Robin Robertson)
現象/デックから黒のエース、2、3を抜き出し、その3枚のカードの前に3つの山に3枚のカードを配ってもらうように頼む。気に入らなければ配ったパイルを集めてまた配っても良い。エースのパイルは1枚、2のパイルは2枚、3は3枚のカードをトップからボトムに回すが、それぞれのパイルのボトムから赤いエース、2、3が現れる。

これは巧妙な原理です。ピーター・ダフィのディールミックスの原理というそうなのですが、初めて知りました。自分でやっていても不思議に感じます。何度配りなおしても上手く行くというのが凄いです。

ただ、冊子の説明に誤りがあるようです。冊子では最後に「各パケットのトップカードを表向きにすると」(5ページ11~12行目)とありますが、これはボトムカードの間違いではないかと思います。とにかく、ディールミックスの原理は、応用を考えたくなる面白い方法です。私は創作には興味がなく、あくまでマジックは演じるのが楽しいのですが、何か考えてみたくなりますね。

4. U.D. associate (Peter Duffie)
現象/十数枚のパケットを相手に渡し、2つのパイルに配り分けてもらう(枚数は自由)。どちらかのパイルのトップカードを覚えてもらい、覚えたパイルのカードは手元の残ったパケットに重ねる。その状態でカードを1枚ずつ減らしていくと、最後に覚えたカードが残る。テーブルに残ったパイルのトップカードを開くと、覚えたカードのメイトカードである。

サイクリックスタックを使います。面白い原理だとは思うのですが、サイクリックスタックを作る手間を考えると、ちょっと現象が地味な気がします。要は「コストパフォーマンスがよくない」のですね。アンダーダウンを行うのも、好みが分かれるかも知れません。演じるとしたら、何か上手い演出を考えたいところです。

5. Only a game (Peter Duffie)
現象/十数枚のパケットを十分にカットした後、2人の観客に2枚ずつカードをとってもらい、表を見ないで手元に置いてもらう。残りのパケットを2つに分け、それを2人に残り2枚になるまで1枚ずつ減らしてもらう。2枚残ったカードは、2人ともメイトカードのペアである。更に、2人の残りのパケットを1つに重ね、客Aに再び1枚ずつカードを減らしてもらい、2枚にする。その2枚はペアにはなっていない。客Bにも同じようにしてもらうが、やはり2枚はペアではない。ところが、最初に手元に置いてもらったカードを開いてもらうと、2枚とも今残ったカードのメイトカードである。

説明がややこしすぎますが、これは大変巧妙な二段現象です。自分で試してみて非常に不思議に感じました。やはりサイクリックスタック、アンダーダウンディールを行うのですが、「これはディッチアンドディールというゲームで」と、ゲームをするという演出を入れているので、十分実演に耐え得ると思います。やってみたくなる内容です。

6. Hunting season (Aldo Colombini)
現象/デックから4枚のKを抜き出し、テーブルに裏向きで置く。更にクラブのエースをデックのトップに置く。マジシャンは、テーブルの4枚のうち1枚がクラブのエースのメイト、スペードのエースだと言い、観客に1枚好きなカードを指ささせる。指さしたカードを確認すると、間違いなくスペードのエースである。2枚のエースをデックに混ぜ込む。テーブルの上の残り3枚のKを開き、デックをリボンスプレッドすると、2枚のエースの間に1枚の裏向きのカードが挟まっている。それは、残り1枚のKである。

なんか現象説明がややこしい作品が多いですね。相手の選択で唯一のカードを当てた後に、サンドイッチ移動現象が加わってどうこう、という感じです。何か適切な演出をしないと、見た人が混乱を起こしそうですが、難しくなく現象も面白いので、何とかストーリーでも考えたいところです。

7. Matched! (Robin Robertson)
現象/2枚のカードを抜き出してデックのトップに置く。観客に1枚のカードを選んでもらい、2枚の間に裏向きで挟む。表向きの2枚が、選ばれたカードのマークと数字を示している。

一種の予言トリックです。先日ご紹介したコロンビーニの「Baroque composition」に、これと同じ原理(技法)を使った作品がありました。この作品だけ、唯一図解がありますが、文章だけだとこの動作は分かりにくいと思いますので、ありがたい配慮です。巧妙な動作でカードをスイッチしてしまいますし、観客からはとてもシンプルに見えますから、実演価値が大いにあると思います。

8. Taurus (Aldo Colombini)
現象/2枚のKを出しておく。相手にカードを選んでもらい、デックに戻す。4枚のカードを示してテーブルに置くが、その中に選ばれたカードはない。その4枚を2枚のKの間に挟む。それを1枚ずつテーブルに置いていくと、いつの間にかKの間に1枚のカードが挟まれた状態になっている。そのカードが、選ばれたカードである。

サッカートリックの一種です。やはりアンダーダウンディールを使います(文章ではダウンアンダーと表記されていますが、手順は間違ってないので、混乱しないでしょう)。荒木一郎さんの「舶来カード奇術あらカルト」に、似たような作品(七人の容疑者)がありましたが、サッカートリック風味ですから、大分雰囲気が違います。こういうシンプルなトリックが、実は一番ウケが良かったりするものです。

9. Jet black (Aldo Colombini)
現象/相手に1枚のカードを選んでもらい、デックに戻す。デックを投げると、一瞬で2枚のカードが手元に残る。しかしその2枚はどちらも相手のカードではない。その2枚の数字を足した枚数だけ配ると、そこから相手のカードが現れる。

ホフジンサートスを使ったカード当て。「どちらのカードが分からなかったので、2枚選んでみました」という台詞回しがいいですね。こういうシンプルな作品は、大事に演じたいところです。しかし、さらっと「8枚目にコントロールしておきます」なんて書いてありますが、初心者だとそれはなかなか難しいのでは(汗)。

10. Parity prediction (Reinhard Muller)
現象/2枚の黒いJの間に、1枚のカードを裏向きに挟んでおく。相手に1枚のカードを選んでもらい、パケットに混ぜ込む。3枚のサンドイッチ状態のカードも混ぜ込んでデックを1つにまとめるが、デックを確認するといつの間にか、2枚の黒いJの間の裏向きのカードは、相手が選んだカードになっている。

サインドカード、またはミステリーカード風と言いたいところですが、デックの中に混ぜてしまいますから、ミステリーカードの風味ではないですね。移動現象でしょうか。

ただ、最後示すところが少々説得力がないような気がします。迅速にやれば問題ないのかも知れませんが、動作の理由付けが何か欲しいですね。こういうトリックは、演じる者の技量の差が非常に現れるのではないでしょうか。一度演じてみないと真価が分からないと思いますから、今度やってみるつもりです。

11. Eight bites is enough (Jack Avis)
現象/8枚のカードの中から、相手に心の中だけで1枚決めてもらう。いくつか質問をした後、8枚を4つのパイルに分ける。1つ目のパイルのトップカードは選んだカードの色、2つ目は偶数奇数、3つ目はマークを現しており、4つ目の1枚は、ずばり選んだカードである。

リバースファローを使います。後半はともかく、前半は、リバースファローを行って、選んだカードがあるかないかをきく、という手続きが3回も繰り返されますから、マジックの知識がない人でも、「何か数学的原理を使っているな」と気付くかも知れません。妻に演じてみたところ、「ちょっと面白いけど、何か数学的な原理を使ってるんだよね?」と言われました。

ただ、原理は実に巧妙です(その分、わざわざ目的の8枚を選ぶのが面倒ですが)。よく考えたなあという感じ。これは、演じるというよりは、やり方を解説して感心してもらえるタイプのトリックかも知れません。

12. De-illusion (Aldo Colombini)
現象/1枚のカードを覚えてもらい、デックに戻す。「これから出す4枚のカードが、あなたのカードの情報を教えてくれます」と言いながら4枚を出すが、全部相手の選んだカードである。4枚目は相手のカードの位置を示していると言い、数値の枚数だけ配る。そこから相手のカードが現れ、残り3枚と合わせてフォアオブアカインドが揃う。

タイトルからすると、ダンバリーデリュージョンの改案なんですが、どちらかと言うと「エブリウェアノーウェア」(どこにもあってどこにもないカード)っぽい雰囲気です。最初のセットを、説明では「堂々とやる」と書いていますが、これはあまり堂々とやりたくないかも知れません(笑)。

現象はとても面白いので、セットの仕方を工夫して、何とか演じられるようになりたい作品です。サッカートリックの一種ですから、楽しく演技したいですね。

とまあ、これでまだ全体の3分の1です。玉石混淆の感無きにしも非ずですが、これだけ多くの作品があると、読むだけでも楽しめます。何より、演じるにはちょっと……でも、自分で試してみると意外と面白いです(笑)。

次回も12作品をご紹介します。なお、いつも日曜にDVDのレビューを書いていますが、来週の日曜(今度の日曜)は、夜遅くにならないと私が帰ってきませんので、お休みします。多分、この冊子の紹介で、DVDどころではないかも(笑)。

という訳で、連休に入られる方は、よい連休をお過ごしください。お仕事の方は、お疲れ様です。お仕事頑張ってください。 

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レクチャーノート2冊、書籍1冊購入

最近、マジックの書籍はほとんど買っていなかったんですが、久々に購入しました。まずはこの2冊。

A cut above the rest & Prophecy moves and effects

レストランマジック研究所の小林洋介さんが翻訳された小冊子(レクチャーノートという感じです)、「A cut above the rest」と、「Prophecy moves and effects」。

前者は、アルド・コロンビーニ編纂による作品集で、作品の考案者はコロンビーニの他には、ピーター・ダフィ、ポール・ゴードン、ジャック・エイヴィス、カール・ファルヴス、ロイ・ウォルトンなどのビッグネームが並んでいます。しかしコロンビーニの選択によるトリック集ですから、難しいものはほとんどありません。

また、ちょっとしたアイディアや原理が、カードマジックが好きな人であれば、知的好奇心を大いに刺激してくれるはずです。準備要らずでできるトリックがほとんどのようですし、実用性も十分。ほとんど挿絵もない地味な冊子ですが、しばらく楽しめそうです。

レストランマジック研究所では、今後もコロンビーニのノートを翻訳していく予定だそうなので、非常に楽しみですね。

後者は、ジャスティン・ハイアムによるプロフェシームーブ(プロフェシーフォース)の研究冊子。マニアには軽視されがちな技法(原理)ですが、ハイアムは、フォースだけでなくコントロールにも応用していたり、またプロフェシームーブとは一見思えないような使い方のトリックもあったり、これまた好奇心を大いにそそられる小冊子。

レストランマジック研究所では、私が購入した直後に品切れになってしまいましたが、Monthly magic lesson shoppersでも売っているようですから、興味がおありの方は見てみてください。この手の小冊子って、一度品切れになると、なかなか手に入らなくなりますからね。

これも字ばかりで(写真も適宜配置されています)読みやすくはないですし、DVDやYoutubeでマジックを覚える事に慣れた人には大変でしょうが、でもマジックというのは、苦労して覚えると、それだけ身になりますし、逆に楽をするとそのトリックを大事にする事がなくなるのですよ。時には書籍で努力しながら身に着けるという事は、決して無駄にはなりません。

もう1冊。これは一般書籍です。

ジョン・ガスタフェロー カードマジック

ジョン・ガスタフェローのカードマジック作品集。これが是非読んでみたかったのです。デレック・ディングルとかアロン・フィッシャーは趣味ではないのですが、ガスタフェローは好きなマジシャンの1人。ちょっと読んでみると、期待を裏切らない内容です。

ガスタフェローの本業は広告業らしく、演技をより効果的にするプレゼンテーションとしてのセリフが、とても読んでいて面白く、参考になります。変に難しい技法を無理して覚えるより、こういう些細な言葉の言い回しこそが、「one degree」たりうるのかも知れませんね。

ガスタフェローが冒頭で書いている言葉が深いです。やたら派手な技法や、新しい現象だけを追い求める人は、熟読すべきです。

若いマジシャンは、大きな結果を出そうとして凄い変化を試みがちですが、私としては”物凄く素晴らしいもの”というのは、私たちが思っているよりも近いところにあるのではないかと考えています。one-degree――たった1℃の差のように。


しばらくゆっくり読んで楽しんで、時間があれば後日、各々の本について感想を書いてみるかも知れません。 

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トランプの友 知の壱(ゆうきとも)

今朝の下関の最低気温は、29℃。この時間(朝7時40分)で、既に30℃です。東日本は気温が下がったらしいのですが、西日本はどこもかしこも超猛暑です。明日は台風が来るらしいですから、ちょっとでも気温が下がってくれるといいんですが。

さて、今回はゆうきともさんのDVD紹介です。この方の凄さは言うに及ばず。私は、「温泉レクチャー」というDVDを弟から借りて見て、そのあまりのすごさに、この「トランプの友」シリーズを、当時出ていた4巻全部まとめて買ってしまったほどです。

もちろん技術も確かなんですが、考え方が本当に合理的で無駄がなく、感心させられます。このトランプの友の1巻は、今ではリメイクされているらしいですよ。私が持っているのは、リメイク前のもので、DVD-Rですし、映像もちと安っぽく、ライブも入っていません。

それでも、収められている作品は一級品揃いです。それでは行ってみましょう。

トランプの友 友の壱(ゆうきとも)

1. スリーカードトリック2003
現象/デックから3枚のカードを抜きだす。しかし数えると4枚になっている。1枚をデックに戻すが、やはり4枚になっている。それを何回か繰り返し、表を確認すると、4枚とも「3」のカードである。

シックスカードリピートとか、イレブンカードトリックのような、「枚数トリック」。こういう作品の力は、演者の力量に非常に大きく負うと思います。シンプルですが、上手に演じれば、ある程度の人数相手でも楽しめるトリックになると思います。初めてこれを見た時には、「無理があるんじゃないの」と思ったものですが、今なら演じられる気がします。カウントの練習用にいいかも?

2. 最後の訪問者
現象/フォアオブアカインドを取り出し、更に1枚のカードを選んでもらう。2枚の赤いカードか、2枚の黒いカードか、どちらかに選んだカードを裏向きに挟み、デックの半分ほどを取ってその中に混ぜ込むが、残りの2枚のカードの間に、選んだカードが一瞬で移動してくる。しかしそれは実は幻で、カードは一瞬で元の2枚の間に戻る。

文章で書くと現象が何とも複雑ですが、実際は非常に鮮やかです。ラリー・ジェニングスの「ヴィジター」ですね。初めて知った時からこれは大好きなトリックです(移動や変化はあまり好きではないと書きましたが(笑))。

書籍ですと、「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」「カードマジック入門事典」に収められています。入門事典の方が原案に近いですが、ジェニングス本人が何度も改案しているようですから、私にもよく分かっておりません。

この作品は、パームなどの難しい技法を使わず、移動現象を2回も実現するところが凄いのですが、そのために何度もパケットを持ち換えたりするのが煩雑でした。それをゆうきともさんは、非常に合理的な形に改案し、演じやすく、また説得力を持たせる事に成功していると思います(原案にあった、Qを使っての独特の改めも捨てがたいアイデアですが)。正確には、ゆうきさんの手順でもパケットの持ち換えはしているのですが、それが気になりません。ゆうきさんの改案センスはさすがです。

以前Youtubeで、自分が上手いのを見せたいのか、デックを2つに分けるのではなく、デック1つでヴィジターをやっている動画を見た事がありますが、デックが1つなので、正直言って何が起こっているのかさっぱり分からない始末で、自己満足の極みの動画でした。そういう、自分の上手さを見せたいためだけに改案する人は、ゆうきさんとは対極ですね。

書籍では「ゆうきとものクロースアップマジック」に収録されていますが、そちらではダブルカットではなくブラフパスが使われています。これは好みかも知れません。とにかく、名作を名手がさらに磨き上げたと言ってもいい、一級品のトリック。手順は少々複雑ですが、しっかり練習して優雅に演じたいものです。私もこれはずっと演じるレパートリーになっています。

3. ダイエットデリュージョン
現象/相手に1枚カードを選んでもらう。戻してもらってよく混ぜ、「これから示すカードがあなたのカードの情報を教えてくれます」と、3枚のカードを示すが、その中に選ばれたカードが入っている。演者は気にせず、「出てきたのが3のカードですから、あなたのカードは3枚目にあります」と言い、3枚数えてそのカードを開くと、それが選んだカードである。

サッカートリックの名作、チャーリー・ミラーの「ダンバリーデリュージョン」の改案です。原案は実は結構難しいのですが(セカンドディールを使いますし)、とても楽に演じられるようになっています。また、この作品は独特の間というか、セリフの選び方、質問の仕方などがとても大事なのですが(何せ2枚目で相手のカードが出てきてしまいますからね)、ゆうきさんの演技と解説は、とても参考になります。

こういう作品を、嫌味なく演じるのは、実は難しい技法を使う作品を演じるよりも難しい気がします(上手いけど、嫌な感じの演技をするマジシャンが、何と多いことか!)。ゆうきさんの自然体のタッチは、その点でもとても参考になりますよ。

4. 3/4の談話
現象/観客にデックを4つに分けてもらうが、各々のパイルのトップからフォアオブアカインドが現れる。

フォアオブアカインドのプロダクションです。見た目は大変クリーンに見えますが、錯覚(と言いますか、視覚認知の盲点)を利用した大変大胆な手法を用いています。私も初見では見事に引っ掛かり、解説を見て仰天しました。「こんなのバレるに決まっている」という人は、マジシャン的思考に染まってしまっています。とにかく、一度演じてみてください。見破る人など、誰もおりません(人間の目は、動く物を2つ同時には追えません)。

私は、このDVDではなく「温泉レクチャー」で初めて見ました(そちらはESPカードを使っていました)。ゆうきさんのレクチャーに出ているほどですから、皆結構なマニアのはずの観客が誰も見抜けず、解説でもう一度見せても見抜けず、説明されてから「ああ!」となっているのを見ました。それほどの強い錯覚を生みます。

これぞゆうきとも流の、人間の思い込みや認知特性の裏をかいた手順の神髄を味わえる傑作です。「決して急いでやってはいけません」「ちょっと間を取りましょう」というアドバイスも、実践的。これも「ゆうきとものクロースアップマジック」に入っていますので、興味がある方は是非。

5. 荒川カルテット
現象/4枚のQから1枚を選んでもらう。そしてパケットのトップカードだけをひっくり返すと、全部のカードがひっくり返る。再び1枚だけをひっくり返すが、やはり4枚全部がひっくり返る。最後は裏向きに4枚のカードを広げると、選んでもらったカードだけが表向きになっている。

4枚のカードを使ったリバース現象です。現象自体は好みが分かれるトリックかも知れませんが(私自身は、ツイスト現象は少しマニアックな気がして、あまり演じません)、ゆうきさんのパケットの取り扱い方のアドバイスが、とても参考になります。ゆうきさんのDVDは、トリックの解説だけではなく、細かい解説を聞き逃さないようにしてください。有用なアドバイスがぎっしり詰まっていますから。

トリックとしては、リバースとカード当ての組み合わせです。前半のリバースと後半のカード当てに、上手く演出で関係性を持たせないと、後半が少し唐突にも感じますが、フルデックではなく4枚から1枚を選ばせるというのは、観客の負担も少ないですから、意外と使い勝手がいいトリックなのではないでしょうか。

6. リバウンドクイーンズ
現象/4枚のQと、赤い数札を使う。赤い数札3枚のパイルを4つ作り、その下にQを1枚ずつ入れていくが、各パイルから次々にQが消えていく。残ったパイルのQも消えるかと思いきや、そこに4枚のQが集まっている。が、その直後にそこからQは消え、各パイルにQが戻っている。

いわゆるリバースアセンブリーです。レギュラーカードだけでこれほどの現象を実現するのが、素晴らしい。そこまで難しい技法は使いませんが、手順が少し複雑ですから、スムーズに演じるにはそれなりに練習が必要でしょう。

一般にリバースアセンブリーは、一度マスターパイルに集まった4枚のカードを、全部元のパイルに戻す訳ですから、どうにも手順に無理が出てくる事が多いのですが、ほぼ無理のない手順です。私は現象に驚いた後、解説を見た時、あまりの頭の良さに感動を覚えました。

私自身は、ちょっとしたストーリーを話しながら演じますが、静かに現象だけを見せても効果は十分だと思います。ただ、現象が込み入っていますから、観客が混乱を起こさないような配慮は必要でしょうね。ゆうきともさんの頭の良さを存分に堪能できる、名手順です。変に難しい技法を使うのではなく、こういう手順をスムーズに演じ、観客に淀みなく示せるのが、本当の上手い人ではないでしょうか。


以上6作品です。収録作品が少ないような気もしますが、どの作品も質が高く、解説も非常に丁寧。上にも書いたように、些細なアドバイスも実に当を得たものばかりです。今はライブ映像も加わって、豪華になっているらしいですよ。

この「トランプの友」シリーズは、1巻買って気に入ったら、全部まとめて買っても損はしないと断言できるほどのものです。変な海外のDVDを買うくらいなら、ちょっと収録作が少なくても、自信を持ってこちらをお勧めします。 

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Coincidence in color (Roy Walton)

私は本来ほとんどカードマジックしかやらないんですけど、最近なぜか久々にコインの練習をしています。まあ、大して難しいトリックは演じませんけど。

では、トリックに関する記事3回目。このトリックはカードを始めてからずっとお気に入りのトリックです。

■Coincidence in color (Roy Walton)
現象/観客とマジシャンが、10枚程度のパケットを手にして、裏向きのままよくシャッフルする。マジシャンと観客は、裏向きのままテーブルに1枚ずつ、合計4枚のカードを置く。置かれた4枚を確認すると、全部赤いカードである。手元のパケットを確認すると、全部黒いカードである。

私は、「物理的に不可能な事が起きるマジック」というのが、あまり好きではありません。例えばカードが変化したり、移動したり、消えたりというものですね。

何故なら、「そんな事が起こらないのは明らか」ですから、見た側は「どこに隠したんだろう」「どこに隠し持っていたんだろう」「いつすり替えたんだろう」という思考になりがちです。もちろん、そうならないような演技を心がけたいとは思っていますが、私の妻みたいに、どう頑張って演じても、そういう見方をする観客が、結構な数存在します(汗)。

逆に、「物理的には何も不可能な事は起きていないが、確率的に奇跡的な事が起きる」というマジックは好きです。Do as I doとか、Out of this worldが代表選手ですが、これらは上手く演出すれば、ある意味物理的な不可能現象よりも、観客の心に強いインパクトを残します(だからこそ、メンタルマジックは強力なのですね)。

そんな「確率的な不思議さ」を味わうカードトリックの中でも、私が気に入っているのがこの作品です。手に入りやすい書籍だと、東京堂の「奇術入門シリーズカードマジック」「カードマジック入門事典」に、「色の一致」として収録されています。前者においては、「本格的なカードマジック」の最初に確か入っていますから、初めて技法を使うマジックに、わくわくしながら取り組んだのを覚えています。

地味なタイトルのため、見落とされている事が多い今作ですが、適切に演じればとても強力です。少なくとも、私は「Out of this world」よりこちらが気に入っています。

「Out of」は、名作だとは思うのですが、私はほとんど演じる事がありません。手続きが長いですし、それに「直観に従って赤と黒を裏向きのまま分けてください」と最初に言う事で、勘が鋭い人ならば、何が起こるか気付いてしまう事もありますし、そうでなくても、意地が悪い人に、非常に偏った置き方をされる事もあり得ます。

この作品は、ただお互いに1枚ずつ、合計4枚置いてもらうだけですから、言ってみれば演技のペースをマジシャンが作る事ができます。また、4枚開けて全部同じ色で、「ふーん」と思った後に、手元のパケットを開けた時の落差が強烈です。手順も合理的ですが、最後に見る者の意識に爆弾を落とすような構成が、さすがロイ・ウォルトンです。

ただ、セリフ回しに気を付けないと、何が不思議なのか伝わらない場合があるので、そこは少し注意が必要です。私は、4枚を開けた時点で、「4枚全部同じ色。ここで驚く人も10人に3人くらいはいらっしゃいますが、でもよく考えたら、最初に配ったカードの表を見せていませんよね。全部赤いカードだったら、不思議でもなんでもないんですが……」。というような事を言っています。

あるいは、「最初に全部赤いカードを配っていたら、これは当たり前ですね。最初に赤黒半々に配っていたら、ちょっとした偶然ですね。ところが」というようなことを言う事もあります。

ゆうきともさんが、ESPカードを使ってこれを演じていた事があります。「北国の5人の仲間たち」というタイトルだったと思いますが、最初に予言を出しておいて、演者と観客の出した4枚が予言と同じマークで、残りは全部ブランクカード、というものです。ESPカードならではで面白い演出だな、と思いました。

この作品、別に4枚を赤いカードにする必要はなく、4枚のエースを出す事もできるんですが、私の個人的な感覚としましては、4枚のエースを出すトリックにすると、このトリックの良さが失われる気がします。

4枚のエースを出したければ、他にいくらでもやり方はありますし、それに4枚のエースを出してしまうと、その時点でトリックが終わってしまいます(1組のデックの中にエースが4枚しかないのは、自明の理ですからね)。

このトリックのクライマックスは、4枚のカードを開いた時ではなく、あくまで残りのパケットを開いた時であると、私は思っていますので、やはり原案通りの演じ方が良いのではないでしょうか。

「奇術入門シリーズカードマジック」で、技法を必要とするマジックの最初にあるだけあって、技法はほとんど使いません。が、適切に演出して演じられれば、後々まで観客の心に残る、とても強いインパクトを与えられる作品だと思います。ぜひ演じてみてください。 

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