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趣味のマジック(手品、奇術)について。DVDのレビュー、好きなトリックについてなど。

DVDリスト - 新着順マジシャン別

Easy to master card miracles vol.5 (Michael Ammar)

2017年12月10日
マイケル・アマー 0
今年も残すところあと三週間。来週の日曜日は、所用で岡山まで行きますので、このブログの更新はありません。朝六時ごろに家を出て、新山口駅まで行き、そこから新幹線に乗るのです。帰るのは、多分夜七時を回るでしょうから、それからブログを書く気力は、多分なさそうです。

下関から岡山は、高速道路だと三時間以上かかりますが、のぞみ号に乗れば一時間十五分ですから、あっという間です。十一月は札幌に二回行ったのですが、札幌までは飛行機を使って、家を出てから着くまで五時間以上かかりますからね。それに比べれば、岡山なんて近い近い(笑)。

では、今週のDVD紹介。アマーのEasy to master card miraclesの五回目です。相変わらず、トリックの選択が素晴らしく、現象も変化に富んでおり、どれを身に着けても間違いありません。パッケージ写真のアマーの満面の笑みが素敵です(笑)。

Easy to master card miracles vol.5 (Michael Ammar)

1. Virginia city shuffle (Martin Lewis / Louis Falanga / John Luka)
現象/一枚のエースと三枚のブランクカードを使い、エースの行方を当てさせる。テーブルにブランクカードを置いておくが、手元のカードが全部ブランクになっており、テーブルによけておいたカードがエースに変化している。それをもう一度繰り返し、最後には、テーブルに置いておいたカードはブランクのままで、手元のカードが三枚ともエースになっている。

モンテ系トリックの傑作です。サイドウォークシャッフルのバリエーションと言えます。実際現象はほとんど同じなのですが、あちらと違うのは、カードに仕掛けがない事です。最後全部手渡しできます。もちろん技法は使いますが、さほど難しくはありません。何より、最初のブランクカードの示し方は、初めて知った時はその巧妙さに感心しました。

普通、ギミックを使用するトリックを、ギミックを使用せずに実現しようとすると、どこかに無理が生じてくるものですが、この作品の場合は、それが上手く帳消しにされています。サイドウォークシャッフルは、ギミックを使うが故の制限、扱いづらさというのもありますからね。その意味で、サイドウォークシャッフルはもちろん傑作ですが、これはこれで非常に意義のある改案だと思います(フレッド・カップスが演じていたように、ブランクカードに印をつけようと思ったら、また別のお話ですが)。

以前にも書いた通り、こういうトリックは見せ方が難しいですから、安直に「観客を負けさせて、マジシャンの不思議な力を誇示する」ような見せ方は、やめておいた方が無難です。それはともかく、手軽でパワフルなトリックですし、ギミックを使いませんから、この四枚をいつもパケットケースに入れておきたくなります。

2. Another quick coincidence (Allan Ackerman)
現象/演者は一枚のカードを置いておく。観客にも一枚のカードを選ばせ、それをデックの好きな位置に差し込ませる。演者のカード、観客のカードは共にエースであり、更に観客が差し込んだ位置の両側のカードもエースで、四枚のエースが揃う。

手軽に演じられるフォーエースのプロダクションです。セットも簡単ですし、技法もほとんど使いませんので、即戦力になります。ビル・サイモンのプロフェシームーブを使うのですが、この技法は、簡単なのに非常に強い錯覚を生みます。冷静に考えれば、非常に大胆な事をしているのですが、「相手のカードを表にする」という目的があるため、堂々とカットしても、それが相手の目に留まらないのです。心理的な盲点をついた、非常に「マジックらしい」動作と言えましょう。

3. Henry Christ's fabulous four ace trick (Henry Christ)
現象/デックに混ぜ込んだ四枚のエースが、色々な方法で現れる。

これも難しい技法を使わずにできる、四枚のエースのトリックです。最初の四枚のエースの配置方法が大事なのですが、解説で四枚のエースだけ違う裏色のカードを使ってくれているため、とても分かりやすいでしょう。一枚エースを出す度に、次の準備までしてしまう、賢い手順です。

三枚目だけは、スペルを使って出し、四枚目はラズルダズルカットを使って出します。解説では、スリップカットを使う方法も説明していますが、ラズルダズルカットは、易しくできて非常に派手に見えますから、知らない方はこの機会に、是非身に着けるといいと思います。

4. Cards into card box (Mark Lefler)
現象/デックをシャッフルし、広げて相手に一枚とってもらおうとするが、「ごめんなさい、カードを出すのを忘れていました」と言うと、デックのはずがカードケースになってしまっており、改めてデックを箱から取り出す。

瞬間芸のようなトリックですが、アマーの見せ方は実に見事です。最初ぼーっと見ていたら、見事にひっかかってしまいました(笑)。これと同じような現象を実現するためのギミックもありますが、こちらは何の仕掛けもいりません。その分、見せ方は難しいと思います(角度とか、手の形とか)。アマーの見せ方をお手本にしましょう。

5. The gun trick (Ken Krenzel)
現象/あらかじめスペードのエースを出しておく。一枚のカードを選んでもらい、デックを拳銃の形に噛み合わせる。スペードのエースを弾丸に見立て、デックの拳銃に押し込むと、相手のカードが飛び出してくる。

動きのあるカード当てです。カードマジック入門事典に掲載されており、「このトリック一つで本書の値段に匹敵する」とまで書かれている、優れたトリックです。アマーの演じ方は、入門事典のやり方とは少々異なりまして、私はアマーのやり方の方が優れていると思います。

このような、ちょっと派手なカード当ては、身に着けておくと演技のアクセントとしてとてもいいと思います。カード当てが嫌いで、今風のビジュアルなトリックが好きな人も多いようですが、何せ、一般の人が想像するカードマジックと言えば、やはりカード当てなのです。「選ばれたカードの現し方」というのは、色々知っていれば、それだけでも見る側に違う印象を与えられますよ。

6. Card on ceiling (Michael Ammar)
現象/一枚カードを選ばせ、デックに戻させてから、デックに輪ゴムをかける。その状態でデックを天井に投げると、相手のカードだけが一枚貼りついている。

古典トリックであり、アマーの得意技です。アマーと言えば、トピットかカードオンシーリングという印象。Gun trickよりも更に強烈な印象を与えられるでしょう。天井に貼りついたカードを、後でちゃんと取り除けるような場所でないと、トラブルの元になるのは言うまでもありません(笑)。

もちろん、道具が必要なのですが、アマーはセットの仕方も分かりやすく説明してくれています。トリックの構造としては単純なのですが、アマーのよく考えられた手順は、一見の価値があります。ちょっとしたサロンでこれを演じれば、デック一つで、後々まで語り草になる演技になる事は間違いありません。

7. Torn and restored card (J.C.Wagner)
現象/選ばれたカードを四つに破る。その破片の一つを観客に持っておいてもらい、残り三つを演者が持つが、おまじないをかけると、三つの破片はくっつき、観客が持っている残り一つともぴったり一致する。

比較的易しくできる、破ったカードの復活です。ちょっとした準備は必要ですが、そのお陰もあって、「確かに四つに破った」という、見た目の説得力も高いと思います。この部分のハンドリングは、実によく考えられています。

カードが全部元に戻らないのは残念ですが、その分相手が持っていたカードの破片とぴったり一致するという演出がありますから、効果を減じる事はないでしょう。それに、カード全部が復活する手順だと、当然ながら「本当は破らず、破ったように見せるだけ」か、「どこかで丸ごとすり替える」という手順が多いですから、これはどちらを取るかの問題でしょうね。私は、この手順は十分魅力的で、演じる価値があると思います。

8. Hofzinser all backs (Harry Riser)
現象/一枚カードを選んでもらってデックに戻した後、三枚のカードを抜き出す。三枚を確認すると、どれも選ばれたカードである。次の瞬間、三枚のカードは全部ダブルバックカードになっている。更に次の瞬間、三枚には表が戻っているが、全部選んだカードではない。それをデックに戻すと、トップカードはちゃんと選ばれたカードである。

「どこにもあってどこにもないカード」にオールバックを組み合わせたような作品ですが、ちょっと(かなり?)現象が込み入っているので、見る側が混乱を起こすような気もします。手順とハンドリングはとてもよく考えられていますので、演じるならば、何か面白い演出でもつけたいところです。

個人的に、オールバックというトリックはあまり演じる気が起きません。ダブルバックカードというのが存在するというのを、観客に示すようなトリックはやりたくないというのが、正直なところです。佐藤総さんは、「カードマジックデザインズ」の中で、「トランプが故障した」という演出をしていましたが、「故障」という演出と、ダブルバックという異常なカードを見せるという現象が上手くマッチしていて、面白い演技でした。

そのように何か上手な演出でもなしに、そのような異常なカードを示すというのは、私はちょっとなあと思ってしまいます。ブランクカードであればまだ、「印刷前のカード」又は「予備のカードで、カードをなくした時にこれに表を自分で描きます」という演出が使えますが、ダブルバックは明らかに異常ですからね。

9. Out of sight, out of mind (Dai Vernon)
現象/相手が心の中で決めただけのカードを、当ててみせる。

ダイ・ヴァーノンの有名なトリックです。心の中で決めただけのカードを当てるのですから、そのインパクトは絶大です。マルティプルアウトが少し複雑ですから、これは英語だとちょっと理解しにくいかも知れません。一度流れを覚えてしまえば、そうでもない気もしますが。カードマジック事典にも掲載されていますから(p187「カードの読心術」)、そちらも合わせて参照するのがいいでしょう。

これのバリエーションに「インターセプト」というのがあります。大きな違いは、最後のカードの示し方で、インターセプトは最後まで相手のカードの名前を聞きません。これとは意外と印象の違うトリックですから、興味がおありの方は入手してみてください。

10. Grasshopper (Paul Harris)
現象/二枚の黒いKの間に挟んだ相手のカードが、二枚の赤いKの間に移動する。

シンプルな移動トリックです。現象はシンプルなのですが、ハンドリングやカードの示し方は、いかにもポール・ハリスっぽいと言いますか(笑)。こういうトリックを、エキストラを使わずにやってしまうところも、ポール・ハリスならではという感じですが、カードのすりかえなど、とても巧妙です。手軽な即興トリックとして、覚える価値があると思います。

なおアマーは、スタートレックの話をしながら演じています(カーク船長が、異星人の間からテレポート云々)。すぐに現象が起こる短いトリックですから、その辺りは色々と味付けのしようがあるでしょう。

Bonus effect / Paramount (Aldo Colombini)
現象/カードを選ばせ、表にサインをしてもらいデックに戻す。裏色が違う3枚のブランクカードを出し、これで選ばれたカードのコピーを作ると言い、裏の色が変わり、表には選ばれたカードが現れる。更にそのカードに観客のサインまで現れる。

今回のおまけトリック。使用するギャフカードは、例によって付属しています。非常に強い効果を持つ、ビジュアルなトリックです。最初のフォースは、クライストのフォースを使っていますが、フォースが少し重いような気がするので、もっと単純なフォースでもいいような気もします。

また、シークレットアディションを行う箇所では、選ばれたカードを示すという動作に紛れさせているため、怪しさが軽減されているのが上手いところです。シークレットアディションって、大抵何の理由もなく、パケットをデックの上で揃えたりしますからね。現象も、裏、表、そしてサインと、段階を追ってカードを変化させるのが面白く、やってみたくなるトリックです。


以上11作品。難しすぎず簡単すぎず、難易度も適度です。少し準備が必要なトリックもありますが、その準備に見合う効果があるトリックばかりだと思います。優れたトリックを、アマーの素晴らしい演技で是非覚えてみてください。

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真
この記事を書いた人: 真
マジックは主にカード。テクニカルなものや派手すぎるものよりは、錯覚や心理的盲点を上手くついてくるようなマジックが好みです。アンビシャスカードが好きではないという、マジック愛好家の中では変わった趣味の持ち主でもあります。北海道札幌市在住。ブログのアイコンは妻が描いてくれました。.

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