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トランプの友 友の四(ゆうきとも)

間も無く平成が終わります。新しくやってくる令和も、マジックを楽しんでいきましょう。札幌市では、桜の開花宣言が出されましたが、私の自宅や職場の近くでは、まだ全く桜は咲いていません。木にようやく少し葉がつき始めたかな、くらいです。まあ、本格的な桜は令和になってからでしょうね。

そして平成最後のVDレビューは、ゆうきともさんの「トランプの友」四作目。このシリーズは、巷間ではこの第四巻が最高傑作だと言われているようです。確かに、レギュラーだけでできる大変効果的な作品が揃っており、その評価にも頷けます。

作品の質や解説の分かりやすさはもちろんですが、今回もゆうきさんのマジックに対する考え、細かいところまで考え抜かれた手順には、一見の価値があります。それでは始めます。

トランプの友 知の四(ゆうきとも)


1. エイト
現象/デックをリフルシャッフルすると、4枚のKと4枚のAが出現する。

スピード感のあるAとKのプロダクションです。ヴァーノンのトリックが元になっているようです。セットはもちろん必要ですが、流れるように演じられれば実に鮮やかなものです。ただ、よほどスムーズに演じないと、シャッフルの部分でどうしても怪しさを感じさせてしまいます。

私も、人がこのトリックを演じるのを見たことがありますが、どうにもぎごちなく、スムーズとは言い難いものでした。現象はインパクトがありますが、シャッフルの部分でじっと手元を見てやるとどうしても不自然さを隠せません。マジックの手順としてあのシャッフルをするのではなく、まだマジックが始まる前の段階だという雰囲気を出しつつ、話でもしながら演じられれば、かなり不自然さは解消されるのではないでしょうか。

2. リセット
現象/4枚のAとKが1枚ずつ入れ替わっていく。最後には一瞬で元に戻る。

お馴染み、ポール・ハリスの「リセット」。原案とは、最初のアディションの部分が特に目立った違いで、原案よりスムーズで自然な改案ではないでしょうか。そして手順はもちろんですが、この作品のプロットに関するゆうきさんの考察は必見です。

特にこのような作品の場合、「変化」なのか「入れ替え」なのかを明確に表現しないと、見た人が混乱を起こします。そして「変化」ならば何を強調し何を検める必要があるのか、「入れ替え」ならばどう見せるべきか、それをよく考えず、何となく現象を見せているだけだと、ただの「訳の分からないトリック」になってしまう恐れがあることを、演者は知っていなければいけないでしょう。

また、4枚のAがKに変化したところで、テーブル上のパケットのトップを見せて「入れ替わった」ことを示すのが素晴らしい。これをしないで、更に「変化である」として演じてしまったのでは、「テーブルの上のパケットの存在は何だったのか」となってしまいますからね。とにかく、「リセット」という作品は、たとえこのゆうきさんの手順で演じるのでなくても、自分なりの表現方法を考えながら演じてみたいところです。

3. イロジカルチェンジ
現象/4枚のAとKが一瞬でまとめて入れ替わる。

ジョン・バノンのスイッチを使い、一瞬で入れ替わります。「イロジカル」というタイトルの通り、冷静に見れば色々と非論理的なのですが、大変効果的な現象。リセットやジャズエーセズ、各種オイルアンドウォーターから繋ぐのに最適なトリックで、私も愛用しています。

それでいて技術的にも難しくありません。これを単体で演じるようなトリックではありませんが、コンビネーションで使いやすいので、レパートリーに入れやすいと思います。手順としては大胆ですが、恐れずに演じて大丈夫です。

4. EZポイントオブデパーチャー
現象/二枚の赤いAの間に選ばれたカードを挟むが、それが一瞬で消えてしまい、デックの中から表向きで現れる。

エルムズレイの「ポイントオブデパーチャー」の、彼自身の改案「エコノミークラスデパーチャー」というのがありますが、更にそれを改案したものです。この手順だと、レギュラーでOKですので、大変演じやすいでしょう。ゆうきともさんらしく、相手の注目が集まらない時点で仕事をしてしまう辺り、大変巧妙な手順です。

そして、ビザーレバニッシュについての説明がありますが、この部分の解説も非常に価値があります。これ以外にもエルムズレイの消し方も解説してありますので、お好きな方を選んでいいでしょう。一見複雑な手順に見えますが、「EZ」という名前の通り、非常に楽に演じられます。

5. オキラシック4A
現象/4枚のAの上に3枚のカードを置いていき、4つのパイルを作るが、客の選んだパイルに全部のAが集まる。

エースアセンブリーですが、Aの上に置く関係ないカードを「表向き」で置くことにより、その下の裏向きのカードがAであるという間接的な証明になっているというのが、非常に賢い手順です。いわば、マクドナルドエーセズの逆転の発想と言いますか。この辺りを考案するに至った経緯は、書籍「ゆうきとものクロースアップマジック」に詳しいので、ぜひご一読を。

また、マジシャンズチョイス(エキボック)における考察も、聞き逃さないでください(こちらも書籍にも詳しく書いていますから、興味がおありの方は書籍をどうぞ)。掻い摘んで言えば、マジシャンズチョイスは適当に演じる方も多いのですが、「相手の選択に対して、一仕事を入れる」というのが大事、ということです(山を選んでください。では選んでもらった山は退けておきます、なんてのは駄目なマジシャンズチョイスの典型例です)。

エースアセンブリーは星の数ほどありますが、実用的にでき手順に無理がない点、ディスプレイに説得力があり、現象にインパクトがある点において、非常にバランスの取れた名手順だと思います。

6. フォーツーワン BOXバージョン
現象/4枚のAをカードケースに入れ、選んだカードをデックの中ほどに入れておき、おまじないをかけると、デックの中から4枚のAが表向きに現れ、カードケースからは選んだカードが現れる。

これはインパクトのある現象。非常によく考えられた感動的な手順です。そして、するべき仕事は多いのですが、それを一気に行わず、少しずつ分けて行うので、相手からの見た目は自然に見えます。また技法的には、決して難しいものは使わないのですが、最初から最後まで常に何か仕事をするので、かなり練習が必要だと思います。こういう手順で、一部分でももたついたら台無しですからね。

ゆうきさんも言われていますが、本当に難しい手順というのは、難しい技法を使う手順ではなく、表の動きを邪魔いないよう、影の仕事を流れるようにこなすことなのでしょう。その意味で、この手順はかなり難しいトリックの部類に入ると思います。

手順の中ほどで、2つに分けたパケットの上半分のボトムにブレイクを作るところが、なかなか難しいですよね。ここは、親指で1枚リフルするか、あるいは一度分けたあと左手パケットの上1枚の下にブレイクを作り、もう一度両手のパケットを合わせた時、それを右手パケットの下に移す方法でもいいと思います。

最後、カードケースを風圧で倒すところ、ちょっとしたギャグ風の演出、そして現象が込み入っているので、二段階で見せるというアドバイスも、非常に勉強になります。複数の現象が同時に起こるトリックを見せる場合に、取り入れるべき考えでしょう。やたら一瞬のインパクトだけを追い求めるのではなく、「いかに観客に分かりやすく現象を示すか」に心を配る、ゆうきさんのプロの気遣いが感じられます。

確かバーナード・ビリスだったか、似たような手順があったような記憶がありますが、そちらではケースに仕掛けが必要でした。が、こちらは仕掛けも準備も何も必要ありません。100%技法だけです。とにかく、現象も凄ければ解説にも驚く、このDVDの中でも一押しのトリックです。


以上6手順。どれを取ってもレパートリー候補ばかりで、私自身は「エイト」以外全部レパートリーにしています。収録作は確かに少ないのですが、これほど実用的で、かつインパクトもある作品集はそうそうありません。ゆうきさんのDVDはどれを買っても間違いないのですが、どれか1枚という場合は、まずこれを買えばいいというほどの名作です。

また、解説が「ゆうき節」炸裂ですので、解説も非常に見応えがあります。解説で心底感心している庄司さんの様子に、ゆうきさんの頭の良さを再確認できると思います。カード好きの方ならば必携の1枚。是非見てみてください。 

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マギーの超特選小ネタ手品32(マギー司郎)

今回、久々にマジックの本を買いました。私は、マニアックなレクチャーノートにはあまり興味がないのですが(どうせいつも同じのしかやらないし)、これは久々に面白い本でした。テレビでもおなじみ、マギー司郎さんの本です。

マギーの超特選小ネタ手品32

マギー司郎さんは、私が一番大好きなマジシャンです。それこそ、ダニ・ダオルティスやデビッド・ストーンやレナート・グリーンといった、海外超一流の腕自慢のマジシャンより、マギーさんが好きです。マジックを見て、こんなに楽しく暖かい気持ちになれるマジシャンは、他にいません。

最初に言っておきますが、この本で解説されているマジックは、マジックを趣味にしている者であれば、ほぼ全部知っているトリックばかりです(中には、マジックじゃないものも含まれていますが、そこがマギーさんらしくて面白い)。

しかし、解説やコラムはどれも一見の価値があります。相手を(マジックを見る相手だけでなく、読者をも)楽しませようとする、マギーさんのほのぼのとした人柄がにじみ出てくる解説ばかりです。全32ネタ、どれを見てもマギー流の言い回しに楽しませられること間違いなしです。

また、マジックの解説としても、ちょっと腕に覚えがあるマニアであれば、とっくの昔に忘れ去っているような、はっと目を開かされるような記述がたくさんあり、マニアでもというか、マニアであればこそ一読の価値がある一冊だと思います。いくつか引用しましょう。

「手品ってね、ただ不思議なことをするんじゃ、やっぱり芸がないと思うんです。それとなく、自分の人柄が出るように工夫するといいと思いますよ」(p68)

「手品をするときには、意味のないことに意味があるようにするのが、タネや仕掛けをごまかすコツなんですよね。一見意味がないことって、本当はすごく大事なんですよ」(p73)

「なんでも段取りが大切ですからね。くだらないことを先にやって、期待させないでおいて、実はちゃんとしたものもできるのよ〜ってね」(p85)


などなど、長年の経験があるからこそ書ける金言集だと思います。中でも「手品に自分の人柄が出るように」という一文は響きました。つまり手品で人を面白がらせようと思ったら、自分が面白い人にならなくてはいけないし(手品以外で)、感じのいい演技をしようと思ったら、自分が感じのいい人にならねばならないということですよね(プロでも感じの悪い演技をする人はいますが)。そういう意味で、私はこの本はとても面白く読めました。

それにこの本には、なんとマギーさんの代表的なネタである、「縦縞のハンカチを手の中に入れると、いつの間にか横縞になる」というトリックが解説されているのです(笑)。それだけでなく、「グラスにコカコーラを入れて、時計回りに1回転すると、なんとペプシコーラに変わる」(逆に回すともちろん元に戻る)という大技も解説されています!(笑)

もちろん、こういうネタは演者のキャラクターにも関わりますが、とにかくいつもいつもただ理不尽現象を相手に見せるばかりが能ではないというのは、改めて感じられました(理不尽現象を喜んでくれる人相手になら、もちろんどんどん見せてあげればいいのですが、そういう人は残念ながら手品マニア以外にはそうは多くありません)。

時々は、トリックではなく、こういう「マジックを演じる上での心構え」を学べる本を読んでみるのもいいのではないでしょうか。「心構え」なんて大げさなものではなく、マギーさんの文章を読んでいるうちにあっという間に、楽しく読み終えてしまうんですけどね。お薦めの1冊です。 

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