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Card college light (3)

7月ももうすぐ半ばですが、北海道は大変過ごしやすい日が続いています。夏の間には、札幌にあるマジックバーのどこかには行ってみたいと思っています。こちらで、マジック仲間を作れればと思っているのですが。

では、「Card college light」の3回目。この本、とにかく「読んでいて楽しい」のが嬉しいです。DVDでも本でもそうですが、「読んでいて(見ていて)楽しい」って、なかなかないですからね。

では3回目、完結編。行ってみましょう。

Routine 5


13. Cards never lie!
現象/観客にカードを選ばせ、デックに戻してから、7枚のカードを抜き出す。選ばれたカードの情報を聞くが、嘘をついても構わないという。その度に7枚のカードを減らし、カードを1枚残すが、そのカードが相手の情報が嘘か本当かを正確にに教えてくれる。最後に選ばれたカードが現れるだけでなく、選ばれたカードのフォアオブアカインドも現れる。

ダウンアンダーディールを用いた、ライディテクター(嘘発見器)タイプのトリックの傑作です。ダウンアンダーは嫌う人も多いですが、適切に用いれば、私は十分効果的だと思います。J.C.ワグナーのトリックらしいですが、私の手元にある資料では、確かピーター・ダフィの「Ultimate truth」が同じタイプの現象、方法です。

この解説では「7ビットのコンピューター」とか、「二進法を使った計算」という表現で、手順を正当化しているのが面白いです。ダウンアンダーは、その動作の理由づけ次第で使える方法だと思いますが、ジョビーが解説してくれている台詞は、面白くて使えると思います。現象も魅力的ですね。

14. Digital dexterity
現象/相手にカードを1枚選ばせてデックに戻してから、デックをポケットに入れる。その状態で、マジシャンは相手のカードをポケットから抜き出してみせる。

原理としては実に他愛のないものです。ジョン・スカーニが「スカーニオンカードトリックス」で解説し、加藤英夫さんに酷評されたトリックと、方法としては変わるところがないのですが、前準備を入れる事で、一級品のトリックになっています。

このトリックのためだけにその準備をするのは、ちょっと面倒な感じがしますが、その準備で次のトリックの仕込みをしてしまうというのが、恐るべき工夫です。このルーティーンの二番目のトリックと三番目のトリックを続けて演じられたら、かなりなマニアでも綺麗に騙されてしまうでしょう。手順構成の妙がここにあります。

15. Think stop!
現象/相手にカードを1枚選ばせ、デックに戻す。さらにデックを相手にシャッフルさせる。その状態で、カードを1枚ずつ表向きに配り、選んだカードが出てきたら相手に心の中で「ストップ」と言ってもらうように頼む。演者は相手の心の声を正確に聞き取り、選ばれたカードを当てる。

原理自体は、一般向けの奇術書にもあるような、手垢のついたものです。にも関わらず、ハンドリングを一工夫し、しかも前のトリックと連動する事で、トリックの痕跡をまるで感じさせない、魔法のようなカード当てに仕上がっています。これは誰に演じても、引っかからない人はいないでしょう。私もこれをこのルーティーンのまま演じられたら、絶対に引っかかる自信があります(笑)。

この辺り、マジックにおいて手順構成の大事さを嫌という程味わえます。単に単発のトリックを必死に仕入れるのでなく、自分なりにしっかり手順を組み立てたいなと、強く感じされられました。

Routine 6


16. Card caper
現象/デックを2つに分け、二人の観客によくシャッフルさせ、1枚を覚えさせ、それを表向きにしてそれぞれのパケットの中に差し込ませる。2つのパケットを、表裏ばらばらに混ぜる。その状態でマジシャンは選ばれたカードを当ててみせる。

これも、解説を読めば馬鹿馬鹿しいほど単純な原理ですが、前段でこの上ないほどしっかり混ぜさせているので、非常に不思議に感じるでしょう。ここで相手にカードを混ぜさせる時のジョビーのアドバイスは、とても含蓄に富んでいます。「スライトオブハンドと同じくらい、スライトオブマインドは重要なツールなのです」という言葉は、全ての奇術愛好家が覚えておくべき言葉だと思います。

単純なトリックでも、演出次第で素晴らしいマジックに早変わりする。そういう例をここまでもたくさん見ましたが、このトリックはその最たる例です。こういうトリックは、まず実演で見てみたかったですね。

17. In the hands
現象/2枚のカードを2人の観客に覚えさせ、デックに戻させる。その間マジシャンはずっと後ろを向いている。にも関わらず、選ばれたカードを当ててみせる。

これも原理は単純ですが、手順がまだ始まらない段階で、やり方の説明をするという大義名分のうちに、全部の準備が終わってしまうという頭の良さ。ヴァーノンの「イモーショナルリアクション」は相手の一手先を行っていましたが、これは相手の二手先を行っています。上手に演じれば、手がかりすら掴めないでしょう。

ただ、カードの覚えさせ方が少し面倒なので、「どうしてそういう動作をするのか」というのは、よく考えないといけないかも知れません。こういう、シンプルでフェアに見えるカード当ては、当て方に凝ってみるのもいいですね。

18. Back to the future
現象/マジシャンは、未来に起こる出来事を予測すると言い、予言のカードを1枚出しておく。相手にカードを自由に配らせ、2枚のカードを決めさせるが、その2枚のカードは、マジシャンが最初に出した1枚によって予言されている。

アル・リーチの「Spectator does a trick」です。演出を工夫したダローの「アンタッチト」としても有名です。シンプル極まりないトリックですが、私はこれが大のお気に入りで、人前でカードマジックを演じる時は、アンコールに必ずこれを演じるほどです。

未来を見てきたという演出は、ちょっと大げさな気もするので、そこは好き好きでしょう。ジョビー自身も「自分の個性にふさわしい、新しい台本を考えてください」と書いています。そしてこの手のトリックでは、「演者がデックに触れなかった」というのを、相手に印象付けるのがとても大事です。そこらは、ジョビーの解説から読み取ってください。

Routine 7


19. Manto
現象/観客により、デックが表裏ばらばらに混ぜられる。にも関わらず、マジシャンによってその状態が正確に予言されている。

サイモン・アロンソンの「シャッフルボアード」です。これを準備して演じるとしたら、この解説はちょっとインパクトが弱いような気がします。が、ジョビーは備考で準備なしで演じる方法を書いていてくれています(他のトリックの間に準備をするという意味です)。これが非常に有用で、準備なしで行うならば、この解説のやり方は、トリックの気配すら感じさせない魔法に思えるでしょう。

ただ、これがルーティーンの最初に解説されているというのは、このトリックの威力からするとちょっと勿体無い気がします。上手く演じれば、相手が気持ち悪がるほどのインパクトを与えることが可能です。大事に演じたいトリックです。

20. Vernon's miracle
現象/相手に好きなカードを1枚抜き出してもらう。更に何枚かのカードを加えて、存分にシャッフルしてもらう。その状態で、マジシャンは選ばれたカードを当てる。

ダイ・ヴァーノンの作品らしいですが、初めて知りました。原理は大変シンプルですが、その原理に目を向かせない、心理的なミスディレクションが面白い作品です。ヴァーノンは、こういう相手の意識を巧みに操作して、不思議を演出する作品が多いですよね。

そして、カードを当てる際のマルティプルアウトがとても勉強になりました。これは他の手順でも使えると思います。私はメンタルマジックが好きなので、こういうやり方は読んでいるだけでも楽しめました。

21. That is the question
現象/相手に好きな数字とカードを1枚心に決めてもらう。演者はテーブルにクエスチョンマークの形にカードを並べ、相手が決めた数字を元に、選ばれたカードを見つけ出す。

「奇術入門シリーズカードマジック」に収録されている、「クエスチョンマーク」同様の、クロックプリンシプルを用いた作品です。「オーバーキル」風でもあります(まあどちらも原理は同じですが)。少しやり方が面倒ですが、「あれ、そこでそうして大丈夫なの?」と思わせるところがあるので、原案を知っている人向けかも知れません。

訳者が備考で書いているように、成立条件が結構複雑です。個人的には、シンプルなクエスチョンマークでいいような気もします。カードをクエスチョンマークに並べて当てるという演出上、ちょっとしたショー形式の場面に向くトリックではないかと思います。


という訳で、全21トリック。トリック自体より、ジョビーの味付けやアドバイスが面白い本です。5,000円もする本ですから、これを買う人が「奇術入門シリーズ」などの、ちょっと古い名作書籍を読んでいないはずがないと思うのですが、これを読んで感銘を受けた方は、是非書籍でマジックを学ぶという事を見直してみてください。DVDでは得られないものを得られますから。

とは言え私自身も、この本に収められているいくつかのトリックについては、読む前に演技を見てみたい気がしたのですが(笑)。 

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Card college light (2)

七月に入って、札幌は毎日雨です。まるで梅雨のようです。妻曰く「札幌でこんな梅雨みたいな気候は、経験がない」との事。札幌へ来て、「これで鬱陶しい梅雨ともおさらばだ」と思っていた私は、涙目です(笑)。

それも明日くらいまでのようで、しかも明日は最低気温が一気に11℃まで下がるようです。どうして北海道の気候は、こう極端なのか(笑)。

では、ロベルト・ジョビーの「Card college light」。2回目の記事です。

Routine 3


7. Fingertip sensitivity
現象/12枚のカードを相手に私、表裏ごちゃごちゃに混ぜてもらうが、マジシャンはその状態を言い当てるだけでなく、表のカードは全て赤、裏のカードは全て黒なので、観客は二度驚く。さらに、相手にパケットの中から1枚のカードを覚えてもらい、表裏ばらばらに混ぜてもらう。マジシャンはそれを受け取り、テーブルの下で操作し、パケットをテーブルの上に出すと、選ばれたカードだけ以外は裏向きになっている。

CATOを使った標準的な現象です。前半はゆうきともさんが「メンタルマジックで奇跡を起こす本」で解説している、「裏と表プラス」と、ほぼ同じです。ただ、ゆうきさんの案だと、相手に花を持たせるタイプの演出で、私はどちらかと言うとゆうきさんの演出の方を取りたいですね。

二段目は、マジシャンがテーブルの下で、覚えたカードだけを裏向きにするという現象ですが、トライアンフのようにおまじないをかけると、覚えたカード以外の向きが揃う訳でもなく、また一段目のように、相手がでたらめに混ぜたものの状態を言い当てるのでもなく、ちょっと現象がぼやけてしまっている気がします。

一段目は、あくまで「マジシャンが、『相手が混ぜた』カードの表裏を、手触りだけで判別する」(つまりマジシャンはカードの状態には手を加えない)と思われるから効果があるのであって、二段目をやってしまうと、一段目の時も「マジシャンが都合よく操作したんだ」と思われないでしょうか。個人的には、一段目だけで終わりにしたいように感じます。

8. Muscle reading
現象/観客が選んだカードを、マジシャンは、筋肉の反応を読むことによって当ててみせる。

マクミランの「マインドミラー」。キーカードロケーションなのですが、なんとカードを戻してもらった後で、デックを2回リフルシャッフルしてしまいます。これは、知らないとマジシャンでも騙されてしまうでしょう。原理に至っては、100年以上も前のものです。いたずらに「新しい」「ビジュアルな」トリックよりも、時代を生き抜いて来たクラシックの威力を、まざまざと見せつけられる思いです。

また、プロとしてのジョビーの経験に裏打ちされた、冒頭のプレゼンテーションも巧みです。マジシャンが相手であっても、「これでは絶対に当たらない」と思わせる事が可能です(マジシャンが相手だからこそ、かも知れません)。見えないサイコロを使うという事の理由も、よく考えられています。

こういう、原理がシンプルで、かつ「絶対に当たらないだろう」と思わせられるロケーショントリックには、ちょっと凝った当て方の演出がぴったりですね。筋肉の反応を読むでも、脈拍で当てるでも、何でもいいのですが、手順通りやれば誰にでもできるだけに、当てる部分の演技は、真に迫ったものにしたいものです。

9. The lie detector
現象/観客に1枚カードを選ばせ、デックに戻してもらう。そして、選んだカードを含まない7枚のカードを抜き出してもらい、1枚ずつカードの名前を読み上げさせるが、1枚だけさっき選んだカードの名前を言ってもらう。演者はそれを見事に言い当てる。

ライディテクター(嘘発見器)というテーマは、昔から人気があるようで、多数の手順が発表されていますが、これほどシンプルな手順は他にないでしょう。なにせ、クロスカットフォースしたカードを当てるだけなのですから。(マジックが趣味の人には、そういう人はあまりいないでしょうが)トリックが凝っているのがいいマジックだと思っていると、肩透かしも甚だしいでしょう。

しかし、原理がシンプルであればあるほど、演出に凝るという原則を学べます。その上、ジョビーはこのシンプルなトリックを、ルーティーンのトリに持って来ているのです。このトリック、早速私のお気に入りになりました。マジックは、トリックではなく見せ方が全てである事を実感できます。

Routine 4


10. The circus card trick
現象/相手が選んだカードをデックに戻してもらう。マジシャンは、デックのトップからカードをひっくり返しながら、1枚ずつ表向きに配っていく。相手のカードが既に配られても、演者は配り続けるので、観客は失敗したと思う。マジシャンはやおら手を止め、「次にひっくり返すカードがあなたのカードです」と宣言する。その通りの事が起こる。

これも大変古典的なトリックですが、この手順中のテイクジスグリンプス(ポインティンググリンプス)の解説は、非常に価値があるものです。こういう技法を軽んじてはいけません。また、カードを見事当ててみせた時の振る舞いについての文章も、覚えておいておきたい一文です。

そしてもう1つ、この他愛のないと思われているトリックで、次のトリックの準備を密かにやってしまうというのが、非常に応用が効くテクニックです。指先のテクニックばかりでなく、こういう頭を使うテクニックも、さらりとこなせるようになれば、既に覚えているトリックも、見違えるように不思議さを増す事でしょう。

11. The fingerprint
現象/選ばれたカードを、マジシャンは観客の指紋を見て当てる。

これもキーカードロケーションによるカード当てです。指紋でカード当てというと、ヴァーノンの「フィンガープリントトリック」が思い起こされますが、それとは全然違います。

「Thot echo」とちょっと近いやり方ですが、こちらも巧妙です。先ほどのトリックから伏線を仕込んでいますので、かなり経験があるマニアでも、まず気付かないでしょう。この本にはこういう賢いキーカードロケーションが次々出て来ますので、「ボトムを覚えてキーカードにして、相手のカードをトップに返してもらい、デックをカットする」という、最も基本的なキーカードロケーションしか知らないと、次々引っかかります(笑)。目から鱗が落ちる事請け合いです。

また、このトリックの最後で、相手のカードを当てる時の口上が、ちょっと面白いです。こういうさりげないジョークを、嫌味なく言えるようになりたいものですね。

12. Magical match
現象/観客と演者は、デックからカードをカットする。枚数は当然わからないのだが、マジシャンはそれを見事言い当てる。

「解説されてみれば当たり前の事が起こっているだけ」という数理トリック。ダローの「Fooler Doolers vol.1」に解説されていた、「As many and as much as you」と同様の原理と思われます(違うかも)。

一段目は、単純な数理トリックなのですが、一段目の途中で二段目の準備をしてしまい、二段目はより不可能性が高く感じられるようにしているのが、上手い構成です。この手の、カードを使った数理トリックは、上手に納得させる説明をするのが難しいですが、上手に演じられればいいメンタルトリックになり得ると思います。


ここまでで12トリック。何せ、ロケーション系のトリックが非常に凄いです。手続きがちょっと複雑なものもありますが、一段目で上手く二段目の準備をしたり、セットしてあるデックで、セットを感じさせずに1つ目のトリックを演じたり、トリック以上に、「手順の組み合わせ」として、唸らされるトリックばかりです。

マジックは知的遊戯であると思っている私にとっては、読んでいて実に楽しい本です。もちろん、読むだけで満足せず、身につけたら早速演じてみましょう。読むだけより、更に楽しくなります。 

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