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Card college light (1)

前回の予告(?)通り、ロベルト・ジョビーの「Card college light」に収められたトリックについて語ってみます。

この本は、ジョビー特選のセルフワーキングトリックが21種類収録されています。特徴は、3つのトリックで1つのルーティーンになっている事(つまり合計7ルーティーン)。1つ目のトリックで、次のトリックの下準備をしたり、現象がなるべく重ならないように配置されていたり、ジョビーのプロとしての工夫が随所になされており、大変勉強になります。

冒頭に「技法を使わないカードマジックのプレゼンテーション」という章がありますが、ここは是非熟読しましょう。とても大事な事が書かれています。ここを読んで、何も心を動かされないようであれば、今日限りマジックはやめ(以下省略)。

この中のルーティーンの、どれか1つでも確実に身に付けておけば、強力な武器になる事は間違いありません。では行ってみましょう。3回に分けて記事を書く予定です。

Routine 1


1. T.N.T.
現象/2人の相手に2枚のカードを覚えさせる。状況を確認させつつ、どんどん不可能性を高めて行き、最後には2人のカードが含まれたパケットを、相手に完全にシャッフルさせる。それでもマジシャンは2人のカードを当ててみせる。

ホアン・タマリッツの「Neither blind nor stupid」です。セットはもちろん必要ですが、そこまで手のかかるセットではありませんし、何なら最初にデックをシャッフルした後、表向きにスプレッドして検める事すら可能です(必要ないとは思いますが)。

そして、不可能性をだんだん高めるという設定の下で、実はカードを当てるための準備が完了してしまうという頭の良さ。数理的原理によるカード当てとしては、エルムズレイの「クロス25」に匹敵するほどの賢さです。原理が巧妙なだけでなく、原理を演出で上手く隠している点において、これほど賢い作品はなかなかないと言っても過言ではありません。さすがはスペインの鬼才、タマリッツです。

ただ、カードを覚えさせてから当てるまでが結構長いので、覚えたカードを忘れられないようには注意が必要です。タマリッツ自身の演技動画でも、観客はカードを忘れてしまってますし。「お客様ですら思い出せなかったカードを見事当てました!」と、それを笑いに繋げるタマリッツは、さすがですが(笑)。

2. Intuitution
現象/2人の観客が、よく混ぜられたデックを、赤と黒に分けてみせる。

「Out of this world」的な現象。ジョン・ケネディの「レッドアンドブラック」です。通常この手の作品では、デックのセットが必要ですが、何と前のトリックで、ごく自然にそのセットが完了してしまっています(T.N.T.だけで終わる場合は、タマリッツもそうしているように、最後で2つのパイルをリフルシャッフルしてしまいましょう)。なので、あとは観客に全部やらせるだけで、自動的に現象が起こります。現象はOOTWなのですが、手順的にはむしろミラスキル風です。

演者自身も持っているパケットをシャッフルする事で、「よく混ざっている」事を示せるのは、見事な工夫です。OOTWにありがちな、ガイドカードの交換その他の動作がないため、大変クリーンに見せられます。

何より見事なのは、直前のトリックで、観客自身がパケットを完全に混ぜているという事。原理自体は他愛のないものでも、トリック同士の相乗効果によって、素晴らしい効果をあげられる好例です。ぜひT.N.T.と続けて演じてみたいものです。

3. The telephone trick
現象/観客が選んだカードを、電話の向こうの相手が当ててみせる。

氣賀康夫さんの「ステップアップカードマジック」に掲載されている、「電話の向こうの魔法使い」と同じトリックです。要はコーディングですが、コーディングのやり方を巧みにやれば、本当の魔法にしか見えないでしょう。

ただ、携帯電話が普及して演じやすいトリックではあると思いますが、最近のスマートフォンは、アプリを入れれば何でもかんでも出来てしまうので、もしかしたらあまり不思議に見えないかも知れません。例えば、電話をかける前にLINEで密かに選ばれたカードを知らせる、なんてのも不可能ではないですよね(なので私は、スマホを使ったトリックはやりたいとは思いません。それ以前に、ガラケーしか持っていませんが(笑))。

電話というのは本来、声を伝える以外の機能がないからこそ、こういうトリックは不思議に感じる訳で、だからこそ逆に固定電話が使えれば、その方が効果的でしょう。あるいは、スマートフォンを使うのであれば、相手に借りるというのも手かも知れません。番号を伝え、電話が繋がってから渡してもらえれば、十分成立するでしょう。

Routine 2


4. Thot echo
現象/デックから選ばれた2枚のカードを当ててみせる。

ロケーションによるカード当て。ロケーションの方法が巧妙で、かなり不可能性が高いです。その分、手続きが少々複雑です。若干マニア向け(マジックに慣れた相手向け)なトリックに思えなくもありません。

1枚目の当て方は、「奇術入門シリーズカードマジック」にも収められている、ピーター・ワーロックの「サンドウィッチスプレッド」と同様の原理ですが、この作品では巧妙な手段により、2枚目も当ててしまいます。不可能性は高いですが、手順が少々複雑なので、手順説明や手順を振り返る時は、簡潔に分かりやすくがいいでしょう。

このトリックも、演技中に次に繋がるトリックへの準備を済ませてしまいます。この本は、トリック自体もさることながら、こういう「1つのトリックの間に、次のトリックの用意を終わらせる」やり方が、とても勉強になると思います。それによって、取るに足らないと思われていたセルフワーキングトリックが、多数「実用的なトリック」に化けると思いますよ。

5. Royal flush
現象/観客が選んだ10枚のカードを、表裏ばらばらに混ぜるが、表裏は5枚ずつになっており、更に裏向きの5枚はロイヤルストレートフラッシュである。

CATOは使っていませんが、CATOと同様の原理です。「裏表を自由に混ぜた」と思わせるプレゼンテーションが効いています。こういう、「言い回しで相手の心理を巧みに操る」という例が多数収められているので、手順だけに注目して、そういうところを見落とさないようにしましょう。

ポーカーデモンストレーション風にやるかどうかは、好みの問題かも知れません。これも、プレゼンテーションがトリックの説得力を高めている、いい実例だと思います。

6. The Waikiki shuffle
現象/観客が1枚カードを選んでデックに戻す。デックを表裏ばらばらに混ぜる。その状態で、振り子を使って選ばれたカードを当てる。

要するに、奇術入門シリーズカードマジックや、事典にも収録されている、ビル・ムラタの「ワイキキカードロケーション」です。これをわざわざ最後に持ってくるまでもない気もしますが(特に準備がいるトリックでもないので)、改めて見てみても、よく出来たロケーショントリックだと思わされます。実は、「裏表ばらばらに混ぜてから当てる」というコンセプトのトリックとしては、トライアンフよりも私はこちらが好きだったりします。

最近マジックを始めた若い愛好家は、こういうトリックは知らないかも知れませんから(パス大好きな人だと、こういうトリックには目が向かないでしょう)、逆に新鮮に映るかも知れません。振り子を使った演出は好みが分かれるでしょうが、シンプルなロケーショントリックこそ、当てる時の演出に凝るというのは、1つの方法だと思います。シンプルなカード当てでも、不可能性が高く、フェアさを前面に押し出せるのであれば、演出に凝る事で手順のトリも務まるという、いい見本です。

もちろん、別に振り子を使う必要はないので、即興で出来る優れたカード当てとして、是非覚えておきましょう。単発でも十分な反応を取れるカード当ての傑作です。


ジョビーのルーティーン構成の上手さはもちろんなのですが、単体で演じても優れたトリックばかりです。準備が必要なトリックももちろんありますが、即興で演じられるトリックもたくさんあります。

とにかく、前回も書きましたが、「動画を作って凄いと言われたい」というのではなく、マジックを人に演じたいと思っている方なら、この本は必携です。評判のいい本ですから、技法至上主義、「DVDじゃないと覚える気しない」という方が、この名著に触れて、セルフワーキングの魅力を感じていただければ幸いです。  

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